雪娘が笑うころ
【メインCP】スウェーデン×ウクライナ
【サブCP】 フィンランド→ウクライナ
【傾向】ベタ甘純愛もの。いちゃいちゃしてるだけ。
スーさんガチ設定を窓から投げ捨てろ
【その他】
スウェーデンが結構喋ってる割に方言適当です。茨城弁混ざってるかも。
クリスマス休暇が終わって2日。
シーランドはクリスマスプレゼントのシューティングゲームに齧りついていて、それを後方からスウェーデンが見つめている。
もらってから二週間も経っているのだから、血気盛んな男子のこと、もう相当やりこんで、今は難しい面に取り組んでいた。
「……あ」
「ん?」
壁にかけたカレンダーに×印を加えて、フィンランドは何か思いついたようにする。
「今日、ロシアさんとこクリスマスなんですねえ」
新たに×をつけた日付は7日。
つまり今日は8日で、しかしいつもならロシアのクリスマス――冬祭りは7日、昨日のはずなのだけれど。
「昨日じゃねえのか」
「なんでもユリウス歴の関係らしいですよ。ベラルーシさんに聞きました」
「……ベラルーシ?」
フィンランドは紅茶を二人分いれて、片方をスウェーデンのほうに差し出す。
いつものようにコーヒーではないことにスウェーデンは微かに眉を顰める。
「いやー、この前のクリスマスにベラルーシさんの所に行ったんですよ、念のため。そしたら『兄さんの所ではクリスマスは8日だ兄さん兄さん兄さん』、って」
冷蔵庫の中をごそごそしている彼はその後も話し続ける。
プレゼントにロシアを頼まれたが良心から断ったとか、ナイフを投げられたとか。
紅茶に口をつけてスウェーデンがシーランドに目を戻すと、爆発音と共に残機が一体減ったところだった。
「でも妹さんはああですけど……お姉さんのウクライナさんは良いひとですよ」
ウクライナ。その名前にスウェーデンの手が止まる。
「優しいし、ちょっと間が抜けてる所とか、ベラルーシさんとはかなり違う、っていうより正反対ですよねえ。ベラルーシさんは目つきキツいし冷たいけどウクライナさんはすごくあったかそうで。あーでも最近ちょっと大変だって行ってたっけなあ……」
熱っぽく語るフィンランドのスプーンから、温められたジャムがカップの中に落ちる。
ふわりと果物の芳香が湯気にとけて立ちのぼる。
いつからだろうか――スウェーデンはカップの中を覗き込む。細かな茶葉がゆらゆら揺れた。
フィンランドがウクライナの話をよく持ち出すようになったのは、その声がとても弾んでいることに気付いたのは、フィンランドが紅茶にジャムを入れるようになったのは、いつから。
また爆撃音がして、もうもう一体残機が消える。
「あれ? お出かけなのですか?」
「ん」
「お土産よろしくですよー!」
「あ、スーさん、ところで電話の子機知りません? 見当たらないんですよ」
「……いんや」
「そっかあ。じゃ、気をつけて下さいね。雪降ってますから」
フィンランドが差し出した厚手のコートの袖に腕を通し、帽子をかぶる。
ガラス越しに見える雪は、ふわふわとした大きなかけらだった。
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいですよ!」
ん、とだけ返事を返す。
扉の向こうで待ち構えていた寒気が、うねりながら彼を包み込む。
大きな雪片は風のない空から真っ直ぐに降って、帽子のつばを白く縁取った。
息を詰めるほどの大股で歩いた。
冷たさに氷色の目を細めると、昨日のことが思い出される。
『ウクライナ、なんつったらええべか……明けましておめでとう?』
『うふふ。うん、それでいいよ』
『すまねえない。今年は忙しぐで行かれんかった』
『いいんだよ。こうして電話くれたし、それにロシアちゃんとこのお祭りだしね』
『……明日、そっち行ってええか』
『でも、』
『ウク』
『なんか……悪いから』
『ウク……』
『ありがと』
『……』
『ありがとう』
・
・
・
見慣れた古くてぼろぼろの家に、灯りの類は一切見えず。スウェーデンがウクライナの名前を呼んでも返事はなかった。
「……出かけちまったか」
帰ろうと思いかけて首を横に振る。ドアの前に座り込むと、寒さを孕んだ風が身を切るようだった。
北欧よりはましだとしても、充分見に染み込んで、しばれた。
牡丹雪が降る、降る。音もなく降りしきる。静寂を作り、銀の世界を作って。
スウェーデンは膝を抱えて、そっと息を吐いた。
白の吐息がはらはらと溶けた。途中眼鏡を一瞬曇らせ、ちらちらと蘇る視界の向こう、ただ雪を見る。
この世界に一人だけ、そんな錯覚さえ、信じてしまいそうになる。
――スネグーラチカって知ってる?
斑に染まった地面を見て、ふと、思い出す。数年前の冬祭り。
――雪でできた女の子でね、冬祭りにプレゼントを渡すの
柔らかくてふわふわした声。
姉という立場からか、およそ温もりのある物腰。
――きれいな長い銀髪で青いコートを着て、白いマフをしてるんだって
足音がする。でもきっとウクライナではないだろう、とスウェーデンは顔を腕の中に埋没させる。
……あの音が聞こえないから。
――それで、――
「……スウェーデン?」
やわらかくてふわふわした、こえ。思わずスウェーデンが顔を上げると、目の前にスネグーラチカ。
青い服に白い襟巻き、雪明かりに髪が銀色に輝いて。
ウクライナがそこにいた。
雪がふたりの間を流れていく。立ち上がり、瞬きをしても、目の前のひとは消えない。
「ウク」
余り口を動かさない、ともすれば鼻濁音になってしまいそうな声。
「ウク――うおっ」
「わあああ!!」
目に僅かに涙を浮かべて、彼女はスウェーデンの胸に飛び込んだ。
突然のことに目を泳がすが、そっと、雪の積もった髪をぎごちなく撫でてやる。
久しぶりの感触は、彼の思い出の中と寸分の違いもなかった。
「寒かった〜寒かったよぉ〜……! でもそっちもずっと待ってたんだよねぇ、ごめんなさいぃ」
「ん」
「わぁぁあああ」
顔を胸に埋めているから彼からはその表情は伺えない。
でも、ショートカットの隙間から見える耳は、目に寒々しく赤い。ぎゅっと抱きしめても、柔らかいのに、温もりが伝わらない。
「……上がろっか」
そっとウクライナはスウェーデンの体から離れて、懐から鍵を取り出した。
軋みを上げて開いたドアの向こうは、外と変わらないくらいに寒かった。
「なんか、んまそな匂いがすんな」
「ああ、これだよ、プィリジキ。売れ残りだけどねぇ」
ウクライナが手に持っていた大きな袋を上げてみせる。乱雑に扱ったような皺のあるそれから、確かに匂いが漂ってくる。
「……売れ残り?」
「うん……。売り歩きっていうのかな、そんな感じ」
「それでんな格好しとんのか。その服、なじょした?」
以前と変わらない椅子に腰掛けて帽子のベルトを外しながら、スウェーデンは訊ねた。
「ベラちゃんから借りたの。だからちょっとこれ、細すぎるなぁ」
「スネグーラチカ?」
覚えてたんだ、とウクライナは笑った――けれど、その笑顔は泣き顔に似ていて、スウェーデンは首を傾ぐ。
それは顔の筋肉が強張っているからではなくて、たまに会議で見せる笑顔も。
青い衣装を脱ぐと、どどいーんと耳に馴染んだ音がした。
ああ寒い寒い、と言いながらウクライナはペチカの前に膝をつき、薪を組みはじめた。
かじかんだ指がうまく動かないのか、手の中で木がかたかたと鳴る。家の中ですら息が白い。
見かねて、スウェーデンが彼女の後ろにかがみこむ。
「俺、やろうか。風呂さ入ってこい」
木を取り上げて、ウクライナのことを見つめる。
青と言うより蒼色をした虹彩。戸惑いの色が一瞬掠めた。そして不意に、彼は気付いた。
「……石油、ねえのか」
「うん……」
「ガスもか」
「うん」
昨日の電話で会うことを拒んだ理由。国とあろう彼女が売り歩きなどをしていた理由。ストーブではなくて、ペチカの火を入れようとした理由。
プィリジキのにおいがする。
手にそっと触れる。氷のように冷たい。スウェーデンの手のひらに誂えたようにすっぽりと収まって、握りしめた。
背後からぎゅっと抱きつく。驚いて振り返ったウクライナの頬に頬を寄せる。
「一人で寒いなら、二人で身を寄せ合ったらええばい」
朴訥とした言い方。抑揚がなく、けれどウクライナは、彼の言葉にふっと頬を緩めた。
「……ちょっと気障だよ」
「そか」
「ふふっ、でも言ってること、間違ってないと思うな」
ウクライナの白い手が彼の両手を掴んで胸の前に持ってくる。
大きな胸の上を弄り、ひとつひとつ、ブラウスのボタンを外す。
はだけた上着の上からブラジャーを下にずらすと、乳房が零れるように震えた。
「ひゃんっ」
手のひらで包み込むようにして胸を揉んだ。
柔らかいようで弾力のあるそれは、鼓動に合わせてかすかに振動して、呼吸と共に上下する。
「指、冷たいっ」
「ん、我慢してくれ」
冷えた指先を温めるように、想い通りに形を変える乳房の感覚を楽しむように、丁寧に揉みしだいていく。
豊かなふくらみを愛撫して、その感触を確かめる。真っ白だった肌に赤みが差してほんのりと熱を帯びた。
乳首を軽く指で転がすと、少し身じろぎをして、甘い息を吐いた。
潰すように、あるいは摘むように繰り返す。
彼女の柔らかさがあまりにも心地よくて、スウェーデンはその首筋に啄むようなキスをした。
手を下の方に伸ばして、ズボンの中に指を滑り込ませる。
「やぁ……ん」
下着の隙間から茂みを掻き分ける。じっとりと濡れた箇所に触れて、指を侵入させた。
「ふぁっ、あっ、……やっぱ冷たいよ」
「じき慣れるばい、ほら」
「ひぅっ!」
彼女の中をかき回してぐちゃぐちゃにする。卑猥なほどの音が、ウクライナの嬌声と重なる。
熱いものがとろとろと彼の手を伝わった。
「ウク」
胸に触れていた手でウクライナの髪をくしけずって、顔を埋めた。
彼女は頬を紅潮させて浅い息をしていた。気を緩めると理性を失ってしまうとでもいうように体をぎゅっと緊張させて、だからか、指を引き抜くと少し深呼吸をする。
「腰さ上げて」
「え、きゃっ」
突然尻を持ち上げられて、ウクライナは思わずペチカの角に手をつく。
煉瓦の冷たさに身を竦ませるよりも早く、彼女のズボンの留め具を外して下着ごとずり下ろした。
ひやりとした空気が熱くなったところを容赦なく責め立てる。
スウェーデンはズボンの前からそそり立った自身を取り出し、臀部を突き出す形になっているウクライナの濡れた秘裂にそっと宛てがって、一気に貫いた。
「んああっ!」
解れていた故か、それとも重ねた経験のおかげか、蜜を滴らせたそこはするりと彼を受け入れる。
されど普段閉じている場所をこじ開けたせいもあり、肉壁が彼自身を圧迫して、それもいつもと同じ感覚。
引けばぬるりと絡みつき、押せば若干の手ごたえを与える。
知り尽くした彼女の躰を愛しむように、スウェーデンはウクライナの尻を鷲掴みにして激しく腰を打ちつけた。
部屋に響くのは、金具のぶつかる音、衣擦れのリズム、躰の結合部の擦れる粘ついた水音、双方の喘ぎ、これで全部。
けれどこれで十分すぎるほどだった。
響く音はそれだけでも、密着した肌からは互いの心が伝わってくる。
「はぅ、ん……あついよ、なか」
雪のように白く冷たかった肌もいつの間にか血色を帯びて火照り、ウクライナの腿にじっとりと汗が滲む。
背後から突かれ、こみ上げてくる快楽に、躰を支えている腕ががたがたと震える。
それを引き止めるようにスウェーデンは彼女の躰をしっかりと掴んだ。
肉付きのいい臀部に締まった腰を押し付けて、短く息を吐き、ウクライナの奥に精を放った。
荒い息。白い息。
何度繰り返しても一向に整わない。
スウェーデンが自身を抜いてしまうと、彼女は崩れるように横に転がり、あつ、と額の汗を袖で拭った。
見上げたスウェーデンの白い輪郭が覚束ない。
「大丈夫か」
「……ずるいよ」
え、と聞き返す間隙すら与えられず、ばいーんという音とともに床に押し倒されてしまう。
今度はスウェーデンの方がウクライナを仰ぐ番で。
「ずるいずるいぃ、いきなり後ろからなんて一方的過ぎるじゃないのー!」
「……すまねえない、気が急いちまったで」
「だから……その、……」
頬を赤く染めて、声を潜める。
「……ベッドに行かない?」
今更だとウクライナには分かっているけれども。
今更だとスウェーデンにも分かっていたけれども。
「行がね」
だからわざとそっけなく言って、
「だってここでええばい?」
なのに背中が擽ったくなって、語尾が柔らかくなって。
するりとウクライナのヘアバンドを攫う。それが合図となって、二人は互いの服を脱がしていく。
寒い地域らしい真っ白な肌に触れ合って、下着まで剥がしていく。
空気は凍えるようだというのに、体の芯は燃えるように熱くて。
肌を密着させ、四肢を絡めて、抱擁を交わした。スウェーデンが唇を奪おうとしたところでウクライナが鼻あてをつつく。
「めがね」
「……これがねえといぐ見えねんだども……」
「見るものじゃなくて、感じるものでしょ? それに私、素顔を見てたいの」
渋々といった感じに眼鏡を外してしまえば、もう数十センチより遠いものが見えなくなる。分からなくなる。
ぼやけて滲んだ視界の真ん中、ウクライナにだけ焦点が合う。
今度こそ唇を近づけ、吐息を重ねた。
飽くまでも軽いキスを。
その代わり確かめるように幾度か立て続けに口づけする。
ウクライナの手が、硬く筋肉質な胸板を撫ぜる。心臓の近くを弄る。鼓動を探り当てて、そこに手のひらを沿わした。
「あったかーい……ずっとこうしていられたら、ペチカもサウナもストーブもいらないのにな」
手と手を握り合い、もつれるように横に転げ。
スウェーデンが彼女のたわわな乳房に手を伸ばし、ぼいん、と音をさせて強く揉みこんだ。
指が埋没するほどの力を加えても、しっとりとした肌が吸い付いてくる。
赤みを呈してミルク色のそれは、触れているだけで甚く心地の良いものだった。
直ぐ下に熱いものの巡る肌をつ、となぞると、ウクライナの肩がぴくりと反応した。その指を、胸から腰にかけて滑らせ、ふくよかな臀部にそのまま食い込ませた。
乳房とはまた違う、弾力と柔らかさのバランス。
「やっこいな」
「ふぇー……あんまり食べてないんだけど」
「死亡あったほうが寒ぐねぇ」
「でもちょっとむっちりしすぎじゃないのかなぁ」
「俺はんの方が好きだない」
そっか、と言いかけた唇を塞いだ。
舌を伸ばしてウクライナのそれと絡ませ、唾液をねぶり、口内を嬲り会った。
窒息の瀬戸際に至るまで吐息を吸って吸われて、ぷは、と口を離したときには酸欠で頬が真っ赤になっていた。
スウェーデンはその輪郭を手のひらで包み込んで、じっと見つめあう形を作る。
青色の双眸と青色の両眼。海の色というより、地平線と天頂の空のいろ。
「……なんか見つめられると恥ずかしいっ」
ふいっと顔を横に背けてしまって、スウェーデンは肩を竦める。
ぎゅっと抱きすくめ、もう一度首筋にキスを加えて、再度もつれ合ったまま転がった。
彼がウクライナに圧し掛かる体勢となると、彼女はスウェーデンに身を委ねるように手を回す。
脚の間に躰を滑り込ませる。
太腿を広げ、白と透明の体液でとろけた秘裂に、再び自身を挿入した。
「は、ふやぁ」
体内に侵入される感覚に彼女は善がった。
「気持ちい……あくっ」
躰を貪り、激しく責めぎ、腰を振る都度小気味よいリズムが刻まれる。
善がり声も息も全てその上に重なり、二人を包み込んだ。
乱れてしっとりと重い髪を、今度は優しく梳いて、軽くそのひと房に口づけをする。
スウェーデンは上気した肌をそっと指でなぞる。記憶に刻み込むように目を閉じた。
「もうちょっと、奥のほうまで……っ」
「こうか」
「うん、ひゃ、いいよ」
抉るほど深く。
彼女の最奥まで。
快楽を求めるというより、互いをより近く感じるための行為。
思考回路を焼き切るくらいの熱を。
ウクライナは繋いだ躰を引き止めるように抱いた背に爪を立てる。だからスウェーデンも彼女を逃がすまいときつく抱擁する。
形振り構わず、数え切れないほどキスを落とす。
「あたたかいよ」
分かっていると言いたげに彼は目ばかり細める。
「ありがと、」
ウクライナはその唇に自らの唇を押し付けた。視線の零距離射撃。
彼女の中に、二回目の精を吐く。脈を打っては注ぎ込む。
ある種の寂寞感がスウェーデンを襲って、歯向かうようにウクライナの首筋に口付けた。
けれどもう燃えるような欲は消えてしまった。
腕の中から彼女を解放する。同時につながりを解いた。
そうすると静寂には呼吸の音しか、残らない。
この世界に二人だけ、そんな錯覚さえ、信じてしまいそうになる。
ことの後というのは男のほうが復帰が早いのかもしれない。
スウェーデンはすっと立ち上がると、ウクライナに青と白の、スネグーラチカのコートをかけてやった。
「ぬぐまったら冷めんの早いから」
きょとんとした顔の彼女を横目に見、眼鏡をかける。服を着なおして装いを整え、てきぱきと薪を組み、火をつけた。
紅の炎が弾ける。強い熱を振りまいて。燃え移るそれはやがて火勢を強め、部屋を暖めていくだろう。
けれど。
けれど、やはり人肌の温もりが一番愛おしい。
「ねえ――」
振り返ったスウェーデンに向かって、ウクライナは破顔した。
誰にも泣き顔とは思われないような笑顔で。
他愛無い話。世間話。幾らかの時間をそれらで過ごして、スウェーデンはウクライナの家を後にした。
体を冷やさないようコートのボタンをきつくかけ、天を仰ぐ。
黄昏の痕跡を残して蒼鼠色の雲。日の落ちた帰り道、雪明かりに白い大地に足跡を。
踏みしめたその感覚にスネグーラチカのことを思い出す。
――それで、――
スネグーラチカは、春が来ると溶けて消えちゃうの
「あ、スーさんお帰りなさい。遅かったですね」
家の中はいつも通り暖かい。
外よりもウクライナの家よりもずっと。
出迎えのフィンランドに帽子を渡して、スウェーデンは湿ったコートの雪を払った。
家に上がると、シーランドが駆けつけてくる。
「お帰りなさいです! お土産なのですよー!」
えっそれ冗談じゃなかったの、といいたげにフィンランドがスウェーデンの顔を伺うが、彼は動じることなく懐に抱えていた紙袋をフィンランドに渡した。
驚いて彼は袋とスウェーデンを交互に見る。
「プィ……あー、ピーラッカ、つーのか」
「え、どうしたんですかこれ」
「おめがウクライナんことよく話してたけぇ」
その後の言葉は、敢えて続けない。
フィンランドは何度も目を瞬かせる。
やがてじんわりと頬が緩んで、フィンランドは今にも笑い声を上げそうな勢いの笑顔になった。
それでいい、とスウェーデンは目を窓の外に向ける。
雪の粒が細かく、もはやそれは牡丹雪という名称に相応しいものではなくなっていた。
粉雪がしゃらしゃらと夜の底に白く積もっていく。
春が来るまではまだ遠かった。
- カテゴリー
- [ウクライナ][スウェーデン][スウェーデン×ウクライナ]