お礼




アニスがピオニーとの謁見にてレプリカの為の学問所の設立を提案してからの初めての朝。
いつもならば、軍本部へと直行してしまうところだが、今日だけは軍本部への道を逸れ、宮殿へと向かっていた。目的は、ピオニーの私室だ。
宮殿に入って真っ先に私室へと入ると、ベッドに座って着替えているピオニーがいた。部屋にいる筈のブウサギは、世話係が散歩に連れて行っているらしく、一匹もいなかった。
「おはようございます、陛下」
「あぁ、ジェイドか。お前がこの時間にここに来るなんて珍しいな。気になるのか」
図星をつかれて、思わず何も言えなくなった。だが、目の前の男に隠し事など無意味な事は今に始まった事ではない。
僅かに動揺した心を落ち着かせてから、再びピオニーへ向き直ると口を開いた。
「気になりますよ。だから、聞きに来たのではないですか」
「やけに素直だな。良いだろう、特別に教えてやる。昨日の議会の結果、マルクトもレプリカの為の学問所を開く事で決まった」
その朗報に安堵した顔を浮かべてしまう。これでアニスの夢の実現に近付くと思うと、自分の事のように嬉しくなった。自分の気持ちを理解したのか、ピオニーがこちらを見て笑う。
「嬉しそうだな。それで、学校の責任者にお前を推薦しておいたが、良いか?」
「また仕事が増えるのですか…」
「そう言うな。キムラスカの学問所を参考にする為にキムラスカの学問所をよく知っているアニスにも講師として来て貰うように頼むつもりでいるんだ。アニスが承諾してくれれば、これから毎日アニスと一緒にいられるんだぞ」
「まぁ…陛下の事ですし、推薦と言いながらもほぼ決まったようなものなのでしょう?引き受けますよ」
「流石、よくわかってるな」
本当は、アニスがいるかもしれないからなのだが――そんな事がわかるような返答をするのは恥ずかしいと、自分自身が許さなかった。だが、そんな自分の思いすらわかっているというように笑みを浮かべて、ピオニーは言葉を続ける。
「そうだ。引き受けてくれたお礼としてだが…親友として、お前の恋路の手助けとして、チャンスをやろうじゃないか」
「それは、どういう…」
どういう事だ、と問いたかったが、私室をノックする音がそれを遮った。
「入れ」
「失礼します。ローレライ教団の律師、アニス・タトリン様を連れて参りました。謁見の準備をお願いします」
「わかった。すぐに行くから謁見の間に通しておいてくれ」
返事をした使いの者が、私室から出て行く。その直後にピオニーがベッドから立ち上がる。そして、ドアの前まで歩いて行くと、突然こちらを振り向いた。
「そうだ。この謁見、お前がいなきゃ始まらんからな。お前もすぐに準備して来いよ」
そして、ピオニーはドアを乱雑に開けると出て行く。その姿を見つめながら、先程のピオニーの言葉に嫌な予感を拭いきれず、溜息を吐くとゆっくりと謁見の間へ向かい歩き出した。




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