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13_597-613

 my dear bitch

【メインCP】 日台
【傾向】 台湾誘い受
【その他】
いちゃいちゃやっているだけですけど長めです。苦手な方は回避お願いします





「台湾……っ、駄目です、今はっ」

 困惑しているというよりは、そもそも何故こんな状況になっているのかすら分からない。
 つまり、混乱している。
 焦燥しきった声を上げて、日本は自分のシャツのボタンを次々外していく白い掌を掴んだ。少々強
い力だったがしかしその掌の持ち主である台湾は怯まない。
 上目遣いでさも当然と甘い声で問うて来る。

「駄目?駄目なんですか?嫌ですか?」

 遠慮がちながらも、目は確信犯の輝きを滲ませている。
 日本は、ぐ、と息を詰まらせた。困惑をしながらも、情けのないそこが徐々に反応しつつあるのは、
服越しにむっちりとした太ももを押し付けけてくる台湾には既に気づかれている事実であろう。

 何でこんなことに。目を白黒させて日本は状況を振り返るが―――わ、わからない。

 いや、実際はことの始まりなど説明するにも値しないほど単純である。倉庫代わりに使われている
らしい人気のない空き部屋。世界会議が終わった後、台湾に話があると手を引かれた。で、この部屋
に招き入れられたと思えば途端無造作に放置されたソファに突き飛ばされた。女の力ではあったが不
意をつかれればひとたまりもない。
 「うわ」、間抜けな声を上げながら埃まみれのそこに腰を突いてから、自分と同じ黒いスーツ姿の華
奢な体が乗りかかってくるのに、そう間はあいていなかったように思う。
 それから台湾の行動に迷いはない。きつく閉められていたはずの日本のネクタイを造作なく解いて
床に投げ、腰を下ろした日本の腰を挟み込むように太ももを大胆に開いて、彼の服を脱がしにかかり
そして今にいたる。

 そう、単純。単純且つ簡単だが―――難解だ。

「ちょ、台湾!」
「日本さん……ん、」

 しかし答えを知る唯一の少女はそれよりも日本をその気にさせるのに必死である。
 ぐいぐいと腰を日本のそれに押し付けてくるのはわざとだろうか。わざとだろうな。何でこんなこ
とになっているのだろうか……。混乱しつつも徐々に呼吸回数が増えてきた自分の精神力のふがいな
さに落胆しつつそんなことを考える。
 心臓がばくばくと耳元でうるさい。



「お願いです、今どうしてもしたいんです」
「……ホテルに帰ってからでは駄目なんですか。ここでは人が……」
「鍵、ちゃんとかけました。大丈夫です。嫌だったら日本さんは座ってるだけで良いんです。お願い」

 頬を赤らめ、どこか恍惚とした表情をした台湾が日本を見上げながらこうてくる。おねがい、繰り
返される蕩けるような響きに日本の心臓は鼓動を早めるばかりだ。何度しなだれかかれても、この子
に触れるのも触れられるのものはやっぱりまだ慣れないと日本は思う。自分のようなさえない、しか
もいくつもいくつも年上のような老体を、こんな可愛い娘が男として見ているという事実が、正直ま
だ夢の中のようなのだ。現実味が薄い。
妹と思っていた時間が長すぎたのかも知れぬと日本は密かに分析している。

 分不相応な身分だと思う。分不相応と思いつつも、日本の体は正直である。甘えるような声が耳に
毒だし下半身には更に毒。年甲斐もなく顔を真っ赤にしながら、服越しに台湾の足の間を押し付けら
れるそこに血液が徐々に集まりつつある自分のふがいなさに呆れてしまう。ううう。

(本当に、まずい……ッ)

心中叫べど救いの手はどこにもなく。

 その間にも台湾の視線は日本にまっすぐ注がれている。潤んだ大きな目。そんな恋人に甘い声で誘
われて服を脱がされて、その気にならないほど日本も老いてはいないが、いやというかこんなエロゲ
の世界から出てきたような美少女に迫られてスルーできるような男など不能以外の何者でもないと断
言するが、それでも場所と時間が悪すぎる。

 世界会議は今先程終わったばかりだ。メンバーの大半はまだ屋敷内で談笑に興じているだろうし、
いくら空き部屋とはいえ誰かに人の気配を感づかれないとも限らぬ。或いは突然会議場から消えた日
本と台湾をいぶかしまれるかもしれないし。まずい、やはりまずいのではないかこの状況。
 彼女は一体どうしてしまったのだろうか。動揺した頭の中で考えても答えは出ない。

 そんなことをぐるぐる考えているうちに逆に手の力が緩んでいたらしい。

「!」

 うまい言葉が見つけられず押し黙る日本を介意することなく、台湾の手は押さえつけていたはずの
日本のそれから器用に抜け出してシャツのボタンを外し終えている。いつの間に。
 赤い唇が日本の唇に寄せられる。至近距離に近づく、とろりと欲に染まった笑み。

「……ん、」

 艶めいた声。


 押し当てられたその温度に、早くも理性が本能に食らい尽くされそうになって日本は目を顰めた。
道徳心と、年上としての矜持が心の中で、流されてはならぬと声高に叫んでいる。が、近づいた台湾
の肌からは、熟れた果実のような甘い匂いが漂ってきて、どうもそれが頭の中をかき回して胡乱にし
ていく。

 ちゅ、っちゅ、ついばむように口付けてくる台湾を突き放すこともせずかといって抱き寄せも出来
ず、中途半端な状態でふと苦し紛れに視線をずらすと彼女が自らジャケットを脱ぎ捨てているのが見
えた。台湾は完全にスイッチが入ってしまっているようだ。
 脱ぐ時間も惜しいと体を捩じらせて、ボタンを外したジャケットを、ぱさり、床に投げる。そして
現れた真っ白な薄手のブラウス。その上に仄かに浮かび上がる下着の線をみつけてしまって、「…っ」、
知らず日本の喉が鳴る。ごくり。
 ああそうだ。日本だって興奮しつつある。
 こんな言葉が自分の国にはあるじゃないか、据え膳食わずは何とやら。

「ぅ、……」

 観念したように微かに唇を開くと、小さな舌がすぐさま押し入ってきて、くちゅくちゅ、窓もない
薄暗い部屋に隠微な音が波紋のように広がった。
 キスを続けながら、台湾の指先がシャツの下の日本の肌を這う。少し低い体温が心地よい。ぼうっ
と思う。合わさった唇は離すことなくお互いの舌を絡めて甘く噛みついて、口付けは徐々に息が出来
ないほど激しいものになっていった。嫌らしい水音が鼓膜を侵す。

「ん、ん、」

 赤ん坊のむずがるような声が台湾の唇に端から漏れて、その手が日本の首の後ろに回された。縋り
つくように体を押し付けられ、それにあわせて、日本の反応しつつあるそこにも強く擦り付けられる
彼女の腰。もっと具体的に言うなら、下着越しの柔らかな熱い肉。日本の敏感なところにわざと当た
るように、密着している。そこから聞こえるのはただの衣擦れの音のはずなのに、なんと隠微に響く
のか!
 これで我慢できる男が居たとしたらそれは不能以下略。と言うわけでいつの間にか日本の手は密着
した体の間を探って、台湾のブラウスに掛けられていた。意志薄弱である。

 はは、何とでも言うが良い!男の生理なんてそんなものだ。自分の中で言い訳する。



 唇を離すと二人の間に銀色の唾液が糸を引いた。その糸が自然に切れるのを待つように、ちろりと
舌を出して、蠱惑的な視線を送ってくる台湾が憎らしくて可愛い。凄く可愛い。

「どうしたんですか、今日は」
「何か、真剣な目でお仕事している日本さんをみてると、ん、ぁ」

 ボタンを全部外さずに掌を忍び込ませる。今日は白地にピンクの小さな花を散らせたブラである。
台湾の透けるほど白い肌によく似合っているなあとか不埒なことを思いつつ、もっと不埒なことをす
るために、下着ごと柔らかそうな膨らみを手で包み込んだ。白い膨らみはふやんと日本の手の中で簡
単に形を変える。

「体が、熱くなって…会えたのも久しぶりだし……」

 要するに、欲求不満だったということか。確かに暫くあえない日が続いたが……まさかこんな行動
にまで出るとは。
 若い娘は大胆ですねえ、とか他人事みたいに思う日本である。役得の癖に。潤んだ目で見上げら
れて、そんな可愛い台詞を吐かれるとなかなか、こう来るものがある。
 独白のような告白を聞きながら、気分をよくした日本は乳房を優しく手でもみしだいてみる。
 きゃっ、台湾は華奢な肩を竦ませた。顔を覗き込めば恥らうように頬を赤らめていて、誘っておい
て何を今更と思うけれどもその初々しい反応はストライクど真ん中。
 額にキスをすると、童女のように勢いよく抱きついてきた。カワユス。

 これはもう、完全にお誘いに乗らざる得ない。
 日本は覚悟を決めて―――唇を舐める。



「会議中にそんなことを考えていたんですか」
「やっ、ご、ごめんなさぁい……」

 低い声で呆れた振りをする。と、台湾がふるふる首を振って甘い声を上げた。
 胸をいじられる性感からか、それとも叱られたとでも思ったのか涙目で、何だか不安そうに自分を
見上げてくる台湾。きゅるん、という擬音語が彼女の周りに浮かんで見えた気がした。俗に言うエロ
ゲ視線。恐らく意図的ではないと思うが、攻撃力半端ない。ぞく、自分の背中を興奮が突き上げるの
を日本は感じる。

「軽蔑しますか?私のこと、嫌いになりますか……?」
「……いいえ?」

 むしろ興奮しました。と馬鹿正直に言うほど馬鹿ではないし年上かつ元保護者としてのプライドがある。
一瞬沈黙してしまったが、にっこり笑って誤魔化して、日本はブラの間に指を滑り込ませた。
 今日初めて触れる先端は、既にとがって汗にしっとり湿っている。

「ひゃっ」
「直接触っても?」
「も、もう触ってます……」

 いじわる、非難する声は軽く流して、親指と人差し指の間でぐりぐりと堅い蕾をつまむ様にしごき
上げると、ひ、ひん、面白いようにソプラノが鳴いた。真っ赤な顔をして目をぎゅっと閉じて実に愛
らしい。日本は彼女の、素直に変わる表情が好きだった。満更でもない気持ちで日本は、すみません
ね爺のくせに自重がきかなくて、とかなんとか空っとぼけた返事を返した。もう、子供みたいな声で
頬を膨らませる台湾。

 そう、子供みたいな表情をして、なのに体は乱れたスーツを未だに纏っている。ストイックな白の
ブラウスと、その下タイトな黒スカートに覆われたしどけない格好の、ギャップに欲情する。そんな
嫌らしい格好で自分の膝に乗っかって、愛撫を求め体を摺り寄せてくる恋人。いいな、着衣エロ……、
台湾に知られたら横っ面を張り倒されそうなことを、できるだけ表情には出さずに考える日本である。

 さて、柔らかな感触を楽しみつつ揉んでいるうちに、ブラが邪魔になった。

 しかし外すのも億劫なので、今度は許可を乞うこともなく勝手に鎖骨のほうへずりあげる。今日のキ
ーワードは着衣エロである。

「わっ」

 ぽろりと零れる台湾の胸。台湾が小さな悲鳴を上げるがもちろん日本は気にしない。
 華奢な体つきに似合わず彼女の胸はなかなかに立派だ。F?もしかしてG?詳しく聞いた事はない
けど、まあ、それくらいだろう。自分が養育していた頃はあんなつるぺたで女らしいまろみの一つも
なかったのに、よくもここまで成長し(てくれ)たものだ。日本は感嘆してその豊かな膨らみを眺め
た。ぶしつけな視線に、台湾が恥ずかしそうに体をもじもじさせている。うん、いい。恥らう美少女
良い。視覚的に満点である。気を緩めればすぐ顔がだらしなくにやけそう。

「可愛いですよ」
「ん、や、あんまりじっと見ないで……」



 くるんとした髪の触覚を揺らして、台湾がまた弱弱しく首を振る。
 ふむ。それを聞いて日本は意地悪く笑った。リクエストが出たのならかなえねばなるまい。
 白い乳房はマシュマロのように柔らかく、誘われるままに甘そうな桃色の先端にかぶりつく。
 まあ、確かにそうすればじろじろ見られずには済む。
 完全にエロ親父の思考回路である。しかし男がエロくて何が悪い!心の中だけで拳を作る日本。

「ぁ、っ!やぁあ、ん、あ、あ……」

 ちゅくちゅくと舌の先で弄う。台湾が小刻みに震え始めたが、気にすることなく唾液を絡めて反応
を楽しんだ。勿論もう片方の乳首も指で弄うのをやめない。いやよいやよもすきのうち、こうされる
と弱いのだと知っての上である。証拠に、台湾は日本の頭を抱えるようにぎゅうと抱きしめて、日本
の名前を、子猫の声で甘く鳴いた。
 それに、普段よりもぞくぞくと背筋が震えるのは、日本もこのただならぬシチュエーションに高ぶ
っているからであろうか。ちらりと今は閉じられているドアに視線をやる。スーツを自ら脱いであら
れもない格好をして自分に迫る恋人と、ドアの向こうに誰がいるかも分からない状況で、セックス。

 まあ今更やめられはしないですけど。ちゅうと、赤子のように台湾の乳首を吸った。細いからだが
背を弓なりに撓らせる。

「……はぅう……!」

 可愛い声だなあ、何度聞いても興奮する。それに相変わらず感じやすい。掌の吸い付いてくる柔肌
を堪能しつつ思う。
 そうやって夢中になって貪っているうちに、足の間を何かが触れた。
 ? 思わず彼女から身を離して見下ろせば、白い手が、日本のそこにそっと添えられている。吃驚
して台湾の顔を伺えば、彼女を顔を真っ赤にして日本を睨んでいた。怖い顔しても可愛いだけだが。



「わ、私だけずるいです…っ、に、日本さんも」

 上ずった声に続く、かちゃかちゃとベルトを外す音。
 顔を真っ赤にした台湾が、震える手で日本のそれをチャックの間から取り出そうとしている。ほう。
今日は本当に積極的だ。
 抵抗せずに、日本はとりあえず黙って彼女の行動を見守ってやる。
 二人しかいない部屋に、呼吸の音と衣擦れの音だけが聞こえる。

「……わ、もう……」

 感嘆したような声。直接触れられたわけでもないのに、飛び出した日本のペニスは当然のように欲
を含んでパンパンに膨れている。
 いや、けど、あのシチュエーションで立たせるなというほうが無理だ。無理ですとも!
 気恥ずかしさをそう言い訳することで心の中昇華している爺を他所に、ぎこちない動きのまま、台
湾が指先でそれに触れた。

「……あ、熱いです」

 とろんとした声で台湾が囁く。その声に、指の温度に、ぴりぴりとした性感が日本を支配する。
 ふ、自分の中でどんどん膨張していく欲を逃がすように、彼は大きく息を吐いた。

「……触ってくれるんですか?」
「は、はい」
「台湾は気が利く良い子ですねえ」

 興奮に声が掠れてはいないだろうか。調子だけは余裕を装って、日本は優しく台湾の頭に手を伸ば
して撫でる。
 台湾の真っ赤な耳の真横で、してください、熱い息を吐きつつ素直な願いを直球で乞えば、ぴくり
と肩を揺らした台湾が、俯いたままこくんと首を振った。久しぶりに明るいところで日本のものを見
るからか、視線はそこから外されない。子供のような興味と、娼婦のような期待両方が彼女の視線に
は込められていて、日本は何だか居心地が悪い。居心地悪いながらも自分と台湾の間にあるそれはし
っかり固い。致し方ない。
]
 好きな相手に触れられて興奮しない男がいますか!



「う、動かしますね……」

 台湾の暖かな掌が熱い怒脹を包み込んで、ゆっくりと上下にしごき始める。
 徐々に下半身をしびれさせていくその快感に、日本は目を閉じてそれを感受した。柔らかな掌に触
れられて、立ち上がったそこと、頬に血液が集まってくるのを感じる。先走りの液が日本のそこから
零れ、台湾の手のひらを濡らした。
 くちゅ、くちゃ、
 隠微な音に、お互いの呼吸が、浅く早くなっていく。

「日本さ、気持ちい…?いいですか…?」
「ええ、とても」

 手の動きは単調で、まさに恐る恐るといった動きである。竿をつかんで不器用に上下させているだ
けだ。技巧も何もなく、刺激も弱い。しかしながら他者に触れられているということだけで、既に気
持ちが、いい。これを一人だけで享受するのは実に申し訳ないことだ。
 普段は温厚な仮面を貼り付けているその顔に、嗜虐心溢れた(もっと言えば酷く助平な)笑みを浮
かべて、彼は台湾の太ももに掌を這わす。やわやわと外側の肉をもんで、それから指先は少し強引な
動きで彼女のスカートの中に潜り込み、ストッキングを撫でた。
 ……脱がそうかな。
 一瞬逡巡するが、何だか手間が面倒くさいし、それにストッキングを纏ったままというのは至極興
奮するシチュではないだろうか。白い肌を晒して一生懸命自分に奉仕している台湾を見下ろして、日
本は妄想した。

 うん、いい。
 いいですよそれ!

 美徳とするつつしみはどこへやら、決めてしまえば迷いは殆ど無かった。期待に輝く爺である。日
本は、爪を引っ掛けたそこから、べり、容赦なく台湾の肌を覆うストッキングを破いてしまう。
 必要な部分だけを引きちぎり、そして下着越しに、熱を持った場所に触れる。
 台湾が目を見開いて、体を大きく跳ねさせた。気にせず指を強く押し付けると、日本の予想の通り
に、そこは既に潤んで下着まで湿り気を帯びている。


「ぁっ、や、に、日本さんっ!?」
「すみません、ストッキングは弁償します。ほら、それより静かに。大きな声を上げたら誰かが気づ
いてしまうかも」

 意地悪く耳元で囁いて、手を止めてはいけませんよ、そんな勝手な要求もついでに突きつけて。
 下着越しに指先で、柔らかな筋をくにくにと弄えば、ぴくぴくと膝の上の体が面白いように震える。
それと同期して豊かな胸もゆさゆさ揺れて、なんと言う眼福。

「ひ、酷い…っ」
「そうですか?」

 ひぃん、子供が泣き出す寸前のような哀れな声を挙げるのに、それを痛ましいと思わずに尚更興奮
するのは何故だろうか。恐らくはそれが恋というものなのだろう。昔、まだこの子に恋をしていなか
った頃は、真っ先に飛んでいって慰めただろうから。
 自分の呼吸が、酷く荒れているのが分かる。日本は破裂しそうになる欲望を押さえつけるために目
を眇めて、できるだけ乱暴にならないような動きで下着の間に指を侵入させた。がっついていると思
われるには自分の年齢とこの娘の年齢は離れすぎている。見栄を張りたいものだ、好きな人には。耳
元でうるさいほど鳴る自分の心臓の前では、今更かもしれないけれど。

 くちゅ、

 そこは甘い蜜で既にとろとろに蕩けて、日本の指の侵入を喜ぶように小さく痙攣する。

「あ、あぁ……や、だめっ!」
「何が駄目ですか、そもそも自分で誘っておいて。触ってもないのに、こんなにぐちゃぐちゃにして」

 ちゅぷと指を一本突き入れると、日本に奉仕していた台湾の手が止まった。快感を堪えているのだ
ろう、小さな体はかくかくと震えている。だ、だってぇ、泣きそうな声が聞こえるが、いくら泣かれ
たって今は興奮しかしない。日本のスイッチは既に入っているし、それを入れたのは彼女である。だ
ったら何を遠慮することがあるだろうか。
 指はちゅぷちゅぷと緩い抜き差しを繰り返すまま、親指でその上の芽を弄った。既に固い芯を持っ
たそこに愛液を擦り付けると悲鳴のような嬌声が聞こえる。それに気をよくして、ぐりぐりと強く指
を押し付けた。
 与えられる無情なほどの強い刺激に、ぴくぴくと台湾の腟が収縮を繰り返す。

「ひゃあ、っあ、あ、あ」
「手が止まってますねえ」

 日本は余った手で、強張った彼女の手ごと自分の怒脹を包み込んで強めに上下に動かした。ちゃん
と私も気持ちよくしてくださいよ、台湾。小さな耳の穴に舌を突き入れつつ甚振るように囁いてやれ
ば、震えながらもこくこくうなずいて、健気に手を動かしてきた。
 可愛い。可愛すぎて、気持ちよすぎて、頭のねじが飛んでしまいそうだ。
 既に飛んでいるという突っ込みは受け付けない。
 欲に突き動かされるまま、彼女の中に突き入れた指を浅く抜き差しする。たった一本なのに、しと
どに濡れた暖かな中は涎を零してきゅうきゅう締め付けてくる。この中に自分のものを入れたらどん
なに気持ち良いだろうか、その感覚を思い出すと眩暈がした。
 因みに下着は脱がす気は無い。今日のキーワードは下着エロである。



「ん、も、もう…日本さん、私、……っ」

 台湾の息は既に完全に上がっている。しばらく遊んでやると、はあはあ、甘く荒い吐息を零しなが
ら、日本の裸の胸板に額をぺたんと押し付けてきた。真っ赤な顔だ。指先を持ち上げて頬を擽れば見
かけに劣らず火を持ったように熱い。しかしそれは自分も同じだろう。自分の顔は、上目遣いに期待
を込めた視線を向けてくる彼女にどんな風に移っているのだろうか。潤んだ目の中の自分はぼやけて
はっきりと写らない。
 兎に角、台湾の言わんとする事は日本には願ったり叶ったりだ。ちゅぷ、指を引き抜いた。その些
細な動きすら彼女には性感に繋がるのか、身を撓らせてまた高い声を上げる。

「そうですね、私もです。……ああそうだ、台湾。今日は私、『座っているだけで良い』んでしたっけ?」

 彼女の顔を覗き込んで、日本はわざとらしいほど晴れやかな笑みを作った。スカート越しに台湾の
尻を怪しい手つきで撫でつつ。

「このまま、自分で入れてくれますか?」

 疑問の形をとりながら、それは優しい命令である。



「……は、い……」

 普段から考えると、大分アブノーマルな要求だ。しかし台湾は抵抗することなく素直に頷いた。も
はや思考も上手く回っていないのだろう。朦朧とした目つきで日本の体の上、躊躇もなく足を開いた
格好で膝を立てる。
 いい。良い格好だ。
 日本の肩に片手を付いて、彼に覆いかぶさろうとする娘を見上げ、日本は一人悦に入る。
 清純な顔立ちを淫蕩な欲に染めて、ブラウスの間から零れ出た豊かなまろみを隠そうともせずに足
を広げている台湾。白い太ももの間から同じく白い下着が垣間見え、それは先程日本に散々弄くられ
たせいでぐっちょりとしみを作っていた。大事なところだけ見えて、ほかはスーツで隠されていると
いうのは妙は背徳感を煽る。背徳はそのまま興奮に変換される。全裸に剥いてその裸体をじっくり楽
しむのも良いが、着るものを着た上でことに及ぶというのはやはり絵的に素晴らしいものがあります
ね!
 日本は大変ご満悦である。

 と、自分の足の間に指を伸ばしていた台湾が何かに気づいた顔をした。

「……忘れてた。ちょっと待って、脱ぎますから」
「あ、脱がなくて良いです」
「え?え、けど」
「良いですから。そのままで。下着をずらして」

 脱いだら意味ないですから。
 スカートを巻くって下着を脱ごうとした台湾の手を捕らえて日本はにっこり笑った。時間もないで
すしね?、優しく囁く男は人好きのする笑みを浮かべているがその頭の中には不埒な妄想しか詰まっ
ていない。今日のキーワード以下略。
 しかしながら台湾は簡単に誤魔化されてくれた。そ、そうですよね、疑問も持たず手をどける。い
たいけな子供をだましたようで何だか悪い気持ちがしたが、まあ、今日は万能の魔法の言葉がある。
 『誘ったのは台湾』。多少の我侭は許されよう。

 細い指が言われたように下着を横にずらして、むき出しになったぬめる入り口を日本の立ちきった
先端にあわせた。ふ、震えた息を吐く台湾。日本も同じである。
 ちゅく、音を立ててそこが触れた瞬間に、すぐさま突き上げて、かき回したくなる欲望を何とか抑
える。

 だってがっつかなくても、楽しみはこれからだ。



 可憐な瞳を覆う長いまつげが怖がるようにぱしぱしと瞬きを繰り返したが、やがて意を決したよう
に、台湾はゆっくりと腰を落としていった。

 ぐちゅ、

「あ、あっ…日本さ、……!」
「……っ、湾」

 ぬぷぬぷと、粘度の高い水音を立てながら日本のものが台湾の腟に入っていく。予想通りに中は酷
く熱く、きつい締め付けだ。すぐさま精を搾り取られそうになって、日本は眉を顰めた。

「ひっ、ひぃん…あ、ああ、おっき、熱いの、日本さんが」

 最早言葉も上手く出てこないらしい。断続的な単語を零し、髪を乱していやいやしながらも台湾は、
ゆっくりした動きで、日本を根元まで飲み込んだ。ずぷぷ、ひときわ大きく響く淫音。
 薄く開いた彼女の唇から唾液が零れる、飲み込む余裕もないのだろう。日本の胸板に縋りつき、台
湾は開いた腿を痙攣させた。ソファに沈む足のつま先は、ぎゅうと強く曲げられている。

「んっ、苦し……あ、ふあぁ」

 ぼろぼろと彼女の頬を涙が零れ落ちていく。
 目に、毒だ。日本はうっとりとその様を眺めた。そんな顔をされたら、もっと泣かせたくてたまら
なくなってしまう。
 腰を下ろした状態ではスカートに隠れて、日本から接合部は見えない。しかし、確かに繋がってい
る。は、はあ、苦しい息を吐きながら台湾が腰を小刻みに揺らせば、日本は自分のものを包み込む肉
の感触を実感した。ぴったり合わさった二つの形。
 腰が溶けるほど気持ち良い。彼は堪えるように瞳を閉じたが、耳元で台湾の熱い吐息を更に感じて
しまう。
 すぐに飛んでしまいそうだ。



「動いて、ください」
「ひゃ、あっ、は、はい…んぁあ……っ」

 声は掠れていた。しかし余裕を装うことも最早できず、日本はそう乞うて、指を台湾の乳房に伸ば
した。従順な応えと喘ぎ声を聞きつつ、彼女の動きに合わせて揺れる重量のあるそれに指を食い込ま
せる。ふよん、白い膨らみは柔らかく日本の指を迎え入れて形をかえた。それを、まるであとでも残
そうとするかのように強い力でもみしだく。

「あっ、あ、あ」

 台湾の額には玉のような汗が浮かんでいる。日本が触れる肌もしっとりと湿って、恐らくは慣れな
い体位が彼女の苦痛になっている事は明白だった。それでも懸命に日本の意に報いようとしている。
健気な娘。日本の腹に掌を付き、台湾は日本の要求にこたえた。M字開脚に近い格好で、タイトスカ
ートが引きちぎれるほど足を広げている。
 そうやって彼女自身も快楽を貪っているのだ。
 ついた手に体重をかけて、じゅぷ、くちゅ、嫌らしい音を立てながら腰を上下に揺らす。

「そう、…上手ですね……もう少し深くできますか」
「ん、あ…が、頑張りますっ……あう」

 ついと唇を彼女に近づけ、耳を噛みながらそう吹き込むと、震える足を何とか動かして腰の動きを
大きくした。日本の感じる快感が更に強くなる。柔らかな肉なのにどうしてこれほどの締め付けが出
来るのだろうか、ざらざらした内部に自身を擦り上げられ、心臓が早鐘を打つ。
 十分に気持ち良い。しかし、駄目だ。
 台湾は必死になって日本に奉仕をしているが、やはり駄目だ。足りない、足りない。日本は喉を鳴
らして唾液を嚥下した。

 自分が今、完全に雄の目をしているのが鏡を見ずとも分かるのだ。或いは獲物を捕らえた肉食獣の。

 もっとだ。弄っていた乳房から手を離し、台湾の腰を両手で強くつかむ。動きを止められた台湾が、
ぼんやりした目で日本を見た。
 きょとんとした視線に声は返さなかった。かわりにそのまま、下から台湾の体に強く腰を打ち付け
る。


「……ぁ、あぁあッ!?」

 台湾が目を限界まで見開いたのを、揺さぶりながらすぐにその首筋に噛みついた日本は知るよしも
無い。
 涙の粒が飛び散り、日本の服を濡らす。

「ひやっぁ!!だ、駄目えっ、日本さ、日本さん!ん、あぁ、ひぃっ」
「……駄目なのは、こっちですよ……っ」
「擦れるっ、いやぁああ、おくっ、叩かなっ、で、いや、ぁぅう!」

 まるで蹂躙のような強さでずんずんと台湾を突き上げる。彼女の腰を無理やり浮かせて限界まで引
き抜いて、それから勢いよく根元まで押し込むと、ぐちゃりと愛液が生々しい音を立てる。台湾の背
が撓ってびくびく震えた。彼女の蜜だか日本の先走りだかでもうぐちゃぐちゃに濡れている怒脹の先
端が押し入るたびに子宮口を叩いて、これが彼女の言うところの『いや』の因だろうか。

「ひっ…や、やだぁ……!あっ、ぁ…、ひっく、ふえ、うぅう」

 赤く上気した頬を涙が零れ落ちていく。強制的に与えられる強い快楽に混乱して子供のように嗚咽
し、号泣している台湾。可愛い顔がぐちゃぐちゃだ。可哀想に。
 しかし、知ったことか。
 日本は構わず、台湾の首筋をねっとりと舐め上げながら、更に動きを激しくした。彼のメーターは
完全に振り切れている。
 そもそも、彼女の『いや』は言葉通りの意味じゃないし。

「……ふ、ふふ、台湾、嫌ですか。本当ですか?」
「駄目、こ、怖いです、や、ふあ、あ、あ、あっ」
「怖い?……嫌で、怖いだけ?じゃあ、やめる?」

 鼓膜を叩く笑み交じりの問いかけに、台湾がばっと勢いよく日本の顔を見上げた。
 場違いなほど優しく微笑みかけてやると、まるで傷ついた子供みたいに眉をハの耳にして、ぶんぶ
んと首を振る。

「っ!や、だ…だめっ……だって、んあ、き、気持ちよすぎて……怖いです、だ、駄目になっちゃ…
や、や、あんっ」
「……本当は、気持ち良い?」
「き、気持ち良いです…気持ち良いんですッ…!あ、あ、日本さん…もっと、ひん、もっとかき回してぇ」

 低い囁きに誘導されて、台湾はあっさり本音を吐いた。そしたら後は簡単だ。ああ、可愛い。可愛
い台湾。
 台湾は彼の肩に縋りつき、気持ち良い、もっと、何度も上ずった声で繰り返しながら、添えられた
日本の手の動きに合わせて娼婦のように腰を振る。無意識か意識的にか、恐らくは前者だろうが、自
分の中の日本を、かつて彼が教え込んだようなやり方で力を込めて締め付けて。抜き差しするそこか
ら蜜が次から次にかきだされて、泡だって。二人とももう、ぐちゃぐちゃだ。

 男の本能を煽る甘い嬌声が日本の鼓膜を舐める。たまらない。



「きもちい、あ、あ、日本さん熱くて……好き、日本さん、好きです……っ」

 感極まった声でそう叫ぶ台湾は、もはやここが進入可能な脆い密室であること忘れているらしい。
高い声を上げて甘く鳴いて、もし今ドアのすぐ向こうに人がいれば中で行われている情事をすぐに気
づかれるだろう。声で、中を覗き見られなくても個人を特定されるやも。もちろん日本も。
 しかし当然、台湾にも日本にも行為を抑制するような余裕はどこにも残っていなかった。いや、日
本は頭の片隅の冷静な部分でその危険性を危ぶんでいたが―――正直、どうでも良い。今となっては。

 ドアの向こうに人がいようといるまいと、こんな不道徳な行為が明るみになって恥ずかしい思いを
しようと、今はもう、どうでも。何も考えられない。だから台湾も、道連れだ。

 彼女と共有する快楽を享受することだけが今は大切で。

「私も、好きです、台湾……好き、ですよ」

 自分の性器が台湾の中で何度も何度も擦り上げられ、次第にびくびく震え始めるのを感じる。歯を
かみ締め、日本は獣のような荒い息を吐いた。ぞくぞくと背筋を突き抜ける激しい快楽が頭の中を支
配していく。
 部屋を満たしていく濃厚な情事の匂いと嫌らしい水音。膝の上で腰を揺らして、自分の名を呼びな
がら腹の中で性器を締め付ける恋人。その、体温。理性はとっくにかなぐり捨てた。
 ここにあるのはお互いの本能だけだ。
 五感全てが性感に変わっていく。


「台湾……っで、ます」
「ん、あぁあ、だ、出してぇ、な、なかぁ…にほんさ、私のおなか、いっぱい出してくださいぃッ…!」


 日本の切羽詰った声。大きな手が背中に回って、ぎゅうと台湾の体を縋りつくように抱きしめた。
 腕の力が、少し苦しい。だけど嬉しい。体中が日本の匂いに包まれる。日本だって台湾を体で感じ
ているのだ。乱れた彼の髪に掌を伸ばして差し込んで、好き、好きです、それしか鳴けない小鳥みた
いに繰り返す。
 その声に食らうかのように腰をつかんで揺らす動きがガクガクと一層激しくなり、くっ、くぐもっ
た声が聞こえた一瞬後、台湾の中に熱が一気に放出された。

「ふあ、あ、あ……ッ!」

 眩暈がするほど熱い飛沫が壁を叩く。
 どくどくと脈打つ日本を腹の中で感じながら、台湾もほぼ同時に、背を仰け反らせて達した。








 ぐったりと事後の脱力感に浸っていると、耳元で台湾のほわほわした声が聞こえる。

「えへ、えへへ……久しぶりの日本さん……」

 嬉しそうだ。今だ腟に日本を迎え入れたまま彼の首根っこに抱きついて、鎖骨あたりに頬を摺り寄
せてくる。その様が飼い主に懐く猫みたいに可愛かったので、ソファに背は預けた日本は気だるい腕
を上げて台湾をさらに抱き寄せた。
 艶やかな長い黒髪に顔を埋めると、清潔な香りが日本の鼻腔を擽る。部屋の中には情事の匂いが強
く篭り、お互い体中汗といろいろなものでぐちゃぐちゃになっているのに、どんなに汚しても何でこ
の子だけは汚れきらないんだろうな。ぼんやり考える。それは昔からの不思議だった。女の子はみん
なそういうものだったっけ。

 いや、やはり台湾だから綺麗なのだろう。そう思うのはちょっとした欲目である。泥だらけで大泣
きしていた子供の頃からずっと、台湾は美しい日本の花なのだ。

 愛しさにかられて思わず引き寄せたが、最中なら兎も角お互い落ち着いたところでこんなにくっつ
いてしまって、汗ばんだ自分の匂いが不快に思われないだろうか。ちょっと心配になって視線だけで
台湾を伺うと、なんだかさっきよりももっと嬉しそうに、日本さんー、とか甘い声を出して彼の胸板
にうっとり頬を押し付けている。

 ……じゃあ、まあ、いいか。

 逡巡を捨て、台湾を腕の中に捕まえた。理性はまだ本能の足元だし、何かを考えるには体が気だる
い。
 久しぶりに共有する体温は、くっついた場所を伝って、じんわりと日本の肌に馴染んでいく。

「寂しかったですか?」
「凄く。凄く寂しかったです。だから、今日お会いできるのが楽しみだったんですよ!」
「ほう、こういうことをするために」

 台湾の頭の後ろでつまんだ髪を弄いつつ、によによ顔で揶揄すれば、違います!赤い顔をして反駁
してきた。
 けどすぐにしょぼん、とうなだれる。くるんとした触覚も一緒に垂れて、まるで叱られた犬の様。
おや、可愛い。

「……けど、わたし、嬉しすぎて暴走しちゃって……」

 呆れましたか、呆れましたよね。しょぼくれた声で呟く。先程まで体を満たしていた熱が取り敢え
ずは少し吐き出されて、幾分冷静になってきているらしい。どうしてかなあ、どうしてあんなになっ
ちゃったのかなあ、ついでに先程の自分の乱れぶりも思い出したのか、赤くなった顔をいたたまれな
いと両手で隠した。

「……ごめんなさい……」

 ううう、唸り声が細い指の間から漏れた。本当に恥じているらしい。まあそりゃそうですよね。あ
んなにサービスしてくれたらね。日本も先程の激しい交わりを思い出し、しかしこちらは恥らうとこ
ろかえらく嬉しそうである。俯いた台湾に見えないのを良いことに、口角を緩ませて、自分の腕の中
の恋人をみつめたり。普段のクールフェイスはどこへやら。
 まあ、嬉しいのだから仕方がない。
つまりは、我を忘れるくらい、自分を求めてくれていたということだから。

 寂しかったです、何よりも甘い声の残滓を、日本は大事に鼓膜の奥にしまいこむ。



「まあ、そもそもこれ幸いと乗った私も同罪と言いますか。役得といますか」
「え?」
「なんでもないです。その件に関してはまたホテルに帰ってから、色々聞かせて頂きましょうね、じ
っくりと」

 わざと語尾に力を込めて囁くと、顔を上げた台湾が小首をかしげた。服を乱した不埒な格好はその
ままできょとんと日本を見上げる様に、彼女の中に残した欲がまたも復活しそうになるが―――とり
あえずそれは、彼女に髪に恭しくキスを落とすことで我慢する。

「好きです」

 優しく落とされるキスの感触と、穏やかな言葉にくすぐったそうに身じろぐ台湾。顔はまだ赤い。
恥ずかしいんだろう。だけど日本の腕の中からは逃げ出そうとしない。皇かな感触を唇で楽しみつつ、
心が満たされていくのを感じる。
 もう暫く気だるさに任せて抱きあっているか、いっそこのまま体面も気にせず浚っていってしまい
たいけど、さすがにそういうわけにもいかないし。この部屋に入ってからどれだけ時間がたったかは
わからないが、というか腕時計を見るのが怖いので知らない振りをするが、そろそろ自分たちの不在
に誰かが気づき始めるとも限らない。これ以上は時間が、ない。

 そうだ。今じゃ、足りない。
 寂しかったのは台湾だけではなかったという話を、日本もちゃんと伝えるためには、今では全然時
間が足りない。

 彼女よりも堪えることができたのは年上のプライドがあったからで、本当は考えていることなんて
自分も一緒。彼女を一目見た瞬間から早く抱きしめたくてたまらなかった。だから、一度火をつけら
れれば欲は簡単にどんどん膨らんで。

 さっきの交わりでも、漸く台湾を腕の中に閉じ込めることが出来た彼の欠乏を埋めるには、少ない。
 飢えた欲に、火をつけたのは彼女だ。だったら最後まで責任を取って貰えるのだろう。腕の中の柔
らかな体を抱きなおす。どこにも行かない体温が愛しい。
ああ、寂しかった。だけど、ようやく捕まえた。


「さて、服を直して、そろそろ戻らないと。……それから荷物を纏めて、さっさと帰ってしまい
ましょう」
「あ、は、……はい!」


 日本の優しい声音に、ぱっと顔を上げた台湾は嬉しそうに顔をほころばせる。
 笑った。可愛いなあ。好きだなあ。
 この笑顔を早く独占できことを願いながら、日本はもう一度台湾の額に口付けた。





 ……ところで十数分後扉を開いた先で、「ニーハオ!……どこに消えたかと思たら、随分お楽しみだ
たあるね」、顔は満面の笑みだが目が全然全くちっとも笑っていない中国に出迎えられることになるわ
けだが―――それはまあ、また別の話。






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