首を絞める場合と、吊る場合の違いについて。
前者の場合、死因は気道が塞がれる事による窒息死が多いが、後者の場合は
、脳にいく血液が遮断されて脳内が酸欠状態になったためである場合が圧倒的
に多い。脳に血液を送る動脈は2種類ある。頚動脈と脊椎のわきを骨に保護さ
れながら上がっていく椎骨動脈だ。首を締める場合は、頚動脈はふさがれても
骨に守られた椎骨動脈はふさがれない。
ところが首をつる場合は、斜め上方から首がひっぱり上げられて角度がつくた
めに両方が同時にふさがれ、瞬時にして脳への血液供給が止まる。
その差は死体を見ればよくわかる。首を締めた死体の多くは、椎骨動脈によ
る脳への血液供給が続けられるのに、逆に脳から血液を送り出す頚静脈がふさ
がれているので顔が紫色になって鬱血しているが、首吊りの場合は、ほとんど
鬱血が見られないのだ。
さて、ここまでわかったところで、首を吊る高さの問題に戻ろう。首を吊る
場合、血圧が170mmHgの人なら頚動脈は3.5Kg、椎骨動脈は16.6Kgの
チカラでふさがれる。足が床について膝が曲がっている程度なら、全体重の70
〜80%、膝が床についていても体重の20%くらいの重量は首にかかる。たとえ
ば、体重が60Kgの人が膝をついて首を吊った場合、首にかかる力は12Kgで、頚
動脈はもちろん完全にふさがれる。椎骨動脈については完全にふさぐまでは至
っていないので、わずかながら脳に血液が流れるが、これも時間の問題で、単
純に首を締めたときに比べれば数段まし。多少失神が遅れる程度で、未遂に終
わるようなことはない。つまり、首にかかる力が20%程度でも、首にきちんと
角度がついてさえいれば、完全に身体をぶら下げなくても死ぬのは簡単という
ことだ。