タイトル未定(アレでこんなん書いてスンマセンスンマセン)
(かわいいなあ…Mャン王女)
思い出すたびに顔がほころんでくる。穢れなきあの笑顔、あのしぐさ。
もう数日寝ていないし、食事らしい食事も遠い記憶といっていいのだが、
Mャン王女のために気分はピンと張り詰めているので耐えていける。ツルハシを持つ手にも力が入る。
しかし、他のバイトたちにも疲れが見え、全体的に少し能率が落ちているらしい。
休憩の声がかかり、数名を残して交代で休憩することになった。
「あれ、あんた、どっかで見たことが…」
労働者の一人がZロリを見て言った。どくん、と心臓が鳴る。
「あ!!指名手配の…!!」
「あ、あははは……何を言ってんですか?!私によく似た人がいるんだなぁ」
Zロリは笑ってごまかした。今この仕事を失うワケにはいかない。
「そ、そうだよなあ…アイツならもっとどーんと、一攫千金って手を使いそうだ。悪かったな、兄ちゃん
うん、よく見るとあんたの方がいい男だよ。なんでこんなトコに場違いな色男がいるのかな〜」
「またそんな〜…おだてても何も出ませんって〜あはっ、あは、ははは…」
(一攫千金か…)
いつもならどんな痛快な大博打だってやる。でも今は別だ。
自分のためなら大失敗してスッテンテンになるのも平気だが、(平気じゃないけど平気なんだ)
Mャン王女のために必要なお金を確実に手に入れるのだ。失敗はできない。
一番確実にお金を手に入れるには労働だ。当たり前すぎるが真実だ。
(Mャン王女のためのお金は汚れたお金ではダメだとも感じていたが、悪の勇者たる者、
そこまで自覚するのは無意識に拒否してしまう)
車座になった労働者たちの話題は、いつの間にか身の上話になっていた。
そのうちNシシは疲れたのか、Zロリのあぐらの真ん中にもぐりこみ、いびきをかいて眠ってしまった。
「田舎にかあちゃんとボウズを残してきてんだ。会いたくてたまんねえけど…」
「俺はおふくろを。最近体が弱くなって…心配なんだ」
Zロリはそれを聞いてたちまち涙目になる。
「ママのそばにいてやりたいんだろうなあ…」
「そりゃそうさ。でも、出稼ぎで働かないと、故郷のみんなが暮らせねえから。ウチのヤツにもずいぶん会ってない…」
「かわいい彼女でもできりゃいいが、貧乏暇なしってな〜」
(みんなに比べたらおれさまはまだ幸せなんだ。Mャン王女の喜ぶ顔をすぐに見ることができる)
そうは思っても、なんだかこの場の雰囲気はいたたまれない。
みんな疲れきった、暗い表情をしている。これでは能率を上げるための休憩の意味がないだろう。
Zロリは声を張った。
「そんな顔するなぁ!!故郷の家族が、父ちゃんがそんな顔して働いているかと思うと悲しむぞ!!
残してきた家族の笑顔を想い描いて、ふんばるんだ!!」
そして、コップに注がれた水を…一気にあおった。そのとたん体がカッと燃えた。
「こ、これ…は…??」
「お、兄ちゃん、見かけによらずいい飲みっぷり…」
驚いたような、感心したような労働者の顔が、三つにも四つにも見え、さらにグルグルと回った。
目の前が真っ暗になってその場に大の字になって倒れた。
「兄ちゃん、おい!!大丈夫か?!」
「…水だと思っていたのかなぁ…」
空きっ腹に高濃度アルコールの直撃を受け、息も絶え絶えの状態になってしまったZロリをみんな心配そうに覗き込んでいる。
「苦しそうだな。服をゆるめてやったほうがいい」
股のところから眠っているNシシをそっと移動させ、服の前をゆるめた。
見る見る桜色に染まっていく細い体。虚ろな目。荒々しい呼吸…
…………労働者の間に沈黙が流れた。
やがて、ごく と、生つばを飲む音がして、それが誰が立てた音なのか表情の探りあいになった。
しかし………顔を見合わせてみると、考えていることはみんな同じのようだった。
「兄ちゃん、そろそろ交代だ」
「ん…っ、あ。寝ちゃったか…スマン。でもおかげで元気になったぜ。さあっ!!もうひとふんばりするかぁっ!!」
やがてしらじらと夜が明けた。
「ごくろうさん。今日のバイト料だ」
封筒を受け取り、宝物のように胸に抱えると、Zロリは言った。
「また明日もここで働かせてくれよな」
そのとたん、争うようにして労働者が寄ってくる
「もちろん!!」
「ぜひ来てくれ」
「明日も待ってるぜ、兄ちゃん!!」
意外な大歓迎にZロリはワケがわからないまま少し赤面した。
みんな満たされた顔をしている。昨夜とは別人みたいに活き活きしている。
(なんかわからんが……良かったな、みんな)
人の喜ぶ顔を見て、良かったと思うなんて、悪の勇者にはあるまじきことだが。
(慣れないことするとこたえるな。ちょっと腰が痛いぜ)
自覚なく労働者たちを幸せにしたZロリは公園へ急いだ。
今度はしっかり自覚の上で、今一番大切な人の喜ぶ顔を見るために。
おそまつさまでした。(2004年12月3日)
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