神居店長の優雅な面接





ここはとある街の若葉台三丁目。
どこにでもある閑静な住宅街の外れに、イケメン揃いのコンビニがあると言う。
しかし、その実体は往々にして黙して語られることはない。
なぜならーーー




ここはそのコンビニのスタッフルーム兼仮眠室。
そして、今まさに面接中のはずの一室から漏れ聞こえるのはーーー

「ありがとう。それじゃ、最後の質問ね。君、私の膝に座れるかい?」
「……はあ」
「おや?よく聞こえなかったのかな?ここに座ってくれるかい?」

ぽんぽんとまるで埃を払うかのように両膝が叩かれる。
目を、耳を、疑うように視線を向けたその先にあったのは、冗談めいた口調と笑顔とは裏腹の笑ってない目。
(こ、この男……本気だ!)
同じ男だから分かる、弱肉強食の勘のようなもの。
自分より明らかに勝ってるヤツには絶対逆らったらいけない、関わったらいけない。
野生の勘がそうシグナルを発していた。
選ぶべきは、YESかYESか。

「で、できませーーん!!」

男は脱兎の如く、すたこらさっさと逃げていった。

「あ〜あ、また逃げられちゃった。割と好みだったのに」
「…………店長、またヤッたんですか?」

呆れ顔のスタッフをよそ目に、店長と呼ばれるその男は反省の色すらない。

「だって、君は座ったじゃない」
「…………男が皆、僕らと同じ性癖を持ってると思わないで下さいね」



ここはとある街の若葉台三丁目。
どこにでもある閑静な住宅地の外れにあるイケメン揃いと噂のコンビニ。
その実体はーーーホモの巣窟だった。




ウエルカム。うちにおいでよ、ここは“すまいるキッチン”若葉台三丁目店。
今日も色鮮やかに恋の花が咲き乱れるよ。



神居店長の優雅な面接・完
2001/10/14 fin.


戻ル?



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