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旅先で立ち寄った大きな街をGオンはしばらく散策した。
自分の国にはない 様々なものに触れるのも旅の楽しみだ。
世界は無限に広がっている。その中から、どれだけのものを知ることができるのだろう。
ふと、何かに呼ばれた気がして目をやると、一番の旅の楽しみが歩いていた。
「…Zロリ…!…こんな所で…!!」
た、たまには 彼の行く先をたずねて旅をしてみることも……ないではない…(照)
しかし今回は偶然だ。偶然だったら偶然なのだ。
高鳴る胸を押さえ、ゆるむ口元を引き締め、Gオンはその場で少し前髪を整えた。
こちらに近付いてくるZロリは、緊張した顔をしている。なんだか落ち着きがないように見える。
(また追われているのか)
この前城下町で逢ったときもそうだったな…互いに気の休まらない生活だ。
あの時Zロリが女装していたことが、脳裏にふっと浮かんできた。
今まで出会ったどの姫よりもGオンの心をとらえたあの姿。あの眼差し。
なんて考えていたら…ZロリはGオンの横を、何事もなかったように通り過ぎていった。
「なに?」
Gオンは大急ぎで逆ダッシュし、Zロリに追いついた。
「Zロリ!」
「あぁ?!」
振り返ったZロリの目は少し血走っている。息が荒く、うっすらと汗さえかいている。
「なんだ。Gオンか」
それだけ言って、またすぐ行こうとする。そんなつれない態度をされるなんて、考えてなかった。
「Zロリ、ちょっと待て」
…言った。ついに言ってしまった。自分から待てと言ってしまった。
待たせてどうするのだ。さあどうするのだどうするのだ。いや落ち着け…
そんなGオンの気持ちなど汲み取ろうとする様子も見せず、Zロリは目をつりあげて吐き捨てるように言った。
「おれさまは 急いでるんだ。どけ!」
その言葉に、Gオンの中で何かの音がした。
「急いでいると言ったな。Zロリ。どのくらい速く走れるか、俺と勝負しろ!…それとも、負ける勝負はしないのか?」
「なんだとォ?!」
「そうだな。あの黄色い看板に 先に触れたほうの勝ちだ!行くぞ、Zロリ!!」
この急な展開に、双子はZロリの思考を元に戻そうと試みた。
「せんせ、今はそんな場合じゃないだ…」
「ばかもん!」
Zロリは一喝した。
「男が勝負を挑まれて、逃げるワケにいくかぁッッ!! いつ、なん時、誰の挑戦でも受けるッッ!!」
力むZロリを心配そうに見るNシシに、Iシシが諭すように言った。
「オラたちは こんなせんせについて行こうと誓っただからなぁ…」
そして、今すぐそこで地面をガッ、ガッ、と 蹴っているGオンに ちら、と目をやった。
「せんせは今、Gオンの“俺スイッチ”を押してしまっただよ」
「人は誰でも持っている、“俺スイッチ”だな」
「んだ!…パワーアップ必至の“俺スイッチ”だ。勝負の行方はわからないだぞ」
「でも…でも、せんせは今…」
「男の勝負に口を出すな!」
「その通り!」
「ああ…せんせは勝負に気を取られて、忘れてしまっているだよ」
GオンとZロリは 双子を残し、土煙をあげて駆け去った。
僅差で勝ったGオンは、荒い息を整えているZロリに目をやった。
Zロリはしばらく苦しそうに肩を上下させていたと思うと、全身をぶるっと震わせて、うるんだ眼でGオンを見上げた。
あんなに急いでいたわけを…足元に広がっていく水たまりが教えてくれた。
おそまつさまでした。
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