忘れ物

 

スッポコペッポコ ポコポコピー
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おれの名前は かいけつZロリ
いたずら修行で旅してる〜う〜ぅ〜
「おっ、オラたち…おと…おとも の…」

なぜか今日の双子はリズム感が狂っている。
Zロリは歌をやめてくるりとふり返った。

「なんだなんだおまえたち?落ち着かないな…トイレかぁ?」


ベスガラスタウンから次の町へ向かう道すがら、いつものように歌っていたのだが…
双子にはなんだか違和感があった。

「なんだか…よくわからないだども…」
「なんかが足りないだ…」
「んだな。…いつもあるなんかが…足りないだ…」

なにか忘れているような気がするのはZロリも同じなのだが、思い出せない。

「止まって考えていてもしょうがないだろう。歩いていれば何か思い出すかもしれない。…行くぞ」

再びZロリが歩き出す。…リズミカルに揺れるその後ろ姿をじっと見ていたIシシが声をあげた。

「あっ!!…ないだ……バラが…ないだ!!」

「……バラぁ?!」



Gオンと会った後、いつもZロリの笠に挿してある紅いバラ。
双子はその紅いバラが揺れるリズムに合わせて歌を歌うのが、いつの間にか くせになっていたのだ。

「なんか歌いにくいと思っただ」
「やっぱりいつものがないと調子狂うだな!」



紅いバラ。…それはGオンとの別れの時、ある時は無言で、またある時は

「また会おう」

の言葉とともに渡されていたものだった。
…どういう意味で渡されていたのか、深く考えたことはなかった。

それは当たり前すぎて。

欠けて初めて それが持つ意味に気がつくのだ。

「なんで今度はバラ置いて行かなかったんだろなぁ?」

無邪気に不思議がるNシシの声を聞いていると なぜだか切なくなってくる。

もう バラは必要なかったのか?

これっきりだから?

………

…いや…待て。

最初は二人とも旅人だと思っていた。
ここで別れたら、もう二度とめぐり逢うことはないかもしれないと 思っていた。

だが、漂泊者だったのはZロリだけ。…一方のGオンは王子だった。
Gオンには城という、しっかりとした拠点があった。

「なんだ…それなら その気になりゃ いつだって逢えるんじゃないか…」

「その気ってなんだ?せんせ」

「その気なんの気 気になる気だか せんせ」

双子に答えられ、自分が思わず考えを口に出していたことに気がついて、Zロリは赤面した。

「だぁ!!…ん〜なんでもない!!」

足早に歩き出したZロリを双子は必死で追いかけた。

「ああ!…せんせ 置いていかねぇでくだせ〜」
「Gオンはバラを置いていかなかっただども オラたちは置いていかねぇでくだせ〜」
「なんでもない!……バラなんか別に…なんでもない!!」

もういつでも逢えるから …わざわざ再会の約束を置いていく必要がなかったのか?
…いいかげんにしろ。…なぜおれさまがいつまでも こんなこと考えないといかんのだ!







考え事をしていたためか 方向感覚が狂った。町の明かりも何も見えてこない。
腹の虫をグーグーいわせつつブーブー文句をいう双子と、そこらへんの木の実やキノコを集めて飢えをしのぎ、
今夜は野宿することにした。







Zロリが深い眠りについている時、耳元でそっと囁く者がいた。

「Zロリ…不覚にも忘れ物をしてしまったので また来たよ…これは あの時別れてからこれまでの時間の分だ」
「んぁ?…ん…」

聞き覚えのある声なのだが、Zロリは今 夢と現の間をさすらう旅人だった。
その声の主がまたそっと囁きながら体に触れるのを、漂うような感覚で受け止めていた。

「…また逢おう」

声の主は 来た時と同じく そっと立ち去った。





やがて夜が明け、Zロリは目ざめた。

あたり一面の 紅いバラの中に埋もれるようにして。







おそまつさまでした。(2007年2月20日)

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