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10_103-115


 卵が先か鶏が先か

【メインCP】 オーストリア×ハンガリー
【サブCP】神聖ローマ×ハンガリー
【傾向】 一部陵辱っぽさありだが、基本はラブラブ。
【その他】
歴史的な矛盾はあるかもしれないが、気にしてはいけません。
NGは「卵が先か鶏が先か」でお願いします。



肌が触れる。熱い身体。
強く抱きしめられ、また絶頂を迎える。
こんな細い身体のどこにそんな情熱がつまっているのだろうか。
「オーストリアさぁん……」
甘い声をあげる。潤んだ瞳で彼を見上げ、
「全く、貴女は何でこんなにも魅力的なんですか」
指の腹で唇を拭い、重ね合わせる。
最初は軽く触れる程度。
次は深く。舌で口内に侵入した。
自らの領域を侵略される感触に、彼女は身体を震わせた。
彼は彼女の身体を彼女以上に良く知っている。
黒子の位置から、どこが一番感じるかまで。
性的にも幼なかった彼女を開発したのは彼なのだから。
唇を合わせたまま、腰を激しく動かす。
結合部分が濡れた音をたてる。
その音に、頬を赤らめる彼女に耳元でつぶやく。
「聞こえますか?
こんなに私を求めてくださって。
こんなにも、貴女の中は熱く私を締め付けて」
「や……言わないでぇ……ふぁん……あぁ」
小さく身体を震わせた。軽くいったらしい。
しかし、彼の動きは止まることなく、更に激しさを増していった。
再び高まる快感。
腕を伸ばし、彼の身体を求め。
「はいはい、ぎゅっとしてあげますよ。甘えっこさん」
強く抱きしめられる。胸板に胸を押しつけられ、淫靡に形を変える。
その感触すら、一つの快楽となり、
「ふぁ!もぅ……ダメで……ゃぁ」
「イってしまいなさい。私も一緒にいきますから……くぅっ」
一瞬早く全身を快楽が支配し、そして体内に満たされる感触に再び軽い絶頂を迎えた。

腕枕をしてくれる彼の寝顔。
幸せをかみしめながら、彼の唇を指で拭う。それから口づけ。
彼の癖だった。しかし、いつしか彼女にもうつってしまい。
「愛してます。でも……」
少しだけ憂鬱な顔になる。
小さな独占欲。
それが彼女の心を占めていた。

「初めての相手かぁ〜」
一人ため息を漏らす。
少し前にセーシェルから不思議な体験談を聞いてから、ハンガリーはその事ばかり頭に浮かんでは消える。
「私の時は……アレだったからな」
懐かしい苦い記憶を思い出し、苦笑を浮かべた。
まだオーストリアに仕え初めて間もない頃、犯されるよう初めてを奪われた。
今では好きな相手なのだから、まだよかったのだが。
「もう少しロマンチックな思い出になればよかったんだけど」
そして、愛する者の初めての事を考えると気が重い。
あの時、どうみても初めてではなかった。
手慣れている……というわけではないが、女の身体に戸惑いはなかったから。
「あ〜私もあの人の初めてになりたかった」
イギリスをつれてきて、ブリ天の奇跡を起こしてもらおうかとも思ったが、
幼くなったオーストリアを抱いても、それは彼の初めてになるわけでもなく。

大きなため息を一つ。
「おや、そんなため息をつくと、幸せが逃げていきますよ」
背後から聞こえた声に机から勢いよく起きあがった。
声をかけたのはにこやかな笑みを浮かべた日本。
なぜ、ここにいるのか、先ほどのつぶやきを聞かれたかもとか、いろいろ頭に浮かんだが、
ここにいるのはいつもの会議の後だからだし、つぶやきを聞かれたとしても、
空気を読むのが得意な日本なのだから、きっと心に留めるだけにしておいてくれる。
安堵のため息を一つ。
「話は聞かせていただきました。過去に戻りたいと言うことですね」
空気を読み過ぎて、そうくるとは予想外だった。
まあ、言ってみただけで、そんな手段はないだろう。さすが日本とは言えども。
「こんな事もあろうと、用意してきましたよ。じゃーんっ」
懐をあさり、なにやら不思議な薬入れを高らかに取りだした。
……なにやら、取り出す時に擬音やら、光やら、彼の手が丸く見えたきがしなくもないが、きっと気のせいだろう。
「何が『こんな事もあろうと』ですか……って、まあ、それは日本さんだから、気にしない事にしますが、それは何ですか?」
細かい事をいちいち気にしていてはいけないと、ハンガリーは割り切って日本が手にしている薬入れに目を向けた。
シンプルな薬入れ。手のひらに収まる程度の大きさ。

「これはですね。過去にいける薬なんですよ。
あ、勘違いしないでください。アッチの世界にトリップできる薬とかではありませんから」
薬入れを開き、カプセルを一つ取り出して見せた。
こちらも特に特徴のないガラス製のカプセル。あえていうならば微かに何か良い香りがするぐらいか。
「これは?」
「……時をかける少女というのを知っていますか?」
日本が口にしたのは、彼の国で流行った小説という認識はある。
ただし内容は知らないが。
「時をかける少女では、主人公がある香りを嗅ぐと過去へと遡ってしまうというものでした。
そもそも香りがどのように作用するかと言いますと、アインシュタインの……」
饒舌にしゃべり始めた日本を横目に、受け取った薬入れを触る。
カプセルを一つ手にとり、香りを嗅いでみる。爽やかなラベンダーの香りだ。
軽くこすりあげると香りは強くなり……
突然、周りの景色が歪んできた。
目が霞んだかと思い、目をこするが、変化はない。徐々に彼女の周囲の景色に歪みが生じ、
「え?ちょっ、日本さ……」
助けを求める間もなく、ハンガリーの視界から日本の姿が消えた。
いや、正確には、ハンガリーの姿が消えたというべきだろう。
そんな緊急事態に気がつかない日本は、長々と説明を続け、
「とまあ、どんな研究しても、実際は香りで時空間を超える事はできませんが、ラベンダーの安眠効果で幸せな夢を……おや?」
いつの間にか消えたハンガリーに気がつき、首を傾げる。
部屋の外に出た気配もないし、どこかに隠れているようにも思えない。
部屋の中に残ったかすかなラベンダーの香り。
「まさか、本当に?冗談が本気になるとは……やはり、二次元の力は偉大なりというわけですね。
この調子で二次元に入れるアイテムを作ってみせますよ!目指せ、青狸ロボットです」
どこかずれた日本の言葉に、突っ込める人物はそこにはいなかった。

ラベンダーの香りが鼻をくすぐる。
暗闇が世界を支配する。
もう夜なのかと、まばたきを数回。辺りは真っ暗だが、遠くに見える光に手を伸ばし……

途端に身体に走る衝撃。まるで上から落とされたような。
身体を包み込むのは大量の服。

「何だ?」
外から誰かの声がした。
幼い少女の声。どこかで聞いた事のある声。
反射的に口を抑えた。息を殺し、その少女の声に耳を傾けた。
微かに聞こえるは荒い息使いと、しゃくりあげる声。
暗闇の中、光を見つけた。外から漏れる光に目を凝らし。
そこで行われていた事に息を飲んだ。

裸の少女が、やはり裸の少年を組み敷いていたのだ。
意思の強そうな瞳にうっすらと涙が浮かび、眉をひそめ、少女を見上げている。
「バカヤロー、俺にこんな事したらどうなるか」
「しらねぇよ。ちんちんついてるくせに、弱虫なんだな。やーい、神聖ローマの意気地なし」
セミロングの少女が吐き捨てる。
軽く膨らんだ胸、女らしくなっている身体。なのに、口調は男らしく。
組み敷いた少年のかわいらしい性器をうらやましそうな表情でいじる。
その度に少年は唇を噛み締め、快楽に耐えようと顔を背ける。

「ちくしょう。俺だってちんちん生えてれば、あんなひらひらした服着る必要も、髪伸ばす必要も……
あいつにやられる事もなかったのに」
大きな瞳から溢れ出した涙。
自分の顔を濡らす彼女の涙にあっけにとられ、手を伸ばし頬の涙を拭ってやる。
しかし、それがシャクに障ったのか、さらに強く性器を握りしめた。 顔を歪める少年。
「ちくしょう!同情なんてするな!俺は強いんだ!トルコだって追い払えるぐらいなんだ!
あいつなんてあんなに弱いのに!俺より弱いのに!
ふざけんな!『女らしい服着なさい』『貴女は女性なんですから』? ふざけんな!」
そそり立ち、固くなった性器から手を離した。

これで解放されると思ったのだろう。
少年が安堵のため息をつく。
だが、それは間違いだった。

少女は腰を上げ、性器の上へと移動する。ゆっくりと腰をおろしていき。
「ば!止めろバカ!くっ」
性器を包み込む女の身体。
感じた事のない感触に顔を歪ませる。
「もしかして、お前どーてーか?」
蔑んだ瞳で見つめられ、少年の顔に汗が浮かぶ。
「うるせぇ!俺はイタリアに……」
「イタリアにかぁ〜」
にやつく少女。しかし、本当は余裕がないのだろう。
中に導いたモノの感触に口元がひくついていた。
まだ幼さの残る少女の中に入れるのは本来ならば無理な事だ。
それでも気丈に、イヤ強気に攻め立てる。
目から涙をこぼしながら。

拙い腰の動き。
無闇に動かすだけで、快楽には程遠い。
だが、自慰すらろくにしらない少年にとっては、中でこすられるだけでかなりの刺激となっている。
濡れる音、ぶつかり合う肌、荒い呼吸、そして微かな嗚咽。
少年の小さなうめき声。
大きく身体を震わせ、腰の動きを止めた。
少年の上から退け、床にへたり込む。

「……男ってずりぃ……一人で気持ちよくて、一人で満足できて。
いてぇよ……こんなんで気持ちよくなれねぇよ……オーストリアなんか嫌いだ。
神聖ローマもイタリアもスイスも……男なんてみんなみんな嫌いだ……
俺だって男になりたかったのに……」

中に出された精液を指でかき出しながら、少女はすすり泣く。
少年は初めて味わった快楽と、いつもは涙など見せない少女の異変に戸惑いながらも、今はただ呼吸を整えるしかできなかった。



クローゼットの中から見る懐かしい光景に彼女は目をつぶりたかった。
目の前で繰り広げられていたのは、幼い頃の自分。
あの時はオーストリアに負け、召使いとして彼の屋敷にいたのだ。
そして、女としての自覚を持つ前に無理やり『女』にさせられ、女を強要され……
男だと思っていたのに、男になれると信じていたのに。
それを打ち砕かれて、自暴自棄に陥っていた時期。
「あ〜馬鹿だな。私。あんな事したって男になれるわけでもなかったのに」
ぽつりとつぶやき、クローゼットの鏡に映った自分の姿を見つめる。
今となっては、長い髪もドレスもお気に入りだ。
クローゼットの中にある服はどれも彼が選んでくれて……召使いのはずなのに、綺麗な服選んでくれて。
愛されていたはずなのに。

「あんときは『男』に執着していただけなのよね」
小さくため息をつき。

「……誰だ!」
すすり泣いていたはずの少女が声をあげた。
足元はおぼつかないが、確実にクローゼットに向かってきており。
「やばっ、えっとさっきはどうやって……」
焦れば焦るほど、どうすれば良いかわからなくなっていく。
その瞬間、手からカプセルが一つ落ちる。
慌てて手を伸ばす。鼻をくすぐるラヴェンダーの香り。
世界が歪み。

「誰もいないじゃねーか」
クローゼットを開ける少女。女らしい数々の服が否応なしに目に入り、
「ちっ……」
いらただしくクローゼットほ閉じるのだった。

再び、宙を飛ぶような感触におそわれる。
くにゃりと曲がる視界。闇が迫り、放り出される感覚。柔らかな感触。

「いたた……またクローゼット?今度は……」
光が差す方向に目をやり……
苦虫を噛み潰したような表情になった。
目の前で繰り広げられる饗宴。

青年になりかけの少年が、まだ幼さの残る少女を組み敷いていた。二人とも全裸で。
少女の瞳は泣きはらして真っ赤。
必死に抵抗したのか、伸ばしかけの髪は乱れ、肩で大きく息をしている。
それでも、強い意志のこもった瞳で、少年を睨みつけていた。

「バカ野郎バカバカ……てめぇなんて嫌いだ」
「嫌いで結構です。貴女は今日から私のものですから、貴女の意志なんて知りません」
重なった腰を動かすと、少女は眉を潜め、腕を振り回そうとする。
しかし、手首はしっかりとベッドに縛り付けられており、少年の顔に届きそうにない。
膨らみかけの胸の先端を指ではじく。くすぐったそうな表情を浮かべる彼女に、彼は軽いため息をもらした。
「まだまだみたいですね。まあ、私が色々教えで差し上げます」

手慣れた様子で……とあの時は思っていたのだが、今見てみると、かなり拙い。
虚勢を張っているだけのようにも見える。
少女の胸に手を伸ばし、ゆっくりと揉みしだく。
たまに強く、時に優しく。
ピアノをひくような感覚で、指を動かす。
最初はくすぐったそうにして少年を見ていたが、徐々に甘い声が混じり始めた。
胸の頂を唇で触れる。身体を大きく震わせ、反応する姿を確認すると、少年の顔に笑みが浮かんだ。
「調律が必要みたいですね」
少女の胸の突起を唇で挟む。
「ふぇ……そんなそこ吸ったってミルクなんかでねぇぞ」
相変わらずの男言葉に眉をひそめた。
少しだけ乱暴に、少女の幼い割れ目に指を侵入させる。
「ひゃっ!そこはダメ!変態!バカ野郎」
口から次々と飛び出す怒号に、更に指の動きを強めた。

「そんな下品な言葉使いは許しません。
私のものになるのだから、上品にしてください」
「バカ。そんなの俺の自由だ……ふゃ」
「『俺』じゃなくて、『私』です。ほら、言ってごらんなさい」
反抗的な目つきで睨みつける少女に、少年は指の動きで対抗する。
まだ男を知らない割れ目に指をいれ、かき回す。
固く閉じた蕾は、少年の細い指すらも侵入を拒み、強く締め付ける。
「バカ野郎。俺は俺で……やっ」
「『俺』じゃなくて、『私』です」
誰にも触れられた事のない、マメを指で摘まれ、肩を震わせた。
「やめろっ!オーストリアのバカ!」
「まだ抵抗するんですか。素直になれば、優しくしてあげますのに」
少年の瞳に鋭いものが宿った。

それから小一時間。
『俺』と言う言葉がでる度に、強くマメを指で挟む。
頭の中を駆け巡る電撃のような刺激に、大きく体をふるわせる。
全神経まで蝕んでいく、未知の感覚に、まともに呼吸すらできない。
息を吐き出し、肺が空になるまで息を体の外に出す。
少年に背中を撫でられると、途端に今度は息を吸う事しかできなくなり。
「ダメ……やだ…ふぁ、苦しい……やぁ」
どこを触れられても、快楽の波は押し寄せ、思考回路はすでに壊れかけていた。
ほどかれた腕で少年を殴る事もなく、その腕は助けを求め、宙をさ迷う。

「……そろそろ解放してあげますかね」
少年の言葉に、焦点の合わなくなった少女の瞳に光が宿った。
――これで、この地獄から逃れられる。
そう思ったのだろう。大きく息を吐き。

「ぐっ!……え、あ?」

身体を貫かれる感覚に戸惑いの声をあげた。
痛みはなれている。
死にそうな怪我をしたこともある。
その痛みに比べれば、些細なものだが。
鈍い痛み。それから中まで焼かれるような痛み。
それがどこから来ているか、痛みの源を探り。

「……お前……」
罵倒の言葉も出てこない。
「これで貴女も『女』ですね」
冷静な少年の声が頭に響く。
少女を貫くモノの正体。
それは男を象徴する『モノ』であり。
それは、大事なものを失ったということであり。
「……殺す殺す殺すころ……くっ……やぁ」
瞳から溢れ出す涙にさえ気がつかず、呪詛の言葉をなげつけた。
「殺せるものならばどうぞ」
冷淡な少年の態度。

一度大きな呼吸をすると、ゆっくりと腰を動かす。
動きは大きめに。最初はゆっくりと。
まるで獲物をいたぶるように。
強い痛みはない。しかし、嫌いな相手に侵略されている感触に、ただ無言で涙をこぼす。
唇をかみ締め、できる限り声を出さぬよう。
打ち付けられる腰。濡れた音を立て、結合部が泡立つ。荒い息で進入してくる『男』を睨みつけ。
抵抗はしてみても、高まる快感に強くシーツを握り締める。
「ほら、良い声を聞かせてください」
指で唇をこじ開けられる。噛んでしまおうかとも思ったが、次々と襲う快楽にそれどころではなく。
「や…ぁん…馬鹿ぁ……お前なんて嫌い……あぁ!!」
大きく身体を震わせる。
強い締め付けに、少年の精が吐き出される。
ぴくぴくと胎内で動く自身に反応するかのように、少女の中も収縮を繰り返し。
深呼吸をし、力を失った少女の身体から撤退する。
とろりと溢れ出す白濁液の中に、赤いものを見つけ、小さくため息をついた。

意識を失った少女の身体を抱き寄せ、先ほどは見せなかった優しい笑みを浮かべる。
「不器用ですみませんね。もっと優しく初めてを頂きたかったんですが……
トルコに取られたくなかったんです。
これからゆっくりと愛していきますから」
唇にできた傷を指の腹で拭い取り、唇を重ねる。少し血の味がするキス。
手足についた束縛痕にも唇を落とし、伸ばしかけの髪に指を通す。

「もう少し伸ばしたら、あの人みたいになりますかね。
ドレスを着てもらって、丁寧な言葉使いにして……どこに出しても恥ずかしくない立派な淑女にして見せます。
……今まで戦いばかりでしたから、せめてここにいる時ぐらいは女性の幸せを……」
髪に触れている手を振り払う少女に苦笑し、おでこにキスを一つ。
「ま、まだまだ先でしょうけれどね」
疲れからか、少年も大きなあくびを一つ。しかし、まだ仕事は残っている。
少女を抱きかかえると、おぼつかない足取りで部屋の外へと出て行った。

クローゼットからハンガリーが出てくる。
今まで知らなかった愛する者の本音に、涙をぽろぽろとこぼした。
「オーストリアさん……あの時も私の事を思ってくれて……嬉しいです」
今、思い返せば、あの行為の後、何故か全身を綺麗に洗われて、ふかふかのベッドの上に寝かされていたし、
その後、不思議と手を出してくることはなかった。言葉遣いの指摘はされたが。
思い出される優しい思い出に心が熱くなり。
「でも……」
『あの人』とは誰なのか。その言葉を発した時の彼の瞳は少し寂しげで。
「……誰なんだろ」
ぽつりと呟く。

涙を拭くためにハンカチを取り出し……カプセルが床に落ちる。
軽い音を立て、床を跳ね……またラヴェンダーの香りに彼女は包まれた。

3度目の感触。そろそろ驚かなくなってきた。
視界が鮮明になっていき……彼女の前に広がったのは先ほどと同じ光景。
「え? 移動したわけじゃなかったの?」
不思議な感覚に首をかしげ、部屋の中を確認する。先ほどと同じようで、少し違う。
記憶を掘り起こし、今いる時代を思い出そうとする。

しかし。

「ん……ダメ。もう熱い」
身体が火照り、どうしようもなく落ち着かない。
先ほどまで何度も『自分』の行為を見ていたのだから、仕方がないだろう。
彼のベッドの上に座り込む。スカートを口に咥える。
愛する者からもらった下着が露になった。白い下着。両脇で結ぶタイプの可愛いもの。
彼はいつもこの下着を唇で解いてくれ。

「ぁ……オーストリアさぁん…」
紐を引っ張るとするりと外れる。露になったつるりとした割れ目。
この間、プレイの一環として綺麗にそられてしまったのだ。
指でゆっくりとなぞりあげる。
すでにしっとりと濡れていて、下着から銀色の糸を引いている。
もう片方の手で胸元のリボンを解き、豊かな胸に触れる。
つんと硬くなった突起を指で転がす。いつも彼がやってくれているように。
「ふぁ……ぐちょぐちょです…んっ、もうこんなに……」
下半身に伸ばした手も同時に動かす。指で割れ目をなぞり、敏感な豆を軽くつまむ。
蜜を溢れ出す中へと指を進入させる。濡れた音をわざと響かせ、動かす。

「あふぅ……そ、そういえば……一人でやるの…ふぁ……初めてかも」
とろりとした蜜を掻き出し、口に含む。彼の好きな羞恥の一つ。
いつもは熱がこもる前に彼が抱いてくれる。ほしいと思った時には、すでに抱かれている場合もある。
だから性的にはかなり満たされていて。

「やぁ……ん……オーストリアさぁん……欲しいです。オーストリアさんの……おちんちんが」
いないとわかっはいるが、口から出るのは卑猥な言葉。
卑猥な言葉を出すたびに頬が赤らむ。耳元で優しく責める声が聞こえる気がして。
緩む唇から咥えていたスカートがはらりと落ちる。もう一度口に咥える。一種の束縛をイメージして。
胸をはだけ、形の良い胸を空気に晒す。
まるで羞恥プレイのような格好。大事な所は、ぐっしょりと濡れて丸見えで。
それでも刺激が足らず、自らの指で擦る。呼吸をするたびに収縮する蜜壷。
指だけじゃ物足りない。でも、指の動きは止まりそうにない。
「ふぁ……オーストリアさぁん! オーストリアさ……」
高まる快楽に、大きく背をしならせ……

扉の隙間からこちらを見ている一対の瞳に気がついた。
慌ててスカートを正し、胸を腕で隠す。

「誰?」
「だ、誰じゃありません。貴方こそどなたですか。私の名を呼んでそんな事……」
声に反応したのは少年の声。扉を開け、部屋の中に入ってきた。顔を赤らめた上品そうな少年。
その顔に見覚えがある。いや、忘れては困る顔。
「オーストリア……さん?」
先ほど、幼い自分を抱いていた少年期のオーストリアだ。
いや、先ほどよりも幾分か更に幼い気がする。
彼女の前までくると、もじもじと身体を動かす。
露になった胸から視線を外そうとしているのだが、いかんせん性に興味を持つ年頃なので、視線が胸に集中してしまっている。
若干前かがみにも見える。

赤面した少年。そして愛している者。
二重奏の魅力に身体の芯が熱くなる。
自慰もイく前に中断されてしまったし。……このまま少年を抱いてしまおうか。
そんな欲望に支配され始める。
言葉を出そうとしても、声の出ない少年の腕をつかみ、ベッドへと引っ張った。
動揺する少年の耳元に唇を近づける。

「小夜曲を一緒に奏でましょう」

耳たぶに軽く噛み付いてみせる。
びくっと肩を震わせ、耳を隠そうとしたので、手の甲に唇を落とし、指先を口に含む。
長い指を唇でふれ、じっくりと吸い上げる。いつも音楽を奏で、彼女の身体を美しい感覚で満たしてくれる。
そんな指を彼女は愛していた。優しく、執拗に指を吸い上げる。
指先からくる快感に少年は惚けた表情を浮かべ、

「オーストリアさん、可愛い……んっ」
彼の指を解放してやると、今度は唇を指の腹で拭い、軽く口付ける。
口付けの最中もまん丸に開いた瞳。彼女は苦笑を浮かべた。
「キスの時は目をつぶるのがお約束です。今度は私もつぶりますから」
こくこくと頷く少年。すぐさまぎゅっと目をつぶる姿がとても可愛らしい。
「本当は男性がリードする場面でしょうけれど、今日は特別ですよ」
彼女も瞳を閉じ、唇を重ねる。まずは表面を合わせるだけ。
それから唇を割って進入する。ぴくりと肩を震わせる少年が可愛らしくて、少しだけ目を開けてみてた。
顔を真っ赤にし、必死に唇を吸う少年。舌を動かせば、少年も舌を絡めてくる。
からかいたくて。手を少年の下半身に移動させ、熱くなった膨らみに触れる。

途端に唇を離し、彼女の手をつかんだ。
「じ、女性がそそそそそそんな事、ははははしたないです!」
「じゃ、男性である貴方がリードしてくださいよぉ」
頬を膨らませる彼女に、少年は視線を逸らす。少し照れた感じがあるのは気のせいではないだろう。
ちらりと彼女を見て、目を伏せる。
「……やりたくても……できません。私はそんな事やった事が……そもそも女性の身体をまともに見たことも」
ぽつりと呟いた言葉。
少年に抱きつきたくなる衝動をどうにか押さえ、できる限り冷静な笑みを浮かべる。
「じゃ、女の身体を隅から隅まで教えてあげます。……服脱がしてくれますか?」
上目遣いで少年を見つめ。

――その言葉で暗示にかかってしまったのだろう。少年は吸い寄せられるように彼女の身体に触れた。

「ん……まずはエプロンを外してください……そ、そう、腰に手を回して」
拙い手の動きが、逆に神経を刺激することになり、甘い吐息を漏らした。
「ふぁ……ワンピースは大体背中にファスナーが……くぅん…きゅっと背中抱きしめて」
「こ、こうですか?」
すでにさらけ出していた胸が、少年の胸板に触れた。
敏感になった突起が擦れるたび、甘い声をあげ、身体をよじる。
するりと下ろされるワンピース。初めて見る女の身体に少年の瞳は釘付けになった。
白い首筋。丸みを持った肩。呼吸するたびに波立つ胸に、先端を彩る淡い紅色。
滑らかな曲線を描き、きゅっとひき締まった腰。
弾力のありそうなふくらみをもつ尻。
そして、少年を求め、蜜を溢れさせる秘部。

「これが……女性の身体。辞典に載っていたものと若干違いますね」
興味深げに彼女の身体を凝視する。羞恥より、学術的興味に意識がうつったようだ。
恐る恐る割れ目に指を伸ばし、
「くぅ……ん」
触った途端に甘い声を出され、指を引っ込める。
ちらりと彼女の様子を見て、もう一度触れてみた。
しっとりと濡れた感触。未知の領域に指を一本入れてみる。指を締め付ける感触。

「あぁん、もうダメです。いきなり中に入れるだなんて。そこは敏感な所なんですよ」
「でも、奥の方を観察するには指を……」
「勉強熱心ですね。それじゃあ、今日だけですよ」
割れ目にそっと触れ、自ら指で開いてみせる。
まっすぐに見つめる少年の瞳に、蜜が指を伝って流れ落ちた。
「ん……見えますか? ここが……ふぁ、女の子の敏感な……お豆さんです」
指の間で、ぷっくりと主張する突起を指した。少年が手を伸ばし、それに触れる。
大きく身体を震わせる彼女。更に蜜があふれ出してくるのに興味を持ったのか、指で軽くつまんでみる。
「やっ! そんな強くつまんじゃ……ふぁっ!」
先ほど性が解放されなかったせいか、少年の指の動きに快楽が高められ、背中を大きくしならせる。
彼女の突然の変化に、少年は驚きの眼差しで眺めるしかなかった。

大きく肩で息をし、潤んだ瞳で少年を見つめると、頭を抱き寄せる。
顔に直接触れる豊かな胸。頬を赤らめる姿もとても可愛らしくて、頬を手で包み込んで口付けを一つ。
唇をずらし、口元にある黒子にも口付け。そこが一番敏感だと知っているから。
予想通り、ぴくりと素直な反応を見せてくれる少年。
だから、軽く吸ってみたり、指先でいじってみる。
「はぁ……んっ、や、やめなさ……」
「イヤです。先ほどのお返しですよ」
力の入らない少年の身体を抱え、膝の上へと導いた。その間にも、口元のホクロへの愛撫は止めやしない。

片手でホクロをいじり、もう一方の手で少年の下半身へと手を伸ばす。
二箇所で責められては抵抗ができるわけもなく、彼女の手の動きに翻弄されるだけ。
ズボンのチャックが下ろされ、ぴょこんと元気になっているモノが顔を出した。
ほんのりピンク色で、女を知らなそうな少年の性器。
指先で先端をいじれば、もうすでに液を漏らしていた。

「あはっ、元気ですね。これだったらお勉強より先に一回出しておいた方がいいかも」
少年をベッドの上に横たえると、豊かな胸でそそり立つ性器を挟み込む。
挟むだけでぴくりと反応し、すがるような瞳で彼女を見つめるが、それは逆効果で。
「オーストリアさん可愛いっ! おちんちんまで可愛いなんてずるいですっ! ん…ぐっ」
胸の谷間から覗く亀頭に口付けし、唇で覆い隠す。
柔らかな胸の感触と、温かい口の感触。そして妙に色っぽい彼女の顔に少年は長く耐え切れるわけもなく。
「くふぅ……はっあ……」
小さく息を吐くと、精を爆発させた。
びゅるびゅると口の中に吐き出される精液。少し苦めでかなり濃い味に首をかしげる。
性器から唇を離すと、口の中の精液をこぼさぬよう、手で軽く押さえ、音を立て飲み込んで見せた。

赤面する少年の耳元に唇を近づけ、
「もしかしてしばらく一人でエッ……オナニーしてないんじゃないですか」
あえて卑猥な言葉を選ぶ。言葉一つに一々反応してくれるのが嬉しいから。
恥ずかしそうに視線を逸らし、小さく頷く。
「……ハンガリーをこの家に入れてから、気恥ずかしくて。
昔から気になっていた女性が壁隔てた所にいるんですよ……」
あんなに男っぽかったのに、彼は昔から『女性』と認めていてくれた。
初めて知る事実に、しばらく言葉が出てこなかった。やっと出た声はひどくかすれた声。
「……嬉しいです。オーストリアさん」
彼女はまだ薄い胸板に顔を埋める。
溢れ出す涙を見せたくないから。

「え、何で貴方が泣くんですか。泣き止んでください」
肩を震わせる彼女をどうして良いかわからず、おどおどしている少年。
やがて意を決したかのように、彼女の顔を持ち上げ、頬にキス。
そして、唇を指の腹で拭い、唇を重ねる。最初は軽く重ねるだけ。
その次は、深く彼女の中へと進入させていく。

「……泣き止んでください」
唇を離し、おでこ同士をくっつける。
拙い行為なのに、胸の奥が締め付けられるように熱い。
溢れ出す涙を止めることもせず、今度は彼女から唇を重ねた。
少年を抱え起こし、抱き合った状態での口付け。

「……いいんですよね」
「……本ではわからないこと、教えてあげます」
お互いに笑いあうと、彼女は仰向けに倒された。
空を向く柔らかな胸を優しく揉み、つんと主張する突起を口に含んだ。
片方は唇で。片方は指で。楽器をいじるよう優しく、時に鋭く攻め立てる。
「んっ……あぁ…やぅ」
「綺麗な歌声です。もっともっと奏でてください」
痛々しく立った乳首にはわざと触れぬよう、僅かに色の変わっている乳輪をゆっくりと指でなぞり、谷間に口付け。
「ああ、もう意地悪っ! そこ触って……ふぁ……」
首筋を指でなぞられ、甘い声を上げる。何でこの少年は自分の弱いところを知っているのかとまっすぐに瞳を見つめ。

「あ、そっか、オーストリアさんですものね……」
少年の姿が『彼』に重なる。彼女が毎日肌を合わせている『彼』。
『彼』が自分をここまで調律したのだから、弱い所だって良く知っているはず。
でも、ここにいるのは『彼』ではなく、少年であって。

「どこを見ているんですか?」
指がお腹を通り、敏感な割れ目へと侵入してきた。
茂みもなく、つるりとした割れ目を指で何度もなぞり、とろりとした蜜を溢れさせる。
敏感になった豆を指先でこりこりと転がし、蜜壷の中へと指をもぐりこませた。
濡れた音が辺りに響き渡った。淫猥な音に彼女の快感は高められる。
少年のすらりとした指先についた蜜が、唇に擦り付けられる。口に広がる自らの蜜の味。

「そろそろ欲しいのではありませんか」
拙い動きの中に見え隠れするサドの欠片。眼鏡の下の冷めた視線が彼女を指す。
太腿を擦り合わせ、秘所の刺激を求めようとするが、少年の足で動きを止められ、動きそうに無い。
極限まで高められたのに、その高みまでいけないもどかしさ。
「ふぁ……お願いします…オーストリアさんのぉ……おちんちんが欲しいんです……くぅ」
そこでやっと思い出した。そこまでの行為は、先ほど自分を慰めていた時の流れに非常に似ており、

「じゃ、入れてあげますよ」
まだ照れの残っている声。しょうがないだろう。少年は初めてなのだから。
できる限り冷静を装っているつもりなのだろうが、少年の可愛らしい性器は中々秘所に入りそうに無い。
何度も何度も挑戦してはみるが、どうもつるりと滑ってしまい。
困って泣きそうな表情。庇護したくなる可愛さ。

思わず起き上がって少年を押し倒す。頬にキスを一つ、
「大丈夫。私に任せて」
硬くなった性器を手で支え、彼女は腰をゆっくりと落とした。
『彼』より、少し小さめのモノ。でも、しっかりと彼女の中で限界まで大きくなる。
とても感じているのだろう。
それが嬉しくてできる限り腰を揺さぶる。少年の表情を見ながら。
腰を動かすたびに濡れた音が響く。肌がぶつかる音が響く。
「くっ、はっ! ……も、もう……」
「あぁ……ん、オーストリアさん、愛して……ます。中にたくさんくださ……ひゃぁ…ん」
彼女の頭の中が真っ白になり、強い刺激が身体全体を包み込む。
ほぼ同時に少年も身体を震わせ、彼女の中にたっぷりの精液を吐き出し……

床を跳ねるカプセル。

ラヴェンダーの香りと共に、少年の姿が霞む。

慌てて手を伸ばし。

「オーストリアさんっ!」
「……なんですか?」
目の前には彼の姿。細くてもたくましい腕に包まれ……下半身に熱い刺激。
「……そんなに気持ちよかったんですか?」
頭を優しく撫でられ、瞳を細める。いつも感じていた暖かさ。そして少しだけ久しぶりな感触。
いつもの愛の行為。貫かれて、絶頂を迎えたのだろう。
だから頭が真っ白になって、彼が遠くに行ってしまったように思えて。
きっと先ほどまで見ていたのは、夢だったのだろう。
映画じゃあるまいし、時をかける事なんてできるわけない。

心配そうに見つめる彼の頬にキスをする。
お返しといわんばかりに、彼女の頬に手で触れる。
指の腹で愛おしく唇を拭い、口付け。最初は軽く。そして次は深く。
「……そういえばそのキスの仕方……」
「ああ、コレですか。昔、初めての時にしてくださったあの人のキスがこういう……」
そこまで言って、慌てて口をつぐめた。
肌を合わせている時に、他の女性の話などして喜ぶ恋人はいない。

気まずそうにちらりと彼女を見て……首をかしげた。
何故か楽しそうに笑っていたから。
「えっと、もしかして怒っているんですか」
「いいえ。もう一つ質問です。私の髪を伸ばさせた理由も『あの人』の影響ですか」
不思議な質問に、少しだけ沈黙し……彼女には嘘をつきたくないという理由で重い口を開いた。
「ええ。『あの人』は今のような貴方のように美しい髪で……んっ」
口元のホクロを狙ってキス。びくっと反応する彼を押し倒し、上にのしかかる。
「卵が先か鶏が先か……ふふっ、不思議な話ですね」
戸惑う彼の胸板に唇を落とし……再び、甘い声が響き渡った。

部屋の片隅に落ちた一つのカプセル。
ラヴェンダーの香りはもうしない。




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