すべての情報は武器である。それはときにこちらを快く思っていない輩の後ろ
暗いネタをがっちり掴み、さりげなくちらつかせては牽制をはかったり、協力を
願いたい者の喜びそうなことをあらかじめリサーチしおべんちゃらに利用して
好感を得たり、またあるときには某鋼の錬金術師の読みたがっている文献を
突き止め、金と権力を駆使して彼よりも先に入手しそれをダシにイーストシティに
呼び出すとか。とにかく情報とは武器になるものだ。ゆえに軍部という伏魔殿を
生き抜くマスタングは人一倍耳聡かった。一見利用価値もなさそうに見える
情報が何かのきっかけでどう化けるかなんて誰も知らないのだ、だからより多くの
情報を耳にすることが重要だった。しかしそんなマスタングが最近仕入れた
情報、それは非常にマスタングにとって思わしくないものだった。「鋼の錬金術師
は誰とでも寝る」「軍人でも一般人でもお構いなし」「なにをしても嫌がらず、お金も
とらない」「一度その体を味わったら病みつきに」「美しい顔と美しい髪、美しい
体で、男を誘うような目つき」「慣れた手つきでフェラもプロ並」「顔にかけたって
怒りもしない」「正直男のケツなんてと思っていたけれど、その快感といったら」
「とにかく、鋼の錬金術師はヤバイですよ」「淫乱淫売変態」「できるなら、もう一度
お相手願いたいですねえ」そんな情報を寄越した男たちを、マスタングは片っ端
から適当な罪をでっちあげてブタ箱に押し込んで黙らせた。たとえ情報が真っ赤
な嘘でも真実でもはらわたが煮えくり返りそうで正常の思考が保てずマスタング
はイライラとしてエドワードを待った。マスタングの手に入れた文献を受け取るため
に、彼はもうすぐ執務室に現れるはずだった。
 そうしていつも通りノックもなしに礼など欠いた様子で現れたエドワードは編んだ
金髪に赤いコート、黒い上下に底の厚い靴、不遜な態度、きつい金色の目、愛想
のかけらも持ち合わせてはいない、いつも通りの鋼の錬金術師だった。久しぶり
に会ったというのに開口一番エドワードが言ったことは「文献よこせ」だ。そんな
エドワードにまつわる噂など、張本人を改めて目の当たりにしてマスタングは到底
信じられなかった。誰とでも寝る?この高潔な魂がそのようなことを果たして許す
のだろうか。男を誘うような?とんでもない、この子のやぶ睨みではせいぜい
ケンカを誘う程度だろうよ。淫乱?淫売?変態?こんな、たかだか16歳の子供
がか。おかしくてたまらない。そんなのはありえない。だが、そんなありえない
噂が流れるのが軍部というものだ。仕方ないと言えば仕方ない。
 「鋼の、最近おまえについてよくない噂が流れているぞ」
 マスタングはひとつ疲れたようにため息をついてから切り出した。マスタングは
曲がりなりにもエドワードの後見人であったため、しっかりアドバイスするつもり
だったのだ。根拠もない噂だから気に留める必要もないだとか、まあよくあること
だとか、そんなようなことを。誰がそんなガセネタ流したんだ畜生そのクソ野郎
ぶん殴ってやるから教えろ大佐!といういつもならば返ってくるだろうリアクション
を待っていると、意外にもエドワードは噂のすべてを知っていたように落ち着いて
いて、あまりにあっさりした態度で「ああ、あれ全部本当」と告げた。マスタングは
困惑する。全部とは。
 「俺、誰とでも寝るし、軍人でも一般人でも。なんでもするし、フェラとか本番とか
も。俺気持ちイイこと好きなんだよね。だから別に気持ちよくしてくれるなら誰でも
いいっていうかーまあ一応危なくないようにちゃんと人は選んでるからさーだから
そんな怖い顔しないでほしいんですけども」
 エドワードはあくまでも楽しい遊びといった風情でそれを明らかにしたが、
マスタングのうちに沸き起こったのはれっきとした怒りだった。それが表情にも
現れていたらしい。少佐官相当にある国家錬金術師がそれでは示しがつかない
とか、軍のイメージ低下するだとか、上層部からの反発とか、いろんなことが
浮かんだが、結局はマスタング自身が苛立っていた。
 「どうしてこんなことを!」
 激昂した様子でマスタングが問うと、「だから言っただろ、気持ちイイことが好き
なんだって」エドワードはちっとも何も悪びれたふうでもなく言った。そのうえ己の
胸倉を掴んでいるマスタングの頬に手を差し伸べて、「ねえ、アンタもやる?俺、
うまいよ?」と笑った。見慣れない細められた濡れた目。なるほどよくわかった、
これが男を誘うときの目つきか。それは普段のエドワードとはまったく異なって
いた。匂い立つような甘い雰囲気を発するエドワードに、マスタングは吐き気を
覚えた。マスタングが知らなかった、鋼の錬金術師のもうひとつの姿。それでも
マスタングはエドワードを突き放すことなどできなかった。
 沈黙して力を失ったように立ち尽くすマスタングの手を外れるとエドワードは
おもむろに床に膝をついてマスタングの股間のファスナーを口で咥えてじじーと
下ろした。覗く下着から性器を口だけを使って器用に取り出すとエドワードは
ためらう気配もなくそれを口に含んだ。平均よりもずっとずっと太く長さもある
それを喉の奥の限界まで、一通り唾液で湿らせるとくびれや裏側や側面にも
丁寧に舌を這わせる。硬度が増してくる。ぬめりを帯びてくる。しっかりした
反応に嬉しくなってきてエドワードは大胆に口内に全体を引き入れては前後
した。口に含みきれない根元は指でひたすら擦った。先端には歯を立ててみる。
マスタングの呼吸が乱れている。引き離そうとしているのかもっと先を望んで
いるのかマスタングの手がエドワードの金髪を掻き混ぜる。やめなさい、そんな
抵抗の声は届かない。「ねえ、大佐。出して、出してよ、全部飲ませて」エドワード
が言う。艶めいて、興奮しきったエドワードの声もまた普段とは別物に聞こえた。
先端を口におさめて思いっきり吸いながら尿道の入り口に舌を尖らせ、根元部分
にも絶えず刺激を与えていると、やがてマスタングはエドワードの口内で射精
した。びゅ、びゅと勢いよく流れ込んでくる独特の味がするそれをエドワードは
こぼすこともなくすべて受け止め、ごくりと音を立てて飲み干した。「大佐の、
うまいよ」平然とそんなことを言うエドワードに、マスタングははじめてでもない
くせに妙に気恥ずかしさを感じた。それでもう終わったのかと思いきや、エドワード
は引き続きマスタングの性器に愛撫を施している。もういい加減やめろと怒鳴ろう
としたが、マスタングの性器は半分勃ちあがっていて、一方エドワードはズボンを
下着ごと引き下ろしていて、露わになった幼い性器はわずかに濡れそぼり、その
窄まりはひくひくとうごめいていた。エドワードは己の指を舐め、唾液を含ませて
アヌスの中へと入れていく。わずかもしないあいだに水音は増して、粘着質な
音 が双方の興奮を煽る。エドワードは息も切れ切れに「大佐、ねえ大佐、俺の
中、いれたいでしょ?いいんだ、俺気持ちよくしてくれたらそれでいいの、なあ、
大佐のぶっといち*ぽ入れてくれよ、大佐ので、ぐちゃぐちゃにして」そう言って
マスタングの性器をひと撫でした。マスタングは、強烈な誘惑に逆らいきれず
エドワードの言葉に乗った。マスタングが突き入れた指が一本から二本へ、二本
から三本へ。両手を使って中まで見えるように広げるとさすがにエドワードは
恥ずかしそうに声を上げた。そこへ猛りきったマスタングの性器が押し込まれる。
最初は抵抗が厳しく、それを過ぎればあとは簡単におさめられた。エドワードの
悲鳴のような声がした。それでももっと奥がいい、もっと擦って、そう、胸もいい、
そこも触って、噛んで、おねがい、もっとして。そんなふうに言われてはマスタング
もたまらない。我を忘れて行為に没頭した。いつのまにか何度もその中へ精液を
注いでいた。エドワードはぐったりして、それでも「大佐とできて、すっごい嬉しい」
と微笑んでいた。「あんたの、出したくない。ずっと入れていたい。俺アンタのこと
好きだったの知ってる?」そんなのはお決まりのピロートークの一部だろうと
マスタングだと思った。だが悪くない気分で、「ほら、シャワー室連れて行くから
しっかりしろ」すこしだけ上機嫌でエドワードを抱いて運んだ。エドワードがもったい
ないと言って出したがらなかったマスタングの精液をすべて洗い流し、疲れきった
エドワードに清潔な服を着せて仮眠室に寝かしつけた。そのあとでマスタングは
猛烈に後悔をした。エドワードの知らなかったその性癖、それは仕方のない
ものだ。マスタングにはどうしようもない。噂に乗ってエドワードを抱いた人間を
非難することもできない。結局は己もまたエドワードを抱いたのだから。マスタング
は誰かを非難する権利を失った。何も出来ないならば、それならば、せめて、
エドワードを抱く役目をすべて己が引き受けたい、そんな思いをいつのまにか胸に
秘めるようになっていた。

 それから時間がたって、エドワードと関係した者はマスタングの部下にまで
広がってしまったらしい。そんな折はじめてエドワードを抱いたらしいハボックが
こんなことを漏らした。「知ってます大佐?あいつ絶対生は許さないんですよ。
俺がふざけて妊娠したら責任取るから生でやろうって言ったら、生はいやだって。
生は大佐だけだってそんなふうに言うんですよ」マスタングは驚いた。あのとき
以来マスタングはエドワードを抱いたことがない。ほかの人間の話も極力
聞かないようにしていた。だから、あの時の言葉を思い出して、呆然とした。
『俺アンタのこと好きだったの知ってる?』それが本気だったなんて、思いも
しなかった。その後マスタングがとった行動はといえば即座にエドワードの
居場所を探すことだった。あちこちを駆けずり回りようやく備品倉庫のマットの
上で名前も知らないような下士官に足を開いているエドワードを見つけた。
マスタングは問答無用でその下士官を蹴り飛ばして、これは私のものだと高らか
に言い放った。そして抱き上げたエドワードには「私のことはまだ好きかい?」と
尋ねて、なんの曇りもない笑顔でうんと返事をもらうと、マスタングは「じゃあもう
他の男と寝るのはナシだ、好きなだけ気持ちよくしてあげるから、もう私だけに
しなさい」と言い放ち、エドワードもそれはそれは嬉しそうに、わかったと頷いて
笑った。



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