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 この恋は殺せない

【メインCP】日台……いやむしろ台日。さらにいうなら台→日
【傾向】 台湾が日本を監禁しています。逆じゃありません。「台湾が」「日本を」です。御注意下さい。
【その他】
 まず長いです、すみません。エロ描写はざっくり気味。
 内容としては、台湾が日本を好きすぎてヤンデレだし、日本が情けないほど後手後手に回っている(というか何の手も打てていない)し、日本が少し喘いでいるので、そゆのが嫌いな人はお引きください。




(私は夜が始まると、小さな狩をする。私の中で育てた恋に、食べるものを与える為に。)


 ベッドヘッドににじり寄った日本さんを猫みたいな格好で追いかけて、それから額にキスをした。
 額、頬、耳朶、腰を付いたまま動けない彼の顔を両手で挟み込んで好き勝手口付けをおとし、それから満足すると今度は唇同士を重ねる。
 最初はバードキス。ちゅっちゅと音を立てながら。何度も何度も唇をくっつけていると、そのうちどんどんたまらなくなってきて、肌とはだが触れ合う間隔は短くなる。日中の彼に会えなかった時間が、私を餓えた獣にしてしまうのだ。
 こらえ性のない私は、いつものように我慢など一欠けらもせずに、ほとんど食べるみたいに日本さんの唇に貪りつく。彼の乾いた唇
をひとなめして、その間に舌を突っ込んで歯列をなぞった。

「ん、ぅう……」

 その歯の間にすら舌を突っ込むと日本さんがもがくように首を振った。だけど私を突き放す事はできない。日本さんの両方の手首はベッドの端に手錠でつながれたままだから。繋いだ私が一番知ってるので、私は気にすることなく舌を絡める。

 咥内の暖かさが、苦しいほど愛しい。

 唾液が口の端から零れるのも構わず日本さんの舌を苛めていると、ぐちゅぐちゅと淫音が部屋に響いた。
 いつまでたっても逃げてばかりの日本さんの舌を引きずり出す事は最初少々手が折れたが、何度も繰り返してコツを捉えた今となっては簡単だ。
 相も変わらず舌を縮こまらせる日本さんをあっさりとあしらって、私は彼の体を包むシャツのボタンを片手で外し始める。ぷちぷちと音がして、日本さんはむずがるように身じろいだが、私に遠慮はなかった。
 服のしたから現れた肌。唇を合わせて、それを楽しんだまま、私は彼の胸板を撫でた。彼が息を詰める気配がする。
 口を外し、彼の顔を眺めると、酷く怯えた顔をして、腰の下の白いシーツを後ろ手の拳が引き千切るように握り締めている。

「……台湾……!」

 ベッドヘッドに置かれた他愛もない明かりだけがたよりの、この暗い部屋の中でさえ、彼が酷く蒼ざめているのが分かった。
 この部屋に来る前は涼やかに細められるだけだった私の大好きな目が酷く苦しそうに歪んでいて、まだそんな顔が出来るなんて、いつになったら慣れるんだろうか。
 縋るような声で私を呼んだって、繋いだ手錠は外れないしこの部屋から出られることも決してないし、何にも変わりはしないのだと何度も教えてあげたのに。
 明白に示される彼の拒絶が悲しく思うが、きらきらとした唾液の銀糸を舐め取って切って、私はあえてにこりと日本さんに笑いかけた。
 だって私に怯える顔、確かに悲しいけど、同時にその顔だって凄く愛しいのだ。

 私の笑みに戦慄を覚えたのか、彼はびくりと身を震わせる。だけど叫ぶことも、暴れる事もない。
 ただ強張った表情で私をじっと見つめる。化物に食べられる寸前の人みたいに。


 可愛い妹だって油断するから悪いんです。
 愚かで優しくて可愛そうな人。私の手は彼の服の裾をつかんでいたあの頃から随分大きくなって汚れてしまって、だから私の家に遊びに来てくれた日本さんに、笑いながら薬を盛ることだって簡単にできた。油断したから、悪いんです。

 出したお茶は、薬のせいで少し苦い味がしただろうに日本さんはためらいもなく飲んだ。そして私に礼まで言ったのだ。私は日本さんが一度懐に入れた相手に対して、とことん信用しきって甘くなってしまう事を知っている。
 だから日本さんが眠り込んだあとは簡単だった。私の家の地下の、窓もないような部屋に閉じ込めて、繋いでしまう。それだけ。
 強固な牢屋の中に入れるわけでもない、彼の手足をもいで何処にもいけなくしてしまうわけでもない、シンプルである種隙だらけの拘束。私も生身だ。彼が本気で暴れたら、女の私では太刀打ちなんて出来なかっただろう。

 だけど日本さんは私が閉じ込めた部屋から決して逃げ出せないという確固たる自信が私にはあった。彼が私に甘い。そして同時に、優しくて、弱い人であることもことも知っていたから。
 可愛い「妹」を自分を裏切った事、妹が自分を欲の対象と見ているなんて信じたくなくて、私に強い拒絶をできない。私には自信があった。

 結局、私の予想通り。日本さんは私を傷つける事ができなくて拒絶できなかった。だけど、私は日本さんが手に入るのなら日本さんを傷つけたって平気だった。それだけの違いだった。
 それだけの違いが、私に日本さんを与えてくれた。

 そうして彼はわたしのものになったのだ。

※ 

「……日本さん、可愛いです」
 そう言いながら私は、ぐったりした彼のズボンからまだ小さいものを取り出した。日本さんが呻く。
 本当に嫌なら暴れたらいいのに。叫んで私を罵倒して、私を傷つけてこの部屋の鍵を奪えばいい。だけど彼はそれが出来ない。出来ないから、弱弱しく首を振って私の「改心」を望むしかない。時間がたって私が冷静になればこの地獄から抜けられると思っている。
 その愚かさを含めて私は彼が愛しい。まだ萎えた性器を取り出して、ためらいもなく口に含んだ。
 ちゅぼちゅぼと口をすぼめて数回頭を上下させれば、舌に苦い味が広がった。
 上目遣いに彼を伺うと、私を見下ろしながら目を顰めている。そうやって快楽を堪えているのだ。だけど数週間外に出ることを許されていない彼の白い頬は、簡単に上気した血の色を私に教えてくれる。

「だ、めです……っぅ、あ」
「ん、う」

 ペニスの先端を舌で押して、それから傘の周りを下でぐるりと嘗め回す。片手は竿の部分に添えて、少しだけ手を揺り動かしてあげると両足が痙攣したようにぴくっとなった。その反応に気をよくして、彼を苛めてみたくなって、わざと音を立てて吸い上げる。
 その度に彼の口から低い声が漏れる、色っぽい声。私にやめなさいやめてくださいと懇願したその声で、彼は私の刺激に発情しているのだ。

 なんて可愛いんだろう。私の腹の下が、じゅんと熱くなる。

 みるみるうちに勃ち上がってきた彼自身を喉の奥まで入れて愛撫しながら、私は自分の下着の中に手を入れてみた。ぴちゃりと水の感触。本当は日本さんの手の触って欲しいけど、手錠に縛られた彼にそんなお願いは出来ないし、してもくれないだろう。
 私は自身で指の腹を、ぬれそぼった柔らかな肉にこすりつける。薄く目を閉じて、この細い指が日本さんのものだと自分に信じ込ませてみた。

 途端ゾクゾクするほど背筋に快感が突き上げる。私は夢中になって、日本さんのペニスを口いっぱいに含みながら、はいつくばって自慰をする。なんて恥かしい格好。だけどそれを彼に見られていると言う妄想だけで私の膣はきゅんきゅう収縮する。
 頭の中で私の腹の下に指を滑らせるこの人を妄想するだけでこんなふうになってしまうのだから、本当にされたらどうなっちゃうだろう。怖いくらいだ。けどきもちいい。
 もっと欲しい。
 立ち上がったクリトリスは恐らくは充血して、凄く熱い。膣の置くからどろどろと愛液が零れる。穴の周りを撫でると、今口に含んでいる日本さんの性器のかたちを、体が思い出す。にほんさん。
 膣の内部をかき回さないまでも、私はほとんどいきそうになるが、すんでのところで堪えた。下着から手を慌てて取り出す。まだ、駄目だ。
 日本さんので、いきたい。

「んぷ、ん、にほんひゃ、きもひい?」
「ぅわ、た、台湾……そこで、喋らないで下さ……ぁ、」
 見上げると日本さんの息は随分上がっていた。意識的にか無意識にか、私の痴態など構ってくれないらしい。残念だがしょうがない。
 じゅぶじゅぶと頭の上下を激しくして、歯を立てないように注意しながら、浮き上がった血管を押し潰すように舌で舐め挙げる。今度は両手を添えて彼のペニスを扱いた。掌の中でどくどくいってる。かわいい。
 私の動きが激しくなる度に、引きこもりの癖に引き締まった胸板が肺の動きと共に上下して、苦しそうだった。だけどはあはあと零される熱くて艶めいた呼吸はそれが苦しいだけではないことを私に教えてくれる。日本さんは私の口の中が気持ちいいのだ。
 それはとても嬉しい。
「ぅ、台、やめ、…やめなさい……っ」
 制止する声すら艶めいて私には睦言みたいに聞こえる。ちゅぱ、少しずつ溢れてきた先走りの液を吸い上げるように唇を離すと、日本さんが自分の声が届いたと勘違いしたみたいで息を吐いた。まさかこれで終わるとでも思っているんだろうか。
 ペニスが口から抜かれると、苦い日本さんの味が唾液に薄まってどんどん消えていく。残滓を探すように、口の中を舌でかき回した。薄くだらしなく開いた唇から唾液が零れて、彼の目の前の私はどんなにだらしのない顔をしているのか。
 だけど彼の目に晒される痴態ならばそれは全て私の快感だ。頬が熱いの自分でも分かる。体の中がかっかっとしている。日本さんを欲しくてもっともっとと体中が騒いでいるのだ。
 私はまだこんなに足りていない。
 うふふ、と唇を歪めて日本さんを見上げた。撫でるように性器を擦りながら、身を起して日本さんの頬にキスをすると、彼はぎょっとしたように身を引く。何を今更。

「けど、おっきくなってますね?」
「……そ、れは、生理現象で、」
「生理現象でも何でも、日本さんのえっちな体は私の口で勃起したんです」
「……っ!」

 日本さんが傷ついたような顔をする。綺麗なかたちの眉を歪めて、私を凝然と見つめた。いまさらながら妹に興奮させられて、これから犯されるということを実感したのだろうか。それも、何を今更。
 掌で包み込んで、ぐちゅぐちゅそれを動かせると日本さんの先端からまた先走りがたまになって滑り落ちていく。手を上下させる度に呻く日本さんの顔が色っぽくて凄く可愛い。性的な快感に押し流されないよう必死に噛み締めている唇。
 そんなことしたって無駄なのに。

 私は笑ってあげる。

 彼を殺気まで甚振っていた自分の指口に持っていて、舐めて、舌なめずりするみたいに。
 彼の愛する「妹」の顔を、できるだけ淫乱に見えるように崩してみせる。日本さんはますます傷ついた顔をする。妹の口で奉仕されて気持ちよくなる自分が信じられない。だけど同時に、彼は私の女の体にどうしようもなく興奮しているのだ。
 その狭間で日本さんは苦しがっている。

 日本さんは本当に、今更のことが大好き。

 夢から覚めようと首を振る彼の頬を両手で挟む。そしてまた深く舌を絡ませてやりながら、日本さんをうっとうりと味あう。口の中は熱くて、甘い。きっと何度キスをしたって飽きない。唾液を飲み込む。
 手は日本さんの性器にまた添えて、それをしごくと、ぐちゅぐちゅ、上からも下からも水音がして、私の頭はどんどん真っ赤になっていく。

「かわい、……日本さん、私のくち、気持ちよかったんですか?」

 ちゅば、と体を離して、うっとりとそう尋ねながら唇を歪めた私を、日本さんは力なく、しかし狂人を見るような目で見つめた。その眼の中には理解しがたいものへの怯えが確かに混ざっている。
 日本さんは私が怖いんだ。その目にすら欲情する私が、妹が恐ろしい。
 狂ってしまった妹の自分との間に境界を引きたくて仕方がない。
 なんて可愛い人。可愛そうな人。……ひどいひと。
 私は少しだけ、その目が悲しい。
 だけどそんな目をしても、日本さんは私のものだ。だから、そんな悲しみは直ぐに、忘れてしまう。
 忘れて、日本さんとの夜に酔う。


 日本さんの目がどんどん虚になっていく。
 だけど私は、可哀相って慰めてはあげない。



 一度彼の絶頂を促すと私の限界はあっさり来た。
 口でいかせた日本さんが肩で息をしているのに構わず、口の中の白い精液を含んだまま、漸く放出を終えたペニスを更に扱く。敏感になったペニスを攻めて立てられて日本さんが逃げるように身じろいだが私は勿論離さなかった。

「う、ぁ……台、……っ」
「ん、んぷ」

 日本さんのそれが再び持ち上がったのを確認して、それから私は引き千切るように下着を脱いだ。
 口の中の精液はいくらかフェラの間に零れて彼自身のペニスを汚してしまっていたので、それをなめとれる部分だけ舐めとって私は口の中の全てを飲み込んだ。喉を流れていくつんと生臭い液体。日本さんの味だ。
 それを感じるのに夢中で、下着をだけとって他を服を脱ぐことなんて忘れている。そとから見たらほとんど普段のままの着衣の状態だ。
 そういえば日本さんもシャツを少しはだけて前を寛げているくらいで、ぱっと見私達はとしがいもなく、しかし健全にじゃれあう仲の良い兄妹はカップルに見えるのかもしれない。

 だけど私のそこは彼を受け入れたくて仕方がなくて淫蕩にどろどろ唾を零しているし、日本さんのペニスは膨れ上がって私に締め付けられるのを待っている。

 それは彼と私だけが、知っているのだ。

 高揚したまま、私は彼の力なく伸ばされた腿を、恥じらいも何もなく足を広げて、跨いだ。
 何度経験しても、この瞬間は期待で、心臓がバクバク言う。
 日本さんがぴくりと反応する。食べられる寸前の小動物の目をしている。だけどその喉が、唾液を嚥下して動くのが、見えた。どんなに私を拒んだって、体は、よろこんでいる。私は意地の悪い気持ちに少しだけなる。
 よろこんでいるくせに。

 自分の中を指でならそうかと一瞬思ったけどすぐどうでもよくなった。そもそもならさずとももうどろどろだし、私の頭は日本さんを食べたくて食べたくて、日本さんの立派に立ち上がった性器で中をぐちゃぐちゃにかき回して欲しくてたまらなくなっている。
 早く、早くと本能が叫ぶ。
 膝立ちになると、彼の頭が私の目線の少し下になる。これから起こる、今まで何度も繰り返したのにまだ彼の中では悲劇でしかないらしい事態に、日本さんの顔は強張っていた。まだ私の兄で居るつもりらしいその黒い瞳が、言葉泣く私を責めている。
 どうしてこんなことを、と。
 日本さんは、本当に今更のことを繰り返すのが大好きだなあ。それを受け止めながら私は閉じられた唇にキスをした。嫣然と笑う。
 

 そして彼の性器に手を添えて腰を下ろした。じゅぶ、一気に突き上げる圧倒的な質量。齎される快楽。
 日本さんのペニスが私の膣を押し広げて私を犯す。

 頭が、破裂する。

「……く、ぁ……っ」
「あっあぁぁあ!にっにほんさ、日本さんが入ってくるぅ……っ!」
 入ってこられたら、もう。日本さんが零す吐息すら、とんでもない性感を私に与えた。
 ぞわぞわと背中があわ立つ。私は甲高い声で叫びながら、一度日本さんの全部を飲み込んだ。日本さんの声がさっきとは全然比べ物にならないくらいかすれていて、それにもゾクゾクする。気持ちいい?日本さんも、気持ちいいの?
 私は心の中で叫ぶ。声に出ていたかもしれない。わからない。頭の中、めちゃくちゃだ。
 私ははひはひ呼吸をして、今度は私より高い位置にある日本さんの首にしがみ付いた。汗のにおい。ぎゅうと、首の後ろに爪を立てる。

「にほんさっ、すごい、おっきぃい……!なか、なか気持ちいいですぅっ!」

 日本さんの性器は硬くて大きい。そして私の中が燃えるほど、熱い。最初の大きな快感の波を日本さんにしがみつく事で何とか堪えて、それからそろそろと腰を動かし始める。膝立ちになって、最初は小さく振動させてから、徐々に大きく。
 私が動く度に、日本さんの体の下でシーツがこすれる、日本さんを繋いだ手錠がガチャガチャと悲鳴を挙げている。
「ぅ、……台、っ」

 日本さんも何かに手を伸ばして、縋りたいのだろうか。

 私に縋ってくれたのなら、そんな手錠、いつだって外してあげるのに。

 愛液は奥からどんどんどんどん溢れてきて、慣らすなんて杞憂に過ぎなかったことを私に教えた。膣がきゅうきゅう収縮して日本さんを締め上げて、そして私自身にも日本さんのペニスのかたちをはっきりと教える。
 日本さんのそれに特別な薬でも塗ってあるかのように、膣全体が日本さんを喜ぶ。私は犬ころみたいにきゃんきゃん泣き叫ぶ。
「あぁあっはひっ、くあぁん、あっあ、ああ、ああ」
 恥も何もかもかき捨てて、乱れる。日本さんだけを感じる体になるのだ。

 体を浮かせる度に、髪まで浮き上がって、解れて、汗を纏った肌に張り付いた。邪魔。だけどもっともどかしいのは、服を纏ったままの上半身。熱い。だけど服を脱ぐような余裕もない。
 私は半端には抱けた着衣のまま、日本さんの上で獣みたいに腰を振る。昔日本さんが、似合っていますねと褒めてくれた華やかな衣装のまま、日本さんにまたがって、一匹の獣みたいに絡み合う。
 私達は、けもののよう。それが私には、ひどく、うれしい。


「た、…い……っ」
「あっあぁぁあ、あん、日本さんっ、にほんさんもっと、もっとぉ!きもちいっ、にほんさんにほんさんっぁああ

あ!」 
「やめなさい、やめ、……台湾……!」


 だけど片割れの日本さんは、この期に及んで私と一緒に獣になることを今も嫌がっている。
 うわ言みたいな声。苦しそうに。私を叱ろうと、兄としての自分を必死で取り繕っている。けど私が腰を浮かせれば、日本さんの腰も突き上げるように動いてるの、自分で気付いているのかな。
 ぐちゃぐちゃと部屋に響く淫音。熱い呼吸。激しい快楽。かいらく。
 気持ちいいくせに。
 全部、忘れてしまえばいいのに。
 私は日本さんを飲み込んで吐き出して、大きく腰を振る。何度も何度も、日本さんを私の中に迎え入れる。


 繰り返す。





 日本さんが低く呻いて、私の中で果てた。胎内に日本さんの熱が叩きつけられるのを感じながら私は腰を振り続けた。ぴゅぴゅっと胎内で噴出し続ける精液を搾り取るように。日本さんが私にくれるものならなんだって零したくない。
 国同士では意味もなせない子種だって、彼が与えてくれるのなら宝物だ。

 日本さんの精液の熱さにほとんど感動に近い深い性感を覚えながら、私はまだ日本さんの上で動物のようにぐちゅぐちゅ抜き差しを繰り返して、そして訪れる一瞬のホワイトアウト。ひくつく膣。荒れる息。
 頭の中に電気が走って、私は痙攣を迎えながら既に放出の終わった彼のものを締め付ける。
「台、湾、…っ」

 日本さんの熱い声。にほんさん。にほんさんのにほんさんのにほんさんの。

 苦しいくらい好きって気持ちが溢れて、私は腕を広げて日本さんの頭を抱きしめる。胸の間に彼の激しい呼吸。日本さんとしてる。日本さんとセックスしている。
 縛って閉じ込めてむりやり私が犯しているのだとしても、私と日本さんは妹と兄じゃなくて、今はどうしようもなく女と男で、一緒に気持ちよくなってる。日本さんのペニスが私の中で気持ちいいって膨らんでいる。 幸せすぎて、死にそうになる。
 好き。
 大好き。
 私の膣にきゅうきゅう締め付けられたままの日本さんがゆるく首を振った。だけど私は、絶対彼を放さない。



 落ちろといわれて落ちた恋なんていくつあるというのか。それと同じ。
 捨てろといわれて捨てられる恋なんて、恋じゃない。
 だから私はこの恋を守るために他の全てを捨てた。今まで日本さんが私に向けてくれて肉親としての柔らかい笑みも、頭を撫でてくれる掌も。私を優しく呼ぶ声も。彼との間に作り上げてきた全ての温柔を踏みしめて、それでも私は日本さんがほしかったから。

 日本さんが手に入るなら何でも出来た。(ね、私、何でも出来たでしょう?)

 だけど日本さんはちがう。何も捨てられない。女として日本さんに迫る私に怯えている。だけど妹としての私も捨てられなくて、私を邪険に振り払う事ができない。
 抱えるものを落として壊す怖さにすくんで、どちらかに超えるべきボーダーラインの真ん中で、どちらに進めばいいのかきょろきょろと辺りを見回している彼に、どうして何もない私が押さえられると言うのか。
 できるはずがないのだ。
 この恋を生んだのは私だ。そしていま、私にはこの恋しか残されていない。日本さんが可愛い妹の幻影に必死に縋りつくのと同じに、私だって守りたいものがある。誰にも邪魔させない。

 貴方にだって。



「……私たち、兄妹じゃないですか……」
 一度目の絶頂の余韻に浸って、彼を中に残したままその髪にに鼻を埋めて恍惚としていると(今は同じシャンプーを使ってもらっていると言うのに、なんで彼からは、私が纏えないような清潔ないい匂いがするんだろうか)、
 荒い息の中、私の胸に顔を押し付けている日本さんが血を吐くように呟く声が聞こえた。
 いきなり言われたその言葉が分からなくて、首を傾げる。頭を離して、彼を見ると、俯いた彼は小さく震えていた。
 屈辱か、嫌悪か、それとも禁忌を犯している自分への自罰心からか。そこにいたって彼の言わんとすることが漸く私の中で飲み込めて、私はおかしくなった。

 かわいそうだと思うけど、そんあ陳腐な言葉でまだ私のなかの何かを変えようとしているのが本当におかしくて馬鹿らしい。頭がいい人なのに、まだこの人は何も分かっていない。

「兄妹だから、何なんですか?」
「こんなのは狂っています、正常じゃない。いつか必ず破綻が来ます、貴女にも分かっているはずだ!世の中には犯してはいけない境界は存在するのです。望まれるべき状態じゃない」
「……」
「……こんなのは、異常だ……!」

 出てくるその言葉達が、まるで無数の棘を持って彼自身の喉を傷つけているようだ。唇を噛んで、彼が顔を伏せる。かわいそう。彼は今苦しいのだ。
 昔優しくあやしたはずの小さな妹が兄を監禁して犯すような淫蕩に育ってしまってかなしいのか、或いは自分の物差しではかれないことが怖くてたまらないのか。
 日本さんは確かに童顔ぎみだが、ちゃんと静謐とした大人の男の顔をしている。切れ長の涼やかな目、そして筋の通った鼻梁、薄くかたちの整った唇。怖い事なんて何にもないですよ、と普段は静かに笑う彼が泣きそうな途方に暮れた顔をしている。

 そんな顔を見たなら、昔の私だったらきっと、とんでいって彼を必死に慰めただろう。

 だけど今は昔じゃない。私は更に笑みを濃くした。笑って、彼の顔を覗き込んだ。

 彼の言うところの「異常」を為しながら、それを指摘されながらそれでも可笑しそうに微笑む私を見て、黒い目が怯む。明らかに怯えている。彼の理解の範疇にない妹にいまだ戸惑っているのだ。怖いのだ。
 だけどそうであっても、彼は私から目を離すことは出来ない。だって私は彼の可愛い妹なんだから。
 たったそれだけの理由で、私を拒絶できない。

 そうやって妹である私を肯定して、私の恋を否定する。ふたつとも、結局、両方私なのに、私を分割して勝手に苦しんでいる。優しい人。弱い人。可愛そうな人。
 酷い人。

 私は、日本さんから視線を離さなかった。私と同じ黒い瞳。獲物を捕まえた毛禽獣みたいな獰猛な笑みを浮かべたまま、囁いた。ゆっくりと。


「私が『正常』だったら、日本さんは私のものになってくれたんですか?」


 耳孔に毒を流し込むように。その毒がこの人の体中を巡っていつかこの人を駄目にして、そうして本当に私以外の全部が分からなくなってしまえばいい。
 そしたら私のこと、分割なんてできないでしょう。異常とか正常とか、日本さんは難しい事を考えすぎている。望まれる状態なんて端から求めていない。破綻なら当に来た。犯してはいけない境界は、とっくの昔に、私は進んで乗り越えている。
 彼が怯えるそのボーダーの向こう側にいるのは私の意志だ。私の恋だ。それを今更、私に何をいうのか。

 足の間にはいまだ彼が埋まっている。腰を揺らす。日本さんの性器がぴくりと反応をした。その動きが分かる。日本さんが、私の中にいる。私は軽侮と憐憫を半分ずつ混ぜた表情で笑ったまま、日本さんをまっすぐに見つめた。
 ばかでかわいそうな日本さん。視線をむけられるだけで私を怖がってしまうような貴方に、私を理解できない貴方に何が出来るんですか?私が異常だなんてはなはだ可笑しい。
 狂っているから何だというのか。彼が言うところの正常からの離脱、それは私にとっての何の損失にもならない。なんで気付かないのか。


「私が『異常』だから、日本さんは此処にいてくれるんじゃないですか」


 何もいらない。私はもう、それだけでいいのに。
 


 私は夜が始まると、小さな狩をする。私の中で育てた恋に、食べるものを与える為に。
 武器は彼を繋ぐ手錠と、私以外では決してあけることの出来ない小さな白い壁の部屋で、もちろん狩る相手は日本さん。
 私の恋は餓えている。貴方が欲しくて泣き続けるから、私はこの子を生かすためにどんなことだってする。落ちろといわれて落ちたわけでない、忘れろと乞われても忘れられない私の恋。
 貴方を手に入れるために全てを捨てた私の掌に残された、唯一のもの。




 もう一回しましょうか。
 耳元で甘く囁くと日本さんは本当に泣きそうな顔をした。母親の手だと思って握っていた手が、いつのまにか人攫いのそれに変わっていたと漸く気づいた子供みたいに。
 だけど上気してうるんだその目には、男としての致し方ない欲が浮かんでいる。私はにっこりと笑って、日本さんの髪を撫でてあげる。
 どんなに妹とするセックスを嫌がったって、私の中に入っている彼のペニスを、腰を振って揺らせば簡単に意識をそちらに向けられる。手を縛れば此処にいてくれるし、部屋に鍵をかければ私が帰ってくる夜を待つしかない。
 そして妹のどろどろの性器に肉を埋めてその膣の中に射精している。私の思い通りになる日本さん。
 私を異常だと罵ったって、この異常な部屋を形作るもう一人はあなたじゃないですか。
 なのに何処へ逃げたいというの。可愛そうな人。
 はやく私の恋を認めてしまえばいいのに。私は一人しかいないこと。あなたの妹である私も、あなたを犯す私も。早く気付けばいい。あなたがどんなに否定したって私は恋を殺さない。守るのだ。
 あなたが私に生ませたそれ。私に残されたゆいいつのもの。
 どんなに否定したって嫌悪したってここにあるのだ。私の胸の中に。それに気付かない限り、この夜は続く。私の恋と共に。


「……好きです、私日本さんが、本当に好き」


 日本さんの歪んだ顔。私の愛しい人。私の可愛い人。ゆっくりと腕を広げて、彼を、抱きしめた。
 幸せ、だ。




 明けない夜がここにはある。私の恋は夜育つ。
 これを産ませた貴方自身にだって、この恋はもう、殺せない。




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