嫉妬




「ジェイド大佐、ちょっといいですか?」
「はい。何でしょう?」
またか、とこれで何度目かもわからない心の呟きと溜息を一つ。もはやこの行動は、学校内に居るアニスにとって日課となっていた。
事の発端は、学校が開始されてから二日目の日だ。授業を終わらせ、今晩のメニューでも相談したら家に帰ろうと思いながら職員室へと入って行った。軽い足取りで、自分の席まで戻ろうと数歩踏み出したその時、目の前に人の姿が二つあったのだ。
驚いて立ち止まり、よく見てみると、そこにいたのはダアトから連れてきたアニスの友人だ。どうやら、ジェイドに、提出する書類を見てもらっているらしい。
それなら、別に遠慮して離れる必要もない。そう思ったアニスは再び歩き出す。だが、次の瞬間、彼女が口を開いて発した言葉に、再び足を止めてしまう。
「ジェイド大佐、ありがとうございます。助かりました」
「いえ、またいつでもどうぞ」
ニッコリと笑顔で彼女を見送るジェイドを見て、何故だかわからないが、胸が痛むのを感じた。気がついた時には、道具を置く事も忘れて職員室を出て行った。
必死に走り続け、校舎の端が見えた頃になって、漸く止まる。それから、窓の外を見つめた。
グランコクマの街並みは、止まる事のない水の流れが、ザーザーと音を立てている。だが、不思議とその音すら落ち着きがあるようで、嫌には思えない。まるで、山と川の音を自然と受け入れてしまうように。
冷静になった頭で考えてみれば、すぐに理解は出来る事だった。胸の痛みは――嫉妬だ。前日、見惚れていた彼女に対して抱いた感情も、先程の感情も、全て。
だが、恋人でもない自分が、ジェイドの行動に何か言う事等、出来はしない。それに、ジェイドの事だ。彼女に対して本気だとも思えない。
心の中でそう言い聞かせると、アニスは踵を返し、再び職員室に戻って行った。
それから、二週間。一日で終わる筈だと思っていた彼女の訪問は、毎日のように続いた。その度に、アニスは嫉妬に胸を痛めるのだ。だが、彼女に負けてはいられない、と、アニスは職員室で隣のジェイドに向かって声をかける。
「ねぇ、ジ、ジ…ジェ…」
「何ですか?アニス」
「―――――」
「アニス、今、何と…」
「何でもないでーす。大佐、今日の夕食、何が食べたいですか?」
ジェイド、と呟いた声は、ジェイドには届かなかった。だが、アニスの心は、温かい物で満たされていくように感じられた。




Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!