「無言の会話」


 

 

 

 

 

ブルッ・・・ ブルルッ・・・

 

桜乃はビクついた。

 

今は授業中であり、何人もの生徒が先生の話を聞いているわけで。

そんな中、桜乃のポケットに入っている“何か”が震えたのだ。

「・・・・・〜〜っ!」

言葉にならない焦りを感じながらも、桜乃は辺りを注意深く見渡した。

幸い、隣に座る男子生徒は学級委員を務めている為、今は真剣になって黒板に向かっている。

前は女生徒であるが、決して授業中は振り向いてこない。

後ろ・・・はだらしのない生徒であったため、今は熟睡モードだ。

 

一応・・・万全?

 

桜乃はひっそりと左ポケットに手をやった。

初めて、一番窓際の席で良かったと思う。

「・・・・・・・・・・。」

パカリ・・・と小さな音を鳴らして携帯を開いた。あまり下を向くと変に思われるので、

携帯は机の下に画面を開いたまま忍ばせておく。

先生が黒板に向かい、文字を書く間がチャンスだ。

「・・・え〜・・・この文体は良く使われるものなので覚えておくように。

特に古文はよく勉強すること。今から注意点を書くからな。」

先生が教科書を片手に黒板にサラサラと書き始めた。・・・今だ!

桜乃はバッ・・と机の下に手をやり、携帯の「受信メール」のボタンを押した。

「・・・・やっぱり・・・・。」

ポソリと呟き、桜乃は来た文章を黙読する。

言うまでもないが、送り主は越前リョーマだった。

 

 

 

 

暇・・・・。

リョーマの席は窓際の一番後ろ。

先生に最も見えにくい場所である。

はぁ・・・と欠伸を漏らしながら、頬杖をついて窓の外に目をやった。

(つまんね〜・・・・)

現在、授業内容は英語。リョーマにしてみれば最もキライな教科。

幼児の頃から外国に居たリョーマにとって、英語は日常会話のようなもの。

それを、一から覚えさせられるのだ。

なんともつまらなく、なんともキライな科目であろうか。

「・・・・あ・・・・・。」

そんなこんなでリョーマが何気なく外を眺めていると、どこのクラスかも学年かも知らないが、

とにかく女子がバレーボールの練習をしていた。

ある生徒がポン・・・とボールを上げ、それを相手がレシーブする・・・筈だったが、

その女子がボールを怖がって打てない姿が、妙にリョーマには印象的だった。

(・・・・似てる・・・・・)

ププッ・・・と笑いそうになったけれど、一応平常を保つ。

続いて、その先ほどボールを怖がった生徒がヤケになってサーブを打った・・・が

どこに当たったのか・・・ボールはとんでもないところにすっ飛んでいき、リョーマの目では

追えなかった。

「・・・・ブッ・・・・・」

思わず声を出してしまった。

 

「・・・・・越前!何が可笑しい?」

などと注意されるかと思ったが、英語はリョーマだけがキライな教科ではなかったらしい。

皆いろんな方向を向いているし、唯一、堀尾だけが熱心に先生に質問をしていたため、

リョーマの吹き出した事実は本人しか知らないものとなった。

そこでハッとして、リョーマはゴソゴソとポケットに手を突っ込んだ。

(・・・・・誰も気づかないよね・・・・)

リョーマはチラッと先生の顔を見たが、その教師はもはや堀尾としか話しておらず、

他生徒は授業を受ける気など全くない状況なので、心配するにも及ばなかった。

「・・・・・・・・。」

無言で携帯の画面を開く。

“竜崎桜乃”の場所にカーソルを合わせ、ボタンを1回押すと、彼女の携帯番号+アドレスが

表示される。

実を言えば、リョーマが携帯を買ってもらったのは先月。

男子テニス部レギュラーにはこのコトは一切言っていなかったにも関わらず、

何故か広まっていて、菊丸やら桃城やらにアドレスを勝手に登録される羽目となり、

桜乃とメール(&電話)するために買ったこの携帯も、今では先輩専用になっている。

桜乃が前々から身の危険を案じ両親が携帯を持たせていたことを知り、

リョーマは今まで全くといっていいほど興味のなかった「携帯」に興味を持ち始めた。

それも、学校で会えない間も話したい・・・という念からである。

それだから、リョーマの携帯にはほとんど先輩からのメールで埋め尽くされていたが

(ほとんど来ても送らない・書いて1行 が主)

これからは桜乃との交流も増えるという訳で。

そう思っていたけれど、実際は何を書いていいかわからず、今日まで延びたのだ。

(・・・・初メールってワケね)

クスリと笑うと、リョーマは手早い動きでメール画面を表示した。

『 窓見て。 』

そう打つと、一旦携帯を机の中にしまいこんだ。

 

 

 

(窓・・・・・?)

桜乃は表示された画面の文字を見てきょとんとした。

そして、普段通りに見せかけて窓の外に目をやる。

桜乃が見るからに、3年生と思われる女子達がバレーボールをしていた。

じーっとその練習風景を見るけれど、何が何なのか不明だ。

それでも一人、一心不乱にボールを追い掛け回し、サーブをしても当たらない・・・という

生徒もいた。

(・・・・頑張ってるな・・・・)

それでも、リョーマが一体何を言いたいのかが分からない。

桜乃は返信画面を表示して、『 見たよ?なあに? 』と送った。

 

 

(・・・来た)

数分たち、また机の中でガタガタ携帯が揺れた。

リョーマは急いで手をやって、桜乃からのメールを見る。

(・・・・・気づいてない・・・・)

『 桜乃に似てる人いるね 』

リョーマはまた奇妙な笑みを浮かべてキーを打った。

 

 

(・・・・似てる・・・?)

桜乃はリョーマからのメールを見てから、また窓の外に目をやった。

(・・・・・あ・・・・・・もしかして・・・・)

『・・・あの人?似てる?』

 

 

リョーマは更に満悦顔をした。

『似てる似てる。 可愛い 』

 

 

(・・・・・・え・・・・・?)

思わず叫びそうになった声をすんでのところで押しとどめた。

(・・・・・可愛い・・・・って・・・・・)

桜乃はムスッとした顔をし、乱暴にメールを返した。

『酷いよ!私がいるくせに!』

 

 

 

 

(・・・・・・・勘違い・・・?)

やはし・・・とリョーマはほくそえんで、英語の教師に目をやった。

まだ堀尾と話している。

 

『違うよ。そういう意味じゃなくってさ。ドジっぽいトコが。

他だったらアンタの方が数倍可愛いけどね。

ね、好きだよ。』

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・えっ!!」

桜乃はリョーマからのメールを見て立ち上がった。

それも、恥ずかしさのあまりにだ。

携帯はもちろんのこと、手にある。

 

バレた。

 

「・・・・・・竜崎・・・・ソレは何だ・・・・・。」

国語教師の怒りはもうそこまで来ているようであった。

クラス中の視線を浴びながら、桜乃は心の中で

(リ・・リョーマくんのばかぁっ!)

 

と叫んでいた。

 

 

 

 

 

                   end.

 

 

++あとがき++

いつもお世話になっている戸緒様に捧げますvv

長文になってしまい、言い訳も思いつきません;;

それと、勝手に送りつけてしまい申し訳ありません;;

こんなんでよければ貰ってやって下さい♪

 

これからもサイト運営頑張って下さいね☆

 

                    紫苑





























































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