頭文字"G"




「メロンパンメロンパン〜!!あ!紅いのがあるだ!オラこんなの初めてだ〜」

「おにぎりこんなに食べていいんだか?わ〜!!どれから食べよっかな〜」

大喜びの双子をニコニコと見ながらZロリは少しずつ後ずさり、その身を軽く翻して消えた。
双子は目の前の大好物に夢中で、それに気がつかない。


Zロリは少しフワフワとした足取りで歩いていた。

身も心も軽い。…財布も軽いが今はどうでもいい。

懐から小さな金属を取り出して、眺めた。…部屋の鍵だ。

この町の公園で一休みしていた時、これがコツンと手に当たったのだ。
その鍵にはカードがついており、こう記されていた。


『二人きりで会いたい。ここで待っている。“G”』

すばやくあたりを見回したが、もう姿は見えなかった。


最初に会ったのは偶然。吹雪の中での出会いは、残念ながら覚えていない。
感謝の気持ちと親愛の情をこめて差し出した手を、鼻で笑って拒絶するイヤな奴だった。

真紅のバラを残し、「もう会うこともないだろう」と去っていったが、再会はわりと早くやってきた。

ニセブックラコイータの次はニセ双子。失うとわかっていても、ニセものを作ってしまうところは変わっていなかった。
「キミたちを見てると仲間が欲しくなった」と言って作った双子との別れ。
夕陽の中の淋しげな横顔が忘れられない。…あれから、あの二人には会えたのだろうか。


「縁があったらまた会おう」と言って別れた二度目。
やがて再会した時は、「また会おう」
「今度は山の男になるかな…」
と、次の場所をさりげなく示して去って行った。

互いに旅をしているわりには、再会する確率が高いと思っていたら、実は旅人ではなく、王子だった。

城を後にしたZロリたちを追うように、また旅に出てきた。


魔法の国での出会いは もはや偶然ではなく、先回りして木の上から「Zロリ!」と大声で呼んできた。
パワーアップした新しいニセブックラコイータを持って。

「決着をつけるため」そんな理由をつけて、会いに来た。
淋しかったのかとからかうと、ついでに会いにきたのだと、真っ赤になって力説していた。

そして地球最後の日。
彼ははじめて、偶然をよそおわず、Zロリに会いに来た、とハッキリ言った。
地球を彗星から救うメカを作る。その中心となる一人として。

「わたしの力をすべて貸すぞ」

その心を込めたものが地球を救い、みんなが喜びにわく中、
彼は一言も自分の手柄を語ることなく、いつの間にかその場を去っていた。


「そして今度はおれさまを呼び出してきた…」

はた、とZロリの足が止まった

「待て?!…おれさま呼び出されて何ウキウキしてんだ?!…なんでおれさまが行かなきゃならんのだ!
会いたかったらそっちが来い!!」

鍵を地面に投げようとしたが、手が少し震えた。

「まっ、…しょ〜がないな…そうまで言うんなら…会ってやらんでもない…」

小さく咳払いすると、また歩き出した。踏みしめようとしても足元はフワフワとする。体は正直者だ。



鍵は小さなホテルのものだった。
飾り気のない部屋だ。
Zロリが入ってすぐ、背後でドアが閉まり、カギの音がした。

ドアの影にかくれていた者が、もうZロリの肩をつかんでいた。

「ああっ!どないなんやろ〜と思ってましたで!来てくれはったんでっか!」

「げげっ?!お前は〜!!」

早くも服の中に侵入している汗ばんだ手に、これまでに何をされたか思い出すだけで、Zロリの体は反応していた。

考えただけで すぐにMAXになってしまう。その若さ中学生並みである

「こないに喜んで……相変わらず敏感でんなぁ〜…カワイイ人やぁ〜」
「だっ…だだましたなぁぁ〜!!おれさまをだまして…」
「なんやて〜…わてがいつだましたんでっか?!あのカード書いただけですがな!」
「だってだって…あのカードは関西弁じゃなくて…」
「何言うてはるんですか!わては書き言葉まで関西弁とちゃいまっせ!」

「はぁっ?!」

頭文字“G”を持つ者は、世界に一人ではない。
それがたとえ、Zロリにとっては一人でも。

そういえば…ここってGオZロ部屋じゃないじゃん!と
うすれる意識の中で叫びながら、Zロリはもう切ない声をあげ始めていた。




おそまつさまでした。(2006年5月22日)
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