――大好き。




「わぁ…美味しそう」
彩り良く皿に盛られたパスタを見て、笑顔になる。それを見たジェイドも、釣られるように笑い返した。
仕事を終えたジェイドに連れられてやって来たこの店は、少し細い道を通るとある穴場のような場所で、高そうだという雰囲気はないのにどこか洒落ていて、落ち着きのある空間だった。
フォークを手に取って、目の前で湯気を立てているパスタを巻き付けて食べると、想像よりも美味しくて、再び顔が綻んだ。
「美味しいですね。このお店。あ、大佐のパスタも美味しそう」
「喜んで頂けたなら良かった。よろしければ私の方も食べてみますか?」
笑顔のまま素直に頷くと、ジェイドはフォークにパスタを巻き付け、目の前に差し出した。
「ほらアニス、あーん」
ふざけるように言うジェイドに、子供じゃありませんなんて言いながらも口を開けた。すると、目の前にあるパスタが口の中へ入れられた。先程食べた自分のパスタとは違う味が、口の中に広がった。
視線の先で、座っている夫婦らしき男女が微笑ましそうに見て笑っていた。その為か、妙に恥ずかしくなり、パスタを飲み込みながらも俯いた。
「おや、どうしました?」
「…何でもないです」
わかってるくせに!!と一言言いたかったが、口を閉じた。気を紛らわせるように、自分の目の前にあるパスタを一口食べると、ジェイドが口を開く。
「…議会は、どうなりましたかね」
「どうなんでしょうね。こればかりは、もう信じるしかありませんからね」
「…不安ですか?」
図星を突かれ、何も言えずに手にしていたフォークを置く。昔から、彼に隠し事をするなんて出来なかった。
いくら歳を重ねて、嘘をつく事が上手くなったとしても、目の前で不敵に笑みを浮かべる彼を騙すなんて出来なかった。唯一、自分の想いを除けばだが。
「そりゃあ、不安ですよ。これで自分の夢に一歩前進出来るかどうかも決まってるんですから…」
「そうですか。ですが、陛下を信じましょう。きっと大丈夫ですよ」
柔らかな笑みを浮かべると、ジェイドは手をそっと握ってくれる。その手は、想像とは違い暖かかった。
「大佐…」
「大丈夫ですよ」
その声に安心し、目を閉じる。手に残る温もりが、染み込むように胸に広がり、徐々に不安を打ち消していった。


―――大好き。


心の中で呟いた声は、届かない。その事実だけが、隙間風のように冷たく吹き抜けた。




Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!