タイトル未定


例によって森の中で迷った。

「右も左もわからないだ〜」
「腹がへっただ〜のどが渇いただ〜」
「だらしないぞお前たち!このくらいでヘコたれるんじゃない!」

Zロリが大声なのは、双子を叱咤するため、という他に、もうひとつ理由があった。
この森はかなり気味が悪いのだ。しんとしていると、何か聞きたくない音などを聞いてしまいそうで、
本能的に大声を出してしまうのだった。

「と、とにかくこの森を抜けるぞ!おおおおおれさまについて来い!」

と言いながらも 全身に緊張がみなぎり自分の心臓の音が頭に響く。踏み出す足はふるえている。
Zロリは今、Bビリになっていた。

そ   の   時    !!

「あれ、どちらへ…」
突然草むらから がさっ!! と音がして、黒い影が現れた。

「ぎゃあああっ!!」

三人は反射的に悲鳴をあげて、一目散に逃げた。 逃げた逃げた逃げた。

「あ〜…そっちに行くと……」

黒い影が止めるより早く、Zロリは泥沼に思い切り突っ込んでいた。

「わっ!せんせ…!!大丈夫だか?!」
「うわ〜泥だらけだ…おらたちも危なかった〜」

Zロリより少し逃げ遅れたのが幸い、双子は沼にはまらなくてすんだ。

「ふふふ……このへんでドロンコ美容法やってイイ男になる。計画通りだ」

Zロリは聞かれもしないのにそんなことを言いながら ずるずるべちゃべちゃと沼からあがってきた。…すごくクサイ。

「ふが〜!!せんせあまりこっち来ないでくれら〜」
「ぐあ〜!!鼻が、鼻が取れちまいそうら〜」
「なんてこと言うんだ お前らひどいぞ!!」
「せんせの臭いの方がひどいだ!」
「ん〜、そりゃごもっとも…ってコラアア!!」

わあわあ言っていると、またガサガサと音がした。

「ひぃぃぃ!!」

泥で重い体でも、敏捷にぴょんと飛び上がり、再びダッシュしようとするZロリの名を、その影は呼んだ。

「Zロリ先生。相変わらず足が速いですねえ…どちらまで行かれるのですか?」

「あ、妖怪学校の先生」
Zロリの足はカクンと折れて、ひざから地面に落ち、そのまま座り込んでしまった。
双子も地面に座り込み、三人同時に天を仰いだ。

「Zロリ先生 どうなさったんですか?」

「い…いや〜その〜……は、腹が減って…」( ビビり疲れたとは言えない)

「ああ…それは大変ですね。この先に学校があります。給食でよろしければ」

なんてステキな偶然。三人は妖怪学校の生徒たちから大歓迎された。

ただ一つ、いつもと違っていたのは、みんながスキンシップして来なかったことだ。…だってせんせ クサイんだもの。



早くシャワーを浴びて下さいと、先生に促され、Zロリはシャワー室に向かった。
シャワー室のドアを開けると大きな姿見があった。

姿見の前に立つナルシストがすることは一つ。

「ふっふっふ…かいけつZロリ参上!……ん〜…そうだな、もう少しこう、足を広げて、
こっちこう曲げて…かいけつZロリ参上!…いやいや、むしろこうピッタリ合せて交差させて…」
Zロリは全裸のままブツブツつぶやきながら、姿見の前でいろいろなポーズをとり続けた。
次のポーズを考える間、太い尻尾がゆったりゆったりと揺れる。

「んん、そうだ!ここでこう くるっと回って ビシィ!!と……」
と言いながらクルリと回ろうとしたが、足がすべってすとんとしりもちをついてしまった。
「は…ぁ…っ!!…あたたた〜」
伏せの姿勢のまま、ぶつけて痛むお尻を高く上げ、そのまましばらく動けなかった。

やがて くいくいと腰を2,3回振り、またそっと立ち上がった。

「あ〜…腰痛めなくてよかった」



やっとシャワーを浴びる気になり 石鹸を手に取ろうとしたがツルリと手からこぼれて姿見の下の隙間に入ってしまった。

「あ」

いつもなら、まっ、いっかぁ!!などと 石鹸なしですませるところだが、 そうはいかないこのクサさ。石鹸洗いは不可欠だ。
Zロリは床に這いつくばって必死に手をのばした
「んっ…くっ、こ、この……こっち来い石鹸…!!」

やっとの思いで石鹸を取った。


「は〜やれやれ…ようし洗うぞお!!」

勢いよく全身に泡を立てて洗った。
「ん〜やっぱおれさまイイ男だぜ!…いつかきっとステキなお嫁さんが現れるぞぉ!!……
大事なところは特によく洗っておかないとな!!………ふぅ………は……っ…ああっ…き、気持ち…
……しまった おれさまこすり過ぎだぁっ!!……はぁ……はぁ…………あ〜危ない…って なにやってんだ」


少しポ〜っとなってしまったので頭からシャワーをかけた。…と!!

………………う し ろ に 何 か の 気 配 が す る ………………………!!

実は入ったときからうすうすそんな感じはしていたのだが、気のせいだと言い聞かせていたのだ。
しかし シャンプーするために視覚を閉ざした今、何かの気配は より濃厚になり Zロリの全身がざわざわと総毛だった。
いや、ここはシャワー個室。ここにいるのは自分一人のはずだ。そうだそう自分に言い聞かせて、気をとりなおした。

「ま、まあ…シャンプーの時に後ろに何かの気配がするってのはお約束だからな。
だだだ誰もいない!いない!! こ、こわくないぞぉ…こわくないぞぉ…!!」

恐怖感を振り払うように頭にシャンプーをた〜っぷりつけてガシガシ洗った。

「あっ、シャンプー目に入った…!!あ…イテッ!………ふぇぇ…痛いよママぁ……」

その場にぺたんとしりもちをつき、足をM字に開いたまま、しばらく目をこぶしでぐしぐしと抑えていた。

「は〜…痛かった………あ〜あ。目が赤いぜ」

鏡をしばらくじっと見ていると……思わず百面相してしまうZロリだった。

「どんな顔でもイイ男だなぁ おれさま!…きっとステキな女の子が……
Zロリさんステキ、チュッ、……なんてな なんてな!!」




そろそろ出ようか…などと思っていると、ひとりでにドアが開いた。
「おお、自動ドアか!」



Zロリはほのかな石鹸の香りをさせ、すっかりご機嫌だった。



ほどなくして、シャワー室のほうからパタパタという足音と、大声がした。

「先生!先生 大変で〜す!!透明人間くんがシャワー室で鼻血吹いて倒れてま〜す!!」




おそまつさまでした。(2005年8月27日)

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