檻 4
数日後、人気の無いシティの暗がりでアレックは再びよく知った気配を背後に感じた
だが今日は先日の不意の遭遇とは違い、声を上げれば数十メートルの位置に仲間が寛いでいるような場所
「・・・・何の用だ・・?」
慎重にヘルマンと距離を測りながら、アレックは尋ねる
「ふふ・・何の用かはこっちが聞きたい
あの時はトカゲの化け物の邪魔が入ったが、あれから私を探していただろう?・・知ってるぞ」
「・・・・・・」
「私がお前達が管理する金を盗んでだ挙句、麻薬を仕入れて売ってるか聞きたいか?
・・・まあ、手っ取り早く答えるなら・・答えはYesだ」
「・・っ・・お前・・」
こんなに早く自らの犯行を認めるとは思っていなかったアレックだったから、振り返って茫然とヘルマンの顔を見た
「驚いたか?、全部喋ってやってもいいぞ?
私はその金で買った麻薬をシティで売り捌き、ここの住人を徐々に薬漬けにしてやってると
そしてこれは・・・いずれは私がここの支配者になる為だ
あんな人間と、人間に惚れた女なんかに大きな顔をさせておくものかっ」
「・・なんで・・・っ」
「なんで?・・全てをお前に打ち明けるか、か?
それはお前に喋っても、これをお前はあのマックスやローガンとやらには告げ口できないからさ」
その自信満々に態度に、アレックはカッとなった
「っ!・・言えるっ・・言ってやるさっ、そしてお前を処刑してやるっ!!」
「・・そうか?・・・・昔、ロイス・クレスギーを殺したみたいに?」
そう言うと同時にルマンが顔の前に翳したディスクの存在に、アレックは凍りついた
「・・・・ま・・まさか・・・それはっ」
「・・・あれは初期の任務だっただろう?、494
我々は予め隠しカメラを仕掛けて、お前がちゃんと任務を果たすか監視していた
だから・・・全てを記録したディスクが私の手に有るという訳だ」
ニッと、ヘルマンは残忍な顔で笑った
「クレスギー財団の当時の代表だったロイスは、アイズ・オンリーであるローガンの友だった
・・・つまり、お前の想い人の親友だった男という訳だ
しかしお前があんな人間ごときに惚れていたとは、驚いたよ」
「っ!・・なっ・・」
そうだったと、アレックは有る事に気付き顔色を失った
ヘルマンの特殊能力
それは、近づいた相手の心を読む力
この距離ならまだ大丈夫だか、息がかかるくらいの近さで、尚且つ油断しているともうダメだ
「俺の・・・俺の心を読んだ・・のかっ、何時・・」
「・・ははは・・・ここに来て直ぐ、後から近寄ったがお前は気付かなかった
研究所を出でから大部警戒心が薄れてしまったようだな、494」
「・・・・・」
「さて・・ローガンがかつての親友とその家族を惨殺したのがお前だと知ったらどうするかな?
お前が惚れる優しい彼だから、殺したりしないだろう
・・だが・・お前を恨んで許さない・・・それに、それだけじゃない・・・」
さらにヘルマンは、USBソケットの付いたメモリーを掲げる
「こっちにはマンティコアでの『試験』の様子もある
・・お前は洗脳の度何回も受けたからな、たっぷり数十時間分だ」
「・・っ・・・ど・・・どう・・して・・っ・・・」
あれはもう研究所とともに、灰になった筈だった
アレックのものだけでなく、余程の重要人物、例えばマックスのような者以外の資料は焼けて無くなったと思っていたのに
「なんでそんな物をっ!」
「それは・・・これは私の大切なコレクションだからさ
お前の素晴らしく美しい姿が写っている・・・だからあの火事の中、慌てて探して持ち出した
・・・どうだ?・・お前も・・懐かしい自らの過去を見てみたいんじゃないか?
それともこのシティのモニターに映して、全てのジェネスティックでの鑑賞会でも開くか?、ん?
きっとみんな喜ぶだろう・・そのへんで売られているブルーフィルムより、凄い内容だ」
「・・・っ・・・・・」
「・・・・お前の負けだ、494・・・諦めろ」
逃げろと、アレックは自分の肉体に命じた
だが脚は少しも動かず、勝利を確信し嬉しそうに近づいて来るヘルマンの手がその頬へと伸ばされるのを、茫然と見るだけ
「・・っ・・さわ・・るなっ・・」
「ずっと前から思っていたが・・負けを認めて全てを諦める瞬間のお前が一番綺麗だ
・・・美しい・・本当に美しい・・・494・・・・・お前は誰にも渡さない、絶対に・・」
ヘルマンの逞しい腕で壁際へと追い詰められたアレックは、心の中にまで入り込もうとするヘルマンの精神波を必死でブロックしながら、その目をギュッと瞑った
彼の言う通り、自分の負けは確実
こんな男に最も弱い部分を握られてしまった、自分の負け
「もちろん・・私の言う事を聞くなら、全ては秘密のままにしておいてやるさ
私とお前との取引だ・・それでいいな?・・・・・・・・返事は?、494」
「・・・・・」
もう二度度こんな言葉を、自分の口から発するとは思っていなかった
だが、過去は追って来る
逃げられない
「・・イエス・・サー・・」
そんな絶望のまま、アレックはヘルマンの取引に頷き、答えた
やがてアレックがヘルマンに引き摺られるようにして連れて行かれたのは、意外にもそこからそう遠くはない場所だった
人影は無いとはいえ、人通りの多い通路からも数十歩で入って来れる位置の廃材の山に突き飛ばされ、アレックは改めて抵抗を始める
「・・ゃ・・めろっ・・こんな所・・でっ」
「見られたくなければ大人しくしろ、それとも・・見物人が欲しいか?」
ヘルマンはジェネスティックでも千切れない鋼鉄の鎖を用意していて、アレックの両手をそれでしっかりと脇の雨樋に括り付けた
「最初は立ったまま犯してやる・・こうゆうのが好きだったろう?、494」
「・・ゃ・・ぁ・・・っ・・・あっ!」
ジーンズだけを下ろされれば、直ぐに子供の腕程もある太さの肉棒がアレックの真っ白な双球に顔を潜り込ませる
そのまま容赦無くメリメリと肉を押し開かれ、肉襞は限界まで伸びきる
「こっちは久しぶりなのか?・・・随分と狭くなっている、早々に拡張が必要だな」
「・・ぁ・・・っ・・あ・・やめっ・・」
このままでは裂けると感じ必死に首を振るアレックだが、ヘルマンは力づくで侵入を謀るだけでまるでそれが目的のようだ
そしてその身に痛いほど刷り込まれてきたヘルマンの凶器に対する恐怖が甦り、アレックは捕食者の餌食になる小動物のように震え、ただその身にそぐわぬ大きさの物を受け入れるだけ
「いくぞ、494・・・観客が欲しいなら、叫べ」
「っ!・・・ぁ・・・ぁあああああっっ!!」
ついに一瞬アレックの体が宙に浮いたと思えば、直後羽交い絞めにした両肩をヘルマンの手が下へと凄い力で引き落とした
グズリと鈍い肉を裂く音と共に全てがその狭い肉峡に飲み込まれれば、鮮血がアレックの脚を伝い漸く地面に付いた足も力が抜けて、ヘルマンが持ち上げている腰だけで体を支えた
「ふん、受け入れただけで切れるとはな・・・あのローガンとやらには抱いてもらってないらしい」
「・・っ・・ひっ・・うっ・・・・・・っ・・・ぁっ・・」
「ふ・・・本当は奴に抱かれたくてウズウズしてるんだろう?
お前は昔から男無しではいられない淫乱猫だ・・・そう私が教育した、間違いない」
「・・んっ・・・いっ・・あっ・・ああっ・・」
グチャグチャと血塗れの肉を、ヘルマンは円を描くように腰を回して掻き回す
「今は痛くても、すぐお前は頭を下げて抱いて下さいと頼むようになるさ
毎日のように此処で私を屠っていた・・・あの日々を思い出してな」
「っ・・ぃっ!」
やがてヘルマンはアレックの髪を乱暴に掴むと、近くの壁へと叩き付けた
そしてそれを歯止めにして、後から更に勢いを付けて柔らかな肉をガツガツと掘り進む
「・ひ・・ゃ・・ああっ・・・・も・・ゃっ・・あっ!・・あっ!!・・」
その上激痛で萎えたままの前をきつく握りこまれ毟る様に引かれれば、アレックは周囲のジェネスティックの存在も忘れ悲痛な声を上げてしまう
「ふふ・・集まってきたぞ、494・・お前のいやらしい姿目当ての奴らが」
「っ?!・・なっ・・やめっ・・ゃぁ・・ああっ!!・・」
もはや上半身に力は入らず、その腰だけがヘルマンの肉棒に支えられて高々と掲げられている状態
背後からは悲鳴を聞きつけて遠巻きに集まってきた複数の好奇の目が、血に濡れてテラテラと光る結合部へと向けられている
「みんな助けようともしないところを見ると、無理矢理だとは思っていないようだぞ
・・こんなに出血しているのに・・・494、お前の声が余程良さそうなんだろうな」
「く・・・ぁっ・・・」
やがて戒められていた手は樋から外され、地面に動物のように四つん這いにされるとヘルマンの本格的な攻めが始まった
アレックは汚れた地面に頬を付け、ただ目を瞑ってその嵐のような激痛をやり過ごす
この様を誰が、何人が見ているかなど、もう考えられなかった
ただ、早く終わる事だけを願った
「・・・っ!!・・」
そして、やがて信じられぬ量の熱が体の奥深くに注ぎ込まれると、アレックの意識はそこで途切れた
たった一つ、この交われで少しの悦びすら自らの肉体が感じなかった事だけに、安堵しながら
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