エドワードエルリック准将は非常に魅力的な上司である。その若さと国家錬金
術師の肩書きから誰もが生意気で鼻につく嫌な男を想像するが実際は気さくで
下士官にも気取らずに話しかけるし、どこかの大佐と違って非道な命令など
しないし、どこかの大佐と違って部下が想いを寄せる女性を寝取ったりしないし、
有能で頼りがいがあるし率先して肉体労働だって買って出るし書類も溜めたりは
しない。まさに理想的な上司といえた。その噂が流れてか軍のなかでも東方
司令部を志願する者はあとを絶たないが、そんなエドワードの一面を司令部に
属する者の多くは知らない。常時人が出入りしやすいように開かれた執務室の
扉に鍵がかけられる時間を。
 背後一面に窓があるおかげで執務室は室内でも電灯が不要だった。真昼の
明るい陽射しが降り注ぐなかエドワードは日頃愛用している革張りの椅子に深く
腰掛け、肘掛に両手を置いてゆうゆうと足を組んでいる。目の前にあるすべてを
見下すようなそんな薄笑いを浮かべて、くいっと中心部分を押さえ縁なしの眼鏡
の位置を正す。シャワーを浴びた直後なのだろう、ぽたぽたと輝くような金髪から
しずくが滴って、それが首筋から胸元の方にも筋を作って流れていた。ローブの
紐を緩く結んでいるため、あちこちきわどいところが見えそうになっている。どう
やら下着は身につけていないようだ。靴もそのあたりに放りだしてある。それらは
とても目の前の男が准将の地位にあるとはとても思いがたい、あまりにも無防備
な姿だった。しかしその正面に跪いたマスタング大佐の興奮をより煽っている
のは否めない事実で、その証拠に軍服のズボンから露出された性器が明らかに
反応を示していた。それをつまらなそうに一瞥し、エドワードはひどく冷たい目で
一度笑う真似をした。けれどマスタングは気にする様子もなく、衝動のままに
投げ出された機械鎧の足の指にしゃぶりつき、舌を這わせた。鉄とオイルの、
苦いような舌にしみるようなその味に、漂う石鹸とエドワードの匂いに、興奮は
否応なく高められていく。耐え切れずマスタングの手が股間へと伸びた。触れた
指先に熱と湿り気を感じる。そうして一度触れてしまっては足りなくなって気が
つけば夢中で扱いていた。縋るように見上げても咎める声はなかった。ふふ、と
笑みを浮かべてこちらを見るエドワードにさらに悦びさえ覚えて止まらなかった。
ぬめりは全体に広がって粘着質な水音がエドワードの耳にも届いた。もうすこしで
達する、そのときにエドワードがようやく声を発した。「ロイマスタングともあろう
男が、」マスタングはまたエドワードの顔を覗く。短い呼吸を挟んで、続けた。
「…無様だな」その声と表情にこめられた感情は侮蔑と嫌悪と憐憫と、ぞっとする
ほどの執着。肌に纏わりつくようなその感覚はけして嫌なものではない、むしろ
ダイレクトに官能をそそり、「あなたが魅力的すぎるので」とマスタングもまた誘う
ような笑みで返した。「へえ?俺が魅力的すぎるから?」まんざらでもない様子の
エドワードは独特の空気をまとっている。甘いような、濃密な何かを。愉快そうに
笑いながらエドワードは裸足の指でマスタングのぬめる性器を無造作に弄んだ。
その乱暴さがたまらない刺激となって、そのまま達してしまいそうだった。クッと
堪えきれない吐息を漏らすマスタングを見て、エドワードはにやりと表情を歪める
と突然新しい提案をした。「じゃあ、俺の目の前でイってみせなよ。俺の名前
呼びながらイってみな」上官命令とあらばマスタングに逃れる術はない。だが
上官命令でなくとも、それは同じだった。エドワードの言葉は不思議な、絶対的な
力を持つ。マスタングは性急に性器を扱きながら吐息のあいまにエドワードと
繰り返した。根元から先まで包んだ右手を動かす。名前を呼ぶ。エドワード。
それはやがて切羽詰ったものになっていく。そしてエドワードのどこか品定めする
ような視線が注がれるなかでマスタングはとうとう射精した。びゅくびゅくと大量の
精液が飛び散る。床にも、エドワードの足にも。マスタングは迷うことなく床に
這いつくばりそれを舌で舐めとり、独特の味に顔をしかめながらも満足だった。
見上げる視線と、見下ろす視線が長い時間交差する。エドワードがもう一度
無様だなと言ったので、マスタングはもう一度、あなたが魅力的すぎるのでと
答えた。



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