檻 6
「信じられない・・ここに置いたものまでが盗まれるなんて」

「・・・そうね、だって・・」

その日マックスとローガンは、クレスギー財団倉庫で、中身の宝石がゴッソリと無くなった木箱の前で呆然としていた

先日の盗難事件が起きて直ぐ全てをこの倉庫へと運んだというのに、昨夜はここの物までが盗まれた

そしてこの場所を知っている人物はシティのジェネスティックでも限られていて、こんな事件が起こった以上その中の誰かが他の者に漏らしたか、直接の実行犯だとしか考えられない

「・・でも、教えたのは各種族のリーダーだけよ?、その中に犯人と繋がった人がいるっていうの?」

「いや・・スケッチーにアーシャにシンディ・・・それにジョシュアとアレックも知ってる」

言いたくはないが公平に判断する事が大切だと、ローガンは秘密を共有した全員の名前を告げる

「まさかっ・・彼等がそんな事する筈ないわっ」

「・・・・・」

もちろんそう思いたい

だが、シティの貴重な資金源が誰か一部の者に流れているのは事実で

「・・だから・・慎重に調べる必要が有るんだ、マックス
 もう一度場所を移動して・・・そこには警備の人員を置こう」

「・・・・」

「ここの荷物の運び出しはスケッチーに手伝ってもらってくれ
 ・・・僕はシティの中を見回って・・・・アレックに会ってみる」

ローガンにとっては最後に見たアレックの様子が、ずっと心に引っかかったままだった

あの時は初めて知った、アレックが性的関係を持つ相手の存在に自分でも理解不能な感情に駆られた

そしてその激しい感情に流されて、彼の様子を冷静に判断出来なかった

「・・アレックが気になるのね、ローガン」

「ぁ・・ああ・・・・彼だけを疑ってるわけじゃない
 ・・ただ、この前・・体調が悪いと言ってたし・・」

それにジョシュアはまだマンティコアの暗闇が、アレックの心の中に巣食っているのだと言った

目の前のマックスが、昔そうだったように

過去から必死で逃げていると

だが、逃げているだけならいい

もしその闇から伸ばされた手に、絡め取られていたら?

かつての、同じDNAを持つ双子の兄弟のように闇に飲み込まれていたなら?

「いいのよ・・もしそうでも、他の意味でもね」

「・・?・・・マックス?」

何処かそんなローガンに、マックスは訳知り顔で頷いていた

「今度はアレックの番、そうでしょ?」

「・・・・・」

その様子を不思議に思いながらも、ローガンは財団の倉庫を後にした




















































「おいっ、本当か?」

「??」

その日、マックスとローガンが話し合っているのと丁度同じ頃

制御室の片隅で絵を描いているところを突然モールに背後から引き寄せられ声を掛けられたジョシュアは、彼が何について言ってるのか全く見当がつかず首を傾げていた

「なに・・?」

「アレックだっ!・・ちょっと俺が目を話した隙に、あいつが男と付き合いだしたと聞いたぜっ」

「・・ぁ・・・ぁぁ・・」

ずっとアレックに目を付けていて顔を会わせる度に口説いていたモールだから、その事を知ったら憤慨するだろうとは思っていたが、その後に続く言葉は意外なものだった

「しかも相手は、マックス達が探してる薬の元締め男らしいじゃねぇかっ、どうなってる?!」

「えっ?・・アレック・・そんな奴と・・??」

「知らなかったのかよっ?、こんな所に篭って絵ばっかり描いてるからだろうがっ」

「・・・・・」

もちろん心配していたのだがあの日怪我の手当てをして以来、アレックは自分の顔を見るなり背を向けて逃げてしまい、まともに話せていないのだ

「銀髪のデカイ人間タイプ、俺達が探してた人相にピッタリだぜ
 奴がグルだとは思いたくないが、話は聞かなきゃならねぇだろっ」

「っ・・直ぐ、アレック・・探すっ!!」

「当然だっ」

ジョシュアは筆を放りだすと手に付いた絵の具をその服で拭い制御室から駆け出し、そしてモールも又アレックを探し真相を確かめる為、この広大なシティの中へと走り出した






















































シティのH地区南

アレックは数ブロックでA地区に入ろうという場所で、その時不意に込み上げてきた衝動に耐えられず手すりに身を持たせ掛けていた

その場で全ての服を脱ぎ捨て自涜に耽ってしまいたくなる程の、自分ではどうにも抑えられない性衝動

「・・っ・・くっ・・・畜生っ・・・」

それは、哺乳類の動物のDNAを混ぜられたジェネスティックに一年に数回現れる発情期のせいで、その症状が顕著なアレックにとっては今年のタイミングは最悪だった

「・・随分と苦しそうだな」

「・・っ・・」

アレックはもう暗がりからヘルマンの嬉しそうな声が聞こえてきても驚かなかった

それは予想通りで、ほんの少しの弱みも見逃さないこの男なら、自分のこの状態を利用しない筈は無いのだ

「欲しいんだろう?・・・答えろ、494」

「・・っ・・・」

何時も発情期は自分をコントロール出来なくなるが、今回は全くその度合いが違っていた

欲しい、と、少しでも気を緩めれば叫んでしまいそうな程に苦しい

この数日間打たれ続けた薬も激しく突いてくれる長く太い肉棒も、アレックの肉体は狂うほどに欲していて、それはヘルマンに犯される度に苦しんだ激痛や、吐き気を覚えるほどの嫌悪感さえ綺麗に忘れ去ってしまう程のもの

「欲しいなら仕事をしてもらおうか・・・ちゃんと出来たら褒美に満足させてやる」

だが自らを慰めたくても、力の入らない体を壁際に押さえ付けたヘルマンはそれを許さないつもりらしい

「・・っ・・なっ・・」

ヘルマンは素早くアレックのジーンズの前を緩めると、触れただけで先端から先走りの汁を垂らすアレックを乱暴に扱いたが、達する寸前でその手は握り込んだままに止められた

そしてシャツの下から潜り込んだ手は胸の突起まで蹂躙し、とっくに立ち上がり待ち構えていたそこは腫れ上がるまで弄り回される

「・・ぁ・・あっ・・・んっ・・もっ・・いかせ・・っ・・」

塞き止められていなければ当然射精するような刺激に耐えるアレックはヘルマンの胸に縋り付き、プライドも何もかもを捨てて懇願する

辛そうに眉を寄せ涙さえ浮べて、アレックの体も犯してくれる逞しい雄を待ち侘びただ切なげに震えるが、そんな哀れな姿も彼の支配者は冷酷に嘲笑った

「ふん・・まるで雌猫そのものだな・・
 放っておいたらどれだけ漏らすか分かったものではない
 ・・・そんな淫乱猫には、コレが似合だ」

「・・ぁ・・ゃ・・あっ」

しかしやがてその根元には、しっかりと爆発を防ぐ為のリングが嵌められ、鍵までもが掛けられてしまった

「さあ・・今回の仕事は武器庫の警備係の男達の誘惑だ、簡単だろう?
 奴は何度薬を進めても断って来てな・・・だがよく調べればお前には関心が有ると分かった」

まるで飼っているペットに嵌める首輪のようにそれを優しく撫で、ヘルマンは命令する

「お前の体を使って、私達の仲間に引き摺り込め、いいな?・・・大丈夫だ、直ぐ堕とせる」

分かったらさっさと行ってこい、と乱れた服を直されて背中を手荒に押されれば、アレックは荒い息のままフラフラと武器庫へと歩き出した

ただ、この苦しみから開放されたい

その思いだけに突き動かされ、もはや自分が何をしようとしているのかさえ、分からないままに






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