人間一人が立ち上がっても、まだ空間の余る大きなケースの中に、全裸の男が入れられていた。
ケースの外側からは中の様子が、まるでそこに仕切りなどないように鮮明に見え、専用の耳当てを当てると、内側の音も知る事ができるが、
内側からは、外の様子は見えないし、一切の音も聞こえない。
だから中の男には、ケースの外側で、きらびやかな衣装やマスクで顔を隠した幾人かが、彼の様子をじっと眺めている事はわからない。
男は年は三十の半ばといった所だろうか。
その肢体は、痩せこけて背が曲がっているのでもなく、太ってぶよぶよの腹を出しているというわけでもなく、
逞しい体躯に引き締まった筋肉が見事だった。
透き通る緑色の瞳が、実際の年齢より彼を若く見せているように思える。
だが、ケースの中の彼は、醜い触手の化け物につるされ、弄ばれて、その顔には苦悶の色を浮かべていた。
彼は数時間前、自らこのケースの中に入った。
祖国が敗戦し、本格的な侵略を受ける前に、貴族だった彼は妻子と共に亡命を試みたが、
その道中、正体不明の男達に捕まり、この場所に連れてこられたのだった。
彼らは言った。
このケースの中に一生居続ける事を誓うなら、妻子の命は助けてやると。
例えどんな目にあわされる事になっても、大切な妻子の命を握られていたため、彼は断る事などできなかったのだ。
「ん…ッうんぅ……!」
触手で四肢の自由を奪われている彼はこの数時間、ただ乳首と性器を触手達に刺激され続けていた。
宙に浮いた彼の体の下の床には、何度も強制的に射精させられて、放出した体液が白い水溜りを作っていた。
「んぐ……ッ!」
彼の筋肉質な尻を割って、醜い触手が無理矢理入り込む。
男の腕程もある太い触手の先端は、男の性器と酷似していた。
「ひ…ぎぁああ……ッ!」
未通の体に、いきなりそんなものを入れられて、尻の孔が切れた。
その痛みに彼は、今まで数時間必死に唇を噛んで耐えていたが、思わず叫んだ。
「あ…う……っ」
だが、裂けた孔に、触手が治癒作用のある体液を塗り込むと、その傷はすぐに塞がった。
その太い触手は、滑りよくするために粘液を分泌しながら、男の尻の中をそのままかきまわした。
「あう……ッ!」
気持ち悪くて、彼は触手に拘束された体をくねらせたが、ある一点を突かれた時、甲高い声が出た。
自分の意思が効かず、体がびくんと反応してしまう箇所。
触手は彼の前立腺を見つけると、そこだけを執拗に刺激した。
「ああ……ッ!あ……っ」
変色するまで噛んで、声を出すのを堪えていた唇から喘ぎが洩れ始める。
「やめ…く……あぁ……ッ!」
触手が分泌していた粘液に、媚薬の効果があるせいもあり、苦悶に満ちていた男の瞳に、やがて快楽の色が浮かび始めた。
萎えていた陰茎が、再びびくびくと反応し始める。
「あ…はああ…ッぁあん……!」
尻に性器のような形のものを入れられて、快感を感じて喘いでいる自分がたまらなく恥ずかしかった。
屈辱だった。
だが、彼に与えられる地獄はここからだった。
「んぐ……ッ」
今度は口にも触手が入りこんできた。
「んん…ッんう……!」
苦しくて、息がつまるのに、その触手が侵入の動きを止める気配はない。
さらに、尻の孔を犯している触手も、徐々に腸の奥へ奥へと進んでいる気がする。
「んぐううー…ッ!?」
口の中の触手が、食道を通り過ぎ、胃の中にまで達した。
後孔を犯していた触手が、形を変え、腸をうぞうぞと這い上がってくる。
「………ふ……ッ」
口の中から入った触手が腹の中で、後孔から侵入した触手と絡まりあう。
「んぐううぅぅぅ……ッ!」
男の引き締まった腹が大きく膨れていく。
中で、びゅるびゅると、触手達が蠢いている。
彼の腹の表面を見ても、びくびくと波打つ皮膚が、その内側で何かが脈打って、這い回っているのが分かる程。
腹を犯されるあまりの痛みに、男は塞がれた口から獣の吼え声のような呻きを洩らした。
「ん…ひぅ…ッ…ひぎいぃぃぃ……!」
胃の中に、腸の中に、ぶちまけられる液体。
触手の催淫作用のある体液。
男の内臓すみずみまで染み渡り、彼の外側だけでなく内側さえも性感帯に変えてしまった。
熱いそれが、彼の腹が妊婦のように膨れるまで、吐き出される。
「んいぃ…ッ………!ぁ…ひいぃ……!」
痛みなのか快感なのかわからない刺激に彼は白目を剥いた。
触手が入り込んでいる唇の隙間から、涎があふれ続ける。
「ひぐ……ッ!」
腹の中に感じる新しい痛み。
蛙が潰れたような声が出る。
彼の思考はどこかに飛んだ。
膨れた腹が裂け、中に溜められた透明な体液が、彼の血に染まって飛び散る。
破れた皮膚から見える腹の中の触手達は、彼の内臓を喰っていた。
「ひい……ひぎいぃ……ッ!」
露出した内臓に、他の触手達がうねうねとくねりながら寄って来る。
べろりとはみ出た大腸や小腸の塊に、たくさんの触手達が興奮に膨れ上がった自身を夢中ですりつけて、射精する。
血まみれの肉片が白く染まっていった。
肝臓や膵臓、胃に、幾本もの触手達が自身を突っ込んでかき回していく。
破れた臓物から男の体液が滴った。
そのぼろ布のようになった彼の内臓の破片を、触手達は我先にと、食い荒らしていった。
彼の血と体液と、触手達の体液が混ざり合って、ぐちゃぐちゃと気味の悪い音が響く。
「……は……ッぐぇ………!」
彼は、白目を剥いたまま、全身をびくびくと痙攣させていた。
陰茎からは、小便を漏らしていた。
内臓を喰われながら、犯されて、死んでしまった方が遥かにましである程の痛み。
その痛みを全身で感じながらも、内も外も性感帯になった彼の体は同時に快楽を感じていた。
「ふぐぅ……ぁぐ……ッ」
触手達は、彼のはらわただけでは足りなかった。
今度は白目を剥いているその眼球に吸い付いた。
触手にぶしゅっと繰り抜かれた白い球体から、視神経が尾を引く。
納まっていたものがなくなって、ぽっかりと空洞になった眼窩に、貪欲な触手が侵入して、猛り始めた。
「ひぅ……ッ」
人間の男性器のように勃起して、彼の眼孔の中を犯す。
ぐちゅぐちゅと肉のかき回される音。
「は……ぐ……っ」
その眼孔と繋がる脳は、また別の触手が、彼の頭蓋を酸性の体液で溶かして侵入し、犯していた。
脳味噌をえぐって、かき回して、その快感で射精しながら進んでいく触手は、
眼窩から侵入して同じように彼の眼孔内で射精した触手と、頭蓋の中で絡み合った。
男は声はもう出していなかった。
ただ、人間の原型を留めていないぼろぼろの体は青ざめ、変色し、ぴくぴくと小刻みに痙攣していた。
「………」
虫の息で痙攣している彼の、深紅に染まった体。
血が溢れ、床に赤い池を作っている。
皮膚ははがれ、腹は破れ、内側からも外側からもかき回されて食い尽くされて、
原型を留めていない引き裂かれた内臓の塊が、びちゃびちゃと零れていた。
美しい翠緑玉の瞳は抉られ、輝くような金髪は、溶かされた頭皮や頭蓋骨と共に、背中までずり落ちていた。
かつて目だった暗い穴から、眼球の残骸があふれ出し、割れた頭蓋からは脳漿が滴っていた。
それでも彼は、まだ辛うじて生きていた。
もう次の瞬間には命が尽きるかもしれなかったが、まだ生きていた。
触手達は、その肉塊となった体に、体液をかけた。
それは初めての挿入時に、彼の後孔が裂けた時にかけられて、瞬く間に傷口を治癒したものと同じ。
「ぎひ……ッあああぁぁ…っ!」
今度は急激に肉体が再生されていく痛みに、意識が途絶えかけていた男は、再び覚醒した。
「い……ひぃあ……あぁぁ……ッ!」
切れ端となっていた内蔵が、再び増殖して元通り厚みを増していく。
砕けていた骨が、溶かされていた頭蓋が、再び形作られていく。
断裂していた筋肉が、再びまとまっていく。
裂けていた皮膚が、再び肉を覆っていく。
「あ……っあ……っ」
完全に元通りになった男の、美しい体に、再び触手達が寄っていった。
「ん……ぐ…あ…ああ……ッ」
再度、同じように与えられる快楽に、彼は再び涎を垂らし、喘ぎ続けた。
彼の脳裏には、再び先程のように、体内から犯され、喰われ、そしてまた、再生させられる事が浮かんでいたが、逃げる術はなかった。

「これは素晴らしい」
”輪廻の間”と書かれているプレートのかけられた、ショーケースの前に佇む男女達。
この店―Paraphilia―には、夜な夜な、男女問わず様々な性癖の持ち主が集まる。
彼のショーケースの前に集まったのは、大の男が苦痛に悶える様を好む者や、ただ血に染まり肉塊と化していく人間を眺めるのを好む者。
入店時に貸し出される衣装で、マスカレイドのように、扮装して仮面をつけて、正体を隠す。
互いに素性を明かしたり、また追究することは、決してしてはいけない秘密だらけの店。
「やはり親子だな、よく似ている」
金の髪と翠緑玉の瞳。
自分の入れられているショーケースの横で、記憶も理性も失って、同じように触手に責められ喘いでいる息子のことも、
”麗像の間”というプレートがかけられたケースの中で、剥製にされて飾られている美しい妻の事も、彼は永久に知る事はない。


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