甘い甘い二人



「散歩だよ」


その言葉と、薔薇一輪を残してGオンは去った。Zロリは薔薇をくわえて悔しさにギリギリと歯噛みした。
「ムキーッ!!助けてくれたことには感謝するが、なんだあの態度は!!…………うぅ…っ」
興奮しすぎたのか、めまいがして倒れそうになるのを後ろに立っていた大統領がすばやく支えてくれた。
「もうしばらく休まれた方がよさそうですな」
「すまない。そうさせてもらう…………」
「お気兼ねせず、ごゆっくりお休みください」




みんなが部屋を出て行き、Zロリは一人ソファベッドにぼんやりと転がっていた。

(…のど渇いたなぁ…………)

ふと見ると、テーブルの上にGオンの飲み残しのコーヒーが。

「お、やった!これイタダキ!!」

迷わずんぐんぐと口にして意外な甘さに驚いた。(へー。見かけによらないな。あのキザ)
ぷぷっ、と笑った。背中に視線を感じて振り向くと、小刻みに震えるGオンが立っている。

「あ」
「あ じゃない。…………忘れ物を取りに来たんだ。……人の飲み残しを……いやしんぼだなキミは」
「大きなお世話だ。旅の途中いつ食べ物にありつけるかわからん。見つけたらすぐ飲み食いしておく!!
それがおれさまのやりかたなのだぁっ!!」
「えらそうに言うことじゃないだろ。無計画なだけじゃないか」
「…………ふふんだ!渋い顔してこぉ〜んな甘いの飲んでやがんの〜ニッヒヒ!!」

Zロリは自分もあんぱんが大好物なことをきれいさっぱり忘れている。
Gオンは笑うZロリの目つきが先ほどと全く別人のようであることに戸惑った。

(あんなに無邪気な目をするかと思えば今度は…なんて挑発的なんだ…………!!)
「う、うるさい!脳の栄養は糖だけだということを知らないのか!頭脳労働者に糖分は不可欠なんだ!」
二人の間にピリピリとした空気が漂い、沈黙が流れる…………険悪なムードだ。


「Zロリせんせ〜」

廊下からNシシの呼ぶ声に沈黙はかき消された。

「おう。なんだ」

Zロリは出て行き、Gオンは一人部屋に残された。

(あいつ、Zロリというのか…………)

Zロリ、Zロリ…………噛みしめるように繰り返しその名前を口にしてみる。
舌が口腔で軽やかに転がり、 口蓋を撫でるように当たるのが心地よい、官能的でさえある……その名前。
我に返るといつの間にか手にコーヒーカップを持っていた。
自分がZロリの目覚めを待って口にしていたカップ。
そして今Zロリがなんのためらいもなく口にしていたカップ。
少年のように胸が高鳴る。どうかしている。でも、その衝動に逆らえない。
Gオンは少し震える手で、もうすでに中身の無いカップをそっと口に運んだ。
そんな自分の行動を見つめているもう一人の冷めた自分がいる。
(バカだな。私は何をしてるんだろう。なぜあいつにこうも心をかき乱されるんだ。
…………いかんいかん!科学者は常に冷静沈着でいるべきなのに…………)

若い彼はまだ気付いていなかった。冷静沈着であることも必要だが、
情熱的でロマンチストという要素も科学者には不可欠であることに。



おそまつさまでした。(初出:2004年10月4日)

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