檻 13
「・・・・・ぇ?」
目の前でパチンと手を叩かれた猫のようにアレックは目を見開き、茫然と動きを止めた
「え?、じゃない・・愛の告白をしたんだ、返事しろ」
「・・・・・・」
怒ったような声で言っていたが、暴れるのを止めたアレックの上からどき、近くの箱から布を取り出して手枷の下に巻き始めたローガンの口元は緩んでいる
このままではその部分の肌が傷付くとの配慮か、その手つきはとても優しい
「つまり、アレック・・・マックスやモールの話も聞いて判断するに、
君も同じ気持ちだと僕は期待してるんだが、違ったのかと聞いてるんだ
・・・まあ・・例え違ってて、勝手に僕が想ってるんでも構わないが」
「・・・・・ロー・・ガン・・・?」
バサバサと音を立てそうに長い睫毛が数回上下する間に、漸くアレックの脳は今言われた言葉を理解した
「・・・・どうして・・・」
「ん?」
「・・ぉ・・俺はっ・・あんたの親友を・・殺したのにっ!」
とても信じられないとアレックは半ば叫んだが、ローガンの穏やかな表情は崩れない
「そうだな、でも・・・・あれはアレックじゃないだろ?」
「・・ぇ・・?」
「あれは・・・ロイスを殺したのは、494という男だ
まだ愛も思いやりも知らず、辛い洗脳や酷い拷問も受けていた
あんな境遇なら、誰だってそうする
そうするしかなかった、可哀想な男だ・・・そうだろう?」
「・・・・・っ・・・」
見る見るアレックのグリーンの瞳が潤んでゆくのを、ローガンは優しげに見つめている
「・・だ・・だけど・・っ」
「だけど?」
乱れた髪もゆっくりと撫でてくれて、アレックは子供のようにしゃくり上げていた
「・・ま・・・マックス・・が・・っ」
「大丈夫だ、アレック・・・・彼女は、次は君の番だと言ってたよ」
「・・・俺・・のっ・・?・・」
「そう」
チュと音を立てて額に唇が落とされ、アレックがよく意味を理解しないまま動きを目で追っていると、ローガンはまだ陽が傾きかけた時刻だというのに部屋にカーテンを引いた
そしてマックスが持ってきてくれた禁断症状を緩和するという薬を口移しで飲まされて、眠れる間に眠っておけと言われれば、アレックはまだ自分の中に巣食う魔物を自覚する
今は静かにしているが、また直ぐ自分は暴れだすだろうと
だが、もう一人ではない
ローガンが居てくれる
全てを任せろという目で、傍に
彼を愛してた
そして彼も又、自分を愛してくれていた
こんな奇跡
「・・・・・」
まるで夢のようだと、アレックは声には出さず呟いた
「おやすみ、アレック」
そしてこの一週間碌な睡眠を取っていないアレックの意識は、ローガンの暖かな手が目の上を覆うのと同時に急速に深い淵へと落ちてゆく
目覚めて、再びこんなに優しい彼が傍に居てくれたらいい
自分を愛してくれる人が居るなら、薬とも闘える
そう思いながら、アレックは短くも深い眠りに就いたのだった
「・・っ・・ん・・・くっ・・・っ」
やがて
無数の虫がざわざわと、肌の無い内部を這い回る
そんな感覚で目が覚めた
「・・っ・・ローガン・・?」
思わず体を動かせば嵌められた枷から耳障りな金属音がして、アレックは漸く自分が置かれた状況を思い出し、途端に不安になって彼の名前を呼んだ
「起きたのか・・どうだ?、気分は」
「・・・ローガン・・」
眠る前の事を目覚めた一瞬は自分の都合のよい妄想かとも思ったが、向こうから駆け寄ってきて心配そうに覗き込むローガンの存在に、心だけは湧き立つ
だが、それに反して覚醒後の体の状態は最悪だった
ガクガクと震え出した唇ではまともに言葉も紡げず、おまけに強烈な尿意まで襲って来る
「大丈夫か?、今薬を飲ませるから」
「・・ぅ・・っ・・」
再び口移しで注ぎ込まれた薬を飲み込むのに精一杯で、この階層には無いトイレまで連れて行ってくれなどとはとても伝えられない
それに例えローガンに伝わったとしても、手足の枷を外されたら彼を突き飛ばし、その足で薬を買いにシティを脱走してしまいそうだった
「・・アレック?・・・そうか・・・」
それでも、優しく思いやりに満ちたローガンは、アレックの状態を察してくれたらしい
その見たくも無い絵柄のパッケージを棚から持ってきて急いで開けると、シーツの下のアレックの下肢へと宛がった
「・・ゃ・・ぃやっ・・だ・・」
そこでアレックは自分が一切の服を剥されているのにも気付いたが、もはやどうしようも出来ない
「仕方がないだろう、アレック・・いいから・・・このまましていいからっ」
身を必死で捩るアレックをそう言うとローガンは強く押さえ込み、又それが新たな苦しみを生む結果になる
麻薬とセックス
常に同時にヘルマンに依って与えられていたアレックにとっては、それは半ば条件反射のようなもの
「・・ぁ・・っ・・・んっ・・っっ」
「?・・アレック?・・」
強烈な尿意と同時に、そのオムツ越しに触れられた性器は急速に硬さを増してローガンの手を押し上げ、アレックは余りの恥ずかしさに泣き出してしまう
「・・こんな・・ゃ・・・ロー・・ガン・・っ」
情けない
こんな惨めな姿を見せたら、きっとローガンも自分を嫌いになる、と
しかし
「いいんだ・・・そうだよな、アレック・・いつも薬を打たれて、君は・・」
「っ・・?!・・ローガンっ・・何をっ!」
驚いた事にローガンはアレックを包み込むように抱き締め、迷わずオムツの中へと手を差し入れたのだ
するとキュっと握られただけで、ビクンとアレックの全身が跳ねてしまう
「・・あっ・・で・・でるっ・・だめっ・・」
「ほら・・どっちでもいいから、早く出せ・・・我慢は体に毒だぞ」
もはや一刻の猶予も無い
だが残酷にも思える容赦の無さで、ローガンはアレックを限界へと追い込んでゆく
「・・ぁ・・ああっ・・ゃ・・あうっ・・ぁ・・」
「そう・・・いい子だ、アレック」
白濁を放ち、続いて大量の液体までもがローガンの手を汚し、オムツに吸い込まれてゆく
「・・ぁ・・・ぁ・・・・」
止めようとしても止められず、その姿を最後までローガンに見られる
そして液体を吸収して重さを増したそれはすぐローガンの手によって取り去られ、汚れた下肢も濡れたタオルで拭ってもらえた
だが
「っ・・・・ローガン・・俺・・っ・・まだ・・」
それだけで満足できる筈が無いアレックは再び高ぶる肉体の疼きを持て余し、絶望を込めた目でローガンを見上げた
抱いて欲しい
強く、深く、突き上げて欲しい
でも、そんな事を自分から求めるのは怖い
汚い体だと、ローガンに拒絶されたら堪らなく辛いから
すると、苦しむアレックに軽くキスをして、ローガンは囁いた
「アレック・・・君を・・抱いてもいいか?」
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