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!!祭囃子
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【メインCP】 フランス×ジャンヌ
【傾向】 現代でラブラブ。
【その他】あえての人名あり。泣かせないフラジャンを目指してみた。
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// 以下SSの中身
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薄いガラスに何かにぶつかる澄んだ音。
鼻をくすぐる草の香り。
そんなものが自分の家にあったかなと、ぼんやりとした頭で考え。
昨晩は日本の家に来襲した事を思い出した。酒の勢いで。
かなり迷惑そうな顔をしつつも、しっかりと対応してくれる日本はさすがというべきか。
それどころか、逆さにした箒に手拭いをかけた奇妙なアートや、ぶぶづけという食事まで出してくれた。
それで、そのまま日本の家で泥酔し……
心地よい畳の香りに、再び眠りに誘われながら寝返りを打つ。
腕に触れるふんわりとした感触と甘い香り。その触れたものを抱き寄せる。
温かく柔らかく、抱き枕としては最高だ。
近寄ってくる足音に気がつきもしたが、まだ眠気には勝てそうに無い。
どうせ日本なのだから、空気を読んで放っておいてくれることだろ。
もう一度、その抱き枕を強く抱きしめ、
「フランスさん、今日はお盆で忙しいので、できればもうお帰りくださると……
…………え?」
驚愕の声。
全裸に薔薇ぐらい見慣れているだろうに、何をそんな驚いているのか。
「えっと、あっと、昨晩はお楽しみだったみたいですね」
卑下た笑いとともに言ったならば様になっただろう。
しかし、日本の声は硬く、ほぼ棒読みだった。
あの日本がこんなに驚く事があったのかと、重い瞼をどうにか開け、
自分の腕の中で安らかな寝息を立てている少女。
微かに癖のある短い金髪。長い睫。少し日焼けしている健康的な肌。
決して華奢ではなく、程よく筋肉のついた腕。でも、女らしい丸さをもつ身体。
そんな少女が自分の腕に抱かれ、安らかな寝息を立てていたのだ。
その上、全裸。
もちろん、彼も全裸。いや、股間にはかろうじて薔薇はあったが。
「ちょっと待て! 何で女の子がここに!
っつか、こんな可愛い子側にいて、気がつかないでぐっすり寝てただなんてお兄さんちょっと自信なくなる……
じゃなくて! あああ、日本、そんな蔑んだ瞳で去っていかないで!
もっと蔑んで! 下駄で蹴って。放置プレイもいいけどハァハァハァ」
派手に混乱したフランスが日本の着物の裾を握り締め、懇願した。
振り払うわけもいかず、困った顔を見せる日本。
その光景に、何故か背後に熱海の海岸が見えた気がする。
「お宮……じゃなくて、フランスさん、言い訳はどうでもいいです。
人の家で女の子連れ込んで、お楽しみなさったのはさすがフランスさんです。ええ、愛の人です。
私には理解し難いので、どうぞ離れて……荷物まとめてお帰りください。で、しばらく顔見せないでくださいね」
丁寧な言葉の中に、毒がたっぷりと含まれている。
あまりに慇懃無礼な態度に、ぞくりと快楽が走る。
いつもは無難な対応をしてくれる人物が、こんな冷たい態度をしてくれる。その温度差にフランスの魂が揺さぶられた。
いっそここまで蔑まれたら、もっと蔑んで欲しい。とことん蔑んで欲しい。
「ああ、日本いい……その冷たい瞳が最高。ハァハァハァ」
「ちょ、何でそんなきらきらした目になってるん……アレ?」
擦り寄ってくるフランスを振り払い、眠り続ける少女の顔をまじまじと見た。
さりげなく、露になった肌に肌布団をかけてあげるのも忘れない。
どこかで見たことのある顔。
「もしかしてこの方、ジャンヌたん……もとい、ジャンヌ・ダルクさんではありませんか?」
フランスの家に行った時、大切そうに飾られた色あせた絵画を目にして事がある。
りりしい笑顔の少女と幸せそうに微笑むフランス。
寄り添ってはいるが、身体のどこにも触れておらず、近くて遠い絵画だなと思った記憶がある。
その時に、その少女の事を尋ねたら寂しげに少女の名を教えてくれた。
そこで寝ている少女は、その絵画の少女にそっくりなのだ。
「……ジャンヌ?」
すーっと表情が一変した。へらへらとした笑顔から真面目な顔に。
眠り続ける少女の顔に見入る。忘れもしない、忘れられない、忘れたくない少女の顔。
「……ジャンヌ」
愛おしい彼女の名を呟いた。さらりと揺れる髪に触れる。
懐かしい感触。触れても消えない幻。
艶やかな唇を指でなぞり、顔を近づけ、
「すみません。えっと、台湾さんあたりに女物の服借りてきます。お邪魔しました!」
顔を赤らめ、慌てて部屋を後にする日本。
寸止めで顔を止め、去った日本をちらりと見る。
「……キスなんてするわけねーだろ。純な奴だな」
「……口付けくれないんですか?」
耳元で聞こえた声に凍りつく。首をゆっくりと動かし……頬を赤らめ、まっすぐに自分を見つめている少女。
しばしの沈黙。
「うわぁっ!」
焦り顔で、彼女から離れる。鼓動が煩いほどに早い。
離れた途端に、今の姿を思い出す。股間に薔薇だけ。妙な恥ずかしさに顔が火照った。
何かで身体を隠そうとしたが、肌布団は彼女の魅惑の肢体を隠している。
仕方なしに、近くにあった座布団で身体、特に前を隠し。
「あー、情けねぇ……」
無様な姿に、肩を落とした。
再会は、薔薇の花束持って、おしゃれな服着て、満面の笑みでと思っていたのに。
酔った醜態の姿。薔薇は股間に装備し、おしゃれな服は裸の王様状態。笑みどころか情けなさに泣きそうになっている顔。
「すまんな。こんな男で」
「そんなフランスさんも好きです」
彼女のまっすぐな言葉に、彼の顔が再び赤面した。
肌布団を身体にまとい、彼の側に寄ってくる。1歩近づけば、彼は1歩後ずさり。
いつものフランスを知っている者がみたら、病気かと思うだろう。
慌てる姿はとても滑稽で。
「近づくな! ちょっと待ってろ! 服を着てくるって! ああ服はここに来る前にもう薔薇装備済みで!」
混乱する彼が愛おしくて。
「逃げないでください。久しぶりの再会なんですよ。それとも……私の事、嫌いですか?」
意地悪な質問だろう。口ごもり、まっすぐに瞳を見て
「……愛してる」
ずっと伝えたかった言葉を口にしたら、少しだけ冷静になった。
彼女に近寄る。頬に触れる。遠慮がちに触れる手が震え。
「もっと触れてくれませんか?」
「コレが限界だよ。触れられるわけねーだろ。お前は聖女で」
言葉が途切れた。彼の首に回される腕。近づく瞳。吐息が顔にかかり、唇が重なる。
短く軽い口付け。なのに、触れられた唇が熱い。
「…すまん」
聖なる者に触れてしまった罪悪感に、謝罪の言葉しかでてこない。
そんな彼に、彼女の表情が曇り、
「何で。もういいじゃないですか。折角会えたのに。
昔のように触れられないまま、さようならはイヤです」
もう一度、彼女の柔らかな手が彼の頬に触れた。
びくりと肩を震わせ、唇が動く。何か言葉を発しようとしているのだが、言葉にならない。
彼女の身体が彼に触れる。ぴったりとくっつく肌。柔らかな胸が彼の胸板に挟まれ、形を変える。
肌布団が身体からはらりと落ちる。白い肩が露になった。
左肩に残る傷跡。それは彼女である証。あの戦いの中にいた印。
抱きしめたいが、抱きしめられない心の葛藤。
震える腕がやっと彼女の肩に回る。軽い音を立て、彼女が畳に横たわった。
「……いいのか?」
「許可なんていりません……」
返事はそれだけ。二人は重なり合う。白い肌に遠慮しがちに触れる。
頬を染め、可愛らしい反応を見せる彼女に、思わず彼まで頬が赤くなった。
まるで女を全く知らない少年のように、戸惑いながら彼女の身体を撫で、
襖の向こうで数人の気配。何やら話し合っているらしい。かすかに襖が開き、
「視姦プレイ? もう、お兄さん人気者だから困っちゃう」
いつもと変わらぬ、ふざけた声に肩の力が抜けたのか、襖をぶち倒し、一同がなだれ込んできた。
彼女の身体の上から降り、肌布団を肩にかけてやると、気まずそうに視線を泳がせる一同の前にしゃがみこんだ。
「だからやめましょうっていったじゃないですか! 私は止めましたよ。私は皆さんに無理やり連れてこられただけで」
「こんな美味しい場面、覗かないと男じゃないんだぜ!」
「韓国、台湾はgirlだ」
「全く、若い奴らあるよ」
賑やかに騒ぐ、亜細亜の若者三人組に、一人離れてため息をつく中国。
そして、更にその後ろでにこやかな笑みを浮かべている日本がいた。
ただし、あまりにもにこやかな笑みすぎて、恐ろしい笑みだが。
「本当に、フランスさんは愛の人だったんですね。人んちでそこまで。
まあ、今日は目をつぶってあげますけれど」
赤面するジャンヌに優しく微笑むと、ワンピースを手渡した。
ついでにへらへらと笑うフランスにも、服を投げつける。
肌布団を巻きつけたジャンヌを立たせ、台湾に別室へと連れて行ってもらい、一同も部屋を後にする。
一人残されたフランスは、大きくため息をつき、投げつけられた服を広げ、再び硬直した。
『ぶはははははははははっ!!』
部屋の中に大爆笑の声が響き渡った。
あるものは彼を指差し、あるものは腹を抱え、あるものは笑いすぎて呼吸困難を起こしており。
ジャンヌでさえ、視線を逸らし、肩を震わせていた。
仕方が無いことだろう。
美意識の強いはずのフランスのあの格好を目にしたのだから。
だぼだぼの蛍光ピンクのTシャツに、大きく書かれた似非ものの某夢の国のネズミ。その上に大きく『中の人はいません』の文字。
更に真っ蒼な半ズボン(サスペンダー付)。露になった脛毛がとてもチャーミングである。
「……あんなのよく持ってたあるな」
「面白かったのでつい衝動買いを。使う機会があってよかったです」
呆れ顔の中国に、満足しきった日本が答えた。
「日本、お前なぁ」
すごんではみても、その格好なのだから迫力はない。更に笑いを誘う結果となり、再び部屋に笑い声が響き渡った。
小一時間後、笑い疲れてぐったりとした一同はどうにか呼吸を整え、車座になった。
ただし、誰もがフランスから視線を逸らしているが。
「で、ジャンヌがここにいた理由はわからないあるか?」
「ええ。天でいつものように過ごしていて……目の前に緑色の馬が現れてそれに連れられて。
そうしたら良い香りがする煙の中に…」
「greenのHorse? それはずいぶんとdreadfulな話だな」
「緑の馬? 煙……もしかして」
縁側に並べてある野菜でつくったモノを眺める。
今日はお盆。先祖の精霊を迎えるため、朝イチできゅうりの馬となすの牛を作った。
そのきゅうりの馬に乗って、精霊達は帰ってくるといわれていたのだが。
「手違いでジャンヌさんを? それともサービスですかね」
首をかしげる日本の背中を韓国がバンバンと叩いた。
「細かい事は気にしないんだぜ! 折角の面白いイベントだから、楽しまなきゃそんだぜ」
窓の外から聞こえてくる祭囃子の音。お盆の時期に行われる盆踊りが今宵行われるのだ。
「そうですね。そのために私たちも日本さんのおうちに来たんですもの。
あ、ジャンヌさんは私が浴衣着付けてあげます。フラン……ふふっ、ふ、フランスさんはお願いします」
できる限り目に入らないようにしていたのだが、名前を出すと同時に視界に入ってしまい、再び噴出してしまう。
笑いすぎてもう腹筋が痛い。その場から逃げるように、ジャンヌの背中を押し、隣の部屋へと消えていった。
「さて、フランスさんの着付けですか。あまり面白みもありませんが」
ため息混じりに箪笥の中を探り、一式の浴衣を取り出した。
質素ではあるが、決して地味ではなく、まさに粋というものだろう。
「そーいうのがあるんだったら、さっさと出せ! 絶対この服嫌がらせだろ。俺に恨みでも…」
「恨みが無いと言い切れますか?」
にぃーっこりと微笑む日本に、フランスは言葉を失った。
日本には確かに色々やった。無茶な事もやった記憶はある。
「……あー、すみません。ごめんなさい。この服貸してくれただけでも嬉しいです」
涙をだくだくと流すフランスに、日本は勝ち誇った笑みを浮かべたのだった。
続き:[[祭囃子 2|9_542-554_2]] 大作のため分割させて頂きました
// 終わり
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