傷
立たない腰を一生懸命動かして、アニスは宿へと帰る。そして、自分の部屋ではなく、隣に位置しているジェイドの部屋の前で立ち止まると、控え目にノックをした。
「誰です?」
「…た、いさ」
上手く出ない声を振り絞って名を呼ぶと、部屋の鍵が開き、ジェイドが姿を現す。その姿に安心したアニスは、気を抜いたせいだろうか、凭れかかるようにジェイドの抱き付いた。
そんな姿に異変を感じて部屋に入るように促すが、身体がどうも上手く動かないらしい。よろけるアニスをそっと抱き上げて部屋に行くと、ベッドへとアニスを下ろして上着を脱がせた。その上着を置く場所が見つからず、ベッドから離れようとしたのだが、小さな手がそれを止めた。
「…アニス?」
「や…行っちゃ、やだぁ…っ」
軍服を掴む手に力を込めて引き留める。ジェイドの手から、アニスの軍服の上着がスルリと落ちた。それを合図とするかのように、目からは涙が零れ落ちる。力強く掴む手をそっと握り、軍服から手を離すと、もう一度アニスそ抱き上げた。
ベッドの端に座り、自分の膝の上にアニスを座らせると、強く抱き締めた。震えるアニスの手が背中へと回り、軍服を強く掴む。声を上げる事はないが、涙はとめどなく流れ、肩が濡れていくのがわかった。だけど、それすら気にせずに、離れないようにただ、ただ強くお互いを抱きしめ合う。
そんな中で、ふとジェイドの腕の力が緩む。それを不思議に思ったアニスが顔を上げると、紅い眼と視線がぶつかり、それは、近づいて来る。反射的に思わず目を閉じると、唇が重なった。
脅えさせないようにするためか、何度も啄むように優しく触れては離れる。そして、アニスの身体の緊張がなくなった頃を見計らって、するりと舌が入り込んだ。舌が歯列をなぞると、もう一つの舌を絡め取る。それにピクンと反応し、身体が再び強張った。だがそれと同時に、口腔を犯す舌に応えようと舌が動く。いつもと違うその行動に、ジェイドは目を僅かに見開いた。
「ん、ふ…ぅ…」
息をする事すら忘れてしまう程長いキス。だけど、それですら一度では足りないとばかりに、何度も何度も繰り返す。その最中、片手で器用にピンクのワンピースの前を開けると、唇を離してまじまじとアニスの身体を見る。昨夜、自分が付けたはずである紅い華に血が滲んでいるのを見つけると、目を細めた。
キスの余韻に浸っていたアニスが、見られている事に気づくと、涙を零して隠そうとする。
「やぁ…っ、見ないで…」
「隠さないで。怒っていませんから」
「ほ、んと…?」
「えぇ。…ですが、誰がやったのかくらいは聞きたいですね。誰ですか?」
怖がらせないように優しく手を握り、隠そうとしていた手を退けると、血の滲んだ紅い華に舌を這わせた。滲んだ血を全て舐め取ると、今度は強く吸いつく。
その行為さえも怖がらせてしまうのではないか、と思ったが、アニスから恐怖を感じている様子は全くなかった。それだけではなく、時折鼻にかかるような吐息を漏らしている。
「貴女をこんなに傷付けたのは…?」
「ぁ…シンクが…」
「シンク?」
ピタ、と行為が止まる。顔を上げると視線が合った。アニスの瞳からは、シンクとの行為を思い出したのか、涙が溢れ出す。それをそっと舌で掬い上げると、「そうですか」と呟いた。
そして、何度目となるかわからないキスをする。甘く舌を吸い上げると同時にまた涙が溢れた。
「泣かないで」
その声にピクリと反応するアニスを可愛いと感じながらも、また口づける。両手で頬を覆い、今までは脅えさせないような、気遣いのあるキスだったが、今度は本能のままに貪る。頬を覆ったのは、脅えても逃げられないようにするためだったが、アニスからその気がないとわかると、片手を外し、今まで触れていなかった下腹部に手を伸ばした。
割れ目をそっとなぞると、ヌルリと指が滑る。唇を離し、先程下腹部にあった手をじっとみると、アニスを押し倒す。そして、何も言わずにそっとアニスの脚を開かせた。
「あっ…や…」
「ダメです。全部見せて下さい」
僅かに抵抗を見せたアニスが脚を閉じようとするが、力では敵わない。そのまま秘部を見つめると、ヒクンと収縮し、愛液と共に白い液体が流れた。それに唇を寄せると、秘部へと舌を差し込んだ。
「…大佐、汚…っ」
「汚くなどありませんよ。ただ、どこかの誰かが汚してしまったようなので、消毒しているだけです」
そう言って、愛液と一緒に溢れ出る精液を啜り、指を入れて掻き出すように引っ掻くと、アニスの身体が震えた。
だが、どれほど綺麗にしようと努力しても、限界はある。これ以上は無理だとジェイドは判断すると、アニスを抱き抱え、浴室へと向かった。乱暴にドアを開けて、アニスの服を脱がせてから自分も脱ぐと、自分の膝の上にアニスを座らせてシャワーを浴びせる。
シャワーのお湯と一緒に、秘部に指を突っ込んで、掻き出した精液を流す。
「ん、やぁ…あ、ん」
その行為ですらも愛撫同じ様に感じてしまい、アニスの中が収縮する。その姿を見たジェイドは、精液を描き出すのを止め、今度は本当の愛撫を加える。秘部に入れた指をかき混ぜるように動かすと、アニスの口から艶やかな声が漏れた。
「アニス、イきたいですか?」
耳元で囁かれたその言葉に何度も頷くと、自身を宛がう。そして、下から一気にアニスを貫いた。
「あっ――――!!」
急な挿入に対応出来ず、アニスの中が急激に締まる。その締め付けは、いつも涼しい顔をしているジェイドの顔でさえ歪む程に。
「っ…アニス、力を抜いて下さい」
「や、無理…っ」
それでも何とか息を吐き、力を抜くと、ジェイドも溜息まじりに息を吐く。
「いや、こっちが先に果ててしまうかと思いました」
「大佐のバカ、焦ってするか、ら…ぁっ」
アニスの言葉が途切れるのを待たずに腰を送る。いつもと体勢が違うせいか、奥にまで容易く入っていくせいか、アニスの限界が早い。それを知ったジェイドは更にペースを速くする。そして、最奥を突いた瞬間、アニスの中は収縮し、その締め付けでジェイドも果てた。
規則正しい寝息が聞こえる中で、そっとアニスの頭を撫でる。シーツの隙間から覗いた肌には、未だあちこちに傷が残っていた。そんなアニスの姿に顔をしかめると、傷口にそっと舌を這わせる。
「気付けなかったのは私の責任ですね…すみません、アニス」
はだけたシーツをもう一度かけ直し、壊れ物を扱うように抱き締めると、ジェイドは目を閉じた。
大変お待たせしましたー!!20000Hit記念小説、ジェイアニ裏です。これは、シンアニと繋がっているお話になっているのですが、甘く仕上がってないような気がする…。しかも最後が何となく気に食わないような気もする。
でも、これはこれで話的には気に入っているので、良しとします。
それでは、ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。
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