輪舞曲
(1)
ハァハァという荒い息が首筋にかけられ、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が下半身から聞こえてくる。
ヒカルは真っ暗な視界の中、紐のような何かで縛られ動かない手を握りしめた。
ベッドにうつ伏せとなったヒカルの上には男が乗り、ヒカルの秘部へ自身を挿入していた。
何度も、何人もの相手をさせられたそこは紅く腫れている。
最も感じる場所を熱いもので擦られ、ヒカルは自身を勃起させているが、一度も射精はしていなかった。
ぐぅと男が呻くと、中へと白濁を吐き出した。
ヒカルは奥へと熱い液体を叩きつけられる感覚に、びくりと体を揺らす。
男がそれを引き抜くと、つぅと白濁が尻穴から垂れる。
指をいれられ、ぐちゅぐちゅと掻き回されると、ヒカルはくぐもった声をあげた。
「ハァハァ、進藤君、せーえきおいしいかい?こんなにいっぱい飲み込んで…」
ふざけんな、と叫びたいが、ヒカルの口には猿轡が嵌められ、言葉を発することができなかった。
「次は僕の番だね…」
中年の男の声がすると、太い手がするりと白い尻を撫で上げる。
いれられていた指が抜かれ、熱い棒がはいってくると、男は激しく腰を前後に揺らす。
先端から精液を滲ませるそれを腰の動きと同じように扱かれ、ヒカルはなかのものを絞り込むように締め付け達した。
びくびくと跳ねるヒカルの腰を掴み、男は熱を吐き出す。
犯され始めてから初めての射精に、今まで一対一で行為を行っていたというのに、他の男達もヒカルに触れ始める。
何人いるのかヒカルにはわからないが、無数の手に乳首や脇、脇腹などを撫でさすられ、萎えていたヒカルのそれも再度熱を持ってきた。
「また勃ってるよ、ヒカル君。もう一回イこうか」
違う男に尻を突かれ、性感帯を嬲られる。
ヒカルは真っ暗なはずの目の前が真っ白になるのを感じた。
(2)
久しぶりに二日間の休みがとれ、ヒカルは恋人であるアキラと家でゆっくり過ごすつもりだった。
だが、肝心のアキラに突然指導碁が入ってしまい、一日目の午後から出掛けてしまった。
待っていれば夕方には帰ってくるだろうが、ヒカルはどうして断ってくれなかったんだと機嫌を損ね、アキラへの反逆を兼ねて、一人旅に出ることにした。
勿論、翌日の夕方には帰るつもりだ。
電車を乗り継ぎ、行く当てのない旅だったが、車内の『海へ行こう』という広告にとりあえず海を目指すことにした。
ここ数年、仕事以外で海近くへ行くのはなかったのだ。
一時間もかからずに海近くの駅へと着く。
流石に近すぎたかなとは思うが、もしアキラに激昂されたときにこの距離ならば迎えに来させることは可能だろうと思い、ホームへと降りた。
八月の夏真っ盛りの昼は陽射しが強く、ヒカルは思わず目を細める。
日焼け止めを塗らなければ、あまり日に当たることのないヒカルの白い肌は赤く腫れてしまうだろうと、慌てて駅近くのコンビニへと入る。
数種類置いてある日焼け止めクリームに、どれがいいのかと物色していると、あの、と声をかけられ反射的に振り返った。
「進藤本因坊ですよね?」
30代くらいだろうか、中年の男にそう尋ねられ、ヒカルは首を縦に振る。
こういうのは初めてではなく、ヒカルとアキラはライバル同士としてよく取り上げられており、囲碁を嗜む者には顔を広く知られているのだ。
「やっぱり!私、進藤先生のファンなんです」
是非にサインをと言われ、コンビニ内にいた客の視線を感じる。
ヒカルの容姿はモデルとして雑誌に起用されることもあるほど並より優れており、「芸能人かな?」と言った声が回りから聞こえる。
ヒカルは日焼け止めクリームを諦め、慌てて外へと出た。
先程の男もヒカルに続くようにして付いて来ており、ヒカルは小さく溜息を吐きながら男が差し出してきたノートにサインをする。
「こちらにはお仕事で?」
「あ、いや、気分転換にちょっと」
「プライベートでしたか。そりゃすみません」
もういいから一人にしてくれ、と言いたかったが、ファンだという男を邪険に扱うこともないだろうと苦笑を浮かべるだけにする。
「あの、よかったらなんですが、ここの近くに碁会所がありましてですね、一局指導碁を打ってはいただけませんかね?」
「え、」
「もちろんお代は払わせていただきます!」
悩むふりをしつつ、腕時計をちらと見る。まだ昼過ぎで、アキラの指導碁が終わるのは夕方だったので、時間はまだまだある。
ヒカルが「いいですよ」と言えば、男は目を輝かせ、こちらですと浮き足立つようにして歩き出した。
突然碁会所に現れたヒカルに、客達は大歓迎し、我先にとヒカルに指導碁を願い入れる。
ヒカルは一度に複数人相手にすることで全員とはいかないものの、過半数の客を相手にすることができた。
お代を払おうとしてくる男の申し出を断ると、代わりに夕飯を奢らせてくれと言われ、有難くそれを受けることにした。
マナーモードにしていた携帯を見れば、着信が二件、メールが一通届いていた。
差出人はどちらともアキラだ。メールを確認すれば、『今どこにいる?』とだけ書かれていた。
「謝りもしないで、アイツ」
腹が立ったヒカルは店へ案内されてる途中に見える海を撮り、本文に『バーカ』とだけ書いてアキラへと送りつけた。
おそらく、アキラは大急ぎで海の情報からここを探し出そうとするだろう。
ヒカルはこれ以上のヒントはやらねえと携帯の電源を切った。
案内された店の料理はとても美味しく、酒も絶品だった。
少し飲みすぎたかもしれない、それは確かだ。
ヒカルが次に目を開いたのは、アイマスクの下でだった。
気付けばヒカルは柔らかいベッドの上でうつ伏せにされており、手首は拘束され、ビクとも動かなかった。
口にも猿轡が嵌められ、呻き声をあげることしかできなかった。
さらに、問題なのはヒカルが全裸であるということだった。
目隠しされている分シーツの感触がリアルで、思わず声が出た。
(3)
「おや、進藤君が起きたみたいですよ」
「ンン…ッ」
知らない男の声だった。先程まで飲んでいた男とも、碁会所にいた男達とも違う。
他にも何人かの男の声が聞こえ、ヒカルは今の状況に身を震わせる。
全裸でベッドの上に拘束されており、複数の男達に囲まれているのだ。
アキラに普段されていることを考えれば、思いつくことは一つだけだった。
脚を掴まれ、無理矢理膝立ちにさせられる。勿論抵抗したが、幾つもの腕に押さえつけられた。
ヒカルの秘部は無意識のうちにひくひくと動く。ローションのような冷たいものをかけられ、指を挿入される。
抵抗のないそこはすぐに数を増やされ、アキラに調教されたそこは他人の指でも快感を探そうと蠢く。
「処女じゃねえのかよ」と言った声が聞こえたが、そんなのはヒカルの知ったことではない。
それから男の太いものがヒカルのなかを何度も犯した。射精こそしていないが、ドライでイくことのできるヒカルは何度もイっている。
そして、二度目の射精をさせられたヒカルは、手首につけられた拘束を外される。
逃げることもできたかもしれないが、イったばかりの身体は震えており、うつ伏せの体勢のままぐったりとしていた。
「まだ寝ないでよ、ヒカル君」
脇に手を入れられ、体が持ち上げられる。
後ろ向きに男の膝の上に跨る体勢にさせられ、何度も陵辱されたそこに当てられる熱いものに、ヒカルはいやいやと首を横に振るが、抵抗できるほどの力が残っていなかった。
重力に従い男の欲望がヒカルのなかへと入っていく。ぐちゅりと根元まで挿入され、ヒカルは猿轡さえなければ大声をあげてしまっていただろう。
下から感じるところを突かれ、また射精をせずにイってしまいそうになる。
突然猿轡を外されたと思えば、口にも熱いそれが突っ込まれた。
前髪を掴まれ、奥へと突かれ胃のなかのものが逆流しそうになる。
思わず舌を使い、口のなかのものをぐりぐりと刺激すれば、機嫌を良くしたのか前髪を離される。
アキラにするときと同じように亀頭を責めつつ唇で扱けば、喘ぎ声と共に男の腰が揺れた。
そうだ、今は抵抗するより相手を刺激せずに無事に解放されることが優先だ。
ヒカルが諦めたことを察したのか、ヒカルの手を掴むと、男の自身を扱かせる。
片手ずつでうまくできないでいると、その上から手をかさねられ、ヒカルの手を使い自慰してる状態になった。
乳首も片方ずつ舌で舐められ、勃起したヒカルのそれも口に含まれる。
この時点で男は最低でも七人いる。早く変われという声が聞こえることから、他にもまだいるのだろう。
喉奥に精液を吐き出され、噎せながらも飲み込むと、男は満足したのが萎んだそれをヒカルの口から抜く。
解放された口は全身への快楽に声を抑えることができない。
「あっあっ、…ンンッだめぇっ、いく、いく、いっちゃ」
自身をちゅうと吸われ、ヒカルは全身を震わせながら達した。
ヒカルの締め付けになかに入ってたものも射精し、手の中にあったそれはヒカルの顔へと吐き出した。
ヒカルの精液は口移しで無理矢理飲みこまさせる。
ローテーションで相手をさせられ、ヒカルは射精するのが難しくなった。
それでもイかせようとしゃぶられ、ヒカルは快感に涙する。
「も、むりぃ…イけないよぉ…」
「しょうがないなあ、進藤君は。少し休憩しようか」
休憩ということは、まだされるのかとヒカルは気が気ではない。
だが、逃げるチャンスはあるはずだと従順なフリをして、休憩を挟むよう懇願した。
その願いは聞き入れられたが、ヒカルは再び腕を拘束されることになってしまった。
今度は仰向けにされ、脚は両膝を頭上へと括り付けた紐に吊られ、ヒカルの秘部が見える状態で固定された。
「じゃあ、精液をこぼさないように、ちゃんと蓋してようね」
え、と思うより先に硬く太いものがなかへと挿入される。
太いそれは、何度も犯されぽっかりと空いたヒカルの秘部でもぐりゅぐりゅと回しながらではないと入らない。
かなり長いそれは、ヒカルの奥まで入り込む。おまけと根元を縛られる。
「じゃあ、俺達はミルクタンク補充してくるから、いい子で待っててね」
「ま、待って…ッあああああああ!!」
機械音を発しながらヒカルのなかのものはクネクネと動き、前立腺を抉るように動くそれは無遠慮にヒカルの快楽を引き摺り出してくる。
止まることのない快楽に声が枯れるまで叫ばされ、それが抜かれたのはヒカルが何度か気絶した後だった。
(4)
「さあ、再開だよ。進藤君の恥ずかしい姿を見てたらまた勃っちゃったよ」
「ゃぁ、…」
再び男のものをいれられたが、先ほどまでずっと玩具で犯されていたこともあり、ヒカルは少し呻き声を上げたが腰を揺すっても反応がなかった。
男は一度抜くと、透明な棒で白い薬をヒカルのなかへと塗り込む。掻き回すように動かすと、ヒカルのなかからごぼっと精液が溢れ出た。
「ヒカル君、いっぱい出してもらって女の子みたいだねえ。ヒカルちゃん、妊娠しちゃったらどうしようか?」
男はクスクス笑いながら掻き回す。他の男達も下品に笑う。
塗り薬の影響か、棒の刺激でヒカルは体を震わせた。媚薬成分が入っていたのだろう。
「や、だぁ、あん、あ、あ」
棒を乱暴に引き抜かれ、男の熱いそれが挿入される。
今度はヒカルはきゅうきゅうとなかのそれを締め付け、男は喘ぎ声をあげた。
「は、は、いいよ、ヒカル君」
「あっあっ、きもひい、よぉ、あうっ。もっとぉ、もっと奥、いっぱい突いてぇ」
ヒカルの淫らな姿に、男達は唾を飲むと、各々がヒカルの性感帯を刺激する。
ヒカルは理性がとんだようで、視点がさだまっていない。
「はぅっ、ちくびっ、ちゅってすって、おねが、やぁん!んん、そこはぁっ、だめ、だめ、すぐいっちゃ、あっあっあああああ!」
亀頭を吸われ、根元を縛られてることもあり、射精することなくイく。締め付けによりなかへと射精した男が抜けると、今度は後ろにいた男がはいってくる。
ビクんっと跳ねるヒカルの膝小僧を舐めると、腰を揺らし始めた。
「はぁン、おっきぃよぉ…、や、や、もっもっと、はげしく、」
ヒカルの媚声が聴きたいのか、誰としてヒカルの口を塞ごうとはしなかった。
そして、ヒカルが解放されたのは、翌日の明け方のことだった。
(5)
「進藤!」
大声とともに頬を叩かれて目が覚める。ヒカルは唖然としたまま、目だけを動かす。
いつの間にか海に面した公園のベンチで寝かされ、体にはタオルがかけられていた。
そして、目の前には怒りを隠そうともしないアキラが目を吊り上げてこちらを睨んでいる。
「……塔矢?」
「キミは!あんなメールだけを寄越して、ずっと連絡もつかなくて、ボクがどれだけ心配したと思っている!
やっと見つけたと思ったらこんなところで寝ているなんて…!」
アキラの怒鳴り声を聞きながら、ヒカルは目を丸くしてアキラを見つめる。
陽は昇りつつあるが、まだ早朝だ。アキラは一晩中ヒカルを探したのだろう。髪もボサボサだ。
ーー…あれは全部夢だったのか?
ヒカルが体を起こすと下半身と胸の突起が痛んだ。その痛みが夢ではないことを告げる。まだ貫かれてる感じもする。
「…ッうぐ」
「進藤?どうした?」
「腹、痛い…」
「…夏場とはいえ、こんなところで眠るからだ」
近くのコンビニでトイレをかりよう、と立ち上がるのを手伝ってくれる。
ーー違う、この痛みは。
アキラに助けられながらコンビニのトイレに入ると、ヒカルは痛みからぎこちない動作でズボンを下ろす。
後ろに触れると、何か硬いものがいれられているのがわかる。
ヒカルは青ざめながらそれをゆっくりと引き抜くと、ちゅぽんという音とともに、精液がポタポタと垂れ落ちる。
いれられていたアナルプラグはヒカルの拳サイズくらいある。
おいて行くわけにもいかなく、カバンの奥へ隠すようにいれた。
便座に座ると白濁と汚物が混じり合うように出る。腹痛が落ち着くと、ヒカルは戸惑うことなく秘部に指をいれ、なかに残った精液を掻き出す。
今処理できる分は全て出し終わり、トイレットペーパーで拭うと水で手を念入りに洗った。
トイレから出ると、アキラは仏頂面のまま仁王立ちで待っていた。
ヒカルのために買ったのか、ビニール袋にはスポーツドリンクがはいっている。
「タクシーを呼んだからすぐに来るはずだ」
コンビニを出ると、スポーツドリンクを渡され、ヒカルは無言でそれを飲む。
ヒカルの様子がおかしいのを、腹痛のためだと思い込んでるアキラは何も言わなかった。
タクシーに乗っている間、そういえば携帯の電源を切りっぱなしだったことを思い出す。
電源を入れると、問い合わせで届いたアキラからのメールが三桁を超えていて、思わずヒカルはアキラを横目で見た。
アキラは気づくことなく前を見ている。
「……塔矢、ごめんな」
「二度とするな」
ヒカルが謝った内容と、アキラが思った内容は異なっていただろうが、ヒカルにはそれを言う勇気も気力もなかった。
知らない男達に陵辱されたなど、言えるわけがない。
数日後、ヒカルの元に届いた写真により、アキラに詰め寄られることなどヒカルは考えもせず、アキラの肩に頬を寄せた。
<完>