ワイルドの「幸福な王子」の話聞いててこんなのを妄想してしまいました…………少し星の銀貨も入ってる…!!
幸福な王子
あるところにオオカミの王子さまがいました。
お城のくらしは何不自由なかったのですが、王子さまはいつもなにかが足りない気がしていました。
(外の世界にはなにかがあるかもしれない)
ある日王子さまは独りで旅に出ました。
王子さまは金貨と宝石を持ち、金や銀の糸でできたすてきな服を着ていました。
しばらく歩くと、誰かが泣いている声がしました。
泣き声はぼろぼろの家の中から聞こえます。王子さまはそっとのぞいてみました。
なんにもない家の中には、母親と、小さな子供がいました。
「おかあさん、おなかがすいたよう…」
「ああ。もう少し辛抱してね。この服が売れたらなにか食べさせてあげる」
母親は洋服を縫っていました。休まず働いているらしいその手は赤くひびわれて、とても痛そうでした。
病気なのか、母親は時々せきをしていました。
王子さまはそっと窓から金貨を投げ入れました。
「おかあさん、何か聞こえた?!………あっ、これ何?…………きれい!!」
「まあ…なぜこんな所に金貨が!…………ああ、神様…………!!」
きっと神様の贈り物にちがいないと喜ぶ親子の様子を満足そうに見て、王子さまはその家を後にしました。
しばらく行くと、悩んでいる青年がいました。
「今日も仕事が見つからない…このままでは子供たちが飢え死にしてしまう…………」
フラフラと歩く青年は、王子さまにぶつかってしまいました。
「す、すいません…………」
仕事のことで頭がいっぱいだった青年は、ぶつかった相手が立派な服を着た王子さまであることにも気がつきませんでした。
もちろん、ぶつかった時に王子さまが彼のポケットにそっとルビーを入れたことにも気がつきませんでした。
(ずっと城の中にいて、知らなかった。外の世界には不幸な人々がなんて多いんだろう)
王子さまは旅の途中で出会った不幸な、貧しい人々に金貨や宝石をそっと与えて行きました。惜しいとは全く思いませんでした。
(もともと、これは彼らのものだからな)
ついに、王子さまは持っていた宝石や金貨を全て人々に与えてしまいました。
王子さまが持っているのは身に付けている服だけになりました
しばらく行くと、家のない子供に会いました。家がないので寒い外で寝なければなりません。
「これをあげよう。着ていきなさい」
王子さまは自分の服を脱いで与えました。
王子さまはもう、はだかでした。もう何も持っていませんでした。
でも王子さまの心は幸せに満ちていました。
それに王子さまにはつややかな金色の髪と、宝石にも負けないほど輝く碧い目という神様からの贈り物が残されていました。
王子さまはそのまま歩き続けました。
しばらく行くと、やはりはだかのキツネがいました。キツネは寒さで震えていました。
王子さまはもう何も与えられるものがないので、少し考えて…………キツネに言いました。
「おいで。私があたためてあげよう」
おそまつさまでした。(2005年2月3日)
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