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//  // ここからコピー! // {{anchor top}} !!〜Ladybird〜 // // にょたりあや百合など注意事項がある場合、下の「//」を消して表示させて下さい //  ''注意'' // 下はssをみやすくするためのdivの設定です消さないで下さい {{div_begin class="ss"}} // // 以下SSの中身 // 国を慈しむように、清き流れを讃えるセーヌ川。 その川の前に彼はたたずむ。手に白い百合の花束を抱えて。 いつも浮かべている朗らかな笑みは、今日は見当たらない。 賑やかな川辺に、一人無言で立ちつくす。 百合の花に唇を落とし、雄大な川へと投げ入れた。 「J'aime Jehanne a` jamais」 ただそれだけ。 小さく呟くと、川に背を向ける。泣きそうな顔を見せたくないから。 広大な公園の片隅、天を仰ぐよう枝を伸ばす樫の木に寄りかかる。 数百年たっても、生き生きと人々を見つめ続けている樫の木。彼はこの木が好きだった。 昔――争いの中、唯一の安らぎであった「あの子」と一緒にこの木の下で語り合ったから。 肩も手も触れる事もできなかった。だが、とても楽しかった。 彼女と様々な事を語り合った。綺麗な華や美味しい料理や、素敵なダンス、そして……叶う事なかった幸せな未来。 彼女は真剣に自分の事を考えてくれていたのはわかっていた。 だからこそ、馬鹿な事をわざとやって見せたこともある。 こんな馬鹿な奴に愛想を尽かしてくれれば、彼女は普通の少女に戻れるかもしれなかった。 だけれども…… 「馬鹿はお前だったな。ジャンヌ……」 傷を負って、泣いてみたり、旗持ちのくせに突撃してみたり…… 何よりも、こんな自分のために、命を捧げてしまったのだから。 あの日が近づいてくると、夜が怖くなる。眠るのが怖くなる。 あの朝、彼女が消えてしまったから。 イギリスのアメリカ独立の日が近づくと、体調が悪くなるという話を不意に思い出し、苦笑を浮かべた。 あの時は、指をさして腹を抱えて笑いもしたが、自分も同じくらい……いや、彼よりも情けないんだ。 別にイギリスを恨んでいるわけではない。 恨んでいるのは、彼女を守れなかった弱い自分。 「あーもう、情けねぇ。この愛のお兄さんが、一人の女にこんなに……」 手で目を覆い隠す。誰にも見られたくない。こんな姿を。 幸い、周りには誰もいない。 芝生に横たわる。木漏れ日が気持ちよい。 「……会いたい。もう一度……会いたい」 その言葉は、空のどこかにいる彼女に届くのだろうか。 ――ああ、夢だ。 足元が落ち着かない。身体が波に流されるような感触に、彼は冷静に判断した。 夢なのだから、自分を着飾る必要はない。 海に包まれているような感覚。何をするわけでもなく、前をただ見つめ。 ――見たことのある少女の姿。あれほど会いたかった『あの子』の姿。 目を疑う。なんでここに彼女がいるのかと。 すぐに夢の中だと言う事を思い出し、小さくため息をついた。 「……恨み言でもいいにきたのか?」 久しぶりに会ったのに、そんな事しかいえない自分がつくづく嫌になる。 彼女の顔が悲しみに染まる。首を横に振り、何かを伝えようと、唇を動かす。 声は聞こえない。耳をすましても、何も聞こえない。 「お前を見捨てた俺には声も聞かれたくないというのか?」 唇が動く。必死に否定しているのはわかっているのだが、あの可愛らしかった声が聞こえない事がとても悲しくて。 「……すまねぇ。本当に……馬鹿な男でさ」 愛おしい彼女に、愛のささやきも喜びの言葉もでてこない。 ただ、謝罪の言葉のみが口をついて出て。まともに彼女の顔を見れやしない。 その時、身体が柔らかい感触に包まれた。 あの時とかわらない、優しい香り。 彼女に抱きしめられ、初めて彼女の柔らかさを感じた。 暖かい手が、彼の頬に添えられる。まっすぐに対峙し、ゆっくりと唇が動く。 今度ははっきりとわかった。 『あ・り・が・と・う』 「ありがとう……だなんて、本気で馬鹿だろ。お前……何で」 失くしたと思っていた涙が頬伝う。 止めようとするが、止められるはずもなく、地面を濡らしていった。 「あー、もう、情けねぇ! 馬鹿は俺だ。何で何で何で……こいつの前で情けねぇ姿を」 空笑いしてみるが、笑えもしない。 どこにあったのだろうかと思うほど、涙が溢れてきて。 目元に暖かい感触。彼女の唇が涙を拭う。 まるで姉のように、彼の頭を手で撫でる。『早く泣き止みなさい』と慰めるように。 「しばらく見ないうちに、ずいぶんと女らしくなったな。聖母マリアの元で修行してきたのか」 やっと出てきた軽口に、彼女の顔にも少女らしい笑みが浮かぶ。 戸惑い気味に、彼から彼女の頬に触れ、消えてしまわない事に安堵のため息をつく。 日焼けして肌荒れして、けして美しいとはいえない肌。 でも、どんな女性よりも綺麗で。 吐息が感じられるくらい、顔を近づけ、唇を重ね合わせる。 挨拶のような軽いキス。それ以上はできない。 「何かガキみたいだな」 おでこを合わせ、小さく呟く。自分の頬が赤く染まっているのがはっきりとわかった。 気恥ずかしい感覚なんて、どれくらい味わっていなかったのだろうか。 手を絡める。指を絡める。ぎゅっと握り締める。もう離したくない。 なだらかな肩を指でなぞる。左肩に残る矢を受けた時の傷跡。そこに唇を落とす。 肌を合わせる。素肌が気持ちよい。 腕を絡め、足を絡め、唇を合わせ。 だけれども、それ以上は進入しない。それだけで、幸福だから。 「なぁ……俺、いい世界作れたと思うか? 良い国になれただろうか」 彼女の肩を抱きながら、誰かに聞きたくてたまらなかった質問を口にしてみる。 誰かに聞きたかったが、本当は怖くて聞きたくない質問。 首をかしげ、少し困った顔を見せる彼女に、質問してしまった事を後悔したくなった。 だが、すぐに彼女は笑う。舌をちょっと見せると、頭を撫でる。 「たく、からかったのか。この悪戯娘が」 お返しといわんばかりに、彼女の頭を撫で返す。髪がくしゃくしゃになるのなんてお構いなしに。 ひとしきりじゃれあうと、もう一度、強く抱きしめる。 耳元で今まで伝えられなかった言葉を呟く。 「……愛してる。 ありがとう。 ……すまない…… 愛してる。心から愛してる」 視界が歪む。光に包まれる感覚。彼女のぬくもりが消えていく。 何となくわかる。目覚めかけているのだ。 だが、今度は心穏やかだ。伝えたい事は伝えた。 「今度会うときは、薔薇の花束持ってくるよ」 最後にそれだけ言うと、光の中に消えつつある彼女に手を振った。 一番格好よくて、一番格好悪い、満面の笑みを浮かべて。 太陽の光がまぶしい。 瞳をあければ、目に入るのは青い空。 目覚めはすっきりしている。良い夢を見れたのだから。 「ふぁ〜良く寝た〜」 大きく背伸びをする。指先に何かの感触がした。 良く見ると、赤い身体をした小さな昆虫がしっかりとしがみついている。 人懐っこい虫、Ladybird。いわゆる天道虫だ。 太陽を求め、必死に動く小さな姿は、先ほどまで会っていた誰かを思い出す。 「ほら、太陽はあっちだぞ」 手の甲に乗せ、軽く息を吹きかけると、天道虫は小さな羽根を羽ばたかせ、天へと向かって飛び立った。 「……あの子に伝えてくれ。また会おうなってな」 青い空に、赤い点が解けて消えるまで、彼は静かに見守っていた…… 「……ありがとうな。手伝ってくれて」 男は手にしがみつく天道虫に向かって礼を述べた。 声に反応するかのように、微かな光を放つ天道虫。 男は何もない宙に視線を向け、照れ笑いを浮かべた。 「うっさいぞ。俺はなぁ、あの馬鹿が妙に静かなのが苦手なだけだ。照れてねぇぞ。 それに……」 悲痛な表情を浮かべ、 「……あん時は戦だから仕方ねぇが、結果的にあいつの大切な奴を殺したのは俺だもんな」 あの時の事は忘れられない。いつもは騒がしいぐらいの奴が、炎の前で泣きそうな顔だったのを。 あの日から、しばらくは空っぽの笑顔しか浮かべられなくなったのを。 そして、知っている。 彼女が消えたあの日が来るたびに、笑っているはずなのに、心は泣いていたという事。 どんなに争っても、結局は腐れ縁の悪友なのだから、良くわかる。 だからこそ…… 「聖母マリアに仕える天道虫よ。希望をつれてきて感謝する。 Ladybug Ladybug fly away home」 呪文のような歌を口ずさむと、軽く息を吹きかけ、天道虫を空へと導く。 「……本当にありがとうな」 空を目指す天道虫をしばらく見守ると、大きくあくびを一つし。 「さーて、んじゃ、いっちょ、喧嘩ふっかけてくるとするか」 ――そして、いつものように、馬鹿騒ぎが始まる―― // 終わり {{div_end}} // // カテゴリー記入 // {{category キャラ}} のキャラのところにメインキャラクターを入れて下さい // 『:::{{category 女性キャラ}}』を追加すればカテゴリを増やすことがきます // ::カテゴリー :::{{category ジャンヌ}} :::{{category フランス}} [[このページの上へ|#top]] // // コピーここまで!