七夕のお願い
『しょうがないじゃんか、出張中なんだからさ』
「そうだけどぉ・・・いつこっち戻ってくるんだ?」
『ん?明日の便で戻るよ』
「・・・何時ぐらい?」
『何時になるかなぁ?買い付けも全部終わったし、すぐに帰るのももったいねぇもんな~』
そんな呑気な返事に、悠理は剣菱家の自分の部屋のベッドに転がりながら、携帯電話に向かって少しだけほっぺたを膨らませた。
「どうせ、鮨とかラーメンとかカニとかスープカレーとかスープカレーとかスープカレーとか食べてから帰ろうとか思ってんだろ~!」
『あはっ、ばれた?』
もうっ・・・仕事終わったんなら、すぐ帰ってくればいいじゃんか~!
電話の向こうは龍之介。
彼は今、レストランのオーナーの代理で食材の買い付け契約のために北海道に出張中なのだ。
北海道といえば食の宝庫。
・・・あたい並に食いしん坊の料理人がいろいろ食べ歩かないでどうするって場所だってのはわかってるけど~!今日は何の日かわかってんだろ?もう少しで日が変わっちゃうけど・・・。
『そういやぁな、こっちは七月七日が七夕じゃないんだってさ』
「こっち、って北海道全部?」
『いや、全部じゃないみたいだけど、札幌は八月なんだってさ。東北にもそういうところあるよな。
ちっちゃな子たちが『ろうそく出せ出せ』って近所の家を回るんだって。
ろうそくって言っても今はお菓子をもらうらしいんだけど。なんか、ハロウィンみたいだろ?』
受話器越しに聞こえる龍之介の声はいつものように優しい。そしてすごく楽しそうだ。
だが、部屋に飾られた短冊が吊られた笹の葉が揺れているのを目で追いながら、悠理は小さくため息をついた。
龍之介が遊びで北海道に行ってるわけじゃないのはわかっている。
でもやはり、思ってしまう。
夜空の恋人たちが年に一度の許された逢瀬の日に、どうして自分は恋人と一緒じゃないのだろうか、と。
『・・・悠理?』
電話の向こうの悠理の小さな沈黙に、龍之介がちょっと心配そうに悠理の名を呼んだ。
その声に、悠理はちょっと反省した。
「ごめん、あたいの我が侭だってわかってるんだ・・・だけどやっぱり、七夕は龍之介と一緒にいたかった」
『そうか・・・』
しばしの沈黙の後、龍之介が受話器の向こうで口を開いた。
『悠理は、オレがいなくてそんなに寂しいのか?』
「さっ寂しくなんかっ!!!」
『ない?』
「・・・・・・・・・・・・・・ある。すんごくさみしい」
『そっか。』
正直に素直な気持ちを口にした悠理は、受話器の向こうに優しく微笑んでる龍之介が見えたような気がした。
『しょうがねぇなぁ。わかったよ・・・じゃぁ、今からオレ、悠理の傍に行くから』
「傍に行くって・・・?どういう意味?今から帰ってくんのか?ヒコーキあんのか?」
『・・・そーじゃなくてさ。今から目ぇ閉じて。悠理の手は今からオレの手になるんだ』
「・・・あたいの手が~?どーやって?」
『まぁ、深く考えんな。いいか?オレは今から悠理のコト抱っこすんだかんな?
悠理の右手は今からオレの手・・・』
悠理は龍之介に言われるまま目を閉じると、ベッドに横たわったまま携帯を耳と肩に挟み、右手で自分の左の頬に触れた。
『・・・触ってるか?』
「ん・・触ってる」
『・・・いいか?オレが触ってるんだぞ?悠理の身体に触ってるのはオレの手だ』
「龍之介の・・手・・が・・・あたいに・・・」
それは確かに自分の手の感触であったはずなのに、耳元へ囁かれる言葉は、悠理に暗示を掛けていく。
まるでその手が、本当に龍之介の手であるかのように。
『悠理のほっぺた、柔らかくて暖かくて気持ちいいな・・・』
「りゅ・・うぅ・・・」
『くちびるも柔らかいな。キスもしたいところだけど、今は触るだけな?』
悠理の右手は龍之介の言葉に操られるように、悠理の頬からくちびるへと移動し、少しだけ指を濡らした。
「・・・んん・・・」
『・・・なぁ、悠理、今どんな格好してる?』
「どんなって・・・さっきお風呂入って・・・後は寝るだけだから・・・普通にパジャマ」
『・・・ふぅん』
「んな・・なに・・・?」
『今から悠理の身体に触る』
「う・・・っえぇっ?」
しかし、龍之介の紡ぐ言葉の糸に、いつの間にか絡めとられていた悠理には、最早、その甘い囁きから逃れる術はなかった。
『・・・触るぞ?』
「んっ・・・」
パジャマの上から触れる小さな膨らみは、布の上からでもわかるぐらいにその先を固く尖らせており、悠理は自分がいつの間にか、この行為に興奮を覚えているということに気づいた。
頭ではわかっている、ハズだった。
自分の身体を撫でているのは龍之介ではなくて、自分自身。
だが、身体はもう、どうしようもなく龍之介の愛撫を求めていてしまっている。
龍之介の言葉が、本当に自分の手に魔法を掛けて、龍之介の手になってしまってるのかもしれない、
と本気で思いたくなって、思ってしまいそうになっていて・・・。
『・・・先んとこ、固くなってんな』
「・・・やぁ・・ん・・・なんッ・・で・・・っ」
・・・わかるんだよぉ。
悠理は自分がどれだけいやらしい喘ぎを漏らしているのか、まったくわかっていない。
その声が、電話の向こうの龍之介をどんどん焚き付けていることも。
『・・・悠理に触ってるのはオレなんだぞ?わかんねぇわけねぇだろ。パジャマ・・捲るからな』
やはり、言われるままに悠理は自分のパジャマを捲り上げた。
パジャマの下から、ツンと天井を向いて立ち上がっているピンク色の部分がふたつ見えて、少し恥ずかしい。
『・・・可愛いぞ』
まるで見えてるかのように、龍之介が言う。
「・・・ばかぁ」
悠理の手がまた勝手に動き出す。本当に龍之介の意志を持ってしまったかのようだ。
指先がピンク色の部分をつまむと、悠理は軽く息を飲んだ。
「・・・あぁあぁんっ」
指先は、いつも龍之介がするように、悠理のその感じる部分を弾いたり揉んだりと、悠理の身体の奥を翻弄していく。
『悠理・・気持ちいいか?』
「ん・・っ・・いいっ・・りゅう・・・っ」
『んじゃ・・今度はパジャマの下の方も脱ごうな♪』
「し・・っしたもぉ・・・?」
しかし悠理の手はいつの間にか、パジャマとパンツに掛かっていて、柔らかな絹糸の感触に指を埋めていた。
『・・・悠理、濡れてる?』
「・・・ぬ・・れて・・なん・・か・・・なぁいっ」
『・・・ぅ~っ、あぁっ、もぅっ』
不意に電話の向こうの龍之介の声のトーンが変わった。
「・・・りゅ・・う?どした・・の?」
『・・・悠理、今晩はここでお終いだ』
「えぇ・・っお終いって・・・」
『続きはちゃんとオレがする!・・・明日、一番早い便で帰るから!じゃなっ、おやすみ・・っ!』
「ん・・・おやすみぃ。」
慌ただしく切れた電話を傍らに転がして、悠理はベッドに大の字になってふぅっとため息をついた。
思いの外、そのため息が色っぽくなってしまったのに驚く。
気が付けば汗ばんだ身体がそこはかとなく、淫靡な空気をはらんでいる。
・・・なんか、ホントに龍之介とエッチなことした後みたい。
・・・りゅうのばかぁ。あたいのこと、こんなにしておいて・・・。
だが、近くにいないはずの龍之介のことを傍に感じることができて、いやな気持ちはなかった。
目を開けると、再び、部屋に飾られた笹が目に入る。
そこに吊されたいくつかの短冊。
いくつになっても、ついつい書いてしまう願い事。
いつもは、『△△の○○が食べられますように~』という内容がほとんどだったのだが、いや、もちろんそういう内容のが無いわけじゃないが、先ほど、誰にも見られないように悠理がこっそり吊った短冊には、
『龍之介が早く帰ってきますように』と書かれていた。
・・・なんだか叶っちゃいそうだな、願い事。
明日、起きたら龍之介が帰ってくる前に龍之介の部屋に行ってよーっと。
・・・早く続きして欲しいからじゃないぞ!早くお帰りなさいって言いたいだけなんだかんな~!
・・・なんてな。
悠理は小さくあくびをした。
わずかに熱を残した身体が、深い眠りを誘ってきたのだ。
悠理はそのままゆっくりと眠りに落ちた。
・・・さて、その頃。
「うぅ・・・悠理のやつ、あんな声出しやがって・・・可愛すぎだ。帰ったら絶対ぇ寝かさねぇ」
札幌のホテルの一室から、電話越しに悠理に悪戯をしていた龍之介君は何をしているかというと、電話から聞こえてくる可愛い恋人の声に、ついつい自分が興奮してしまって、ちょっと収拾のつかない何かを抱えて一人、バスルームで冷たいシャワーを浴びながら悶々としていたとか、いないとか。
|
龍タン、いつの間にエロオヤジに?あぁ、前からか。
まぁ、バスルームで健全な青少年してるけども。
それにしても、七夕ネタだったはずなのに、電話エッチって・・・。
札幌新名物・スープカレーは美味いんだ、マジで。
龍タン、帰ったら悠理ちゃんに作ってやって。
・・・いや、まず先に“続き”するんだろうけどさ。
テレワークならECナビ Yahoo 楽天
LINEがデータ消費ゼロで月額500円~!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル