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12_69-75

 専属アシスタントを

【メインCP】 日本×台湾
【サブCP】 
【傾向】 甘ラブいちゃいちゃ、ちょっとバカエロかもしれない
【その他】 双方オタク設定注意


アシスタントをください。
血走った目でそう告げられ、フィンランドはたいへん困惑した。
確かに、なんでも欲しいものを言ってくださいと言ったのは自分だけれど、それにしたって予想外だ。
「アシスタント……ですか」
「はい、アシスタントです」
小柄ながら凛とした、清潔感のある普段のたたずまいは見る影もなく、
ボサボサの頭を掻き日本はそう口走った。服も薄汚れ、頬も幾分こけている。
見渡せば部屋も荒れ果て、この数日の日本の暮らしがいかに凄絶であったかを物語っていた。
脇目も振らず一心不乱に手を動かし続ける日本は、鬼神のようですらある。
「ええと、僕でお力になれるなら……」
「お気持ちは有り難いですが、貴方ですと作業手順をいちから教えなければなりません。
それでは間に合うものも間に合いませんので」
いつもなら浮かべているはずの微笑をどこかに置き忘れたらしい無表情の日本は、八橋も一緒に置いてきたらしい。
ある意味、スウェーデンより怖い。
帰りたい。サンタクロースになったことを、フィンランドは初めて後悔した。
「私の指示を的確に理解し、かつそれなりのレベルで作業をこなせないと話になりません。
ついでに作業中の萌え語りも欠かせませんので、そのあたりの感性の近い方ですとなお良いです。
あとはメシスタントを兼任していただけると大変助かりますね。さらに……」
滔々と語る日本はもう止まらない。
ごめんなさい、僕には手に負えません!誰か助けて!とサンタ袋に手を突っ込んだフィンランドは、
その手に触れたなにかふわふわと柔らかいものを引っ張り出した。

「……え?日本さん?え?なにこれ」
「……た、台湾さん……!?」
どうしてこうなった。
フィンランドは泣きたくなった。
そこに現れたのは鬼神2号。日本と似たり寄ったりの修羅場ルックで、Gペンと定規を握りしめ
茫然と佇む台湾であった。
日本の願いは叶えたが、状況は悪化したような気がしてならない。
だってすでに、台湾の目の縁が赤く滲んでいる。
「が、がんばってください!モイモイ!」
逃げるが勝ち。頭を去来するその声にフィンランドは素直に従い、外に待機させていたソリに飛び乗った。
「……」
「……」
台湾は己を、そして周りを、目の前にいる日本を見た。
去ろうとするフィンランドに関しては、もう処理能力の枠外だった。
彼女が把握できたのは、ここが日本の家で日本が目の前にいること、
そして、ついさっきまで取り組んでいた原稿がどこにもないこと。それだけだった。
じわ、と台湾の瞳に涙が滲む。
「……ま、ま……」
「……え?」
「間に合わない……どうしよう……!」
えうえうと声を上げて泣き出した台湾を前に、日本はようやく理性を取り戻した。


修羅場の切羽詰まった時に夢のようなことを言われたから、ちょっと戯れを言っただけだったのに。
これで自分の原稿すら危うくなった、と思いながら、泣いている女性を無碍にも出来ない日本は
ひとつため息をついた。
「とりあえず。お茶煎れますから、落ち着きましょう」
ね、と台湾のぼさぼさに引っ詰めた頭をそうっと撫でると、台湾がしゃくりあげながら頷いた。


原稿机と化していたコタツの一辺をなんとか空けて、ふたりで肩を並べる。既に小一時間が経過し、
日本が煎れてきたほうじ茶はとうに冷えきっていた。
ちん、と鼻をかんだ台湾が、ようやく口を開く。
「あの、日本さんだけでも原稿を進めて下さい」
「いえ、そんなわけには」
「遠慮しないでください」
遠慮ではない。台湾の前で晒す訳にはいかない世界がそこには広がっているのだ。
触手に汁だく、おまけに産卵のフルコース。いくらなんでもドン引きされること請け合いの特殊性癖である。
これに比べればドイツやスペイン、オランダなどまだ可愛いものだ。
さらに今回、ヒロインの風体がほんのり台湾を彷彿とさせるのもいけない。
もし台湾にこれを見られたら、慕ってくれる可愛い妹分はその瞬間からいなくなり、
ゴミを見る目で日本を見下すようになるだろう。それはそれで興奮する気がするが。
いや、やらないけれど。
冷たくなった茶を啜りながら、日本は考えた。既に2冊、入稿を果たしている。
タイムリミットは近い。もう1冊仕上げるのは諦めようと、日本は心の中でひとつ息をついた。
(どうせ突発ですし、鉛筆描きにグレスケ仕上げの折本にするつもりでしたし)
今回は落として、次回の新刊としてきっちりした装丁で出すことにしよう。
そう結論づけると、日本の心は急に晴れやかになった。
そんな日本の胸中などつゆ知らず、台湾がきっと顔を上げた。
「……あの、日本さん」
「はい」
「私、諦めます」
なにを、など、聞くまでもない。
「そんな、いけません!」
日本が、コタツの天板にバンと手を突いて立ち上がる。台湾はその迫力にびくりと身を竦ませた。
「初めて受かった祭典でしょう!仮に落としたとします。他に新刊はあるんですか。
頒布物はどれだけあるんですか」
「ざ、在庫のコピー本が1種類だけです……新刊も、今やってた原稿だけで……」
「でしたら死ぬ気で描くべきです!今から貴方の家に行きましょう。私も手伝います」
「え」
言うが早いか、コタツの上にあったノートパソコンの電源を落としコードを纏め始めた日本に、
台湾はあわあわと取りすがる。
「だって、そうしたら日本さんが新刊落としちゃうじゃないですか……!!」
「私はもう2冊入稿してますし、在庫も3種あります。参加暦も長いですし、
今回落としてもたいして痛くありません。でもあなたは違うでしょう。
せっかくの機会なのですから、悔いの残るようなことはいけませんよ」
そう笑う日本の表情に、嘘やごまかしの色はない。
それでも、ではお願いしますと言えるほど台湾の肝は座っていないのだ。
慕い、密かに焦がれる相手に、自分が描いた男と男がアッー!な原稿を見られたい女が
どこの世界にいるだろうか。
「で、でも私の新刊って、男の人が見られるようなものじゃあ……」
「女性向でしたら大丈夫ですよ、免疫があります……というか、少し嵌っていた時期もあるくらいですから
気にしないでください。あまり際どいポーズでなければ、モデルも引き受けられますよ……
こんな爺でよろしければ、ですが」
「……もでる……」
日本の魅力的な提案を前に、台湾は、ついに陥落した。
「多謝、阿兄」
「どういたしまして」


台湾の家に着いた段階で、タイムリミットは残り半日となっていた。
私物のノートとスキャナを持ち込んだ日本が、台湾の上げた原稿にデジタルで仕上げを施すことで
かなりの作業時間が短縮された。その手際のよさと鮮やかさに、台湾はひたすら感嘆する。
「すごいです、日本さん……私もやってみたい」
「これくらいなら、すぐ覚えられますよ。今度余裕があるときに教えますね」
「ありがとうございます」
にこ、と笑いながら、台湾は日本の傍らにおにぎりの入った皿を差し出した。台湾のするべき作業は
既に終わっているし、日本が担当してくれている仕上げも残り1ページだ。
残り時間はあと2時間。これなら、締め切りに間に合うだろう。日本にはどれだけ感謝してもし足りない。
「でも台湾さん、昔より本当にうまくなりましたね」
日本が、おにぎりに手を伸ばしながら微笑む。
「そうですか?」
「ええ。モデルの必要がないくらい、どのポーズも良く描けていましたし。
やはり数を描くというのは大事ですね。これでしたらもっと上達しますよ」
日本のせっかくの賞賛も、台湾の耳を右から左。今一番気にかかっているのは、
彼が今まさに口に運んだおにぎりについてだ。
こんな簡単なものでも、料理は料理。台湾が日本に自作の料理を振舞うのは、これが初めてだった。
口に合うかどうか、そればかりが気になってしまう。
「おや?」
「ど、どうかしましたか!?」
「こちらのおにぎりは、もち米なんですね」
「あ、はい」
「うちではうるち米が多いですから、新鮮です」
そこで言葉を切って、日本は台湾に向き直り微笑んだ。
「おいしいですよ。ありがとうございます」
「………!」
睡眠不足と恋心とときめきと、いろいろなものがぐるぐると台湾の頭の中を駆け巡り。

気づいたら台湾は、日本の胸の中に飛び込んでいた。


「た、台わ……!?」
名前を呼び切る間もなく、温かくかさついた台湾の唇が日本のそれに押し当てられた。
ただそれだけの稚拙な口付けは、けれど台湾の真剣さを日本へと伝える。
「ん……ッ」
日本はおおいに混乱した。
台湾が、キスしてきた。かわいい妹分。が、おそらく本気のキスを自分に。
(夢?じゃないですよね……これなんてエロゲ?)
思い返せば台湾が目の前に現れるまで立派な修羅場脳だった日本の頭の中は、あっという間に煮え切った。
(据え膳?これ据え膳ですか?据え膳食わねばなんとやらって言いますよね?うちの格言ですよね?)
もっとも、ここで引き下がっては台湾に恥をかかせるだけだし、今後の付き合いも
今までどおりとは行かなくなるだろう。
(それは、困りますね……)
そうだ、困る。でもどうして?
大事な家族のようなものだから?同じ趣味を分かち合える同士だから?それとも、他に理由がある?
答えを出せないうちに、息苦しくなったらしい台湾が唇を離した。
「台湾さん」
「……すきです」
「………」
「日本さんが、ずっとずっと好きです。今までも、これからもずっと、好き……我喜歡イ尓……」
頬を真っ赤に染めて、泣きそうな顔で、それでも真っ直ぐに日本を見つめる。
拒絶されると思っているのだろうか。
日本の胸の奥深くが、ぎゅうと絞られたかのように痛んだ。
けれど苦しくはない、その痛みはとても甘く喜びによく似ていた。
(……そうか。私は)
その結論がことばになって日本の脳裏に浮かぶとそれはとても自然で、
どうして今まで気づかなかったのだろうかと思うほどだった。


「台湾さん」
「……あ……」
それ以上のことをあれこれ考えるよりも先に、口が出た。
今にも涙をこぼしそうな台湾の、その瞳の縁にそっと触れ、日本は柔らかく微笑む。
「久し振りに本気になりそうです」
「え?」
「私もあなたが好きです、と言ったんですよ。台湾さん」
「に、ほんさ……」
仕返しとばかりに、日本は名前を呼びかけた台湾の唇を塞いだ。そのままぬるりと舌を侵入させる。
「ふ、ッう」
くちゅ、と鳴る音が、日本の頭を痺れさせどんどん行為に没頭させてゆく。
つつくと逃げる舌が可愛くて、舌を絡めて吸い上げた。
「ん、う……っ」
いやいやをするように首を振る台湾が、日本の胸を軽く叩く。
どうしたのか、と口を離せば、その瞬間から互いにはあはあと荒い呼吸を繰り返す。
そういえば、息継ぎすら忘れて没頭していた。一体、どれだけ煮えているというのか。日本は苦笑した。
「……いいですか」
何が、とは聞かない。日本ならではの聞き方だが、それでも台湾にはきちんと伝わる。
真っ赤な顔でこくりと頷いた台湾を、日本は心の底から、可愛く、愛おしいと思った。

「あ、あ……あ」
小刻みにあがるソプラノが、日本の耳を心地良く擽る。しっとりと汗をかいた台湾の身体が、
吸い付くように手に馴染んだ。
まろやかな胸の曲線をそっと辿り、柔らかく掴むとそれだけで台湾は肩を震わせた。
ついでに啄むように咥えて吸い上げると、押し殺したような声。ならばと柔らかく甘噛みすれば、
甲高い声が上がる。
「やだ、こわ……い」
台湾が、ふるふると首を振る。
「私が怖いですか」
「ちが、ちが――ッ、ン」
ぎゅうと抱きつかれ、日本は攻める手を休め台湾の髪を梳いた。
「では、何が?」
「だって、日本さん……ずっと、なんにも、話してくれない、からあ……ッ」
「ああ、それが怖いんですね」
こくこく、と台湾が頷く。怯えたその瞳には涙が一粒浮かんでいた。ほんとうに、怖かったのだろう。
「すみません、ですが……こんなときに、何を話していいものか」
不器用ですみません、と頭を下げると、台湾はくす、と笑った。
「日本さんらしいです」
「どういう意味でしょう、それ」
「いいえ」
くすくすと笑う台湾に、先ほどの怯えは見受けられない。
「もう、大丈夫ですか?」
「……はい」
恥ずかしそうに頷いた台湾は、それでもまだ少し緊張しているように見えた。
「あ。そうだ、台湾さん」
「はい?」
行為が再開されると思い込んでいた台湾は、まだ何かあるのか、と首をかしげた。
「先ほど、原稿の時には言えませんでしたので。気にならない程度ですが、
きっと勘違いなさっているので次回から直されたほうがいいかと思うことがありまして」
「え?」
こんな時に、原稿の話だなんて。
少し機嫌を損ねた台湾の手は、日本によってあらぬ所へと導かれた。
「ひゃ、に、日本さん!?」
「……どれだけ形を変えても、ココだけは、ずっと柔らかいままなんですよ」
触れさせられた日本の雄は、とうに硬度を増し熱く脈打っていた。
思いも寄らぬ展開にオーバーヒートを起こしそうになりながら、台湾は示された場所をそろり、と撫でる。
つるりとした感触。少し力を入れると、ふに、と指が沈んだ。
「ほんと、だ……」


ふにふに、とその先端を指先で揉むように弄ぶ。日本の表情をちらりと伺うと、
目を閉じて頬を上気させている。嬉しくなって先端だけでなく幹全体を手で覆うようにして
ゆるりと撫でると、日本が息を詰めた。
「きもちいい……ん、ですね」
自分の手で、日本が、感じている。それは眩暈のするような情景だった。
なんだかもうたまらなくて、台湾は行為をエスカレートさせる。指に感じる湿ったものも、
日本の感じている証なのだろう、そう思うと愛おしくて、口を寄せると舌でぺろりと舐め取った。
しょっぱい。決して美味しくはないけれど、日本のものだ。そう考えるだけで、身体が昂ぶる。
ぺろりぺろりと猫のように舌を使う台湾を前に、蚊の鳴くような声で、日本が呟く。
「……もう、勘弁してください……」
え、と聞き返そうとしたときには既に台湾の身体は日本によって床へと倒され、
両手を戒められ噛み付くような口付けを与えられていた。
「ん、んふ……、ぁ……あ」
同時に触れられる、熱く潤んだ肉。日本が、触れている。今まで一度も想像しなかったといったら嘘だ。
けれど実際に与えられる行為は、想像を越えていた。与えられる快感に、台湾は声をかみ殺し耐えた。
どれくらい、そうされていただろうか。
ぐちゅ、ちゅぷ、と絶え間なく聞こえていた音が突然止み、今まで蜜壷に差し込まれていた指が引き抜かれる。
息を整えながら次に何が起こるかを待っていると、突然そこに指とは比べ物にならないほど
熱く、おおきなものが触れた。
ついに、そのときが来た。台湾の身体が、ひくりと強張る。
「に、ほん……さ」
緊張をほぐすように、日本は台湾の頬を優しく何度も撫でた。
「台湾さん。愛してます」
日本からの思いも寄らぬ愛の言葉に、台湾は涙を滲ませ言葉を失う。
そして次の瞬間訪れた身体を引き裂くような衝撃を、目の前の愛しい男の背中に爪を立て耐えた。



まぶたに降り注ぐ光が眩しくて、日本は目を覚ました。
珍しく寝起きが悪く、なんだか眠り足りない。昨晩なにかしただろうか。したような気もする。
が、よく覚えていないしそもそもこんなぼんやりした頭では思い出せない。
もう少し惰眠を貪っても罰は当たらないだろう、今何時だろうか、と軽い気持ちで起き上がり、
そこでようやく己が裸であることに気づく。
イタリアくんじゃあるまいし、何故?と寝惚けたままの頭で首を捻る。
……そして、すべてを思い出した日本は青ざめた。
「た、台湾さんッ!!」
隣ですぴすぴと寝息を立てている台湾の肩を揺さぶり、無理やりに起こす。
「ん……怎公了?」
「ね、寝ちゃいましたよ私たち!!原稿が……!」
「!!」
一瞬で覚醒した台湾が、壁にかかった時計を見る。既に締め切りの時間を過ぎているどころか、
無情にも日付すら変わり、おはようと言うにも遅すぎる時間に差し掛かっていた。
「原稿……落とさせてしまいましたね……」
呆然とした日本が、ポツリと呟いた。
台湾が入稿する予定でいたのは、そこそこ安値で品質も良く、初心者が本を刷るならそこだろうと
日本が紹介した日本の印刷会社だった。そして締め切りも、競合会社の中では2日ほど遅かったのだ。
まして年に2回の大型イベントの前、外道入稿がまかり通るはずもない。
日本はがっくりと肩を落とした。
自分の自制心が足りないせいで、手伝うと大口叩いておいてこの有様だ。台湾に向けられる顔がない。
もう切腹するしかないんじゃないかなーなどと考えながら項垂れていると、
難しい顔をしていた台湾が弾かれたように顔を上げた。
「もしかしたら、なんとかなるかも」
「……なりませんよ、コピー本作りましょう。自制できなかった私の責任ですし私が」
「いいえ、なると思います」


「……え?」
「こっちの印刷所に頼んだら、OK出るかも知れません」
シーツを羽織った台湾はぱらぱらと電話帳を繰ると、どこかへ電話をかけ始めた。
「そんなこと、ありうるんですか……?」
日本の感覚では、こんな時期に予約もなしに入稿を受け付けてくれる印刷所など皆無なのだ。
「はい。前にイベントで隣になった方と話して、印刷所って結構うちの方では
無茶が利くって教えてもらっ……あ、出た。ロ畏?」
会話を横で聞いていた日本は、電話を切った台湾が笑顔でVサインするのを信じられない気持ちで見つめた。

「OKです。明日だって大丈夫なのに、なんでそんなに焦ってるの?って言われちゃいました」
「……私が来なかった方が良かったかもしれませんね」
自分がいなくても、台湾ひとりでも、この状況を乗り越えることが出来たのではないか。
結局、自分は邪魔しかしてないのではないか。そんな気がしてならない日本は、自嘲気味にうすく笑った。
「そんなことありません!」
台湾が、日本の肩をがっしと掴む。
「私だったらきっとトーンに手間取って、明日になんて完成出来たかどうかわかりません。
時間がなくなればなくなるほど切羽詰って、冷静に原稿が進んだかどうかだって怪しいです。
日本さんが仕上げしてくれたからこんなに早くできたんだし、日本さんがいてくれて、励ましてくれたから、
原稿上げれたんです……それに」
半分泣きそうになりながら、裸の日本の背中に、ぎゅうと手を回す。
「こうして私たちが通じたのも、日本さんが来てくれたからじゃないですか……
それもなかった方が良かったって、そう思うんですか!?」
「違います!」
不穏な方向に飛んだ話に、日本が慌てて否定する。
「そのことについては、喜ばしいことだと思ってます。そこは信じてください……ただ、」
「ただ?」
「もっと素敵なムードで、だったら良かったなあ。とは思ってますけどね」
抱き返す日本の腕は、力強い。
「えへへ、そうですね」
ぎゅうっと負けないくらいに強く抱き締めてから、台湾は日本から身体を離し立ち上がった。
本当はもっとくっついて、甘い雰囲気に酔っていたい。
いたいけど、でも、今はやらなければならないことがある。
「台湾さん?」
「ごはん、作り直してきますね。おなかすいちゃった……食べてもうひとがんばり、しましょう」
「え!?」
台湾は言うなり台所へと去っていった。ことばの意味を違えて受け取った日本は大いに動揺したが、
すぐにそれが勘違いであると思い至る。
目の前のパソコンと、周辺機器。その中に入っているのは、残すところ僅かとなった原稿のデータだ。
「……そうですよね、ええ、そうでしょうとも」
うつろな目でふふ、と笑いながら、スリープ状態になっていたパソコンを立ち上げた。

「……はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
テーブルの上に置かれたお皿の上は、またしてもおにぎりだ。こういう状況だから仕方ないが、
落ち着いたらもっと違う料理も食べてみたい、と日本は思う。実作業は残すところほんの僅か。
あとはデータの圧縮とディスクの作成、そして万が一のためのプリント出力だけだ。
「ねえ、日本さん」
「はい?」
「今度日本さんがピンチの時は、呼んでくださいね。できることは手伝いますし、ごはんも作りますから」
「ふふ、助かります。ぜひお願いしますね」
「はい!」


元気な返事に顔をほころばせた日本は、モニタを見ながらおにぎりをむしゃむしゃと頬張り、
そしてふと気づいた。
(そういえば、フィンランドさんに言ったアレ、叶いましたね)
今回の原稿は落とすことになったものの、アシスタント(兼、恋人)を得ることができたことは
紛れもない現実だ。
「ありがとうございます、サンタさん」
「え、なんですか?」
小声で呟いたのを聞き止めた台湾が、小首を傾げる。
「なんでもありませんよ。じきに終わりますから、完成したら一緒に入稿に行きましょう。
こちらには久し振りに来ましたし、ついでに街に出て観光するのも悪くないですね。
台湾さん、案内していただけますか?」
日本が台湾に微笑みかけると、台湾の頬がぽんと染まる。
「それって、デート……?」
「いけませんか?」
「いえ!真的真的好高興!」
台湾が感極まって抱きついた衝撃で、日本と彼のペンタブが描く線が同時にくらりと揺れた。
「我愛イ尓、阿兄!」

頬に触れる台湾の唇の感触をくすぐったく思いながら、日本はその耳に、確かに小さな鈴の音を聞いた。



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