(;´Д`)ハァハァ
(1)
明日は待ちに待ったヒカルたんの参加する囲碁イベントの日だ。
ヒカルたん以外にも塔矢や伊角や門脇といった若手が数多く招かれている。
だが俺のフォーカスはヒカルたんだけに向いている!
ヒカルたんに指導碁を打ってもらったあとに渡すプレゼントももってきたんだ!
中身はヒカルたんと使う予定のコンドームだ。
暗闇で光るものやイチゴや果物の味付きのもの、とにかく沢山詰め込んだ。
俺の目の前で箱を開けた時のヒカルたんの顔を想像すると(;´Д`)ハァハァが止まらない。
ヒカルたんはきっと喜んでくれるはずだ。
明日が楽しみ過ぎて眠れないよ(;´Д`)ハァハァ
(2)
今日は地方で囲碁イベントの仕事だった。
客相手のイベントであまり良い思い出の無い僕は最初は断るつもりだった。正直新幹線での移動も面倒だったし。
参加したのは他ならぬ進藤が参加予定メンバーに入っていたからだった。
過去に手合いをサボっていた負い目のある彼は頼まれた仕事は滅多に断らなかった。今回も当然参加するだろう。
他にも多数の若手が集まるこのイベントで、どうやら僕はメインの立ち位置になっていたらしい。まあ、当然か。
そして僕はその立ち位置を利用して滞在するホテルの部屋を進藤と一緒にしてもらうよう取り計ってもらった。
このくらいいいだろう、きっと進藤も喜ぶだろうし。
僕の気合いはイベントではなくホテルで過ごす夜に注がれることになりそうだ。
イベントは滞りなくすすんでいった…途中までは。
メインの客寄せパンダである僕は指導碁に殺到した客に対ししっかり仕事をこなしていた。僕もプロだからね。メインが夜だとしても手は抜かないさ。
親しみやすい雰囲気を持つ進藤はおじ様たちに人気でにこにこと碁を打っていた。
しかしふと会場がざわめいた。周囲を見渡すと進藤がいたブースに人だかりができていた。
失礼、と客に断り駆けつけると一人の若い男が警備員に取り押さえられていた。
机を挟んだ向こうには腰が抜けたのか青い顔の進藤が和谷に抱き抱えられていた。
碁盤の横にはリボンをほどいた綺麗な箱があった。
その中には色とりどりのコンドームとピンク色のバイブ、ローションと麻縄らしきものが入っていた。
(3)
仕事とはいえせっかくの地方、ラーメンの上手い店を5件は回るぞと意気込んでいたけど今は食欲が無い。
用意してもらった食事は美味しそうだったけどほとんど手をつけずに残してしまった。
イベントが終わった後に和谷と伊角さんが
「気分転換にラーメンを食べに行こう!」と誘ってくれたけど断ってホテルの部屋に戻った。
同室の塔矢はまだ戻ってきていない。女性ファンのサイン責めと雑誌の取材が入っていて
遅くなりそうだった。本当はオレにも取材が入ってたんだけど、
主催者側が気を利かせて帰してくれた。
イベント中、オレと打っていた男のお客さんがプレゼントと差し出した箱。
綺麗にラッピングされたそれをお礼を言って受け取った。
実はこういったプレゼントをもらうことは結構ある。伊角さんや塔矢なんかはオレの比じゃないくらい
もらってるんじゃないかな?
もらったそれを横の椅子に置こうとしたらその人は身を乗り出して「今開けてくれ」と言ってきた。なんだか息が荒い。
食べ物じゃないといいな。前にもらったクッキーを食べようとしたら塔矢に怒られた。
「食べ物をもらっても絶対に食べるなよ!何が入っているか分からないからな」と凄い剣幕で怒鳴られた。
オレの心配をしてくれているのは分かったけど怒らなくてもいいじゃん。
そんなことを思い出しながら箱を開けると中には赤や黄色の包みが沢山入っていた。
外国のお菓子かな?包みを一つ手にとって見る。
ん?包みに埋もれてまだ何か入ってる。手を突っ込んでそれを取り出した。
ピンク色の男性器の形をしたバイブが現れた!スライムが現れた!コマンド
戦う
逃げる
→硬直する
「ヒ、ヒカルたん…これから毎晩子作りしようね(;´Д`)ハァハァ」
血走った目をした男がオレの肩を掴んだ。
(4)
そこまで思い出して吐き気がしてきた。
そこからは余りよく覚えていないが、身を乗り出した男がオレの首から頬をべろんと舐めて、
オレが男を突き飛ばして、それから…警備員が来て。
気が付いたらオレは和谷に抱きかかえられていた。
男はすぐに警備員に叩き出された。
オレの顔色が悪いのを見かねて和谷が奥で休んでろって言ってくれたけど、
今一人になったらあの男がまた戻ってきそうで余計に怖い。
それより碁を打っていたほうが心が落ち着く、と断ってすぐに仕事に戻った。
ただ、それ以降オレの周りだけ警備員が張り付いていたのでお客さんは落ち着かなかったかもしれない。
シャワーを浴びてそんなことを思い出していると部屋の扉が閉まる音がした。
塔矢が戻ってきたんだ。塔矢が同じ部屋でよかった。
イベントの間中、たまに塔矢の方を見るといつも心配そうな顔と目が合った。
ちゃんとお客さんのほう向いてないと怒られるぞ。
扉の向こうで塔矢がオレを呼んでる。
あ…おなか空いて来たかも。ラーメン食べに行きたいって言ったら怒るかな?
いつもなら「君はいつもジャンクフードばかり食べているな」って嫌味を言われるけど
今なら怒られない気がする、うん。