檻 14








頬を撫でる暖かな風に、アレックは目を覚ました











見れば窓が大きく開けられた部屋にはキラキラ輝く日の光が入り込み、遠くのテーブルでは缶詰を開けるのに格闘しているのか小さな金属音と微かに揺れるローガンの背中

「・・・・・」

その背中が羽織っているのが薄いシャツだけで、アレックはローガンが昨夜自分を抱いたのだと思い返す

いや、昨夜一晩と思っているだけで実際は数日間の出来事かもしれないが、彼が激しく飢える欲望を満たしてくれたのは事実

狂ったように泣き叫んだ自分を抱き締めて、大丈夫だと囁いてくれたのも、事実














「・・・ローガン・・」










不意に



この部屋に連れて来られ、このベッドに枷で繋がれてどれ位経ったのかは分からなかったが、アレックはこの瞬間、眩い光の下、自分が自分を取り戻したと自覚した

完全にヘルマンに打たれていた薬の効果が抜け、元の自分の体に戻った

そしてその上、ずっと自分が望んでいた空間に身を置いているとも





「・・っ・・」






忽ち、目の前が開けた

今まで入れられていた檻が砕け散って、その破片はキラキラ光る陽の光に変わった









「・・夢・・みたいだ・・な」







真の自由

愛する人、そして自分を愛してくれる人





思えばアレックの望みは、ずっと以前からそれだけ

それにここには、本当の友達と呼べる仲間まで居る










「・・・・・・」




まだ起きたと知らないローガンの肩越しに、アレックは青空になびくシティの旗を見つめた

黒、赤、白の、象徴的な旗

漆黒の暗闇に居た自分は、何人もの人を殺し両手を血に染めた

研究所の支配から脱する為に、多くの仲間も血を流した

まだジェネスティック達の完全な権利の確立は完全ではなく、この世界は再び赤く染まるかもしれない



だが


アレックの世界は一足先に光に包まれていた

清らかな真っ白の、光に









































「・・・アレック、起きたのか?」

この部屋に篭って何度目かのその優しい問い掛けに、アレックは初めて微笑んで見せた

そして、言った

心からの幸せを噛み締めて







「もう大丈夫だから、これ外してくれよ
 早くあんたをこの手で・・・・抱き締め返したいから」







end

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