セリフ





「わたしはあなた様のことを・・・」


接近したリョーマの顔と桜乃の顔



「カットカット!!桜乃ぉ そこわたしが考えた最高のクライマックスよー
何度やったら覚えられるのー?!
違うシーンやるから覚えなおし!!!村人ABC入って」



なにやら怒られている桜乃


こうなったわけは2週間ほど前に
さかのぼらなければならないようだ













    ―――――――――――――――――――――――――















「リョーマくんーーー!!」


超スピードで(といっても遅い)
教室に駆け込む少女 竜崎桜乃


「そんなに急いだらこけるよ 竜崎
何かあったの?」


桜乃ならやりかけない


「とにかくきてぇー!!」



学ランの裾をひっぱって連れて行く

伸びるってば とか言いながらどこに連れていかれるのか
少し胸をときめかせる越前リョーマ





連れていかれたのは
下足場正面の新聞部の掲示板前
しかも うじゃうじゃ人がいる
リョーマはがっかり



「あれっ あれ見てよぉ」



『青学を誇る硬式テニス部ルーキー越前リョーマ!!
放課後 彼女らしきR・Sと歩くのを目撃っ
あの強さは彼女のおかげなのかーーーー!!?』


こんな長い見出しが書いてある


青学中等部新聞部は
1ヶ月に1、2度 不定期に青学新聞(そのまんま)を発行している
いつもは『校長先生のお言葉』などがメインで
生徒のハートを奪うものではなかった
リョーマを使って挽回といったところ



「これが何?」


「何って・・・/////////」


「本当のことなんだからいいじゃん」



『あの強さは彼女のおかげなのかーーーー!!?』
この部分も『本当』だと言いたいのだけれど
桜乃は気付いてくれない



「恥ずかしいよぉ」



「ねぇ あれ越前くんじゃない?」

「隣の子・・竜崎桜?だっけ?」


掲示板に集まっていた一同が一斉に2人を見る


桜乃の顔がみるみるリンゴ色に


「っ逃げよう 竜崎」

「・・ん」



桜乃の手をとりその場から飛び出す


キャーとかヒューヒューとかいうのが聞こえる

リョーマは 隠すつもりはなかったし
これで大衆の面前でも
大胆なことができるしちょっとおいしいかもと思っている





その日から2人は青学の有名カップルとなった
何十人のリョーマファンクラブの会員が泣いたかわからない
しかし リョーマファンクラブは
『リョーマ様と竜崎さんの恋を応援しよう〜〜ナンチャラ』
とかいうのに名前を変えたとか






青学祭という年に1度のビッグイベントを
3週間前に控え
クラスリーダー(学級委員?)の小坂田朋香が
なにやら おもしろそうな提案をした
(提案というより 彼女が言うことには何でも従う
団結力抜群のクラス(?)なのだ)



「ええっと、このクラスは 劇をしようと思います」


いつもは静かなクラスメイトも
年に1度のこの大行事
朋香の思い通りにはさせまいと
「えーー?」「まじかよ」などの
(でもやっぱり怖いので)控えめな批難をする



「おっほんっ このクラスとしてはやっぱり 『青学祭最優秀賞』をはじめ
いろんな賞を総なめにしたいと思います
だ・か・らvvなんとこのクラスには 今大ブレーク中の
越前リョーマ様と竜崎桜乃がいるわけですし
その2人にあつーいLOVEストーリーをやってもらってですね
票を勝ち取るってわけですよ!!!」


朋香のこの力説には
先ほどブーイングしていた生徒もみんな
「おぉ」と感動の様子


「いいですよね?リョーマ様?桜乃?」


「あっあたし劇なんて・・」


「できるわよね?桜乃?」


朋香の微笑みがおそろしい


「オレはどうでもいいけど」


「はい じゃぁ超甘アマラブストーリーに決定☆ ええっとちなみに台本はもうできてます
題名は『運命を乗り越えて』ですっ
我ながらよくできてるなぁって思ってますvv 明日からもう練習入るんでーvv」















    ―――――――――――――――――――――――――
















今に至る



「それにしてもありきたりだよね  王子と村人の恋とか」


「そんなことゆっちゃだめぇ  朋香ちゃん寝ずに考えたんだって」


「これが?ふーん
ねぇ それにしても何であそこの台詞言えないの?」


『わたしはあなた様のことを ずっとずっと想っておりました』


「だって・・・////////」


こんなシャイな桜乃に言えるはずもなく


「別にさ 堅くなんなくても
いっつも思ってる気持ち言えばいいんだから簡単じゃん?」


リョーマ強し


そうなんだけど・・・と口にしかけて
でも何だか悔しいので言わないでおく



「何なら練習の相手しようか?」


意地悪そうな笑み


「しっしなぁい!!!」


もうやけだ








とうとう本番まで言えることはなかった






「桜乃?いい?優勝はアンタにかかってんのよ?
わたしが考えたあの最高の台詞vv
『わたしはあなた様のことを ずっとずっと想っておりました』
これ!!これが言えればもう優勝はもらったも同然なんだから!!」


「・・うん」




練習に出来なかったことが 果たして本番に出来るものなのだろうか





「観客なんてみんな かぼちゃよ かぼちゃ!!!」


演出家 朋香がみんなの緊張をほぐしている
が・・
桜乃は不安でいっぱいだった


「・・かぼちゃ・・嫌いだし・・」







とうとう幕が開き

『運命を乗り越えて』が上演スタート


順調なすべり出し

あの桜乃でさえも、ちゃんと台詞が言えている


リョーマの登場で観客が大騒ぎして声が届かないというハプニングも
リョーマがアドリブをきかせていた




「うるさいんだけど 静かにしてくれない? これ王子命令」





たんたんと場面が展開

問題のあのシーンが迫ってくる


「竜崎 大丈夫?」


「うん・・多分・・」


「ふんっ 素直な気持ちいやーいいんだからさ」


舞台が暗くなり
2人は中央へと向かう そして
オレンジ色の照明が2人を照らす



素直な・・・か・・・








「ベッキー!!」(注:村娘の名前)


「フランソワ王子・・・」注:王子の名前)



ロマンチックなBGMと共に2人は近づいていく


る〜る〜♪



「あたしはあなた様のことを・・・・」


クラスメイト 皆 息を呑む
朋香なんかは神に祈り始めていた




















「・・・・ずっと・・・好きでした////////////」


















一同唖然



リョーマは顔を真っ赤にしてコチコチに固まっていた













ここからは全員出てきて祝福パーティをやる という流れのはずだった


「幕下ろしてーーーーーーーー」

という朋香の声は
前の席の人たちには聞こえたとか










桜乃による恥じらいながらの素直な告白が

『めちゃ可愛かったーーvv』とか
『マジで 告白現場に遭遇した気分になれた』とかで
大盛況

また
リョーマのリアクションも

『あんなリョーマ君は・じ・め・てvv』と先輩たちに大人気だったし(女)
『越前リョーマの弱みを握った気分になった』と、これまた先輩たちに大人気(男)





『運命を乗り越えて』は大成功を収めたのだった




すべての賞を総なめ・・というわけにはいかなかったものの
堂々の青学祭最優秀賞を獲得!!

桜乃に関しては
『ミス ブループリンセス』に

リョーマに関しては
『ミスター ブループリンス』に選ばれた









「やっぱりわたしのとっさの判断のおかげよねー
いや、でも!!桜乃っよくやった!!」


「うん、ありがとう///」


終わりよければなんとやら


「ホント、竜崎 ビックリしたよ
素直にとは言ったけど、あんなに本気で言うんだもん ドキドキしちゃった
ねぇ 竜崎、もう一回ゆって?」


「いーーーやーーー」









<おしまい>








































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