やっぱりお礼はけっこうです。
「うぉ!!…なんだコリャ?!」
思わず声をあげてしまうほど、そこはヒドかった。
久しぶりに立ち寄ったKンロン博士の研究所は、なぜか荒れ放題だった。
「じーさん!どこにいるんだ?!」
博士の身に、何が起こったのだろう?助けを求めているのなら、早く駆けつけなければ。
ふだん散々な目に遭わされているが、今そんなことはZロリの頭からきれいサッパリ消えていた。
どのくらい探し回っただろう。研究所の片隅で、やっとか細い声を捉えて大きな耳がピクピク動いた。
「そこかじーさん!…………わックサッ!!」
鼻が曲がりそうだ。博士は悪臭の中にいた。しかもかなり消耗している。
「ほい、ひったい、ろうしたんら?!」
「Z、Zロリ〜……来てくれたのか〜」
博士は手をのばして来たが、そこから動けない様子だ。
「そこの工具箱を取ろうとした時にな、腰が急にグキっと。………ああ、このまま死ぬかと思ったぞ」
「ほーげさらな。ほれさまが来たからにはもう安心らからな」
博士の腰痛はかなりひどいようだった。風呂に入れるのはあきらめてきれいに拭いて着替えさせた。
「何日も食べてないのか?おかゆ作ってやる」
「Z、Zロリ……頼みがあるんじゃが…………」
「なんだ?」
「キッチンに立つのなら……ぜ…ぜひ…は、裸エプロンで…………」
「そりゃなんたって裸エプロン…………って、いい加減にしろジジィィ!!」
「あああ……怒った顔もイイのう〜」
「まっ、そんだけ元気だってことで何よりだ」
「ワシも元気なつもりなんじゃが、年には勝てんのう〜…いつまたこんなことが起こるか…」
「なさけないこと言ってんじゃないぜ!!……でも、そんなに心配ならおれさまが介護ロボをつくってやる!」
とたんになぜか博士は顔を曇らせた。
「え、遠慮しておくわい。…………お前がメカをつくると、ロクなことが起こらん」
「じーさんにゃ言われたくないぞ」
ぷっと頬をふくらませていたZロリだが、いきなりあることに気がついた。
「じーさん、ここにはアレがいただろう、アレが」
「アレか。…………うん」
「アレは何やってんだよ?こんな時に」
博士はしばらく言いにくそうにしていたが、やがて重い口を開いた。
「実はアレの調子が悪くてな。直そうと思って工具箱を取る時にワシがグキっと」
「さてはアレ…………暴走したな?」
「正解!」
「わーいやったぁぁ!!おれさまエライ!!」
…………ツッコミがいないとアホな会話が際限なく続きそうなので、このへんで「アレ」をさがすことにする。
ほどなく「それ」は階段の下で見つかった。
不幸中の幸い、燃料が少なかったので、そんなに遠くまで行けなかったらしい。
派手に転げ落ちたようで、あちこち壊れてプラプラしている。
「こりゃかなりヒドイぞじーさん」
「あ〜…かわいそうに…ワシが治ったらすぐ修理してやるぞ。Zロリには無理じゃろう」
「なんだと?!」
聞き捨てならないセリフにZロリはキバを剥いた
「こいつはもともとGオンがつくったもんだろう?!…………おれさまに直せないわけあるか!!」
声を張ると同時にかいけつZロリに変身し、高らかに宣言した。
「今すぐ直してみせるぜ!!」
Zロリはまるで憑かれたように作業を進め、徹夜で修理を完了した。脳と全身をフルに使ってフラフラだ。
「ふ、ふふ…………もう少し手ごたえがあると思っていたぜ……やっぱおれさま天才…」
強がっているがもう動けないし、眠くてしかたがない。
「あれ?博士は?…………なんだおまえ?」
ウトウトしていると、なぜかとなりで自分の声がする。
(んん…………なんでおれさまの声が……)
自分が自分を覗き込んでいる。
「まさかおまえが直してくれたのか?……博士は?」
「じーさんは動けない。……まさかじゃなくて、おれさまが一人で直したんだ」
「え〜?!おまえが〜?!……大丈夫なのか?」
「失礼なこと言うな!おれさまメカの天才……んんっ?!」
急に口をキスで塞がれた。すごい力で押さえつけられている
(あ。こんなことが前にも。……しまったぁぁ!!…なんでコイツをそのまま直しちまったんだ?!
性格の設定を変えることだってできたのにぃ!!)
もう、あとの祭りだ。
「ホントに元どおり動けるのか、確かめさせてもらうぜ」
自分の声でささやかれるのはかなりヘンな気分だ。しかも何度もキスされ、体をまさぐられるのはさらにヘンな気分だ。
「おいコラッ!…やめっ、やめろっ!!あ、そこは…ッ…………あぁっ!…………あはぁっ…」
「うん。なかなか快調だ。おまえやるじゃないか……舌もちゃんと動くかな?」
そうささやかれ、またキスされた。軽く触れるようなキスが繰り返され、突然舌を入れて激しく吸われる。
最初のうちは拒否しようとしていた…しかしあまりに巧みなキスに徹夜明けの脳が支配されてしまうのに、時間はかからなかった
Zロリの思考はどこかに押しやられ、ただそのうっとりするような刺激だけを感じていた。
やがて頭の片隅に、別の思考が芽生えてきた。
(おれさま…このキスを知っている気がする……コイツ以外にこんなキスをされた気がする…………)
初めてこのキスを受けた時のことが脳裏にうかんできた。
その時も、ささやきと共にこのキスを受けた………誰の…………?
声が聞こえてくる。………「Zロリ。キミが忘れられなかった…………」
…………Gオン?…………なのか…………?
ああ……そうだ……“これ”はGオンがもう再び逢えないかもしれないZロリに逢いたくて逢いたくて…
そんなたまらない想いをこめて全身全霊で作り出したものだ。
外見は細部まで巧みに作っても、まだ一度しか会ったことのなかった者の行動を再現するには限界がある。
とくにキスなど、まだしたことがない行動には、自分のパターンを入れるしかなかったのだろう。
Gオンのキスを感じながら、うすく目をあけると、目の前には自分がいる。
キスしてくるのは自分だが、確かにこれはGオンのキスだ。
Zロリは不思議な気持ちのまま、自分の姿を借りたGオンの想いを受け入れた。
ここにGオンはいないのに……強い強い想いが胸にせまってくる。
「泣いてるのか?」
自分の声にささやかれ、涙が出てしまっているのに気がついた。……なぜなのか、自分にもわからない
「すごくいいんだろう?……おまえの体はオレさまの体だからな。……どこがいいのか全部知ってるぜ」
キスだけではなく、手の動きもGオンだ。Gオンのパターンでプログラムされている。自分の姿なのに。
「ぁ…………G…オ…ン…………ぅ…………」
押さえきれずに声がもれる。そこにはいないGオンを呼んでしまう。
「Gオンじゃないぜ。オレさまはゾRリだ」
訂正されるが聞こえない。もうZロリは別の世界にいるようだった。
「濡れてるぞ……こんなになって……気持ちいいんだろ?」
ゾRリの手が、局部に触れてきたことによって、Zロリは急に現実に引き戻された。
同時に信じられないものが目に入って来た。
目の前に、ビデオカメラを構えたKンロン博士がいたのだ。
「うわあぁぁっ!!じっ、じじぃぃ!!…動けないんじゃなかったのかぁぁ??!」
「フォフォフォ、そんなもん気合いじゃわい!……これを録り逃してなるものかぁぁ!!」
「博士、こいつオレさまを直してくれたんだ。今確かめたけど完璧だ!」
「よ、よかったのう〜ゾRリ〜!!」
「お礼がしたいんだ。この前博士がつけてくれたものを使っていいか?」
「この前?…………んっ、おぉぉ、いいともいいとも!ワシも助けてもらったし、思う存分お礼しなさい」
Zロリの顔をのぞき込み、ゾRリは言った。
「おまえ、いいヤツだな。お礼に博士が喜んでくれたことを、おまえにもしてやるぞ」
「そ、そりゃどうも………何かな?」
その時、局部に触れたままのゾRリの右手から、突然振動音がした。
「なっなっなんっっ…………やっ…やめ……っっ……」
ガクガク震えるZロリを、二人ともニコニコと見つめている。
「最近肩コリがひどくてのう。……この前それを取り付けたばかりなんじゃ」
「どうだ?キモチいいだろう?博士は大喜びしてくれたぞ」
「ば、ばかっ!!こ、こっ、ここはっ…………肩じゃ、なっ……あぅっ!!…はあぁっ!!……くうぅぅああぁぁぁぁ…………!!!」
おそまつさまでした。(2005年5月18日)
妄想文ほのぼの部屋のTOPに戻る