A reencounter
突然、再会の時はやって来る。
A reencounter
ふと空を見上げると、桜が咲いている。まだ冬だと思っていたのにもうそんな時期なのか、とジェイドは驚いた。
それと同時にひらり、と落ちてくる花びらの桃の色を眺め、ふと、二年程会っていない彼女の事を思い出す。
最後に会ったのは、ルークが、エルドラントにてローレライを解放し、帰って来た時。
「お互い頑張りましょう」と約束を交わし、「たまには手紙でも送ります」と言って別れた時から、一度も会っていない。その月日は気づけば二年という期間になっていた。
二人が二年前から続けていた文通も、一年前の日付以来、彼女が止めてしまったままだった。
しかし、彼女が何をしているのか、というのは噂程度であるが知っている。
世界各地でレプリカに対する差別――例えば、職を与えられない事や、結婚を認められない事等――を消す為に行動しているという話を聞いた事がある。
また、エルドラントでの決戦前夜、言っていた目標である初代女性導師も、確実に近づいている。一年前の手紙では、詠師に昇格するかもしれないと言っていたのだから。
執務室の窓から入り込んだ桜の花びらをそっと拾い上げてから、革張りの椅子に座り、机の書類に向き合う。そしていつものようにテキパキと書類を片付けていく。
研究室に入るようになってから、仕事の量は増えるばかりの毎日だ。
山積みであった書類が半分程減った時、突然ノックの音が聞こえた。
「入れ」
「失礼します。大佐、ローレライ教団のアニス・タトリン様が面会を求めておりますが」
入室を促すと、入って来たのは執務室の外の兵士である。しかも、入室してからの一言は、先程まで自分が頭の中で考えていた人物、アニスが来ているという事だ。
仕事の都合で会いに来たのかと思ったが、私事だとその考えを訂正した。仕事であるならば、自分よりも、まず最初に、自分でなく陛下に会いに行くであろうと思ったからだ。
「お忙しいのであれば会わなくても構わないと申しておりますが」
「いや、会おう。連れて来てくれ」
そう告げると兵士は執務室から出て行き、アニスを呼びに行った。
ジェイドは立ち上がると、執務室の隣にある備え付けのキッチンで、紅茶を用意する。二つのティーカップとそれをトレーに乗せて、執務室へ戻る。
アニスが来る間の少しの時間でも、と資料に再び目を戻して、数分後。
トン、トンと控えめなノックが聞こえてきた。明らかに兵士とは違うそれに、先程言っていた客人だと確信したジェイドは「入って下さい」といつもの敬語で促した。
ドアノブがゆっくりと回り、ドアが開く。
まず目に入ったのは、長い黒髪。次に、見慣れたピンクの色の軍服。デザインは少々変わっていたが。
「失礼します。大佐、お久しぶりです」
「…アニス。これはお久しぶりですね。二年ぶりですか」
アニスのあまりの変化に対する動揺を隠すように笑顔を見せて、アニスを部屋へと招き入れた。