恋する女の勘は鋭いと言うが『恋する男』の勘も鋭いらしい…。
幼なじみで親友の来栖育哉が血相を変えて俺に頼み込む姿を見ていると、さすがにそう思えるものがあった。
「洵平がいないんだ!」
「いつもの昼寝だろ?」
俺はとりあえず育哉を落ち着かせようと、嘘をついた。
実は俺は洵平が朱美女史に耳打ちされているのを見ていたし、それに対して何かしら洵平が言葉を返すのを見ている。
なんでもないような感じには見せかけていたが…俺は洵平が危ない目つきをしていたのを知っているから、今、洵平がいないのはどう考えてもそれが原因だろうと踏んでいた。
「でも、どこにもいないんだよ!!」
いつものことなのに、育哉も落ち着かないところを見ると、育哉自身も何かしらおかしいと危ぶんでいるようだ。
「とにかく一緒に探してよ!!」
育哉は一見おとなしそうにみえるが、かなり嫉妬深い。
洵平とつき合い出す前からも、普通に接しているだけなのに俺でさえも嫉妬の対象とされてしまったから、育哉がどれだけ過激なことをしでかすかも、知りたくもないのに知っている…。
たまに洵平が冗談でやるおふざけの抱擁でさえも、実は育哉はお気に召していないことも知っている…。
それだけに今回朱美女史と何かあった場合、どうなるかかなり恐いものがある。
「ねえ!杏太ったら!」
考え込んでいる間にじれた育哉が俺を急かした。
「分かった。とりあえず、育哉は屋上から探してみな。俺は部室の方から探すから」
「うん!」
行動力は誰にも負けない育哉は、さっさと俺を置いて殉平を探しに行く。
それをしっかりと確認した後、どうせあの辺りと心当たりの場所へと早歩きで向かった。
とにかく…育哉にばれるのだけは避けるべきなのだ。
心当たりの場所。
それは司書室である。
朱美女史は図書室の常連であり、図書委員長でもある為、司書室の鍵を持っているのだ。
しかも、司書の先生は本日お休みとなればほぼ確実であろう。
そっと図書室に入り、司書室を伺ってみる。
話声が聞こえるということは、おそらくここで間違いなようだ。
「ひぃっ!…ふ…んっ!!」
わずかに女性のあえぎ声らしき声が洩れてきている。
(やっぱりかよ…おい)
俺は呆れながらも軽くノックした。
「お~い。俺だよ、早く入れろよ」
「杏太?なんで分かったんだ??」
あっさりとした声で中から洵平の声が返ってくる。
わずかに隙間が開いた瞬間に俺は隙間から素早く身を滑り込ませ、後ろ手で鍵を締める。
目の前には全裸で本の修理に使う細い糸で自由を奪われた朱美女史のあられもない姿…。
どこから入手したのかご丁寧にバイブまで恥部に差し込まれていてモーター音まで響かせている。
「……今回はSMかあ?」
呆れ返る俺に洵平は悪びれる様子もなく、
「だって、こいつってば俺を脅すんだもん。躾だよ」
と、足で豊満な胸を踏みつけた。
「でもなあ…こいつってば淫乱なのな」
乳首を爪先でいたぶるように踏みにじると朱美女史の悲鳴に似た喜声が上がる。
「ひいぃ!!…あっ!やぁ…」
「おらおら…なに喜んでるんだよ…ああ?」
更に力を入れたらしい。
乱暴に踏みつけられた乳首は赤く腫れあがっていくが、女史の腰は淫らに蠢いている。
ずるり…と、音をたてて恥部からバイブが落とされると、洵平は怒りに任せて白い桃尻が赤く腫れあがるぐらい蹴り上げた。
「てめえ…お願いしていれてもらったくせに落とすとはどういうことだ…ああ??」
(…そういうお前もどういうことだよ……)
なんとなく察しはついてるものの、このまま女史の相手にしていてはいずれ育哉がここに来てしまう。
俺は洵平の肩に手をかけると
「あいつが来るぞ」
と、声をかけた。
瞬間、洵平の顔色が変わる。
「早く言えよ!そういうのはよう!!」
おもわず俺に怒鳴りつけ、慌てて女史の細糸を近くのカッターで切ると洋服を投げつける。
「おら!早く着ろよ!淫売!!」
そう言いながら、自分も手早く身支度を整える。
「あ。分かっているとは思うが、今度俺を脅してみろ?この写真が掲示板に張り出されるからな!」
呆然としたまま、それでもうなずく女史。
それでも、まだ足りないと思ったのだろうか?
ドアを出る瞬間、女史に見せつけるように俺の唇の横に軽くキスをするといちゃついてるように俺にくっついてみせる。
「…大切な人って奥田君のことだったのね?」
女史もやっと少しは頭の回転が戻ってきたのだろう。
その問いかけは少しだけ寂しそうに思えた。
扉は静かに閉じられた…。
***
「なあ…」
俺は洵平に問いかける。
「ん~??」
洵平も俺が何が言いたいのかわかっているのだろう。
その辺は長いつき合いだ。
珍しく茶化しもない目が返ってきた。
「女史…なんて脅してきたんだ?」
「ん~自分とつき合えってさあ~。きかなきゃ写真ばらまくって言うんだもんよお」
「…写真って…そんなにやばい奴なのか?」
「俺の顔はばっちり写ってたなあ…育の顔はわからなかったからそういう意味ではまだやばくないから、ネガも取らずにこっちも写真取ったんだよ」
「…だからってなんでSM……」
「だって…そんな雰囲気だったんだもん♪」
洵平は悪びれない。
そういうところがこいつの悪いところであり、魅力でもあるんだろう。
こいつはいつもこうやって育哉を守っている。
陰口や非難の目を絶対に育哉には気づかれないように、自分が壁となって悪ぶってでも守り抜こうとしているから、俺は多少なりとも手助けを今回のようにしているのだ。
「でも…なああ……」
「ん~?」
俺は恨めしげに洵平の傷だらけになった顔を睨みつける。
「最後はめちゃタイミング悪いぞ…こらあ」
そう…最後のいちゃつき(?)を育哉に見られて、嫉妬にかられた育哉の攻撃をもろに受ける羽目になってしまったのだ。
おかげで俺まで傷だらけである(泣)
おまけに…。
(なんで俺がこいつの“彼氏”なんだあ?!)
大騒ぎの後、なんでか噂で俺とこいつがつき合っていることになっているのに気がついたのはつい先ほど。
女子の奇声によってわかった事実は…俺のみをダメージさせている。
「だから悪かったって」
こいつにしてみれば絶好の隠れ箕ができたとうれしいんだろうが…。
(俺は…ノーマルなんだよう!!)
俺、奥田杏太…彼女ができるだろうかと本気で不安になってきた夏であった……。
2001/5/23 UP.
veryvery★THANX
戻ル?
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