龍之介が脱衣場の引き戸を開くと、白い物体が飛んできた。
顔にぶつかる寸前にパシッと受け止めたそれは、
身体を洗うスポンジ。
「後で・・・洗ってね、あたいのこと」
そう言って、湯殿に消える悠理の白い後ろ姿に、龍之介はゴクリと息を飲み込んだ。
龍之介も悠理に続いて湯殿へ入ると、悠理は檜風呂の傍らで掛け湯をしているところだった。
龍之介はおもむろに悠理の背中を抱きしめた。
「・・・あっ、こらぁ!だめ・・だってば・・そんなこと・・・」
「・・・だめ?」
「だめ・・・・・・じゃないけど・・・」
「じゃ、身体洗ってあげる」
「・・・うん」
龍之介は先程悠理から投げられたスポンジを桶の湯に浸し、石鹸を泡立て始めた。
しかし、そのスポンジで悠理の肌を擦るのではなく、
その泡を手のひらに取り、直接悠理の肌を撫でた。
背中を滑る龍之介の手のひらの感触に、悠理はたえられずに声を漏らした。
「やん・・・いたずらするなよぉ・・・」
「いたずらなんかしてないぞ?ちゃんと洗ってる。
次、こっち向いて」
「そ・・そんな・・・だ・・・だめ・・・身体に力入んない・・・」
「じゃ・・・オレの膝に座って掴まってな。その間に綺麗に洗ってあげるから」
悠理は言われるままに、龍之介のタオルが巻かれた膝に跨った。
龍之介は悠理の身体に手のひらで丹念に石鹸の泡を広げた。
「両手上げて・・・」
悠理が双手を龍之介の肩に絡めると、
龍之介の手が悠理の腋下を滑り両の乳房を包んだ。
悠理は、龍之介の腰のタオルの下から徐々に、
熱く滾った塊が自分の足の付け根をつついてくるのを感じた。
龍之介は、悠理の乳房を石鹸の泡で白く染めると、その手を悠理の背中から下に滑らせ、
臀部から太股をなぞっていく。
悠理は息を乱しながら、その身体を全て龍之介に預けた。
龍之介は悠理の内股に手を伸ばすと指先を、密かな場所へと進ませると、
そこはまるで溶けたバターのようにとろとろと龍之介の指を迎えた。
「ぁ・・っ・・・」
龍之介にしがみつく悠理の指に力がこもる。
「・・・りゅうのすけ、早く・・抱いて・・・も・・ぉ・・我慢・・できな・・い・・・」
「まだ・・・だめ。石鹸、流すよ」
龍之介は、風呂桶に入ったお湯をゆっくりと悠理の身体に掛けた。
透明な流れが悠理の身体を包んでいた白いベールを洗い流していく。
再び現れた悠理の裸体は、いじらしいまでに張りつめて龍之介を待ちわびていた。
龍之介は指先を悠理の頬から首筋、鎖骨から乳房へと滑らせ、
固く尖っていた小さな乳首をつん、と弾いた。
悠理は小さく声を漏らした。
「・・・悠理の肌はすべすべできれいだな」
「・・・もっと・・いっぱい・・・触って・・・」
龍之介は悠理の濡れた肌にそっと口を寄せ、悠理の身体を抱きしめた。
「りゅうのすけ・・・タオルが・・ジャマ」
「・・・あぁ、そーだな・・・」
龍之介が腰のタオルを取り去ると、悠理の内股に直に熱く硬い塊が触れた。
悠理はそこにそっと手を伸ばし、柔らかく握った。
「・・・こんなになってたクセに」
「オレも、我慢してたのさ・・・」
「もぅ・・・どぉして・・そんなことすんだよぉ・・・」
「悠理がオレのこと欲しがるのが、すごく可愛いから」
悠理は、顔が赤くなったのを龍之介の胸に顔を付けてごまかした。
「・・・だってぇ」
・・・ホントに、りゅうのすけが欲しかったんだもん。
「じゃ・・・入るよ」
「・・・ん」
2人は、身体を一つにつなげた。
・・・くしゅん!
2人は同時にくしゃみをした。
外の空気が明かり取りから入ってくる浴場で、風呂にも入らずにじゃれあっていては致し方ないこと。
2人は顔を見合わせた。
「風呂場で風呂に入らないで風邪ひいたらバカみたいだよな・・・」
「・・・しかも、2人そろってね」
「じゃ、このまま、風呂入ろっか」
「・・・このまま?このままって・・・ぁ・・んっ」
龍之介は、悠理の中に自身を納めたままで悠理を軽々と抱き上げ立ち上がった。
龍之介の動きが、すべて悠理の身体の奥への響きとなる。
2人はしっかりと絡みあったまま、湯船に浸かった。
檜風呂から透明な湯が沢山溢れた。
「・・・気持ちいい・・・ね」
「そーだな・・・」
龍之介は悠理の乳房の先をそっと口に含んだ。
悠理は、龍之介の頭を抱き、小さく喘ぐようにささやいた。
「身体が・・・溶けちゃいそうだよ」
「なら、2人で・・・一緒に溶けよう」
「・・・ん。あ・・・そう言えば・・・なんか・・・忘れてない?」
「何を・・・?」
「忘れちゃった・・・」
「・・・じゃ、忘れておけよ」
「・・・ん・・・りゅうのすけ・・・キスしたい」
「オレも・・・」
「・・・あの2人、いつまでお風呂に入ってるつもりなのかしら。
あたしたちが来るって聞いてないってわけないわよね?」
可憐が仁王立ちで風呂場の入口を睨み付けている。
とは言え、邪魔するのも野暮というもの。
だったら、こんなとこまで来ることも無いのだが、結局みんな温泉好きなのだ。
「からかうつもりで来たのに、これじゃぁな」
「あてられっぱなしってヤツだよね」
「ま、放っておきましょう。それにしても、なかなかいいところじゃないですか」
「散歩でも行きません?雪の庭園がとても綺麗ですわよ」
「そうですね、そうしましょうか」
「魅録、今の時間、大浴場は混浴なんだってよ!」
「美童、混浴なんかに興味あるのか・・・?」
「うっそ!魅録は無いわけ!?」
「混浴なら、あたしは大浴場はパスよ。野梨子と清四郎にくっついて散歩してくるわ。
さて、一応、あたしたちが来てるってこと知らせとかないとね、あのラブラブバカップルに。
美童、何か書くものとメモみたいなものある?」
「ボールペンならあるよ」
「メモなら、オレ持ってる」
魅録から手帳の頁を一枚受け取り、可憐はさらさらと走り書きをした。
“蜜月もほどほどに!”
そんなこととはいざ知らず、湯船の2人はまったりと身体とくちびるを重ねていた。
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