酒はほどほどに
【メインCP】プロイセン×ハンガリー
【サブCP】ハンガリー→オーストリア
【傾向】酒の勢いネタ。ハンガリーがプロイセンに複雑な感情を抱いているので
ハンガリーさんがふらふらしてるのが苦手な人は酒でNGお願いします
―――やってしまった。ハンガリーは心底後悔した。
今目の前ですやすやと気持ちよさそうに眠る全裸の男はプロイセンである。
なぜこんなことになったのか。それは昨日に遡る―――
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「ヴェストー!!今夜一杯やろうぜー!!」
ビールの入った袋を両手一杯に抱え、プロイセンは乱暴に足でドアを開けた。…開けたというよりは蹴り飛ばしたと言う方が正しいだろう。
可愛い弟が何よりも愛して止まないビール。だからプロイセンはドイツがあの無愛想な顔を緩ませて喜んでくれるとばかり思っていた。(俺、弟思いすぎるぜー!)
しかし弟が見せたのは予想と正反対の表情。そして正反対の言葉。
「…兄さん、悪いが今俺にビールを見せないでくれないか」
「は?」
予想だにしなかった弟の言葉にプロイセンの目が点になる。
何よりもビールが好きなヴェストが俺の晩酌の誘いを断る?まさか!頭でも打ったんじゃないのか。
そうは言うもののドイツの視線は明らかにビールに釘付けになっていた。やはり本音は飲みたいらしい。
それに気付いたのか慌ててぶんぶんと頭を振りながら目を逸らした。
「おいおい何言ってんだよ。ヴェストのためにいっぱい買ってきたんだぜー?」
「だめだ!日本が頑張っているというのに、俺だけ好きなものを嗜むわけには…」
どうやら生真面目な弟は日本の減塩に付き合っているらしい。
まあ確かにヴェストにとって本田の塩鮭に相当するものといえばビールが妥当だな。
「…う…」
またも視線が一瞬ビールに向けられる。ごくり、とドイツの喉が鳴った。それを見逃さなかったプロイセンがにやにや笑いながら誘惑の言葉を弟に投げかける。
「ほらほら一杯ぐらいバレやしねえよ!日頃の訓練の息抜きじゃねえか。…な?」
硬い意志を秘めたドイツの瞳が揺らぐ。あともう一息だとプロイセンはビールの缶を開けようとして、
「兄さん」
プルに手をかけ、
「いいからどこかへ行ってくれ!頼むから!!」
……………追い出された。
「…ってわけで来てやったぜハンガリー!」
「帰れ」
ハンガリーは目の前で高笑いする男に目もくれず言い放った。
まったくこのプロイセンときたら、深夜いきなり訪れてきて何をするかと思えば、「一緒に飲もうぜ!」とのこと。ふざけた男極まりない。はたはた迷惑である。
「つれない事言うなよー」
プロイセンはちぇっちぇのちぇー、と唇を尖らせる。随分図体のでかい子供だとハンガリーは苦笑した。
「もう!来るなら来るでオーストリアさん誘って来なさいよバカ!そしたら…」
ハンガリーの目が見る見るうちに輝いていく。どうやら腐った妄想のスイッチが入ったようだ。
***
『なんだか…暑いですね』
オーストリアの白いシャツがハラリとはだけた。男とは思えないほどに綺麗な指先は止まることなくボタンをぷちぷちと外していく。
驚くほどに白い肌が赤味の差した頬を一層際立たせた。
『胸が…苦しいんです。さすっていただけますか…?』
そう言って涙目で見上げるオーストリア。その口は物欲しげに開かれ、艶めいた吐息が漏れる。彼はそのまま…
***
「―――なんてことになったかもしれないのにハアハア!」
「いやいやねーよ!」
なんつーいい顔で語るんだ。同じ男としてさすがにあのお坊ちゃんがかわいそうだとプロイセンは嘆く。この幼なじみの趣向はさっぱり分からない。
野郎のそんな姿を想像して何が楽しいんだか!
「とにかくアンタと二人で酒盛りなんかお断りです。」
「はっ!そーかよ。じゃ勝手にするぜ」
「きゃっ!」
目の前のハンガリーを押しのけ、招かれてもいない身で図々しくも奥に進む。
椅子に乱暴に腰を下ろすと、プシュリとビールの缶を開けた。
ごくり。喉を通るビールはヴェストのために買ってきた上等なもので、言うだけあってかなりおいしい。
あっという間に飲み干して、もう一本飲もうと手を伸ばす。
と、後頭部に軽い衝撃。
振り返るとフライパンをかまえたハンガリーが顰めっ面をして睨んでいた。
「………飲んだらすぐ出てってよ」
「Ja!」
―――一時間後―――
「あ゛あ゛あ゛飲まずにやってられるかってんろよー!!!」
「ハッハッハもっと飲め飲めー!!!」
そこにはべろんべろんに酔っ払ったハンガリーとプロイセンの姿があった。かたや呂律の分からない言葉をベラベラ喋り、かたや愉快そうに腹を抱えて笑っている。
「らいたいオーストリアさんはろんかんすぎますー…ああオーストリアさん…」
「ケセセ、あの坊ちゃんは相当手強いぞー」
「そんらこたー言われなくとも知っれんのよ…うぷ…」
周りに散乱している缶からして二人とも大分飲んだらしい。両者とも顔が真っ赤だった。ここにスペインがいたならば、「二人ともトマトみたいやでー!」と言うに違いない。
「お、最後の一本」
「やー!私が飲む!」
二人同時に手を伸ばすものの、いかんせんリーチの差で最後のビールを掴み取ったのはプロイセンだった。
ハンガリーも負けじと手を伸ばすが、酔っ払っているせいでぐらぐらと視界が不安定だ。身長差を生かしてビールを高く持ち上げられては、足元がぐらつくせいで取り返せない。
「フハハ最後のビールは俺様がいただくぜー!」
「あーーーーーっ!!!」
ビールのフタが開けられ、プシッと小気味よい音をたてた。
最後のビールがプロイセンによって勢い良く飲まれていく。
ぐびぐびと飲むたびに動くその喉元に、一筋ビールが垂れた。それを不満そうに見つめるハンガリー。ここでおとなしく終わる彼女ではない。
「…うー…ぷろいせんのくせに…生意気!」
「ぶはっ!?」
突如プロイセンがビールを吹き出した。それもそのはず、ハンガリーが突進してプロイセンを押し倒したからだった。
なんとかビールは死守。中身が少しこぼれただけだった。
「そのビールをろこしららい!」
「ろ、ろこしららい?何言ってんのかサッパリだ」
再びビールの奪い合いが始まる。普段ならフライパンの一発でもくらってあっさり負けるプロイセンだが、いかんせんハンガリーは泥酔していた。
飲んだ量は同じとしても、元よりビールが好きで普段から飲んでいるプロイセンはハンガリーよりかはいくらか耐性がある。完全に酔っ払ったハンガリーに対してプロイセンはまだ意識があった。
なのでいくらハンガリーがビールを取ろうとしようとも所詮は酔っ払い。たやすく避けることができた。
「ハハハざまーねーな!このまま全部飲み干してやる!」
「一口くらいくれらっれいいじゃらい!けち!」
「なんとでも言え勝者は俺様!敗者は指でもくわえてろ」
そう吐き捨てるとプロイセンはごっきゅごっきゅと最後の一滴までビールを飲み干す―――つもりだった。
「がふっ!?げほっ、げほげほ!ぐふ!」
またも吹き出す。そしてむせる。
「あは、涙目」
「な―――誰のせいだ!何してるんだ!」
「ん?…あんたが言っらんじゃらいろ。敗者はゆび、ふはへへほっへ」
「く、くわえながら言うな!バカ、あれは言葉の例えで―――――うあ!」
れろ、と指の隙間を舐めあげられた。ちゅ、と指先に軽くキスすると、そのまま深くくわえ込まれ、口内で舌をチロチロ動かされる。
「や、やめ」
ぴちゃり、
「ちょ」
ねちゃ、
「………っ!!」
ぴちゃ、ねちゃ。
かああ、と頭に血が上っていくついでに下半身にも血が集まってくる。
ハンガリーの舌は止まることなくプロイセンの指を舐め、くわえ、吸う。―――まるでそれを男根に見立てているかのように。
「おま、…えろすぎ」
「うるひゃい」
指を存分に口内で味わうと、次は首筋に舌を這わせてくる。先ほど垂れたビールを懸命に舐めとっているようだ。
「ひゃ!」
我慢できずに胸に手を伸ばすと、ハンガリーはくすぐったげな声を出した。やわやわとその感覚を楽しむと、円を描くように乳輪のあたりをなぞる。
「ふぁ、んん…っ」
途端に甘い声。きゅっと乳首あたりを強くつまんで、プロイセンの手はそのままハンガリーのスカートに侵入した。
下着の上から軽くなぞる。ぐちゃりと淫猥な音が響いた。ぷっくりと膨らんだ芽を下着の上からつまんでぐりぐり握りつぶす。ハンガリーは一際高く鳴いた。
どちらとも言わず挿入する体勢となり、脚を開かせる。そこはもうすでにぐっしょりと濡れていた。
「すげ、濡れてる」
「やぁっ…ぷ、ろいせ…」
既に痛いくらいに張り詰めた自身をそこに押し付ける。早く挿れたいという思いと同時に、酒の勢いでしていいのかと後ろめたさが湧いた。
ハンガリーが泥酔していることを良いことに。誘ってきたのは向こうからとはいえ、突き飛ばして止めさせることだって出来たのに。
そんな気持ちを見透かしてか、ハンガリーは一言。
「………挿れて」
きゅ、と強く抱きしめられる。
なんだか許されたような気がした。
「………おう」
ずん、と深く突き刺す。声にならない声。ハンガリーはそのまま大きく仰け反ると、びくびくと痙攣し―――そのまま意識を失った。
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―――とまあ、そういうわけで現在にいたる。
いくら酔っ払ってたとはいえ誘ったのは百パーセント私なわけで。これじゃあプロイセンを責めることも出来やしない。
「ん…ハンガリー…」
ガンガンと痛む頭を押さえ、ため息をつく。もぞりと横で動いた銀髪が気だるげな声で呟いた。…どうやら寝言らしい。
「………」
くしゃり、プロイセンの短髪を撫で上げる。思い出すのは幼少の記憶。見た目よりずっと柔らかく触り心地のいい感触。
…別にハンガリーはプロイセンのことが嫌いではない。
むしろ、こうして無防備にさらけ出している寝顔を見ると愛しいとすら思う。
だがこれは断じて恋なんて甘い感情ではない。
プロイセンにオーストリアさんに感じるようなときめきなんか一切ない。
時には殺してやりたいとさえ憎んだ時もあった。でも弱っている時には傍にいてやりたいと思うことも、寂しげな背中には抱きつきたくなることもあった。
その時々の感情は違えど、いつも心の大半を占めていたのは悔しいことにこいつなのだ。
この感情は一言で表せるほど簡単なものじゃあない。憎しみと恨みと苦しさと愛しさが入り混じったこの思いはどんな言葉ならぴたりと当てはまるのか。
「…アホ面…」
「う…」
腹いせに思い切りプロイセンの頬をひっぱる。苦しそうに眉根にシワをよせ、「やめろロシア…それは小鳥じゃねえラトビアだ…」と呟いた。
まったくどんな夢を見てるのやら。
もうしばらく、こんな生温い関係が続くのも、いいのかもしれない。そう思うとハンガリーは再びプロイセンの腕の中に体を預け、まどろみ始めた――――
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