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 Without The Sack

66 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2009/12/22(火) 23:34:31 ID:eATYn4lC

痴祭り楽しみだなー! 文章書けない自分は、 
「誰かプレゼントに『僕自身』が欲しいって言ってくれる女の子いないかなー」 
なんて期待してるフィンの妄想を置いてく。

【メインCP】 リヒテンシュタイン×フィンランド
【サブCP】 
【傾向】 たぶん純愛。エロ少なめ、軽め
【その他】
>>66のせいで今年のクリスマス返上です。ちくしょうキュンときちまったじゃねえか!
たまにはこういうのがあってもいいかなー、ということで。


「……ふう」
 一晩中を駆けたトナカイたちは些か疲れているようで、時折鼻を鳴らしていた。
僕も正直なところかなり疲れている。
見上げた星空にオリオン座は見えなかった。
地平線の縁が形容しがたいほどに濃くて、散りばめた星が白い。
でも、吐く息が白くないのがなんだか可笑しかった。むしろこの格好は少しばかり暑い。
 ——セーシェルさんにプレゼントをあげて、あと残っているのは一ヶ所だけだった。
でも南半球から北半球へのとんぼ返り、そこへ着くまではもう少し時間がかかりそうだ。
「スイスさんとリヒテンシュタインさん、か」
 行き先をふと呟くと、吐息がこぼれて風に溶けていく。

                  *

ルドルフ——先頭のトナカイが首を振ってけたたましく鈴を鳴らした。それではっと我に返る。
僕としたことが、少しうたた寝をしていたらしい。
すでに北半球の比較的緯度の高い地域に到達して、寒さが空気に張りつめている。
そして下方に雪を頂いた美しい山と、麓に屋敷を認めることができた。
さらに目を凝らせば、木組みのクリスマスツリーが見えて、金の短髪の少女がいて、
「モイ!」
 僕は挨拶をする。
冷たい空気に声は白くて、こんな中ずっと待たせていたのかと思うと、ちょっぴり申し訳ない。
彼女は僕に気付くとはっと顔を上げて、心底嬉しそうな顔をする。
 高度を下げて手綱を手繰った。
トナカイの歩幅が狭まるにつれ鈴音は小さくなっていく。
やっとそりを止めてもう一度挨拶をすると、リヒテンシュタインさんは優雅に膝を折った。
「メリークリスマス、ごきげんうるわしゅう」
「モイモイ! こんばんは、リヒテンシュタインさん。待っていてくれてありがとうございます。あれ、スイスさんは?」
「あ、お兄様は早めに就寝致しましたの。……きっと何でも良いのだと思います」
 そう言った彼女の声は心なしか、震えてかすれていた。よく見ると頬が赤く染まっている。
北欧では日常的な気温でも、彼女には厳しいものなのかもしれない。
 そうすると、早くプレゼントを渡してしまう方がいいかも——と、そう思って袋を手にしたとき、
「あのっ」
 声をかけられて少しばかり驚いた。
リヒテンさんのほうも自分の声の大きさに気付いたか既に赤い頬をさらに紅潮させる。
「……な、何ですかね」
「いえ、あの、フィンランドさん、確かこれが最後と存じますが」
「はい、そうですよ」
「よろしければ、その、……少し休んでいかれては、いかがでしょう?」
「……え?」
 突然の申し出に目を丸くした。
僕は、サンタクロースだ。
世界中を飛び廻らなければならないから、この類の誘いにはついぞお目にかかれないけれども。
でも、ここが最後の廻り場所。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらっていいですか?」
 たぶんきっと寒さで強張っているはずの頬を綻ばせて、リヒテンさんは僕を屋敷の中へ招き入れてくれた。

                  *

 慣れた手つきで、しかし上品に、彼女は紅茶とお菓子を出してくれた。
暖房のかかっている部屋はまさしく僕に取ってオアシスで。
ずっとそりに乗っていたからこのソファは非人道的なほど腰に優しい。
お礼を言って紅茶に口を付ける。
「一晩中世界中を廻って、お疲れでございましょう」
「いえ、もう、いろいろありましたよほんとに」
 だってプレゼントの中には大変なものもあるから——とは言わなかった。
今膝の上で丸まっているプレゼントの袋の中はいつも空で、これは僕にもよくわからないのだけれど、願ったものが出てくる。
けれど願いによっては、ちょっと僕の許容範囲外のものが出てきてしまったりもするのだ。
僕は、サンタクロースだ。でもこればかりはどうしようもない。
「でも、みんなによろこんでもらえたならいいかなー、なんて」
 一度カップを置く。テーブルの上、紅の水色が蝋燭の光を散らしてきらきらと輝いた。
暗い部屋にこれが唯一の灯で、向いに座るリヒテンさんの影は、だから薄らと闇に滲む。
出されたクグロフのひと切れをフォークに刺す。
「すばらしいでしょうね」
「そうですかねえ」
「こう……願いを叶える、と言うのでしょうか、とても、すばらしゅうございますよ」
「そう言っちゃえば確かにそうなのかもしれませんけど、でも、本当に願いが叶えられているかどうかは……ね。
 なんだかとんでもないプレゼントになっちゃったり、僕でさえどう役に立つのか分からないプレゼントとか、そういうのもたくさんあるので」
 彼女の微笑みが背中にむず痒くて、思わず饒舌になってしまう。
照れ隠しに残っていたクグロフを一息に頬張って、紅茶を飲み干した。
「さて、それじゃ、プレゼントは何がいいですか?」
 膝の上の袋を取り上げて、彼女に尋ねた。
紅茶のカップを傾けていたリヒテンさんは、そっとカップを皿に戻す。
幾度か瞬きをして、そっと目を閉じて——プレゼントを決めているみたいに見えた。少なくとも僕には。
 不意にリヒテンさんは立ち上がる。意志の灯った緑の瞳に、オレンジの光が踊る。
「——っあの」
 声が少しかすれているのに気付いた。
これは本気で欲しいものがあるんだ。袋を持ち上げて——
「——?」
 制止、される。透き通るように白くて、しなやかな手に。
「どうかしましたか?」
「袋は、いらないんです」
「はい?」
「いりませんよ」
 言っている意味を理解しかねて、 僕はリヒテンさんのことを見つめた。
小柄な彼女は、ソファに腰を下ろしている僕と同じ高さに、目がある。大きくて底のない緑が、近づいて、近づいて、
「えっ——」
 唇に唇が触れる。それは紛れもなく彼女のもので、つまり、僕、は——
「ちょ、ちょちょちょちょっと! えっ?! な、なな何をしてるんですか?!」
——もう一度。今度は目蓋にキスを落とされる。
二度に渡るそれで、漸く僕は、これが夢じゃないことに、リヒテンさんが冗談とかでしているのではないことに、何故袋が必要じゃないのか、気が付いた。
 胸が跳ねる。
口づけされたところがひどく熱い。
目を上げて見つめ合う形になって、彼女の目は熱っぽくゆらゆらと揺れる。
その顔が赤いのは、もう寒さのせいなんかじゃなくて。
 そっと手を握られて、袋がするすると床へ落ちていく。
「フィンランドさんが欲しいとは申し上げません。でも私に、一夜限りでも構わない、——夢を、下さいまし?」
 何か言いたくて、何か考えたくて、でもそのための刻もなくて、彼女はゆっくり僕を押し倒す。
ただ驚きだけが僕の中で渦巻いて、それが僕の余裕を奪い去る。
抵抗の間もなく、三度目のキス。
「んっ……」
 唇の間から舌が入り込んで僕の口の中をじっとりと湿す。
歯列をなぞられ、舌に絡み付いた。
時間が止まってしまうくらい長く。柔らかい香りが僕を満たす。
喉を下るあたたかいものが、僕のことを違うものに変えていく。
 唇が離れたとき、彼女はすっかり顔を紅潮させていた。きっと僕も同じだろう。
何か言い様もなく強い衝動めいたものが芽生えて、みるみるうちにその草丈を伸ばす。
体温が上昇したのか逆に下降したか暑い。
そんな取り留めのないことばかりが頭の中を占拠して、その間、ずっと僕とリヒテンさんは見つめ合っていた。
でも、彼女の手が僕の服のボタンに伸びたところで、やっと世界が動き出す。
「ちょ、ちょっと待ってください——!」
動け、僕の理性。回れ、僕の頭。
彼女はきょとんとした表情で僕のことを見た。
「どうして、っていうより何のために、僕を……?」
 その先に何か続けようとしてしかし、もう喉はすっかり乾ききっていた。
真っ直ぐに僕のことを見ていたリヒテンさんは、そのひと言で俯く。
 静寂が訪れた。
外に雪は降っていないことは分かりきっていたのに、それすら疑ってしまうほどの、きんと冷えた静寂。
 沈黙は、彼女の小さな声で破られる。
「お慕い申しております」
 耳を、疑った。
「惚れてしまっている、と言う方が正しいのかもしれません。でも普段は、お兄様が私とフィンランドさんを引き合わせてくださらないものですから……。だから今日は、お兄様を遠い所へ向わせましたの」
 耳が正常であるなら、彼女が、正気じゃないのだろうか。
「フィンランドさんとお会いできるのはクリスマスの時だけなのです。でもそれはあまりにも、……。ならば、いっそのこと契りを結ばせて頂きたいのです。クリスマスプレゼントに、一夜でも、愛を下さいまし……?」
 ああ、僕はサンタクロースだ。
たとえこれが夢でも、プレゼントを渡すのが僕の役割で。
 だから——
 ——唇を、奪う。
全ての想いを溶かしてしまおう。
そう、何が何だか分からなくなるまで。
 舌を絡める。吐息が混じり合う。体温を奪い奪われ、我を忘れて彼女の唇を貪った。
胸元が蠢く、同時にボタンの外れる音。白いファーの赤い上着がはらりと肩から落ちた。
 少しずつ衣装が剥がされていく。みるみるうちに肌が露になって、気持ちが高揚するのを止められなかった。
ついにベルトの金具が外されて、体を包むものの一切を失った。
 僕自身が、僕ですら覚えがないほど屹立していた。
まるでもうひとつ心臓がそこにあるかのように鼓動し、血が集まっているのが嫌でも分かる。
それほど——僕は、彼女を求めている。
 リヒテンさんも自ら衣服を払って、一糸まとわぬ男女が一組できあがった。
 薄暗い、ともすれば自身の輪郭を見失ってしまいそうなほどの闇の中ですら、彼女の白磁の肌はその曲線を鮮やかなものにして厭わない。
少女らしい、起伏に富まない体は、むしろある種の芸術のようで。
純粋に美しくて、こちらが恋をしてしまいそうで。
 胸元に口づけをされる。心臓が高く脈打つ。体中が火照って、熱いものが体中を巡り、下半身に滾る。
 突然、意識に関係なく体中がびくっと跳ねた。
下半身が痛みを覚えるほど激しく疼いた。
何故だかは分かった、でも、何がかは分かりたくなくて、でも突如彼女が何をしているか分かって、体が自然発火してもおかしくないほど熱くなる。
 リヒテンさんは、そのたおやかな手で、汚れのない手で、男を知らない手で、僕自身を優しく愛撫した。
握っては恐る恐る触れて、長い指が絡み付いては蠢く。
それは確かに不器用だったけども、でも下手なんかじゃなくて、初々しさに染まった一挙一動が、一層僕自身をいきり立たせる。
扱くとか、擦るとかじゃない、撫でるだけの刺激。
とてつもなくいじらしくてもどかしくて、不意に上半身を起こして彼女の乳首に食らいついた。
「ふあっ……ん」
 僅かなふくらみの向こう側から鼓動の音がする。突起を舌先で転がすと、甘さによく似た味がした。
堪能する、というにはあまりにも微かなものだったけれども、味わって丹念に吸う。
そっと、細い腰に片腕を回した。
やはり厚みのない臀部を手のひらで包み込む。ぴくりと肩が跳ねて、細い髪が舞った。
「フィンランド、さん……」
 名前を呼ばれて体から顔を離せばすかさず唇を重ねられる。
軽いキスからは性欲の香りがした。
それはあまりにも耐え難い芳香で、僕も、彼女の下腹部に手を伸ばす。
「ひゃ、あっ」
 彼女の秘裂は驚くほど蜜に塗れて、触れると甘い女性の香りを振りまいた。
薄くて柔らかい秘所の肌はダイレクトに僕に熱を伝えた。
 濡れたそれに指を這わす。小さく水に良く似た音。
ねっとりとした蜜が僕の指にまとわりついて絹肌がぴったりと吸い付く。
秘裂に沿って指を動かす度、端正なリヒテンさんの顔がとろけていくのが、甚く扇情的で。
不器用な手淫と相まって、僕を我慢できないところまで追いつめていく。肉体的にじゃなく、精神的に。
余裕をどこへ落としてきたのだろう、もう僕には、これが生殺しか焦らしにしか思えなくなっていて、
「リヒテンさん」
 呼んだ。
「リヒテン、さん」
 呼んだ。
 一夜限りの夢、それは見るものなのか、見せるものなのか、きっと僕には分からなくて良いことなのだろうけども。
僕の上に跨がった彼女の手をとって、そのまま抱きしめる。
 熱いほどの温もり。
欲しい、と思った。
さらりと指に心地良い髪を掻き上げて、その額に接吻をして。
 今度は、呼ばれる。
 彼女は一度立ち上がって、僕自身に秘裂を宛てがう。
湿った感触に身震いをして、ふと、彼女の手が震えていることに気付く。
「んぅっ……あ」
 腰がゆっくりと落とされ始めた。小柄な体の小さな口が広げられて僕を呑み込んでいく。
痛み、と、これまでに感じたことのない、罪深いまでの快感。
窮屈な膣は異物を受け入れまいと締めつけてくる。それすらこじ開けて彼女は僕を包み込んでいく。
 苦しそうな息遣い。痛みの滲んだ喘ぎ。
見上げた彼女の顎に雫を認めて、少なからず動揺を覚えた。
汗、だと願いたくて、でも僕が体を苛むほどの気持ちのよさを覚えているのは、揺るがしがたい事実だった。
情けなくて、力強く手を握る。
「く、はあっ!」
 一息にリヒテンさんは自らを貫く。
到達、した。
彼女は僕の胸にくずおれて、乱れた呼吸を繰り返した。
全部が挿入された訳じゃないけれど、おそらくは、そこがきっと行き止まりだ。
労りの想いを込めて髪を撫でる。少し、汗ばんでいる。
「だいじょうぶ、です、か」
 弾んだ息は細い。それでも彼女は、僕に対して微笑んでみせてくれた。
気丈、だった。
「申し訳ありませんけれど、動かないで下さいまし……」
「あ、うわ、あの、痛いですよね、ごめんなさい」
「大丈夫ですよ」
 腰に腕を回され、抱擁される。限り無く0に近い距離で、限り無く僕たちは一人に近かった。
「しあわせ、なんです。確かに痛いのですけれど、痛みが、幸せに変わる、」
 分からなかった。ちょっと僕には理解しかねた。
でもそれが男と女の違いなんだろう、そうすると僕の、男の幸せは、許し難いくらいの快楽、だろうか——。
 しばらく抱き合っていて、それは悠久にさえ思えて、静寂に支配された部屋の中で、互いの呼吸も、鼓動も、聞こえてしまいそうで。
 ふと、片手から握力が消える。閉じた目を開いた。
「行きます、よ」
 ソファがしなり、軋んだ。
僕の上で彼女の髪が跳ねる。
「んっ、」
 痛みに顔を顰めたのもつかの間、リヒテンさんはまた腰を落として、引いて、上下を繰り返した。
「あ、あっ、ひあっ」
 上がる彼女の声は嬌声じゃない。痛みに漏れる悲鳴のかけら。
でも先刻の彼女の言の葉が正しいとするなら、それは紛れもない幸福の声。
 だから僕も彼女を呼ぶ。
呼んで、呼んで、そうしないと自分が自分でいられなくなりそうだった。
柔らかい肉を硬い肉が串刺して、擦れ合うたびに快楽が僕を蝕む。
「はっ、んん」
 その腕を掴んで上体を起こして、先ほどのように唇を塞ぐ。
その間にも彼女は僕を悦ばせるのをやめない。甘ったるいキス。
舌を絡み付かせるのは、今度は僕の方だ。
 腰を振るリズムに合わせて水音が響いて、僕自身が彼女の内側をえぐって、蜜が零れて足の間に垂れた。
透明で粘性のあるそれは蝋燭の揺れる光にぬらりと反射する。
口づけを止めると唇と唇の間を銀色の糸が結んだ。
 肉と肉がぶつかって軽い音を立てる。
情欲、熱情、情愛、さまざまな言葉が脳裏を駆け巡って、僕を追い立てる。我慢が限界に近づいていた。
もうすぐ、抱えきれなくなってしまう。
「ふぃ、らっ、んあ、ふはっ」
「リヒテン——」
 初めて、そのままの名前を呼ぶ。泣き笑いの表情が浮かぶ。
それは僕に承諾をしているようにも見えて——。
 うめき声を漏らした。
欲望にはち切れんばかりになった自身が限界まで膨れ上がって、一気に精を吐き出す。
なんども、なんども、彼女の中に僕を注ぎ込む。
途端、頭の中が真っ白になって、全てが白く消え失せるのをぼんやりと見ていた。

                  *

 屋敷の外は寒々としていて、内側の暖かさが嘘のようだった。
夜の底で僕は袋をそりに投げ込む。
僕を見送りに来たリヒテンさんは顔をほんのり赤くさせていて、ほろ酔いしているみたいだった。
ふかふかのコートの下は、バスローブ一枚を羽織っているだけだと僕は知っている。
だから見送りは遠慮したのだけれど、どうしてもと懇願されては仕方がなかった。
 息が、白い。しっかりと前を掻き合わせる。
「わー、みんなお待たせ……ぎゃっ」
 走らされた後放置されて疲れがピークに達していたのか、トナカイに指を軽く噛まれた。
これは真っ直ぐ帰ってやらないといけないだろうなあ。
そりに乗り込むと鈴が一斉に鳴る。
「——あ、」
「どうしましたか?」
 リヒテンさんの息は僕のものよりずっと白い。
見つめてくる緑の目は芸術のように美しくて、でも、ふかふかのコートの下に羽織ったバスローブの下に、赤い痕跡があるのを僕は知っている。
「クリスマスプレゼント、ってひとつだけでしょうか」
「……? 原則一種類、ひとつですね」
「それなら、来年のクリスマスプレゼント、お願いできますでしょうか?」
 きっとそれもこの袋はいらないんだろう。
僕は笑う。
口元から漏れた息が風に攫われる。
「愛していると、その言葉をプレゼントに」
 風が彼女の髪をなびかせた。
その頬に手のひらを当てて、そっと唇を押し当てる。そのまま、耳元にそれを近づけて、
「愛していますよ。——モイモイ」
  手綱を引く。一気に風景が背後に流れて、鈴音が夜のしじまに降り注いだ。
トナカイたちの引くそりは急上昇して、冷たい空気を切り裂いて走った。
熱い頬に風は少しも冷たくなくて。
いっそ雪が降れば良い。
世界を白く白く染め上げて、きっと僕の中に渦巻く熱を奪って溶けていくだろう。
 僕は、サンタクロースだ。
でも、僕がクリスマスプレゼントを貰っちゃいけない訳は、ない。断じてない。
 僕は、サンタクロースだ。
でも、来年は、その職務を放棄してしまいたくて。
 再度手綱を引き締めると、トナカイの内の一頭が嘶く。
「さて、家へ直行……ってああっ!」
 重要なことに気付いた。遠い地平線の縁が白む。そのすぐ裏側に朝が訪れる。
「スイスさんのところに廻ってないじゃないかー!!」
 クリスマスは、まだ、終わらない。

《了》




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