楽園の瑕
目が覚めた。
カーテンの隙間から覗く光は、もうすでに朝を通り越して昼に近いみたいだ。
だけど今日は日曜日だから、多少の寝坊はお天道様だって許してくれるはずだろう。
・・・それにしても狭いベッドだな~。寝返りを打つのがやっとじゃないか。
もちろん、あたいのベッドじゃない。
龍之介の部屋の、龍之介のベッド。
目の前にはその龍之介の背中。
狭いシングルベッドだからこそ、こうやって手を伸ばせばすぐりゅうがいる。
それだってのに、なぁんであたいに背中向けて寝てんだ、こいつはぁ~!?
・・・なーんてな♪あたいはりゅうの背中も好きだから別にいいんだ~♪
それにしても、おっきな背中だな。
そして・・・綺麗な背中。
でも、よーく見ると傷がある。
あれ・・・あたい、こんな背中、前に見たことがあるような気がするな。
いつだったか、どっかの外国の美術館かどっか・・・それとも、どっかの闇オークションの会場だったかな?
とにかく、あたいはそういう世界中の美術品がどかっと集まった場所で見た、
ある青年戦士の裸像を思い出した。
その像はギリシャかどっかの海で見つかったとかで、全身傷だらけで、
特に背中なんてものすごく傷んでいたのだけれど、
その傷の一つ一つが、まるで戦いの名残のようで、すごく、綺麗だと思った。
そして、前に回って裸像に彫られたその深いひとみを覗いていると、
『この傷?どうってことないさ。もう痛くない』
そう言われたような気がして、なぜだか急に悲しくなって、涙が零れてきたのを覚えていた。
そして、あたいはその像がどうしても欲しくなって、とうちゃんを探しに行って戻ってきたとき、
その像はもう、どこにも無かった。
だけど、あたいは・・・本当に自分の目であの像を見たのだろうか?
今思うと、すべて夢だったような気もする。
・・・そして、あの像と同じように傷だらけの目の前の背中。
・・・ちょっと待て。あたい、何ヘンな事を考えてんだ?
この目の前にある背中も夢で、本当は存在してないんじゃないかなんて。
目の前の龍之介の背中はどう見たって本物じゃないか。
そこには、誰が見てもわかる二つの目立つ傷がある。
左肩の銃創とそこに埋まってたピストルの弾を取り出した手術の痕。
太陽と三日月みたいな形をしている。
左の脇腹の辺りにはそれでちょっと死にかけたぐらい大きな傷があって、
両方の手のひらと右手の甲、頭のてっぺんにもちっちゃな傷があるのを知ってる。
・・・だけど、あたいが理由を知らない傷も、まだこんなにもいっぱいある。
こういうすぐにもくちびるが触れそうなところから見ない限り、絶対に気づかない薄い傷痕が。
薄い傷痕といっても、決してそれは軽い傷だったわけじゃないと思う。
ただ、龍之介が大きくなったり年を取ったりしていく流れの中で、その痕が薄れてきただけのこと。
どれも、これも、今となっては龍之介にとって、痛くも痒くもない傷だろうけど、
だけど、どんな傷だって、それぞれ出来た理由があって、そして、出来たときは痛かったはずだ。
どんな状況で出来た傷なのかは、まだ聞いてない。
・・・まだ聞けない。
聞いたらあたいは多分、泣いてしまうだろうと思う。
きっとどんなに傷ついても痛くても一滴の涙も流さなかったであろう幼い龍之介の痛みに。
そしたら龍之介はきっと、困った顔であたいを慰める。
『大丈夫、今はもう、痛くないから・・・だから泣くな』
背中に走るいくつもの細い筋を指でなぞった。
もう、これ以上この背中が傷つくことがありませんように、と願いながら。
「う・・・ん」
龍之介が寝息を漏らしながら身体を動かしうつ伏せになった。
あたいはゆっくり半身を起こして、龍之介の背中をみおろした。
りゅう・・・好きだよ。大好き。
だから、あたいの傍からいなくなったりしないで。絶対に。
目の前でもぞもぞと動いている背中はやっぱり本物で、あたいはやっと安心した。
その背中を見ているうちに、あたいはだんだん悪戯っ気を起こしてしまい、
そこに飛びつきたい欲求に駆られた。当然、龍之介を起こすつもりで。
倒れこむようにして、その背中に飛びつくと、狙い通り、龍之介は目を覚まして、
びっくりしたようにつぶっていた両目をぐいぐいと乱暴に擦った。
「ゆーりぃ・・・朝から飛びつくなよぉ」
「ふふっ、おはよっ!りゅう・・起きた?」
「おはよー・・・そりゃ起きるっつーの・・・悠理のおっぱい背中に当るんだもん・・・」
「スケベー!でも・・気持ちイイ?」
あたいは龍之介の背中に裸の胸をさらに擦り付けた。
大きさには自信はないけど、この感触には自信があるんだ。
いっつも龍之介が触りたがるあたいの柔らかなおっぱい。
「ん・・ちっちゃいけど、マシュマロみたいに柔らかくて気持ちイイ・・・」
「むぅ~・・・ちっちゃいは余計だ」
「んー・・・じゃぁ、ちょうどいい小ささ」
「小ささって何だよ~?」
「だって、大きさっていうほど大きいわけじゃないもん・・・」
「バカ~っ!」
「それはそうと、起きたてにそういうことされるとさぁ・・・なんか、すごく・・・したくなってくるんだけど」
起きたての龍之介はすご~く元気。だから、あたいは“したくなってくる”の意味をすぐに理解した。
だけど、ちっちゃいとか大きくないとか言われたら、あたいだってちょっとむくれる。
・・・ふーんだ。バカ龍。勝手にしたくなってろーだ。
「したいって何がー?」
あたいがとぼけるようにそう言うと、
龍之介はまだ背中にくっついてるあたいにちらっと顔を向けた。
まだ半分寝惚けたような顔。そして、なんだか危険な男の顔。
「・・・悠理をオレで埋めたい」
寝起きの、いつもより少し低い、だがそっと響くような囁き声が、
身体の芯を蕩けさせるようにあたいの耳をくすぐる。
どうして、龍之介はこんなにあたいをその気にさせるのが上手なんだろ・・・はっ。
だっ、だめだ、だめだっ!ここで落ちちゃあたいの負けだ~!
あたいは、急に速度を速めた心臓の鼓動を、龍之介に気取られないように、
最大限の努力をして、気のない感じで応えた。
「そんな言い方じゃ・・よくわかんない」
ふふーん、あたいだってこれっくらいの演技できんだかんな~!
龍之介の片方の眉が不思議そうにくいっと持ち上がった。
「・・・んじゃ、悠理とセックスがしたい。」
りゅう・・・ちょっとそれってロコツすぎないかぁ?
だけどあたいは、あたいのことをじぃっとストレートに見つめてくるダークグレーの深い視線から、
思わず目を逸らした。だって、まともにこの視線をくらったら、あたいはきっと熔けてしまう。
「なぁ・・どうした?」
「まだ・・・わかんない」
「まだわかんないってか。
んじゃな・・・悠理のことを押し倒して、マシュマロみたいなおっぱい揉んだり吸ったりして、
オレのカチカチのアレを悠理のぐちょぐちょになった・・・」
・・・なんじゃそりゃぁっ!?
「あぁもぉ、わかったっ!わかったってば!」
あたいは慌てて手を伸ばして龍之介の口を塞いだ。
龍之介は寝惚けてるときが一番スケベだってこと、すっかり忘れてた。
「だぁって、悠理がわかんないって言うからー」
「バカぁ・・はっきり言い過ぎだ・・・」
「うーん・・確かにちょっとセクハラだったかもな。ごめん」
龍之介は背中をそっと傾けて、そこにくっついてたあたいを横に転がし、
そしてあたいの上に覆い被さってきた。
・・・なんかちょっと勝手過ぎるぞ。あたいはまだ、“したい”って言ってないのに。
「そうだ・・・キスってのを忘れてたな。」
龍之介の顔があたいに近づく。
だけど、あたいの目が開かれたまんま睨んでるんで、なんだか困った顔をしてる。
「・・・悠理、目ぇ閉じろよ」
「ヤダっ。」
「なんでー?」
「だったら龍之介はなんで閉じないんだよ?」
「男は・・・いんだよ」
「どーして男ならいーんだ?」
「なんだかわけわからんなー・・・あ。もしかして、したい気分じゃなかったか。
・・・ごめんな。朝から無理やり押し倒して悪かった」
龍之介は済まなそうな表情であたいに謝った。
そして、あたいに覆い被さっていた龍之介の重みは抜けていくように軽くなって、
あたいから離れていきそうになった。
なんだか悲しくなった。身体の半分がもぎ取られていくような、そんな気持ちになってしまった。
・・・違うよ。違うんだってば。
やだ、離れるな。あたいから離れないで。
なんだか泣きたくなった。龍之介のバカ。りゅうのバカバカバカぁ・・・。
「・・・龍之介のバカ」
妙な顔をしてるあたいの顔を覗いて、龍之介は言った。
「悠理・・・どうしてそんな顔するんだ?」
「・・・りゅうのバカ。あたいがホントにエッチを嫌がってるのか、
ただ拗ねてるだけなのかの違いぐらい判れ。」
今度は龍之介がヘンな顔になった。
「・・・離れちゃ・・ヤなんだ。あたいから離れちゃイヤなんだぁっ・・・」
あたいも起きあがって龍之介の肩に両腕を回してぎゅーっと抱きついた。
すると、あたいの身体は逆に龍之介にぎゅっと抱き締められた。
「・・・そうだな。キスの前にこんな風に悠理を抱き締めるのを忘れてた。それから言うのも忘れてた」
「・・・言うって、何を?」
「愛してる。好きだよ、悠理・・・」
再びゆっくりと押し倒されたあたいの身体は、
龍之介の肩幅ぐらいにに開かれた両腕の間に包まれるように挟まれた。
2人の間には全然隙間が無くなって、すっかりコンパクトな形になっている。
あたいに覆い被さってはいても、龍之介の身体はその両腕でしっかりと支えられているから、
そんなに重たくないけど、その存在感はすごく大きい。
龍之介はちょっとふざけながらあたいのくちびるをつっつくよう何度も何度もキスをしてきた。
なんかすごくくすぐったいけど、すごく気持ちいい。
ふとキスが止まったので、龍之介の顔を見上げると、急に顔を真っ赤にしてる。
「りゅう・・・どしたの?」
「さっき、自分があまりにもハズカシイことを口にしたことに、今更気がついた。」
「ハズカシイことって・・・あたいをどーのこーのするってヤツ?」
「そう・・・ソレ。オレって寝惚けてるととんでもねぇこと言いやがるな~」
「でも、結局今から、ソレ、あたいにするんだろ?もぉ、四の五の言わずにキスの続き!」
「だな」
再び触れてきたくちびるは、なんだかさっきよりも優しくて、すごく暖かく感じた。
次第に、そのキスの触れ合ってる時間が長くなってきて、
あたいのまぶたは自然に閉じて、くちびるは自然に開いてくる。
そうすると、あったかくて湿った龍之介の舌が、あたいのくちびるを猫みたいにぺろっと舐めてから、
そっと口の中に入り込んできた。
「んんぅ・・・」
龍之介の舌は、乱暴ってわけじゃないけど、そんなにおとなしいわけもなくて、
あたいの歯をなぞったり舌に絡んでは、あたいの吐息を乱そうとしてくる。
そんな悪戯好きな舌を軽く噛んでやると、鼻から息を漏らすようにしてりゅうは笑った。
あたいもつられて笑った。
そして、あたいと龍之介は、誰に聞かせるわけでもなく、自分達に聞かせるために、
ちゅっちゅと、バカみたいに大きな音をたててキスを続けた。
してるのが楽しくて楽しくてしょうがない、そんなキスが互いの体温を暖め始める頃、
龍之介の手があたいのおっぱいを優しく包み込むように触ってきた。
さらに指先で乳首をつまんでくりくりと転がされて、あたいの吐息がさらに淫らに零れた。
キスのつながりが解かれた瞬間に、あたいは口を尖らせて、わずかに掠れる声で文句を言った。
「さっきは、さんざんあたいのおっぱいが小さいとかどーとか言ってたくせに・・・」
「小さいとは言ったが、別にキライだとは言ってないだろ?
それに、ちょっと触っただけでこぉんなに可愛い反応してくるしさ、
キライどころか大好きなんだよ、オレは悠理のここが。
弄るのも、揉むのも、こんなふーにするのも・・・」
ふふん、とちょっと不敵に笑ってから、龍之介はあたいの尖らせてた口にもう一度ちゅっとキスをした。
それから、その顔はあたいの胸元へ降りて、あたいのおっぱいを右左交互に吸いはじめた。
キスのときとは微妙に違うくちびると舌の感触は、なんと言うか・・・
・・・優しくて、やらしい。
そこを吸われながら、ざらっとした舌の先で乳首を弾かれて、あたいはピクンと背中を逸らした。
「・・・あぁんっ、もぉ・・ばかぁ・・・」
身体を重ねる度にこんな風に龍之介にされることで、
あたいは今まで知らなかった自分の身体の“秘密の仕組み”が少しずつわかってきた。
おっぱいを触られたり吸われると、先っぽが堅くなるとか、あそこがキュッて締まるとか。
あそこも、奥のほうはちょっとざらざらしてて、そこを弄られるとあたいはものすごく感じて、
すごく濡れてしまう・・・とか。あっ・・ん・・そぉ・・ちょぉど・・今されてるみたいに。
龍之介の指があたいの中を優しく掻き混ぜるように押し広げていく。
その指先が抜き差しされるたびに、ちゅぷちゅぷと音を立ててあたいのあそこはやらしさを増す。
「あ・・悠理・・もう濡れてる・・・感じ屋さんだなぁ」
「感じ・・屋さんっ・・て・・・もぉ・・誰・・のせい・・・だぁん・・っ」
「・・・オレ。それにしても、悠理はオレを燃えさせるのが得意だよなぁ・・・」
「・・・バカぁ」
「な・・そろそろ挿入れさせて」
「・・・ん」
あたいはそっと、自分の両脚をひろげた。龍之介を迎えるために。
そんなことも、今ではそれほど恥ずかしいこととは思わなくなった。
そりゃ、まだちょっとは恥ずかしいことは恥ずかしいけど、愛される嬉しさの方が大きい。
嬉しさと・・・幸せ感、とか。
再びキスをしながら、あたいの両脚を割って、龍之介がゆっくりとあたいの中へ入ってくる。
熱くて大きな龍之介が、とろとろに溶けてるあたいの中をどんどん満たしていく。
2人を2人として別けている隔たりが、そこから融けて一つになっていくような気がする。
身体の奥深くで龍之介の存在を確かめると、あたいは閉じてた目をそっと開いた。
すると、あたいの顔を面白そうに覗きこんでいる龍之介の顔がすぐそこにあった。
「悠理・・・なーんかすごく蕩けそうな顔してる」
「・・・うそぉ」
「うそじゃないさ。まるで室温で溶けかけたバターみたいだ。
すごく気持ち良さそうで、エッチな可愛い顔してる。
いいのか?そーんな顔してるとなぁ、オレにもっとヤらしいコトされちゃうんだぞ・・・?」
「ふふっ・・されてもイイ・・・」
「んじゃ・・しちゃう」
あたいの上でゆっくりと動き始める龍之介の胸の動きに、あたいも自分の呼吸を合わせていく。
龍之介の身体を挟むように両脚を、肩に腕を絡めて掴まると、
あたいと龍之介の身体はさらに一体感が増して、あたいの身体は揺れる。
徐々に高まっていく熱と共に、あたいとりゅうは身体だけじゃなくて心も重ねていく。
肌と肌が触れ合う場所から、2人がどんどん一つになっていくのがわかる。
つま先、くちびる、指先、頬と頬。
・・・違う。あたいと龍之介は元々一つだったんだ。
だから、また一つに戻りたくて、こうやって肌を合わせて心を重ねてるんだ・・・。
「・・・ねぇ、りゅぅうー」
「・・・んー?」
「このまま・・くっついて離れられなくなっちゃったらどぉしよう?」
「そりゃ・・どうにもできねぇなぁ?だけど、ホントにそうなったとしたら、
多分、どっかの神様が、お前達はそのまま一生愛し合っててもいいって言ってくれてんだと思うな。
それなら、ヤってるしかないだろ?仲良くこんなふーにさ」
「うふふ。りゅうのえっち。」
「ふふ。悠理とくっついたまんまになっちゃったんで今日は休みまーす、なぁんて店に電話したら、
即刻、オーナーにクビを言い渡されんだろなー」
「・・・そーだねぇ?」
あたいたちはくすくす笑いあいながら、おでこをくっつけた。
そんな無邪気で他愛の無い話の間中でも、融けかけた2人のつながりは、愛の音をいっぱい響かせてて、
あたいと龍之介の感覚を高まりの一点へとどんどんと昇らせていった。
「・・・あん・・あ・・・・あ・・あ・・あぁ・・あ・・・」
イキかけて途切れ途切れに喘ぐあたいの声に、あたいを抱く龍之介の動きが激しくなっていく。
あたいに注がれるりゅうの眼差しを、痺れるぐらい感じる。
その眸は言っている。あたいを愛していると。誰よりも、誰よりも愛していると。
あたいもそうだよ・・・愛してる。龍之介のことを愛してる。
だから、だから・・・ねぇ、ちょうだい?龍之介のを、全部あたいの中に・・・。
「ゆぅ・・り・・」
「りゅ・・う・・・・ぁっ・・ぁあ・・んっ」
龍之介の身体の下であたいの身体は弓なりに反って、どちらのものともわからない汗が弾けた。
あたいに腕枕をしながら、龍之介はあたいの肌にそっと指を滑らせている。
さっきまでの、あたいを抱くという確固たる目的での愛撫とは全然違って、
何と言うか、あたいのカタチや存在を確かめようとしているような、
所在無い子供の戯れのような、そんな触り方。
真剣な顔で、あたいの二の腕やお腹をゆっくりと押したかと思うと、
おへその周りに円を描くようにくるくると指を走らせている。
自分で言うのもなんだけど、無駄な肉はまったくついてないあたいのまっすぐなお腹は、
龍之介の指先が与えてくる軽い圧力をそっと跳ね返す。
「な・・・女の子ってなんで出来てる?」
それまで黙ってあたいに触っていた龍之介は、急にそんなことを聞いてきた。
あたいをなぞる手の動きをただ、じっと見ていただけのあたいは、
龍之介の聞いてる意味がすぐにはわからなくって、その顔を見上げた。
「なんで出来てるって・・・どーゆう意味?なぞなぞかなんか?」
あたいの問いには、ただ首を横に振るだけで、
まるで子供がものを尋ねるように、龍之介はあたいに質問を重ねた。
「女の子は・・・っていうより、悠理はなんで出来てる?」
「ますますわかんないよー?でも、なんで出来てるって言うんなら、
あたいは・・・多分、龍之介と同じモノでできてるんじゃないの?肉とか、骨とか?」
「オレと同じ?嘘だね。第一、オレの身体はこんなに柔らかくないし、甘い匂いはしないし、
いつでもキスしたり触ってたりしたいとか思ったりしない。
悠理の身体は、マシュマロとかグミとかそういうお菓子や、シナモンや蜂蜜なんかで出来てんだ。
そーだろ?そーに決まってる」
龍之介はますます子供っぽい言い方をして、あたいの身体を自分の方へぐいっと引き寄せた。
「えぇー?違うよぉ・・・それに・・・」
それに、あたいだって、龍之介の身体にだったら、いっぱいキスしたり触ってたりしたいって思うよ?
柔らかくはないけど気持ちいい硬さだし、いい匂いだし、おっきくてあったかくて、あたいは大好きだよ?
そう、言おうとしたとき、まるでどこかをギュッと締め付けられているように、龍之介の声が悲しく聞こえた。
「・・・違わねぇ。そうじゃなきゃ、こんなにいつまでもいつまでも抱き締めていたいとか、
ずっと、ずっと離したくない、傍にいて欲しいなんて、どうして思うんだよ・・・くそっ。
なんでオレはこんなにお前に惚れてんだ・・・」
そう言うと、龍之介は急にあたいのおっぱいに顔を埋めると、そのまま何もしないでじっとしていた。
龍之介の形のよい鼻の頭が、あたいの両のおっぱいの真中に擦り付けられるように当る。
吐き出される息が、あたいの肌をじんわりと湿らせる。
「りゅう・・・どうしたんだ?」
「・・・どうもしない。どうもしないけど・・しばらくこうしていたいんだ・・・ダメか?」
「いいよ・・・わかった。」
いきなり溢れるように湧き出したあたいへの想いが、どうにもできなくなってしまったんだろうか。
あたいがさっき、龍之介の背中を見つめていた時のように。
さっきまで・・いや今だって、2人は誰よりも幸せな時を共にしているというのに。
だけど、あたいと龍之介は知ってる。この瞬間は永遠じゃないってことを。
これから先、ずっと2人で一緒にいられたとしても、それは百年にも満たないということを。
それどころか、心無い運命がもしもあたいと龍之介を引き裂こうとするのなら、
明日にでもあたいたちの未来は無くなってしまうにちがいない。
だけどそんなの、ただの杞憂に過ぎないってことは、龍之介だってわかってるだろ?
明日は明日でちゃんとやってくるし、龍之介はあたいを愛していて、あたいも龍之介を愛してる。
それでも、訳も無く心が痛くなってしまうのはどうにもできないんだ。
大事な人を幾度となく失ってきた龍之介は、ごくたまに、子供のように臆病になってしまう。
いつか、あたいを失ってしまうかもしれないということに。
・・・泣ければいいのに。
涙を零せば零した分、きっとすっきりするだろうに。
だけど、ずっと泣き方を忘れていた龍之介は、やっぱり泣き方が下手だ。
料理を作るのと同じように、上手に涙を流すことができていたら、
多分、龍之介はこれほど強い人間になどならなかった。なる必要なんかなかったはずだ。
背中と同じように心にもいっぱい傷を負ってきたから、誰にも弱みを見せないようにしようって、
強い男になろう・・・って、そう思って生きてきたんだろ?
そう聞く代わりに、あたいのちいさなおっぱいに顔を埋めてる龍之介の頭を、あたいはそっと抱き締めた。
・・・大丈夫。あたいは龍之介が弱さを持ってることを誰にも言わない。
だから、あたい以外の他の誰にもこの弱さを見せないで。
りゅうが未来を恐れる小さな子供になってしまうのなら、あたいはどんなものからだってりゅうを守るから。
ささくれをおこした龍之介の心は、ゆっくりとその痛みを鎮めていったようで、
龍之介は、小さく、囁くようにあたいに言った。
「・・・ゆーりといると安心する。ありがと・・・」
龍之介はあたいのおっぱいに埋めていた顔を上げると、
痛々しいぐらいに優しく笑って、あたいの目許に心のこもったキスをくれた。
龍之介はやっぱり泣いてはいなかった。
・・・泣いていたのはあたいの方だった。
|
時として、もう面倒くさくてやめてしまおうと思うこともあるのだけど、
他のカップリングと違って、この2人は芥川が書かなきゃ誰も書かないわけだし、
(そりゃ、筋金入りのオリキャラ使いだもん当り前なんだけど)
この2人が、こんな風に切ないことを考えているのだとしたら、
ちゃんと、幸せな続きを書いてやんないとな・・・と思う。
・・・う~む。
こんなことを考えてしまうこと自体、
なんかやっぱり芥川ってどっかイタイ。
・・・とか、思わないでね。(w いや、やっぱイタイか。
それにしても、最初は軽いエッチのノリで書くつもりが、
なんかちょっと重たくなってしまったな。
これ、龍は龍で全然別なこと考えてたらヤダね。んなこたねぇと思うけど。
題名は昔見た映画のタイトル。
内容は全く忘れたけど、このタイトルはすごく好きだ。
“完全なるものの綻び”、みたいに矛盾した感じで。
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