タイトル未定
王家に生まれ、いずれは王位を継ぐものとして、常に自分を高めている。
政治、経済をはじめとして学問全般。文化、芸術そして武芸全般。
剣も射撃も柔術も超一流のGオンだが、最も力を入れて研究しているのが“おやじギャグ”だった。
おやじギャグは、ただ笑うためのものだと、まだまだ誤解されているものだった。
研究を続ければ、それがどんなにすばらしいものであるかわかるのだが、まだ失笑をかってしまうことの方が多い。
人から理解されにくい研究。そんなことは昔からよく聞く話だ。
迫害を受けていないだけ まだましだとGオンは思う。
「地球は回っている」と、訴え続けて処刑された科学者もいたではないか。
理解してもらえないからと言って、それを投げ出していては到達できない高みへ行くのだ。孤独なんかこわくない。
おやじギャグは、冷気を呼ぶ。強力なものになると、一瞬で対象物を固めることができる。
魔法が使えない種族の者が持つことのできる、魔法同様の力だ。
相手を傷つけることも少ないし、さらに強力になると天候も操れるようになるだろう。
エネルギーの節約にだってなる。応用できる範囲は はかり知れない。
そんなGオンはある日、古い書物によって おやじギャグの聖典が世界のどこかにあるのを知った。
ブックラコイータというその本は自らおやじギャグを発すると共に、その持ち主の発するおやじギャグの力を無限に増幅させる。
聖なる山に眠るその本は、選ばれた者だけが手にすることを許されるものだった。
なんとしてでも手に入れたい。自分にはその力があるはずだ。そう信じたかった。
Gオンはブックラコイータを求めて旅に出た。
どこにあるのかわからない聖なる山を探し求める独り旅は考えていたよりもつらく厳しく、
何度もくじけそうになったがあきらめなかった。
やっと その場所がGララット山という名の火山の頂上にある神殿だということをつきとめて、
胸を躍らせながら神殿へと向かったが、聖典は持ち去られた後だった。
一足先に旅の男がそれを手に入れたと、ふもとの村人に聞いた。
その旅人は、ある日ふらりと現われて 自ら進んで山に登り、みごと聖典を手に入れたばかりでなく
それまで村人を悩ませていた火山の活動まで沈めていったという。
驚いたことにその男は、この村に来てはじめてブックラコイータの存在を知った様子だったという。
( 私がこんなに求めていたものを…そんなにもあっさりと手にしてしまうのか…)
選ばれたのだ。その男こそ、選ばれし者なのだ。
どんな男なのだろう。逢いたい。逢わなければ、この気持ちに区切りがつかない。
どうすれば逢えるのかを考えた末、Gオンはとんでもない結論に達した。
『ブックラコイータを作る』
偽者のブックラコイータを持っていれば、いずれ本物と出会うきっかけになるだろう。
気の遠くなるような話だが、1%でも可能性があれば、それにかけてみたかった。
世界じゅうから集めた資料をもとに、Gオンは研究室にこもった。
自分の科学力のすべてをかけて、聖典のにせものを作る。
神への冒涜だと罵られても仕方のないその仕事は、誰にも秘密にしなければならないため、独りきりでの作業となった。
完成したブックラコイータが放つ冷気は凄まじかった。
凍傷も気にならず、Gオンは会心の笑みを浮かべたものだ。
やがて、偽の聖典を携えての一人旅の途中、ブックラコイータのパワーを思わせる猛吹雪に見舞われた。
「1メートル先も見えやしない…まあいいか。…急ぐ旅でもないしな…」
その数時間後に行く手をふさいだ、不自然な雪の塊。
雪を掻き分けた中から現われた、凍死寸前の旅人。
彼が捜し求めた運命の相手“選ばれし者”だと知るのは、それから間もなくのことだった。
おそまつさまでした。(2006年4月24日)
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