「てんごくとじごく」から。
すでに書いている場面ですが、もう1本湧いて出ましたので…
インプリンティング
いろいろな珍しいものを見るのも、旅の楽しみと言えるだろう。
だが、今、眼にしているものは特別すぎる。
それは巨大なタコヤキだった。
しかも、それは人里離れた場所に、小山のようにそびえていたのだ。
こんな誰も見ていないような場所では、何かのイベントで世界記録に挑戦しようという雰囲気でもない。
Gオンは用心深くそれに近づいてみた。
それはありえないものでありながら、不思議と怪しい感じがしなかった。
むしろ、それはGオンの持つ科学者の魂を刺激したのか…
Gオンはタコヤキのそばから離れられなくなってしまった。
Gオンはゆっくりとタコヤキに触れ、その香りを嗅いだ。そういえば少し空腹を覚えないでもないが、
さすがにそれをかじってみる、という気にはなれず、タコヤキのそばで火を起こして食事をした。
謎のタコヤキに寄り添うようにして時を過ごし、やがて夜明けを迎えたその時…
タコヤキに変化が現われた。
中から何か音が聞こえると思ったら、みるみるうちに穴が開いていくのだ。
タコヤキを内側から食べながら、だんだんと見えてくるものが、最初は信じられなかった。
「Zロリ…?!」
なぜ、こんな所から…しかも生まれたままの姿で???
「Zロリ…キミは…」
問いかけようとしても、Zロリはタコヤキを食べるのに夢中で、まったくこちらに気がついていない。
やがて巨大タコヤキを平らげてしまったZロリは、Gオンの目の前でぐうぐう寝てしまった。
「Zロリ…?Zロリなのか…本当に?」
タコヤキの中から現われたことがまだ信じられず、Gオンはおそるおそるその体に触れてみた。
確かにZロリだ。…タコヤキから出たばかりの、しっとりと濡れたその体。
この美しい毛並みを、このなめらかな曲線を、自分が忘れるはずはないのだ。
Gオンはその姿にしばらく困惑していたが、
いったい何が起こったのか、なぜこんな珍しいことになったのかを確かめたいという気持ちの方が勝った。
「Zロリ、起きろ。……私だ」
呼びかけられてZロリは うっすらと目を開けた。
Gオンを見つめ返したその瞳は、生まれたての無垢な色をしていた。
生まれたて……そう。
Zロリは地獄から復活し、また新しく生まれてきたのだ。
「ママ…」
「卵から生まれたヒナは、最初に目にしたものを母親だと認識する…」
濡れたままのZロリに、きゅっと抱きつかれながら、Gオンは幼い日に本で読んだ そんなことを思い出していた。
おそまつさまでした。(2006年7月20日)
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