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//  // ここからコピー! // {{anchor top}} !!聖なる狂女を悼みて // // にょたりあや百合など注意事項がある場合、下の「//」を消して表示させて下さい //  ''注意'' 【メインCP】 仏ジャン、イギリスも登場 【傾向】 どシリアス 【その他】 エロなしですが、ジャンヌが陵辱を受けた描写があります。 それから、暴力描写もぬるいですがちらっと。死ネタも入ってます。 要するに鬱な内容です。 // 下はssをみやすくするためのdivの設定です消さないで下さい {{div_begin class="ss"}} // // 以下SSの中身 //  彼女が捕虜になったと聞いて最初に思ったのは、ついに来てしまったか、という諦めとも悲嘆ともつかないものだった。  彼女の仕事は王に戴冠させた時点で終わっていた。それは誰もが知っていながらも口にしない暗黙の了解だった。彼女自身もそれをちゃんとわきまえていた。  無謀とも言える戦いに身をゆだねる以上、こうなるのは起こりうることだった。前に彼女と話したときも「覚悟している」と言っていた。  建前はそんな風に冷静をつくろった。うまくできたと思う。  だけど一人きりになると後悔の念に襲われた。  ――なぜ彼女を行かせた。  ――もし彼女を引き止めていれば。  際限のない「なぜ」と「もし」が、刃よりも鋭く心臓を貫く。  彼女の瞳や髪がまぶたにちらつく。矢を受けたときの涙、勇ましく旗を持つ姿、俺を叱咤する声。ぐるぐると渦巻く。何もできずにいる俺を責めるように。 「こうしていられるかよ!」  部屋を出た俺を待っていたのは、たくさんの騎兵と上司だった。俺に向けられた剣がぎらりと光る。  苦く笑う。俺の行動は予想済み、ってことか。 「部屋に戻れ」 「やだね」 「どこに行くつもりだ」 「決まってんだろ」  コンピエーニュ。彼女が捕らえられた土地。 「許さん」 「アンタが即位できたのは彼女のおかげだろう!」  上司はそれとこれとは別だ、と言った。彼女の有用性はもうなくなったのだとも。 「ふざけんな」  自分のものとは思えないくらい低い声が出た。  まだあどけなさの残る少女を過酷な戦場に放りこみ、恩恵を受けておきながら、いざ捕虜になった途端放り出す。どこまで身勝手なんだ。 『私は貴方の為に戦っているのです』  彼女の声がよみがえった。  彼女は俺のために戦ってくれた。それなのに、俺は彼女のために戦わないなんて、そんなことが許されるはずがない。 「お前が行ったところでどうなる。それこそ彼女の働きを無駄にすることではないか!」 「それは」  詭弁だ。だが真実だ。  歯がゆくて、反論できない自分が悔しくて、大声で叫びたい。  屈強な男二人が俺の腕を押さえこんだ。抵抗する気力さえ浮かばない。自分の存在がこんなに疎ましいことなどなかった。 「しばらく謹慎して頭を冷やせ」  年の終わりも間近になったころ、彼女がルーアンの城に監禁されたという話を聞いた。  さらに年が明けて二月、彼女の異端審問の裁判が始まった。  ――異端。彼女が?  それはどんな侮辱にもまさる侮辱だった。彼女の信念や尊厳を踏みにじる行為だ。  許せるはずがない。  かつては弟のように俺を慕ったイギリスの姿が浮かんだ。この件に彼は絡んでいないのかもしれないが、それでも憎悪を向ける対象になりえた。  ――彼女はきっと死刑になる。  そう思うといてもたってもいられなかった。  月のない晩、俺は城を抜け出した。明らかに俺に気づいている兵もいたが、小さくうなずいて俺を見送っただけだった。  ――ジャンヌ。君の存在はみんなにとってこんなにも大きい。  休みも取らずに無我夢中で馬を走らせた。苦心してルーアンに入ったときには、彼女が捕虜になってから一年が経とうとしていた。  彼女のいる城は分かったが、入れそうもなかった。その周りをうろついていると、忘れもしないあのイギリスが目の前を通った。  とりあえず捕まえて襟を締め上げる。俺に気づいた奴は顔を歪めた。今まで見たことがないほどみっともない顔で。 「彼女のところに連れていけ」 「馬鹿言うな」  襟をつかむ腕に力をこめる。太い眉が苦しげに寄せられても、なんとも思わなかった。 「会わせろ」 「会わないほうがいい」 「なんだと」  さらに絞めようとすると、力任せにふりほどかれた。苦しげな咳を繰り返して、暗い目が俺を見る。 「彼女は捕虜になったんだ。どんな目に遭うか想像はつくだろ」 「……分かってるさ」 「それでも会いたいのか」 「ああ」  イギリスはしばらく黙っていた。どうしても言わないつもりなら、と再び首に手をのばす。 「後悔してもしらないからな。ついて来い」  その手をイギリスがつかむ。あんなに入れないと思っていた城に、拍子抜けするほどあっさりと通してもらえた。 「ここだ」  格子の前で立ち止まる。指さす先には何か塊があった。見つめていると、それが動いた。  喉がカラカラになる。みっともなく唇が震えた。 「ジャンヌ」  なんとか声を絞り出す。もぞりと影がうごめいて、二つの目が俺を見た。  それは、何度も想った青の。 「……ジャンヌ!」  彼女はびくりと身体を震わせた。ユリのように白く美しかった面は腫れて痣がところどころにあり、血がにじんでいる。  そこにいたのは俺を救った聖女ではなく、哀れな女囚人だった。  牢に駆け寄り、腕を伸ばす。それを見ても彼女は反応しない。困惑していると、急に表情をゆがめた。 「いや、来ないで」 「え」 「やめてさわらないで」 「……」 「助けて、誰か、神様!」  青い瞳から涙が零れ落ちる。打ち捨てられた人形のようにその場に横たわったまま、表情だけが暗い生を残している。  彼女はスカートをはいていた。ただし大きくまくれあがり、太ももがむき出しになっている。白い肌に赤い爪痕、痣。  彼女に何があったのか、何をされたのか、それらは如実に物語っていた。 「……っ」  絶望、悲哀、憤怒、後悔、悲憤、数えられないほどの感情が浮かんでは消えていく。彼女の姿がにじんで、気がつけば涙がこぼれていた。 「ちくしょぉっ……」  鉄格子に頭を打ちつける。何度も何度も、彼女の受けた苦痛よりも大きなものを求めて。  なぜ俺は存在している。  なぜもっと早く。  なぜ神は彼女を選んだ。  なぜ。なぜ。 「ジャ……ヌ」  ごめん。ごめん。ごめん。  俺さえいなければ。  もっと早く助けに来ていれば。  君をこんな目に遭わせることなんてなかったのに。  君は聖女のままでいられたのに。 「フランス、」 「……お前がっ!」  イギリスの首を掴む。ぎりぎりと締め上げた。おかしなくらいに顔色が変わる。  殺してやる。そうだ、殺してやる。何の罪もない彼女をこんな目に遭わせたやつが生きていていいはずがない。 「死ね、死ね、殺してやる!」 「す、まない……」  イギリスのこぼす涙がひどく汚らしい。けだもの、お前が泣くんじゃない、彼女と同じことをするんじゃない、彼女を汚したのはお前なのに。 「ふ、らんす」  かすかな声が激昂した頭を冷やす。渾身の力でイギリスを殴って、再び視線を彼女に目を向ける。 「フランス」  正気を取り戻したのかと思ったが、違う。俺のいない見当違いの方向を向いて、震える腕をのばしている。口元には笑みすら浮かべて。 「神に愛された国。美しい、貴方」 「……」 「愛しています、貴方を、いつまでも。たとえ、この身は……朽ちるとも」  枝が折れるように、ぱたりと腕が落ちる。  まぶたを閉じると、すうっと笑みが消えた。それからまた、うわごとのように唇を動かす。 「やめてこないでたすけてわたしをフランスにかえしてこわいいたいやめていやみないでたすけてわたしはいたんしゃじゃないかみのおみちびきをうけましたこえをききましたフランスをすくうのです」  五月三十日、彼女は異端者として火あぶりになった。集まった人々の前で裸をさらされ、灰は川に流された。  セーヌ川の流れを見つめながら、俺は今でも考える。  彼女はなんだったのだろう。聖女、狂女、少女、色々思いつくけれど、あてはめられずにいる。そんなときは手のひらを見るのだ。  イギリスの首をしめた手を、その感触をたどりながら。 // 終わり {{div_end}} // // カテゴリー記入 // {{category キャラ}} のキャラのところにメインキャラクターを入れて下さい // 『:::{{category 女性キャラ}}』を追加すればカテゴリを増やすことがきます // ::カテゴリー :::{{category ジャンヌ}} :::{{category フランス}} :::{{category フランス×ジャンヌ}} //誰と誰の恋愛描写がメインか分かりやすいように、カップリングカテゴリの登録にご協力お願いします。 //ポチ君(主に男性キャラ)×花たまご(主に女性キャラ)、または○○総受け、××総攻め などのかたちが一般的のようですが、SSに合わせて自由にお願いします。 // [[このページの上へ|#top]] // // コピーここまで!