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!!恋の命日(後編) // // にょたりあや百合など注意事項がある場合、下の「//」を消して表示させて下さい //  ''注意'' [[恋の命日(中編)|12_226-229]]の続き。 若干消失ネタを含みます。ご注意下さい。 // 下はssをみやすくするためのdivの設定です消さないで下さい {{div_begin class="ss"}} // // 以下SSの中身 体が裂かれる様な痛み、とはまさにこういう痛みのことを指すのだろう。 初めて男を受け入れる秘所は文字通り裂け、自分を犯す肉棒は容赦無く突き上げてくる。 痛い、痛い!やめて、許して! 気を抜けば口から飛び出しそうになる言葉を、リヒテンシュタインは必死に抑えた。 どれだけ体を蹂躙されても、この男を煽る様な言葉は言うまい。それがこの哀れな少女の、最後の抵抗だった。 「お前、感じてんだろ?かまととぶってんじゃねぇ、もっと喘げよ」 イギリスは猛った欲望を抜き差ししながら、言葉でリヒテンシュタインを追い詰めようとする。 しかし、つい先程まで処女であった彼女には痛みのほうが大きく、行為から生まれる快感は薄かった。 その時、彼女の頭にはある思いがよぎっていた。 ――ああ、私の体はこの人に汚されてしまった。 悲しかった。あんなに自分を大切にしてくれていた兄を、こんな形で裏切ってしまった。 もう、兄に相応しい淑女ではいられない。 「ごめんなさい…ごめんなさい、お兄様…」 無意識に、兄への謝罪の言葉が零れた。 それを聞いた瞬間、イギリスの動きが止まった。 いきなり自分を犯していた肉棒の動きが止まり、思わずリヒテンシュタインはイギリスの顔を窺おうとした。 しかし次の瞬間、イギリスは狂った獣の様に激しく腰を動かし始めた。 「ああっ…、いやぁーっ!!」今までとは比べ物にならない位の激しい攻めに、リヒテンシュタインは絶叫した。 「俺に抱かれてる時まで…あいつの名前を…呼ぶんじゃねぇ!!」 先程までと全く違うイギリスの声音。それは悲痛とも言える叫びだった。 「俺とお前は同類なんだよ、淫乱女!素直に気持ち良いって言えよ!  俺に犯されて気持ち良いって、早く言えっ!!」 いきなり豹変したイギリスに、リヒテンシュタインは驚きと恐怖を隠せなかった。 もしかしたら、殺されてしまうかもしれないとまで思った。 あまりの痛みでぼやける視界の中に、イギリスの顔が映った。 そこに浮かんでいたのは、荒々しい口調に反して怒りの表情では無かった。 太い眉と美しい翠色の瞳が大きく歪んだ、今にも泣き出してしまいそうな顔。 今まで何度か見た、見る度にリヒテンシュタインを不安にさせた、あの微妙な表情。 今のイギリスは、リヒテンシュタインがよく知るイギリスだった。 それを見て、リヒテンシュタインは唐突に理解した。 イギリスのこの表情の意味。何故彼がこんな行為に及んだのか。そして、彼の悲しみを。 ――この人は、私の事を… 今思えば、自分が兄の話をする時、いつもイギリスはこの表情をしていた。 何故そんな表情をするのか、深く考えたことも無かった。 彼の感情などおかまいなしに、兄の事ばかりを話した。優しいイギリスに、自分はどこかで驕っていた。 (イギリス様は、お兄様に似ていらっしゃいます――だから私、イギリス様が大好きです) 何て残酷な言葉だろう。今日まで自分の無神経な言葉に、どれだけイギリスは傷付いてきたのだろうか。 見上げると、快楽など忘れてしまったかの様に、ひたすらに激しく腰を振り続けるイギリスが映った。 この人に謝りたい。 激しく攻め立てられながら、朦朧とする意識の中で強く思った。でもどんな言葉を掛ければいいのか分からない。 だから、最後の力を振り絞ってイギリスの顔に手を伸ばした。震える手で彼の頬を撫でる。 リヒテンシュタインの思いもよらない行動に、イギリスは目を見開いた。 自分を映す翡翠の様な瞳。美しい。単純にそう思う。なのに、何だかぼやけてきた。どうしてだろう。 リヒテンシュタインは、イギリスが泣いている事に気が付いた。ぼろぼろと零れる大きな涙のいくつかが彼女の顔に落ちた。 ――泣かないで。 心が押し潰される様に痛む。結局自分は、最後までイギリスの想いに応えてあげられなかった。 だからせめて、今はイギリスにこの身を捧げよう。 それで自分が彼に負わせた傷が少しでも癒えるのならば、どんな痛みにも耐えてみせる。 「リヒテンシュタイン…リヒテンシュタインっ…!!」 自分の名を呼ぶ、イギリスの悲しみに満ちた声。薄れていく意識の中で、彼の顔が近付いて来た。 唇に温かい何かが重なる。 それがイギリスの唇だということは、リヒテンシュタインにも何となく分かった。 ――ああ、私、イギリス様とキスしている。 こんなに激しく抱かれているのに、それはただ触れ合うだけの、とても優しいキスだった。 ずっと夢に見ていた様なキス。 だからなのか、リヒテンシュタインは、どうしようもなく悲しくなってしまった。 そしてリヒテンシュタインはとうとう絶頂を迎え、イギリスを強く締め付けてしまう。 その瞬間、彼の肉棒が自分の中から抜かれ、腹の上に熱い飛沫が撒き散らされるのを感じた。 そのまま、リヒテンシュタインは意識を手放した。 「よお、リヒテンシュタイン」 そう言って隣に座ると、リヒテンシュタインは驚いた顔をした。 まあ当然だろう。今まで会議で何回か顔を合わせていたが、会話などしたことがない。 いつもリヒテンシュタインは彼女の兄、スイスの傍にいる。今もおそらく、会議中のスイスを待っているのだろう。 自分とスイスの仲は決して良好ではなかった。彼女の前で厭味を言ってやったことも何回かある。 彼女が自分に対して、良い感情を持っていないであろうことは明らかだった。 それでも声を掛けたのは、本当に、ただの好奇心だ。 リヒテンシュタインはどんな反応を見せるだろう。怯えるだろうか。警戒するだろうか。 それとも他国と同じように冷たい態度を取るだろうか。 どんな反応が返ってきても、別に構わなかった。拒絶されることは慣れていた。 でも。 「まあ、イギリス様。初めまして。いつも兄が大変お世話になっております」 一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに立ち上がって頭を下げるリヒテンシュタイン。 そのままにっこりとイギリスに笑いかける。意外な反応に、イギリスは少し驚いた。 「お疲れ様です、会議はもう終わったのでしょうか?」 「…いや、今は休憩時間だ。悪いが、会議はまだ終わらない。  お前の兄貴が、面倒臭い議題を持ち込んでくれたおかげでな」 違う。こんなことが言いたいんじゃない。 いきなりこんな厭味を言うから、相手は自分に反感を覚え、そのまま去っていくのだ。 わかっている。わかっているのに、自分の口は勝手に動いてしまう。 いつもそうだった。そして、彼女もきっと── 「そうなのですか…兄がご迷惑をお掛けして、大変申し訳ありません。議長のイギリスさんは、さぞお疲れでしょう」 返ってきたのは自分を非難する言葉ではなく、労わる言葉だった。 「え、あ、いや、別にお前が謝ることでは…こうやって休憩も取ってるし、そこまで疲れてねえよ」 なぜ。 「イギリス様は立派ですわ…毎回皆の意見を纏めて下さって、本当に感謝しておりますの」 なぜ、こんな自分に優しい言葉を掛けてくれるのだろう。 「……ありがとう」 自然と、口から出た。久しぶりの──本当に久しぶりの、心からの言葉だった。 丁寧な言葉遣いに礼儀正しい態度、そして可愛らしい笑顔。そのどれもが今まで受けたことの無い位、温かいものだった。 会議で疲れ、張り詰めていた気持ちがゆっくりとほどけていくのを感じた。 もっと、この少女と話がしたい。素直にそう思った。 何か共通の話題は無いだろうかと考えていると、彼女が座っていた長椅子にエプロンと裁縫箱が置いてあるのが目に入った。 もしかしたら彼女は、自分と同じで── 「刺繍が好きなのか?」 「…ええ。趣味なのです」恥ずかしそうに笑うリヒテンシュタイン。 「こうして兄を待っている時などに練習しているのですが、なかなか上手くならなくて…」 「…そうなのか。じゃ、じゃあ…」 言え、言うんだ。 「はい」 「じゃあ、この休憩の間だけ、俺が刺繍を教えてやるよ」 言えた。 「まあ、よろしいのですか?」 「ああ、実は俺も…」 ゆっくりと流れていく時間。自然と口から出てくる優しい言葉。時折混じる、リヒテンシュタインの笑い声。 雪が融ける様に、心の中のしこりが消えていく。 ずっとこうしていられたら良いと、あの時は心から思っていた。 これは、イギリスが最も大切にしている思い出の一つ。今から百年以上も前になる。 あの時から今日までずっと、イギリスはリヒテンシュタインを想い続けていた。 後始末を終えたイギリスは、ベッドに横たわっているリヒテンシュタインを静かに見下ろした。 完全に気を失っている。しばらくは目を覚まさないだろう。 リヒテンシュタインの体はイギリスによって清められ、情事の跡は全く残っていない。 けれど、確かにイギリスはリヒテンシュタインを強姦した。この事実は決して消えることなく、彼女を苦しめ続けるのだ。 (消えよう) それ以外に罪を償う方法を思いつかなかった。自分が消えても新しい「イギリス」が生まれ、役割を果たしてくれるだろう。 誰よりも自分に優しくしてくれたリヒテンシュタインを、身勝手な欲望と嫉妬で犯した。これ以上の罪があるだろうか。 自分のような者はこれ以上存在していてはならない。存在する資格も、価値もない。早く消えた方が皆の、そしてリヒテンシュタインの為だ。 ──結局、自分は生まれてから消えるまで、誰からも愛されることはなかった。   ふと、イギリスはこの部屋に来た本来の目的を思い出した。自分の刺繍針。今となっては針などどうでも良かった。 が、リヒテンシュタインが目を覚ました後を考えると、ここに自分の持ち物を残しておく気にはなれなかった。 重い体を引きずって、奥にあるテーブルまで歩く。あるとしたらテーブルに置き忘れているはずだ。 実際に針はテーブルの上にあって、イギリスは思ったよりもずっと早くそれを見つけることが出来た。 何故なら、それは丁寧にハンカチに包まれた状態で置かれてあったから。そして横には、小さなメモが置いてあった。 「イギリス様、いつも大変お世話になっております。  このハンカチは、私からの感謝のしるしです。どうぞ受け取って下さいまし」 それは確かにリヒテンシュタインの丁寧な小さい字で書かれていた。 ハンカチから針を取り出し、ポケットに仕舞う。震える手でゆっくりとハンカチを広げた。 上品な白地のハンカチ。畳まれている状態ではわからなかったが、それは妖精とイギリス国旗をモチーフにした見事な刺繍が施されていた。 これだけ縫うのに、どれ程の時間と労力を呈したか、イギリスは簡単に予想できた。 そういえば最近寝不足だと言っていた。自分の為に、寝る間も惜しんでこれを縫ってくれていたと言うのだろうか。 よく見ると、左端に小さなメッセージが縫われてあった。 「親愛なる、誰よりも純粋で優しい、私の大切な友人へ」 リヒテンシュタインは自分を見てくれていた。これを縫っている間、リヒテンシュタインの心の中に、確かに自分はいたのだ。 この時初めて、イギリスは本当にリヒテンシュタインを失ったことに気付いた。 ハンカチを固く握り締め、リヒテンシュタインの眠るベッドに戻る。 その寝顔は、先程までの出来事が嘘のように安らかだった。 イギリスは眠る彼女に、ずっと伝えたかった、けれど最後まで届くことの無かった言葉をそっと囁く。 「I love you, Liechtenstein…」 こんなに簡単な言葉が言えなかった自分。 リヒテンシュタインは兄しか見ていないと決め付けていた自分。 彼女を愛することから、逃げた自分。 リヒテンシュタインの真心にもっと早く気付いていれば、何かが変わっていたかもしれない。 でも、もう遅い。 長い長い、イギリスの恋。今、イギリスははっきりと、その終わりを感じた。 声を上げて、子供の様にイギリスは泣いた。 今日死んでしまった恋の為に、イギリスはただ泣き続けた。 // 終わり {{div_end}} // // カテゴリー記入 // {{category キャラ}} のキャラのところにメインキャラクターを入れて下さい // 『:::{{category 女性キャラ}}』を追加すればカテゴリを増やすことがきます // ::カテゴリー :::{{category リヒテンシュタイン}} :::{{category イギリス}} :::{{category イギリス→リヒテンシュタイン}} //誰と誰の恋愛描写がメインか分かりやすいように、カップリングカテゴリの登録にご協力お願いします。 //ポチ君(主に男性キャラ)×花たまご(主に女性キャラ)、または○○総受け、××総攻め などのかたちが一般的のようですが、SSに合わせて自由にお願いします。 // [[このページの上へ|#top]] // // コピーここまで!