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 日湾玩具

【メインCP】日×台
【傾向】下世話   と純愛   でちょい鬼畜。
【その他】長いです。前後にわけますが前半エロなしです。


「日本さーん。ネット通販して良いデスカ〜?自分のカード使いますカラ!」
パソコンを前にして台湾が、縁側で愛犬のブラッシングに勤しんでいる日本に
声をかける。彼女は日本の家に連日泊まり込みで遊びに来ているのだ。
「…構いませんけど…。何を買うんですか?」
彼女は泊まり込みに来ているわけで、荷物の受け取りもここに指定する
つもりなのだろう。日本は愛犬から顔をあげて、ちょっと振り返って彼女を見やった。
「えーっと……。ふふ、ちょっと、デス…」
ごまかすようなそんな笑い。まあ、またハードなBL本でも買うのだろう。
日本はふっと小さく苦笑いして、深く追求はしない事にした。膝の上の愛犬が、
大人しく丸まっている。またブラッシングを再開すると、
愛犬は気持ちよさそうに瞳を閉じた。

それから数日後。
「こんちわー。お届け物でーす!」
門の外から宅配便業者がやってきて、日本ははんこを持って玄関から
門までの道のりを急ぐ。
「ご苦労様です」
受領証にポンとはんこを押して、日本は少し大きめでやけに殺風景な
無地の軽い箱を受け取った。中身は何かと考えて、そういえば、
以前新発売されるオモチャを予約したのだと思い出す。
クッキングトイは前からあったが、最近また流行りだしたそうだ。
手軽に割と本格的で、それでいて少量しか作れないというのは、
むしろ昨今のニーズに合っていると言えるのではないか。
普段一人暮らしである彼も、料理やお菓子を本格的に作るのは
好きだが大量には必要ないのだ。作りすぎて困った事も一度ではないし。
ちょうど台湾も遊びに来ている事だし、これで遊ぶのも面白いだろうし、
そもそも美味しいものは大好きだ。
新しいものは好きだし、楽しそうだしと、うきうきとした足取りで、
日本は玄関に戻る。
「台湾さーん」
居間にいる台湾に声をかけ、日本はつっかけを脱いで屋敷へと上がった。
居間を仕切るふすまから台湾が顔を出して、こちらに向かって歩いてくる彼に声をかける。
「ナンデスカ?」
「前に予約したものが届いたんです。ちょっと遊んでみませんか?」
子供のように無邪気な笑顔で微笑んで、日本は箱を手に居間へと入った。
「遊ぶって……ゲームかナンかデスカ?」
「玩具ですよ。子供向けのお菓子とか作る玩具です。値段の割には本格的なんですよ。
もっとも、作れる量もたかがしれてると言えばそうなんですが…」
「……?あの、日本さん、それ…もしかして……」
「お餅を作るオモチャですよ。前作が好評だったそうで、第二弾だそうですから、
また改良されて作られていると思いますよ」
ふと、台湾が箱の違和感に気付く。日本は自分が予約した玩具だと信じて疑わず、
宅配便の伝票もよくよく確認しないで箱を開け始めた。一人暮らしなので、
宛先の名前まで確認するクセがついていなかったのもあっただろう。
「アノ!それもしかしテ、私が注文しっ…」
台湾が気付いて声をあげた時は既に遅く、日本はその箱のフタを開けた後であった。
「……え……?」
彼が期待していた、子供向けに可愛らしく印刷されたオモチャの箱などではなく、
けばけばしい色で印刷され卑猥な文字が並ぶ直方体の箱や、ビニール袋に包まれた
男性性器を模したそこだけの部分のもの、大きめの真珠のようなモノが数珠
つなぎになったものなど、いわゆる大人のオモチャの数々が箱に入っていた。
「……は?」
箱を持った時点で気づけよとか思いたくなるが、割と思い込むと事実をねじ曲げてでも
それを信じたくなる時は誰しもある事かもしれない。先程までの日本の状態が
それであった。
そのクッキングトイならもうちょっと重量あるだろうとか、箱の中で物が
ちゃがちゃと動きすぎだろうとかあるものだが、そんな事実は彼が思い浮かべる
これからの楽しさや嬉しさで綺麗に払拭されてしまっていた。
台湾は思わず両手で顔を覆う。
「えっ…、ちょっ……なに……、これ……台湾さん!?」
衝撃から呆然となり、それが若干回復されると、箱を開ける前に叫んだ彼女の
言葉を思い出して、顔を覆う台湾に顔を勢いよく向けた。
「ごっ……ゴメンナサイ!えとっそれっ……あー……その……ワタシガ
チュウモンシマシタ……」
「どうして!?」
未だ少し現実を受け入れられないようで、というか実はそのクッキングトイを
かなり楽しみにしていたらしく、そのショックから抜けられず彼にしては
珍しく大きな声を出す。
「あーっと……。……その……資料に……しようかなテ……」
「何の!?」
「そ…その……どーじんしの……」
観念して、台湾は情けなさそうな顔でうなだれて答えた。
「やおいですか」
「そデス……」
胸の前で人差し指どうしと突っつき合わせて、もじもじと返答する。
「…いや…だって、……そのホラ!とある同人誌デ、男のヒトのアレが上下逆に
描かれたとか聞くと、ちゃんと調べなきゃトカ!」
「どっからそういう情報仕入れるんですか!?いやそれより、あなたそもそも
実物知ってるでしょうが」
「え…まあ…。……その、知ってるのと、チョト違うのも不思議で……」
思わず台湾は日本の股間に視線を移動させ、それに気付いた日本がその視線を
遮るように台湾の前に顔を覗かせて睨み着けた。
「か、仮性包茎は別にフツーであって……!」
「…かせーほー…、え……?ナンですカ、ソレ?」
「っ!!!」
このカマトト娘が!とか思っても口にしないのが日本である。
腹の中で叫んだ言葉を飲み込んで、拳を握り締めたまま彼は黙りこくった。
本当に知らないのかどうか、それを計る事はできないが、説明する気になどなれない。
「……えと…………あの……日本…さん……?」
いきなり黙り込んでしまった日本に、台湾はおずおずと彼の顔をのぞき込む。
普段から穏やかで穏和で、怒らせるのが難しいと言われる彼であっても、
怒る時は怒るのだ。
「え、えとその、だ、ダカラ、ホラ、オモチャだし、本物とはカタチも大
きさも違うテノはわかテますデスヨ!ただ、ソノ、マンガに描かれてルノ
みんなオモチャの方だから、そっちに合わせた方が良いカナと思タンです!」
怒らせてしまったかもと台湾は思わず言い訳になってない言い訳を言い募り、
日本にさらに精神的ダメージを与えていく。男性性器を模した玩具が、
資料として良かろうと特大サイズを指定したのもまたさらに追い打ちをかけていた
「………………」
「だから……あの……え〜……日本さん……」
うんともすんとも答えない日本に、台湾は伺うようにうつむく彼の表情を
のぞき込もうとするが、光の加減のせいで見る事はできなかった。
「あの……アノ……えと……ゴメンナサイです……」
ともかく、色々と大目に見てくれる彼に甘えていた事は確かである。
ハードBLをここへ指定して買う事も十分失礼である事はわかっていたわけで、
台湾は頭を下げて日本に向かって謝った。
「……………………」
しばらく無反応だった日本は、深く長いため息をつきながら、
ようやっとうつむいていた顔を上げた。
「アノ……」
彼は無言で大人の玩具が入った数々の箱の蓋をしめて、そっと台湾の方へ差し出す。
「…………あなたの買ったものですから。私が横からどうこう言うのは
おかしな話です。すみませんでしたね、勘違いして勝手に開けてしまいました」
心なしか声が暗い気もするが、表情はいつもの無表情さを取り戻していた。
台湾にとっては、むしろそれが不気味だったわけだが。
「えと…アノ……」
箱を差し出され、素直に受け取れないまままごまごしていると、
日本は無言ですっくと立ち上がり、すたすたと歩いて行ってしまう。
「あの、日本さん……どこへ…?」
「ポチくんの散歩ですよ。ついでに買い物をしてきますから。お留守番をお願いしますね」
「え……あ……ハイ……」
いつもと変わらぬ表情や声だろうのに、言いしれぬ圧力を感じて、台湾は頷いた。
昨日なら、一緒に行くと言って散歩も買い物も彼の隣を歩いていたのに。
妙に言い出せない雰囲気を感じて、今度は台湾がうつむいた。

今回、台湾は多めに休みをとって、連日ここへ泊まり込みに来ているのに。
昼間、彼が仕事の時は買い物に行ったり遊びに行ったり、夜は夜で食事に行ったり、
彼が休みなら映画や観光など。時には日本の在宅の仕事を手伝ったりしているけれど。
一人暮らしの男の所に女の子が一人、連日泊まり込みである。
 台湾ももちろんソッチの目的も含めて彼の所へ遊びに来ていたのだ。
 最初の2、3日何もないのはまあそれもあるだろうと思っていたけれど。
泊まれる日数の残りが少なくなってくるにつれ、のんびり構えてなど
いられなくなってきた。
いや、途中からのんびり構えてなどおらず、彼女にしては果敢にアタックしたのである。
必要以上に寄り添うのは頻繁に行っていたし、恋愛映画のDVDを故意に選んで
鑑賞しても、お風呂に一緒に入ろうとも言った。隣に布団を並べて眠りたいとも言った。
しかし。
「いえ、むさくるしい爺の隣に寝る必要はありませんよ。お気遣いは無用です」
そのことごとくがスルーされるか断られたのだ。
もう宿泊日数は今日で終わる。今夜が最後で、明日には台湾も自宅へと
帰らねばならないのに。
夕飯の後片付けの後、台湾は日本に向かって彼の隣で眠らせてくれと頼んだけれど、
返ってきたのは先程の言葉だった。
「あっ…、あの!気を使テるんジャナクテ!そうじゃなくて!」
「お風呂を入れて来ますから」
その無表情な面にうっすらと笑顔を浮かべると、立ち上がって部屋を出て行ってしまう。
先日の大人の玩具の件で、日本を怒らせてしまったかもしれないとどこか
後ろめたい気持ちがあるのも確かだから、台湾もそう強く言い出せなかった。
DVD鑑賞やTVゲームも付き合ってくれるし、ご飯も美味しいものを出してくれる。
特にうるさい事を言ってくるわけでもない。それこそ、父親とか祖父のような、
そんな立ち位置で接しているようで、疎んじられている空気は感じないけれど。
どこかで頑然と台湾を拒んでいる気配は感じられた。
もしかしなくても、あの一件で彼を怒らせてしまったかもしれない。
しかし、あの事で謝ろうとしても、怒っていないと言われてしまうし、
あまりあの事をほじくり返すのもはばかられた。しかし怒っていないのなら、
何故あんなに楽しそうにしていたお餅を作るクッキングトイが届いても、
封を開けようとはしないのか。
台湾は深いため息をつく。
根は助平で変態の彼の事だから、もし、これを彼に見つけられてしまったら、
毎夜睡眠時間が削られるんじゃないかと、おかしな困り方をしながら、
インターネットの通販ボタンを押したものなのに。
もっとも、それは結局夢想に終わるだろうと、どこかで醒めた考えがあった。
彼は自分の領域に入ってきて欲しくないからこそ、他にもそれを適用させる。
だから、プライバシーを尊重してくれる。
台湾としては、もっと深い関係になるためにも、彼のその領域を打ち壊したいと
思っているが、ともかくそういう事で彼女の買った物に詮索などしないとわかっていた。
だから、そういう事にはならないだろうと予想していた。
しかし、また違う理由でこういう事になってしまうとは思ってもみなかった。
台湾なりに頑張って迫ってはいるが、彼女の手前、彼は口に出したりはしないが、
彼の女性の趣味は大和撫子で、積極的に迫ってくる女性はそんなに
趣味ではないのは知っている。
あまり開けっぴろげに迫れば逆に彼は引くだろう。
だから、わざと胸元の開いたシャツとか、足がよく見えるミニスカートとか
履いているのに。
なんかこっち見ないようにしてるし……。
もう一度、台湾はため息をつく。
なんだか泣けてきた。
怒らせるつもりはなかったのに。
他意はなかったつもりだけど。
むしろ直接怒ってくれれば謝るのに。
どうすれば良いのかわからない。
好きなのに。
こんなに好きなのに。
想いだけが空回りしているのが、痛感させられる。
滲んできた涙を拭った時、日本が居間に戻ってきた。
「お風呂が沸いたら、先に入ってくださいね」
客人という事で、台湾を先に入らせてくれる配慮だろうが、そのある意味他人行儀な
態度が悲しくなってくる。自分達はもっと親しい仲ではないのだろうかと思いたいのに。
決して脈がないわけじゃないはずなのに。どこかでこんがらがった糸があり、
それをほどかなくてはきっとお互いヘンなしこりを残したままになる。
とにかく、どこかに解決の糸口を見つけたい。
台湾はいつものように明るい調子で、精一杯の笑顔を彼に向けた。
「あの!日本さん!ワタシ、あなたと一緒にお風呂に入りタイデス!」
「駄目ですよ。年頃のお嬢さんがこんな爺と一緒にお風呂だなんて」
しかし、それもあっさり断られた。
日本の言っている事は、一般常識で考えれば道理なのである。
特別な関係の男女でなければ一緒にお風呂など普通は言語道断であろう。
「あまり、冗談を言って困らせないでください」
その少し困った笑顔が、台湾の心をえぐった。
それなら、彼と自分はどういった関係だというのだ。
恋人同士だというなら、歳の差が激しいだろう、などと彼は言い出すのか。
いや実際、過去に言われたような気がする。
けれど。
じゃあ、この気持ちは。
「っ……!」
「えっ!?」
突然、大粒の涙をぼろぼろこぼし始めた台湾に、日本が動揺する。
「ど、どうしたんですか!?」
どうしたも、こうしたもないのに。
「台湾さん!?」
日本は慌てて彼女に駆け寄って、心配そうな顔でのぞき込んできた。
「あの……」
その彼の顔を眺めながら、台湾はぼろぼろと涙をこぼし続ける。
涙で歪む視界の中の彼が、それでも愛しかった。
ひたすら困った顔で、台湾の顔をのぞきこみ彼女に手を伸ばそうとして、躊躇する。
彼女に触れる事に、自分で禁じているかのように伸ばした手の動きが淀んだ。
彼はわずかに視線をそらして黙考して、そして意を決したように台湾の背中を撫でた。
「どこか……痛い所でも……?」
腹痛でもおこして泣いたとでも思っているのだろうか。
優しく台湾の背中を撫でて、顔をのぞき込んでくる。
「……なにか……悲しい事でも……?」
自分に原因があるとまるでわかっていないセリフで、台湾の背中を優しく撫でる。
まぶたを閉じても、涙は次から次へとこぼれ落ちた。
「うっ……。……っく……うわあああああん、ふええええええん」
悲しくて情けなくて、台湾は幼い子供のように声をあげて泣き出した。
自分で引き起こした事がわかっているから、行き場のない感情が爆発する。
「あ、あああー、あああーもうー……」
声をあげて泣く台湾に合わせるかのように、日本が困った声をあげた。
泣きじゃくる子供相手を前にして、こぼすような声だ。
「あああもうー…。はいはいはい、よしよしよし」
そう言って、彼は台湾を自分の胸の中に抱きこんで、背中をゆるく叩いてやる。
子供扱いするなと言いたくなったけど、彼の腕の中は気持ち良くて、
抱きしめてくれた事は嬉しくて、彼の胸にすがって今までの鬱憤を
晴らすかのように泣きじゃくった。
「ううっ、うええぇぇええ〜ん、ふえええええぇぇん、うわあああああん」
「よしよし、よしよし」
あやすように、なだめるように。台湾の頭と背中を優しく撫でて、
包むように抱きしめてやる。
それは、昔の記憶だった。
彼女が今の名前とは違う名前で日本から呼ばれていて、一緒にいた時代。
厳しかったし、理不尽な事もあったけど。本当に困った時は助けてくれた。
自分ではどうしようもなくてひたすら泣きじゃくる自分を、こうやって慰めてくれた。
あの時の台湾は、幼い少女の姿をしていたけれど。
「よしよし…」
昔は大きく感じた手のひらだけど、優しく撫でる手つきは変わらないように思えた。
ああ、気持ちが良い。
胸にすがって、背中に手を回してしがみついて、腕の中に包まれて。
ひとしきり泣いて気持ちが落ち着いてくると、あとはただこの体勢が気持ち良かった。
「……落ち着きましたか……?」
頭の上から降ってくる穏やかな声に、胸に頬をくっつけながら、台湾はこくんと頷く。
「………もう少し、こうしていますか…?」
随分落ち着いてきた台湾だが、ここですぐに彼女を解放するのは落ち着かなかろうと、
日本はそう声をかけた。その優しい声に、頬を少し赤らめながら、台湾はもう一度頷く。
どれくらいそうしていたか、居間に風呂がわいた事を知らせる音声が、鳴り響いた。
「……台湾さん……。お風呂がわきましたよ…。入ってきてはどうですか?
ここでこうしているより、ずっと落ち着くと思いますよ…?」
そう声をかけてくる日本の声は優しくて、他意はないのが感じられる。
けれど、今の台湾にとってはこっちの方がずっと落ち着くのだ。
「…ヤです……」
「………………」
拗ねたような台湾の声に、日本がため息を吐き出す。
「……ねえ、日本さん……」
「はい、なんですか…?」
寄せた胸に頬ずりしながら、台湾が甘えた声をあげると、日本も優しい声で返事をする。
「抱いてクダサイ……」
「…………え?」
それは、まったく予期していない言葉だったようで、彼は間抜けた声をあげた。
「ダカラ……。セックスしてください…」
「……………はい?」
今度は聞き間違いと思ったのだろうか。びっくりした顔のまま、小首をかしげる。
「………………」
お互いに見やったまま、沈黙の時間だけが過ぎていった。
「……いや……、年寄りをからかっちゃいけません」
しかし、台湾は冗談を言ったのだと内心で片付けたのか、
日本は困った顔でそう言うと、彼女は口をとがらせる。
「からかってナイデス。本当デス」
「はいはい。有り難うございます」
本当にそう思っているのに、これでは、幼児が大人に向かって結婚するとでも
言っているような状態ではないか。ただ好きというだけで、ありえない事を
口走る幼児のような。そんな事はないはずなのに、そうとしか受け取って
もらえないのか。落ち着いたはずの気持ちはまた急に苛立ち始める。
「だから、冗談じゃナイデス。本気デス!子供扱いしないでクダサイ!」
さっきまで子供のような態度をとっていたのも忘れて、台湾はそう日本に詰め寄った。
「いやだって、そんな……私と貴方では……」
「釣り合わないデスカ!ワタシでは駄目デスカ!ワタシは……
女としてダメなんデスカ!」
女として魅力がないと暗に言われたようで、瞬間的に沸騰した台湾はまなじりを
釣り上げてヒステリックに叫んだ。
「そんな事は……」
「最初に、最初にワタシを抱いたのはアナタじゃないデスカ!」
あの時代。嫌がる彼女を、大人になる前の彼女に手を出したのは日本の方。
それを忘れたかのような日本の態度にはムカついたのは確かだ。
ただ、今ではそれを気にして、自らは手を出してこないのは知っている。
手を出さないから良いじゃなくて。そうじゃなくて。無理強いじゃなくて。
気持ちが通じ合えば、お互いに求め合えば、とても気持ち良いものだから。
だから。
あんなに求め合った夜もあったじゃないかと。
あれは無かった事にするのかと。
それを否定された気分になった台湾はまた爆発した。さっきのとは違う方向で、
激しい怒りと悲しみで。
「もう嫌になたんデスカ!飽きたんデスカ!前は子供が良くテ今は
子供が嫌なんデスカ!だから、だから抱く気もおきないんデスカ!」
落ち着いたはずの涙がまだ噴き出してき、台湾は泣き叫ぶ。どうして手を出して
こないのか。先日の件は実は大した事ではなくて、もっと根本的な何かが、
台湾には致命的に足りない何かがあるから抱いてくれないのかと。
この気持ちはひたすら一方的だったのだと。
こちらは男として見ているのに、あちらは子供として見ていなかっただけなんだと。
「ちょ、そんな事……」
日本が何か言おうとしているが、それを聞けるような精神状態ではない。
「ワタシ、ワタシはあなたが好きデス!大好きデス!何度でも言いマス!
大好きデス!でも、あなたは子供だからと相手にシテくれないテ、
ワタシはどうすれば良いんデスカ!」
「台湾さん、と、とにかく、とにかく落ち着いてください」
爆発して泣き叫ぶ台湾に、日本は彼女の両肩に手をおいて、
どうにかなだめようとするが、そんな事では止まらなかった。
「ワタシがどんな思いデ、ここに来てるかワカリます!?あなたと一緒に過ごしたくテ、
頑張ってこんなにたくさんお休みとったノニ!お洒落な服着ても、
見向きもされないジャ、ワタシは女として全然ダメじゃないデスカ!」
「とにかく落ち着いてください、台湾さん!」
「あなたにとってワタシとの付き合いは子守だたんデスカ!
近所の子供の相手だたんデスカ!」
「なにを言って……」
「もう明日にはワタシここから帰らないとイケナイノニ!
すごく頑張ってお洒落したノニ!もの凄く楽しみにしてたノニ!
あなたとたくさんたくさん過ごしたかたノニぃっ!」
「台湾っ!」
「っ…!」
拉致があかないと判断した日本は、鋭い声で呼びつけると、
我に帰った彼女は一瞬息を飲む。
「……とにかく落ち着きなさい。これじゃ話もできません」
最近ではとみに聞けなくなった、彼の命令口調。幼少時の刷り込みとでも言うべきか、
こうなると台湾は彼に逆らえなくなる。
やっと大人しくなった台湾を見て、それから日本は肩の力を抜くと一緒に息を吐き出した。
「……どこから話せば良いものやら…ですが……」
困惑したようにそう言って、日本は腕をのばすと袖で台湾の涙を優しくぬぐってやる。
「……正直……からかわれているのは私の方だと思っていたんですけどね……」
そう言いながら、彼は顔全体にほろ苦い笑顔を浮かべた。
「……?」
「…あなたは若い女性ですが、こちらは腰痛も持っている年寄りです。
そういった場合、普通に考えれば女性の方から好意を寄せられる事など
普通ありません。せいぜいお金目当てが関の山といったところでしょう」
そんな事などないと言いたかったが、口を挟める雰囲気ではなくて、
台湾は言いかけた言葉を飲み込む。とはいえ、彼の言う事が一般的に言えば
間違いではないところが、もどかしい。
「ただ、逆の場合の、年寄りが一方的に若い女性を求めるのはある話です。
……過去、私はそれをしたわけで、自省しなければと戒めていました。それに、
その、先日あなたがああいうのを購入したのを偶然にも目の前で見せられて、
馬鹿にされたように感じたのも確かです」
「……それは、ゴメンナサイデス!あれはワタシ悪かったと……!」
先日の件が出てきたので、台湾は急いで謝った。やっぱり彼は怒っていたのだ。
しかし、謝る台湾を日本は軽く手で制する。
「いいんですよ。私も大人げなかったのですから。今までのあなたのアピール
とでも言うんでしょうか。露出が高くて目のやり場に困る衣服も、
隣で寝ようと仰る事も、あなたが私をからかっているのだと思っていました。
もしくは、若い子特有の、特に他意なくやっている事なのかと。
ここで、私が調子に乗っては阿呆が見る何とやらになると。思っていましたから」
つまり、彼は例の一件で馬鹿にされていると思い、その上でアピールしてくる
台湾にからかわれていると、思っていたと。
「………………」
そういった気持ちはまったく無かった台湾だが、せっせと火に油を注ぐような事を
していたのだと思うと、少し薄ら寒いものが背中に走る。
「あなたの気持ちも知らずに、私も意地を張りました。すみません。
随分あなたを追い詰めてしまったようですね……」
優しくそう言って、彼女の涙で濡れた頬を優しく撫でた。
しかし、撫でた先からまた次々と涙がこぼれ落ちてくる。
「泣かないでください……すごく……困ります……」
苦笑いを浮かべながら、日本はあふれ出る涙を何度も拭いてやる。
そのうち、台湾は日本の顔を両手で掴まえるとおもむろに顔を寄せた。







唇を何度も何度も重ね合わせて、それから吸い付いて、ゆるんだ顎を開かせて
口内へ強引に舌をねじ込む。ちょっと及び腰気味の彼の頭を掴まえて口内の舌を
追いかけていると、やがて観念したようで、逃げずに舌を絡ませてくれるようになった。
ひたすら愛しい想いをぶつけるままに彼の口内を貪り、息苦しくなって唇を離しても、
またすぐに食らいつく有様で、日本はまごつく様子を見せながらも、
彼女の想いを何とか受け止める。
やがて口づけだけでは飽きたらず、もっと身を寄せるべく彼の膝の上に座った。
「あ、あの……」
「…重タイデスか…?」
日本が何か言いたそうなので、台湾は唇を離し、鼻がくっつきそうな程の至近距離で、
彼を見下ろす。
「いえ…それはありませんが……。本当に良いんですか…?」
「ナニがデスか?」
今度は鼻先にキスをして、頬、額にとまた唇を落とした。
彼女の様子は、なにかに暴走気味で、瞳に宿る光がなんだか怪しい。
「……私が相手で……」
「イイんデス!」
きっぱり言い切って、また唇を奪い、力一杯抱きしめた。細身ながらも筋肉が
みっしりついた体つきが服を通しても感じられて、それが嬉しくてなんだか昂揚してくる。
背中の両腕だけでなく、脚も腰に絡みつけて下腹部を押しつけると、
そこでお互いの股間が密着している事に気付いた。
既にそれに気付いたらしい日本がむず痒そうに身体をよじらせたが、
台湾は彼を逃がすまいとばかりに、腕も足も使ってさらに身体を密着させる。
「…ん……ちょ……んはっ……、ま……」
何か言おうとする言葉を唇や舌で封じ込んで、背中をかき抱き、腰を擦り合わせた。
愛しくて愛しくて、その感情をただひたすら直球で彼にぶつけ続けた。
「……ふ……んんっ……ん……」
むず痒そうに眉をしかめ、台湾の愛情を受け続けた日本に変化が訪れる。
台湾の猛攻に戸惑い気味に泳いでいた手は、彼女の腰に乗りやがて丸いお尻を
あやしい手つきで撫で始める。
「…………ん……」
それに気付いて、台湾はようやっと唇を離し、少し下にある日本の瞳で見つめた。
その瞳は、先程の穏やかな彼のものとはどこか違っている。
色々腹にとどめて考え込む男の眼ではなく、もっと直情的で野性的なものだ。
「……明日は、お互い腰が立たなくなるかもしれませんね…」
「え…?」
さらりと恐ろしい事を言いながら、今度は日本の方が台湾の唇を奪う。
優しく抱いてくれた先程のものとは違い、えらく情熱的で、そして助平だった。
「んっ……ふぅっ……んんっ……」
片方の手で胸をまさぐり、もう片方の手で尻を撫でくりまわす。
重なり合う彼の股間が熱く硬くなり始めている。
唇が離れると、自分の膝の上に乗る台湾のシャツのすそをつかみ、
ブラが見えるくらいまでめくり上げた。
「…あっ……」
そのブラもまた上へずらし、カタチの良い乳房がぷるんと揺れ出ると、
早速それにかぶりつく。
「……はっ……ふう……はあっ……」
台湾の息が上がり始めたのは、胸にしゃぶりつかれているからだけではない。
ミニスカートの中のパンツの隙間に、指を差し入れているのもある。
彼女は授乳でもするかのように、自分の胸に吸い付く彼の頭を撫で、
髪の毛を優しく梳いた。
「台湾…。そっちの机に……身体を……」
「え…?」
乳房から口を離し、顎で指し示す先に、少し大きめの座卓がある。
ここから少し距離があるが、台湾は日本に言われる通り、その机の方に
四つん這いで歩くとそこに腰掛けた。
そして、後から日本がやって来ると言われないなくても、
脚を大きく広げて彼を出迎える。
「はあっ…!」
日本は無言のまま近づいて、その開かれた脚の中央に指を這わせて、
下着の上から割れ目をゆっくりと擦った。
「……すみませんね……。随分溜めてらしたようですね……」
「はあ、はあ…」
ちょっと触っただけで濡れ出すほどで、台湾の欲求不満がたまっている事は
見てとれる。指を布の隙間に差し入れて、横にずらすと充血したそこは
泉を溢れんばかりに湛えていた。
そこへ指を2本差し入れて、軽く掻きだしただけだというのに、
次から次へと溢れ出す。
「…おやおや……。ちょっと触っただけなんですけど……」
「ふっ……は……、だ……だって……」
「そうですね。じゃあ、コレは取っ払ってもらいますか…」
ゆるく頷いてから、日本はミニスカートの中のパンツに手をかけてするりと
ずり降ろして取っ払ってしまうと、露わになったそこへ再度指を差し入れた。
「あ…、あ…、あ……」
彼はどうすれば良いのかすべてわかっている手つきで指を動かし、
そのたびに蜜はあふれ出し、台湾の身体は見る間に火照りだす。
「あっ、あ〜っ…、あっんっ…、はあぁっ…!」
口を大きく開け、舌をだらしなく見せて、台湾は余裕のない吐息を吐き出す。
欲求不満が溜まっていた事もあるが、日本の器用な指の動きには抗えない。
そもそも彼女の身体の性感帯を開発しまくったのは、その日本なのだ。
かなうはずがない。
「あっ、ああっ、はあっ…、ふああっ…、はああっ!」
我慢ならないように息を吐き出して、台湾の身体が震えて、
指が入っていたにも関わらず液体が勢いよく噴き出される。
指だけでイカされてしまった。
「はっ…、はっ、はあっ、はあっ…」
肩で息をして、日本の頭を呆然と眺める。本当にただ眺めているだけで、
何も考えが浮かばない。ただ、とても気持ち良かった、それだけだ。
「…良いようですね……。台湾、身体を裏返して、そう、机に手をついて、
寝そべる感じで結構ですよ」
台湾の様子を満足そうに眺めて、日本はそう促す。言われて、
彼女はいったん頷いて、暑くてたまらないといったふうに、
シャツをさっと脱ぎ捨ててから、やや緩慢とした動作で机の上に乗せた腰をあげた。
それから、彼女は上半身を机の上へうつ伏せると、桃色の尻が突き出るような、
そんな格好になる。
「…そういえば、あなたが購入した玩具がありましたよね。
後でそれを使いましょうか」
平然とした様子で言い、剥き出しになった秘所に指をあてがうと、
また弄くっている。
「あっ!あっ…、あのっ…、あ、あれは本当にっ…、資料、用…で、
本当に……使う……つもりは……」
「あんなにお買いになったのに?」
「ほ……本当っ…、で……す……。…だ、だって……あんなの…
…使う…つもり……」
そういえばと、日本はあの時に見た大人の玩具の数々を思い出してみた。
確かにアナルセックス系で使うラインナップがあったような気がする。
まあ、どっちにでも使えるものがほとんどだったのではと記憶しているが。
「使ってみましょう」
「えっ、えええっ!?」
随分あっさりと日本が言うものだから、台湾は思わず青ざめる。
「昔、ここはちゃんと仕込みましたよね?忘れたというなら、思い出させるまでですが」
言って、彼はびしょ濡れになった親指で、いじくっていた穴より上に
位置するもう一つの穴をぐっと押した。
「あああっ!」
たまらなくなって、台湾は机の上に突っ伏して声をあげる。
「あっ!あっ!あっ!あっ…、や、ヤ、デスぅ!それ、ヤですっ!」
両方の穴を指で刺激されて喘ぎながら、台湾はかぶりを振った。
「おや、どうしてですか?」
「だ…だって……、あ、アレ、あんなの……入れる…なんテ。
そ…それに……そっち……随分…やってなっ……」
「…でしたら。思い出せば良いだけの事です。…こちらは私も久しぶりですけど……」
「あっ、あうんっ、やああっ!」
そう言いながら、指を器用に動かして両方の穴を責め立てると、
彼女は随分と愛らしい鳴き声を上げる。こんなでは今の日本を止めるのは
甚だ無理というものだろう。
しかし、この台湾の様子で、彼女は本当に本気で他意がなかったのだと、
日本もようやくわかった。そして、自分以外の男を知らなかったという事も。
ハードなBLマンガを好んでいるし、過去、かなり仕込んだから知っているだろうと
思い込んでいたけれど。
これが罪滅ぼしになるかなどわからないが、存分に愛する事で良いと言うなら、
願ったり叶ったりか。
「本当にあなたは可愛いですね…」
日本は静かにそう言って、入れていた指を引き抜くと、自分の帯に手をかけて、
しゅるしゅると帯を解き、着物を脱いでいく。
家では和服を愛用しているので、自然褌を締める事が多い。その褌の紐を
ゆるめて外すと、中から現れたモノを軽くシゴいて準備する。
先日の件で騒ぎ(?)になるほど粗末な事はなく、日本人特有の膨張率と
硬さで彼が傷つく事もないようだが、最近自分に自信が持てなくなっている
彼の精神的な所もあったのかもしれない。
机の上に突っ伏した状態の彼女の背後に膝で立ち、固くなったソレを
蜜であふれる秘所にあてがうと、もうそれだけで彼女の身体は反応した。
「ハァ、ハァ、ハァ、んっ…あっ…!」
早く入れてくれとばかりに、腰を押しつけてきたので、それに応じて
日本も彼女の腰をつかむと、ゆっくりと埋没させていった。
「あ、あああぅっ…」
身体をビクつかせて反応し、入れられただけで締め付けてくるほど、
彼女の身体は相当敏感になっている。
「………ん……、ふう……」
中は、キツくて瑞々しくて、柔らかくて絡みつくようで、その感触に日本は
ため息を漏らした。肌はきめ細かく、手に吸い付くようで触るだけでも燃えてくる。
早速、その中の感触を堪能する事にして、彼は彼女の腰を両手でつかむと、
まずはゆっくりと動き始めた。
「あっ、あっ…、あんっ…、はあっ、はあんっ…!」
待ち望んでいたこの感触に、台湾はわずかに顔を歪ませて微笑み、
歓喜の声を漏らす。昔は、嫌で嫌で仕方がなかったはずなのに、
自分も随分変わったものだと思う。
とはいえ、昔は昔で、今は今。この感覚は間違いなく快感で、ひどく気持ちが良い。
「ああっ、はあっ、はあっ、はあぁっ…」
最初ゆっくりだったのがだんだん激しくなっていき、彼女の喘ぐ声も
それにつられて強くなってくる。叩きつけられる肉の音が響き、身体が震えた。
愛らしく喘ぐ台湾にたまらなくなったようで、日本は彼女の背中に
覆い被さるように抱きついて、背中に、うなじに、耳の先にと口づけを落とす。
それに反応して、台湾は肘で上半身をもたげると、背後にいる
日本を見ようと顔を横に向けた。
「あ、あん……あ……」
机の胸の間に隙間ができると、早速そこに両手が忍び込まれて、
乳房が握られる。下半身は相変わらず責め立てられているし、
台湾の身体は良いように日本に貪られている。
それでも、背中にいる男が愛しくて、そこへ顔を向けようとした。
横へ向けた顔の頬に、男の唇が近づき、何度かキスしてもらうと、
彼女はくすぐったそうに目を細める。
お互いが向き合うようにして抱いてくれたら良いのに。
そしたら、抱きついて離さないのに。
もっとも、それを見越されているから背後から突いているのかもしれないけど。
「はぁ、はぁ、はぁ、あっ…、くぅっ…あっ…」
つなげた腰を押しつけるたびに彼女の身体が揺れ、その揺れる身体を
押さえるために、背後から腕を回して、抱き留めている。
その抱き留める両手は彼女の胸をつかみ、力むたびに手の中で形を変えていた。
「あぁっ、あぁっ…、はあぁっ、やあっ…、ああんっ」
鼻にかかる声をあげて、突かれるままに吐き出して、背後にいる男を感じて。
好きなだけ抱いてほしい。こちらも好きなだけ感じられるから。
ふと、胸から手が離れ、背中にある肌が遠のいた。もっと密着してくれて
良いのにと思っているとほどなくして、つなげられた腰の動きに変化があらわれる。
「あっ…、んんっ…、はっ…、あっ…、んっ、いっ…、いいっ…」
ゆっくりとかき混ぜるように動いて、中の気持ち良い所を一つずつ
確かめるように、中で蠢いている。
その動きで、日本は台湾の性感帯を確認しているらしかった。しばらく
そこで探って確かめると、彼女の腰をしっかりつかんで順番に責め立てていった。
「…確か…あなたはココが……お好きでしたよね」
「あっ、あぁっ、あぁっ!あーっ!」
正確にその位置を突いていくと、すぐに反応に表れる。歓喜の声をあげ、
彼女の上半身が身悶える。
「それからココ」
「あっ、あっ、あっ、あんっ、やっ、きゃっ!」
「覚えてるもんですね。ココもそうでしたでしょう」
「やっ、やぁっ、あーっ、ひああっ!」
腰を動かすたびに相当な量の蜜があふれ出し、声だけでなく、
そこからでも彼女の身体が歓んでいる事が見てとれる。身体は正直なものだ。
「後でオモチャを入れてあげます。ココも鍛え直しませんと」
「っ!!!」
そして、己の突起物を入れている穴の上に位置するもう一つの穴に指を
這わせると、彼女の身体が大きく震える。
「いやっ!イヤです!そ、そこはだっ…!やああっ!」
液体にまみれた指でねぷねぷとその穴を弄くると、突っ込んだモノを
締め付けてきて、日本はわずかに顔を歪ませた。
「良い反応じゃないですか?準備運動といきますか」
「……っっ!やっ、やめっ!いやあっ!」
そして、まずは指から。昔もこうやって調教した。
「ひあっ!ふあっ!やあっ!ああっ!」
「良いですね。こちらも良く締まって気持ち良いです。昔あれだけ
馴らしましたから、じきに思い出しますよ」
日本が恐ろしい事を言ってくるが、それが現実になりそうなのだから、
なお恐ろしい。現に、台湾はあの日々を思いだしつつある。
辛くて地獄のような日々だったはずなのに、気がつけば、一体何が
地獄であったのかわからなくなっていた。地獄も天国も自分の感覚次第と、
気付いたのは快楽を知ってから。
「あっ…ああっ…、ひああっ…!」
眠っていた何かが身体の中でまた目覚め始める。責め立てられて、
閉じていたつぼみはゆっくりと花開きはじめる。
「あああっ…、ふああっ…、ああああっ…」
悦びに身体が打ち震え、脳は淫楽の荒波に揉まれて、ただの獣に成り果てる。
「あっ、やああっ、あああっ、んっ、ふああっ、い、いいいっ…!!」
腰を打ち付け、指でもう一つの穴を弄くって、日本はもはや理性なき雌となった
台湾を見下ろした。情交に夢中になっている反面、どこか冷静な部分が
ある自分も認めている。
台湾は既に軽く何度かイッているし、ここで強く責め立てれば落ちるだろう。
自分はまだ持つようだが、ここで出しておかないと次のラウンドへは向かえまい。
それならば。
「っ…!あっ…!やっ、きゃあっ!あああっ!あああああっ!」
突然、打ち付けられるピッチが上がり、同時に菊座への刺激も増して、
台湾も髪の毛を振り乱して悶え出す。
さすがに疲れるようで、日本の顔にも汗が幾筋か落ちていく。
「やあああっ!あああっ!いっちゃ、やああっひやああああああっっ!」
乱れに乱れ、背中を弓ぞりに仰け反らせて、喉の奥から声を吐き出した。
「っぅっ…!」
入れたモノが激しい収縮にさらされて、日本もきゅっと眉を寄せる。
彼はその気持ちよさに抗わず、絞り出されるようなその窄まり感に身を
任せて我慢を放出した。
愛液にまみれた秘所は放出された白い液体を飲み込みきれず、
ずっぽり栓がしてあってもその隙間からもあふれ出る。
ほんの少しの間、その快楽の余韻を味わって時間が止まったかのように
動かなかったが、やがて息を吐き出すと共に、全身の力を抜いた。
「はあ……」
ぐったりと机の上に寝そべる彼女から、ゆっくりと液体まみれになったモノを
引き抜くと、またどろりと滴り落ちている。
日本もその場に腰をつくと、荒い呼吸を落ち着かせていた。

どれだけ休んだか、ようやっと落ち着いた台湾は汗やら涙やらを軽く
拭いてから、机の上から起き上がった。
「……はあ……」
振り返ると、はだけた着物一枚きりの日本が、うっすらとした優しい
微笑みを浮かべている。元気があったらその胸に飛び込みたいくらいだったが、
いかんせん疲労に負けた。
「……一緒にお風呂……入りますか?」
意味ありげな視線を含み、日本がそう言うと台湾も苦笑する。
「ハイ……」
そんな彼からの提案を拒むわけがなかろう。もう少し休んだら、
風呂に入る準備をせねばと考えた。
「……あ、でも……」
「はい?」
はだけた着物を直し、脱いだ上着やら褌やらを回収していた日本はその手を止める。
「あの…本当にあの、オモチャ……使うんデスか?」
それを聞いて、日本は一瞬きょとんとした顔をして、それから何か
含んだような笑顔を浮かべた。
「良いんじゃないですか?受けの気持ちを知る事によってあなたの作風に
また広がりが出るかもしれませんよ?」
「え?ええーっ!本気デスかぁ?」
「実際に使った事がなくて、間違った絵を描いてしまっても、ですか?」
「……そ、ソレハ……」
そりゃあそういうマンガはたくさん読んだし、そういったPCゲームも
やったから、まったく知らないわけではないけれど、実際に使った事が
ないのは確かなわけで、それを言われてしまうと何も反論できない。
「持って来てください。本来は二人で使うものが多数ですから」
「あ、あの、えと……」
「お茶を用意してきます。冷たいのを」
まごつく台湾を尻目に日本は立ち上がると、台所へと歩いていく。
「……………………はあぁーっっ…」
しばらくその背中を見送っていた台湾だが、見えなくなってだいぶ経ってから、
盛大なため息をはきだした。
まったく敵わない。
最初はこちらが指導権を持っていたはずだが、彼のスイッチが入ったら
ただひたすらなされるがままという結果だ。
ちょっと悔しい気もするが、まあそれはそれで良いのかもとかも思う。
なにより、誤解(?)が解けたのが一番ホッとした。あのまま彼を怒らせたまま、
何もないまま帰るとしたら、色々と悲しすぎる。
しかし……。
台湾はもう一度ため息をつく。あの玩具、本当に使う事になるなんて
思いもしなかった……。そりゃ本気でこっちが嫌がれば彼も無理強いして
こないだろうけど……。
ふっとあきらめのため息をついて、台湾は立ち上がる。
本当のところ、優しい彼は大好きで、けれど厳しい彼はもっと好きで。
あの声で命令されてしまったら、もうたまらない。もし、自分に犬の尻尾が
ついていたら、命令されるだけで尻尾を振りまくっているに違いない。
厳しく命令してほしいだなんて、今の彼に言ったらヘンな顔されそうだから、
言い出せないけれど。
「へ……ふへへ……、ふふふ……」
なんだか怪しい含み笑いをしながら、彼女はあの箱を取りに客間へと歩き出した。



「じゃあ、また遊びに来ますネ」
「はい。お待ちしていますよ」
空港まで車で送ってやり、台湾は自分の家へと帰っていく。彼女の笑顔は
笑顔だが、疲れた笑顔だったとか、目の下にクマが浮かんでいたとか、
腰が震えていたとか、それらは、気のせいではなかっただろう。声もかすれていたし。
まあ、あとは飛行機の中は座っているだけだし、空港からタクシーを
使えば彼女も自宅までそう歩く事もないはずだが。
日本も、昨晩は張り切りすぎて、腰がじんじんと響いている。
帰ったら間違いなく腰に湿布を貼り、マッサージ椅子の上からしばらく
動けないだろうと予想した。
「はぁーっ……」
台湾を見送り、自分の車の運転席につくと、エンジンを入れる前に
まずため息を吐き出す。
「…あんなに可愛すぎるなんて反則ですよー……」
ハンドルの上に頭を突っ伏してつぶやいた。
彼は、しばらくその姿勢のままだったが、やがて気を取り直したように
身を起こして車のエンジンをかける。
彼が運転する白色の車は動きだし、そして駐車場を後にした。

おしまい。



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