甘々茶時間
【メインCP】スイス×リヒテンシュタイン
【傾向】純愛
【その他】今更すぎるバレンタイン話。
長い割にはそんなにエロくないです。
2月14日、聖バレンタインデー。
世界各地が愛の名の元に浮き足立つ今日この日も
元より仲睦まじいスイスとリヒテンシュタイン両兄妹にとっては例外で。
窓の外に広がる近隣諸国の騒ぎをよそにティータイムと、優雅なひと時を堪能していた。
「兄さま、お茶が入りました」
「うむ」
リヒテンシュタインの声にスイスは読んでいた本をぱたりと閉じて席につく。
「今日のお茶請けは日本さんから頂いたチョコレートです」
ほう…、とスイスの眉がぴくりと反応する。
世界チョコレート消費量ランキング上位は伊達ではない。
意外と思われるかもしれないがチョコレートは作るのも食べるのも好きなのだ。
ましてや美食家の日本からもらったものともなれば味には期待できる。
そう思い一口つまんでみた。
途端、口の中に広がる過剰な砂糖の甘さとおまけ程度に追随するカカオの風味と苦味。
ざらざらとした重い舌触りは何度かの咀嚼にも溶ける事無く口内に留まり続け
またカカオバターはそのこってりとした個性を隠そうとせず依然自己主張をやめる気配はない。
これは、何というか。
「………大味なのだな」
「…ですね」
まずい、とまではいかないが繊細な味わいに欠けている代物で
日本にしては珍しい事もあるものだと紅茶で流し込む。
こくりと紅茶で喉を鳴らしていると偶然ティーカップ越しにスイスとリヒテンシュタインの目が合った。
薄く微笑むリヒテンシュタイン。
リヒテンは今日も愛らしい。
ふとスイスはそう思う。
兄馬鹿だと言われるのかもしれないが
妹のリヒテンシュタインは可愛い。とても可愛い。
すらりと長く伸びた睫の下にはレマン湖を思わせる美しいエメラルドグリーンの大きな瞳。
バランスよく配置された顔のつくりは完璧としかいいようがなく
神の奇跡のようなその造形美には思わず吸い寄せられそうな魅力がある。
特に、その…唇に…
「………お兄さま?」
そこでスイスの思考は中断する。
「私の顔に何かついていますか?」
どうやら知らぬ間に凝視してしまっていたようだ。
「い、いやなんでもないのである!」
何を考えているのだと内心で己を一喝した。
ごほんを咳払いをしてごまかすようにチョコをつまむ。
ついでに紅茶に甘みを足そうと蜂蜜を混ぜ入れるも
内の動揺を表しているのかスプーンとティーカップががちゃがちゃと乱暴な音を立ててしまう。
「兄さま、はしたないです」
すると無作法をたしなめられてしまった。
「あ、あぁ。すまない」
いかんいかん冷静になるのだと自分に言い聞かすも
一度意識してしまったものを取り消すというのはとても難しい。
さりげなくを装い自然と目線はリヒテンシュタインを追ってしまう。
小動物のようなつぶらな瞳で何度も瞬きする仕草とか
握り締めたら折れてしまいそうな細くしなやかで美しい指先とか
少し紅茶が熱かったのかふぅふぅ言いながら飲む様子とか
いつもと変わらないはずの一挙一動がやたらと鮮明にスイスの脳裏に焼きつく。
そして油断した時に交差する視線と視線。
真正面にいるのだから目が合うのは当然といえば当然なのだが
今のスイスには何故だかそれがとても気になってしまい、慌てて大げさに目を逸らす。
リヒテンシュタインからの視線が熱を持っているように思えて、じりじりと焦がされる錯覚さえ覚えるのだ。
いや、実際に熱を伴っているのかもしれない。
頬に手を当ててみると熱くなっているのを感じた。
頬だけではない、その頬に触れている手や、顔から足のつま先に至るまで全身がやけに熱い。
熱くて熱くて、リヒテンシュタインが居なければ今すぐに服を脱ぎ捨ててしまいたくなる程に。
「お兄さま」
リヒテンシュタインの声でスイスは我に返る。これで2度目だ。
「先ほどから様子がおかしいです。」
いつも以上に眉尻を下げ首を傾げ兄の挙動を訝しんでいる。
確かに、とスイスは思う。
頭の中は靄がかかったような状態でうまく思考がまとまらないし、妙に熱く感じられる体の内から発せられる熱。
何となく鼓動も若干早くなっている気もする。
「うむ、風邪でもひいたのかもしれんな」
目を伏せ腕を組み自身の最近の不摂生を色々と振り返っていると、間近に感じる人の気配。
「ぇ、な!?」
心配して身を乗り出したリヒテンシュタインがスイスの目の前に居た。
「じっとしてくださいまし」
慌てふためくスイスのその頬をそっと両手で固定して、そしてこつんと額を合わせる。
「確かに…熱があるようですね。熱いです。お顔も若干赤くて…」
リヒテンシュタインが分析してくれてはいるが、その声はほとんどスイスの耳には届いていなかった。
息がくすぐったいくらいのすぐ間近にリヒテンシュタインの顔。
ティーカップ越しに眺めていた時とは比べ物にならない距離にスイスの心臓が早鐘を打ちだした。
息がかかるという事は自分の呼吸も相手に伝わるはずで
努めて平静な呼気を装おうとするが、荒ぶる鼓動のせいでうまくできている気がしない。
そんな中、吐息に乗ってほのかな甘い香りがスイスの鼻腔をくすぐった。
目線をリヒテンシュタインの口元に向けると、紅茶に入れていた蜂蜜の効果だろうか、唇がてかりを見せていた。
淡く艶めいた薄紅色の唇は花びらを思わせ、そして花びらから漂う甘い蜜の香り。
まるで。
まるで、自分はその美しさに引き寄せられてしまった蜂のようで。
ふらふらと。
気がつけばスイスはリヒテンシュタインに自分の唇を重ねていた。
…
…
…
どれくらいそうしていたのだろうか。
酸素欲しさに唇が離れた頃、
スイスの頭の内では欲望の大波が去り、理性という無限の砂浜がただ延々と広がっていた。
さっきまでの熱が嘘のようにサーっと音を立てて全身から血の気が引いた。
リヒテンシュタインは俯いて指で口元を押さえたまま動かないでいる。
「ぁっ、……っぅ」
何か言おうとするスイスだが、うまく言葉が紡げなかった。
口から出るのは言語になり損ねたかすれた音だけで。
固く目を瞑り思案する。
何を言えばいい?妹の唇を奪っておいて。
気の迷いだったと弁解すればいいのか、
すまないと謝り倒せばいいのか、
思い浮かぶのは何の謝罪にもならないくだらない言い訳ばかり。
いっその事と自決の二文字がスイスの頭をよぎったその時に。
「…にい…さ、ま」
小さくも、だが確かに聞こえる凛とした声。
スイスが恐る恐る瞼を開くと、リヒテンシュタインがこちらを見据えていた。
瞳の色はどこか虚ろにスイスを捉え、その心情を伺い知る事はできない。
「兄さま…、あのっ…」
そこまで言って、リヒテンシュタインは一瞬だけ目をぎゅっと閉じ、息を吸う。
リヒテンシュタインは大人しいが、言うべきことははっきり言う性格だ。
怒りか、悲しみか…自分のしでかした行為はリヒテンにどんな思いをさせてしまったのか、
一体自分にどんな断罪が待ち受けているのか、スイスは神妙に言葉の続きを待った。
そしてリヒテンシュタインが口を開く。
「さっきの………もう一度…」
と。
予想だにしなかったその反応にスイスは耳を疑った。
「兄さまの風邪が移ってしまったのでしょうか…。実は私も、体が熱くて…」
そんな短時間で移るものかと思いながらも。
「でも、さっきの…、触れている間だけは…少しだけ楽になって…」
口付けにそんな効果があるものかと思いながらも。
「そう…か」
スイスは言及をしなかった。
自分が知らないだけでそういう事もあるかもしれないと、彼にしては甘い判断を下していた。
「だから…、兄さま………」
お願いします。
そう催促したリヒテンシュタインの頬は紅潮し、虚ろだと思っていた瞳は熱に蕩けたものだった。
この表情を前にして断れる兄など世界中のどこにいるものか。
…もしや自分は引き寄せられたのではなく、リヒテンシュタインが自分を引き寄せたのではないだろうか。
スイスがそんな都合のいい解釈をしてしまう程に今のリヒテンシュタインはいつにない魅力があった。
その魅力の正体について深く考える余裕などとうになく
誘われるがままふらふらと再び唇へと向かっていった。
ちゅ、っちゅ、ぱ…
唇の隙間から漏れる水音。
触れ合うやいなや、まるでそうするのが当たり前だったかのように
どちらともなく舌を交えての濃厚な口付けが始まった。
唇に付いていた蜂蜜を舌で何度も往復させて舐めとる。
すると今度は舌に蜂蜜の味が移るのでお互いの舌同士を絡ませあって味わった。
口の中にはチョコレートの味もまだ残っていて逃すまいと貪欲に吸い付いた。
まったく言葉どおりの痺れるような甘さに二人は酔いしれ
ティータイムの名残を口全体を使って堪能し、
とうとう何の味がしなくなっても
今度は唾液の交換とばかりに、べとべとになった口の周りも気にする事もなく相手の唇を貪りあった。
「…ん、ちゅ、ぁっ、…はぁっ」
たまに聞こえるリヒテンシュタインの呼吸と喘ぎが一緒になった音韻にスイスはいやおう無しに体の熱が高まるのを感じた。
怒っている時よりも更にポコポコと沸いて茹った頭で、朦朧ともう止まることはできないとだけ自覚したのだ。
そうなるとテーブルを挟んでの逢瀬がもどかしくなり、もっと直接リヒテンに触れてみたいという欲求が高まった。
「ぁ……」
惜しみながら一旦唇を離すと、完全にとろけきったリヒテンシュタインが物足りなさげな顔でスイスを見つめた。
「場所を変える」
「ぇ…、兄さ………っきゃ」
それだけ言うとスイスはリヒテンシュタインを腰のあたりで抱きしめて、そしてそのまま持ち上げてしまった。
小柄なリヒテンシュタインとは言え、ひと一人を抱え前もよく見えない状態ながらも
しっかりとした足取りでずかずかとソファーへ向かう。
これからの事を考えるとソファーとはとても無粋な場所に思えた。
できる事なら寝室のベッドの上にまで運んでやりたがったが
今やもう最低限の理性しか稼動していないこの状況では無理な話だった。
そもそも抱きかかえ方にしてももっと少女が好みそうな色気のある方法もあったろうに、
それに成り行きでこんなことになってしまったことに、などなど
申し訳なく思うことが山のようにでてくるが
口に出したらきっと心根の優しい妹はこんな不肖の兄でも許すのだろうから。
テーブルからソファーまでの移動の間、スイスは心の中でただひたすらに懺悔した。
そして歩いて数歩。
ソファーに到着し、ゆっくりとリヒテンシュタインを横にして寝かせ自身もその上に覆いかぶさった。
「リヒテン…」
「兄さま…」
兄妹は見つめあい、移動の間に離れていた分を取り戻そうとまた二人の唇は重なり合った。
至極薄い皮膚越しに体温を伝えながら触れ合う行為に快感を見出せない訳がない。
ましてやその相手が自分の大切な人であればことさらに。
スイスは夢中になってリヒテンシュタインの唇をついばみ、舌を食み、口内をねぶり、がむしゃらに快楽を追求した。
リヒテンシュタインも甘く激しい刺激に翻弄されながら
兄の頭が動くその度に首の角度を変えて行為を迎え入れやすくさせていた。
「ん、ふぅ…、ふぁ、…にい、さまっ」
肺活量の違いで息苦しいだろうに、
それでも文句も泣き言も言わずにただ受け止めてくれる妹をとてもいじらしく思ったスイスは
リヒテンシュタインの頭の下に右手、腰の辺りに左手を差し込み少し加減して抱きしめた。
すると呼応してか、リヒテンシュタインも自分と兄の胸の間でかしこまっていた両腕を
もぞもぞと引っ張り出して兄の頭を抱え込んだ。
もちろん唇はずっと塞ぎあったままで。
かってないほどに距離が近くなった二人の体。
密着を邪魔する衣服の存在がどうにもじれったくなったスイスはリヒテンシュタインの首元のリボンに手を触れた。
少し引いただけで何の抵抗もなく解けたリボンに気をよくし更に背中に手を回す。
「っ……!!」
首のリボンが解かれ、今度は背中のファスナーに手をかけられて、
徐々に肌が外気にさらされていく恥ずかしさから
思わずスイスに縋り付きたくなったリヒテンシュタインだがぐっと堪えた。
むしろ兄の助けになればと、覆いかぶされ唇を奪われながらの視界が当てにできない状態で
手探りで兄の胸元に触れ、そのシャツのボタンを外そうと試みた。
そんなリヒテンシュタインの行動に驚いたスイスだったが
妹の奉仕精神への嬉しさと、たどたどしい手つきで胸元をまさぐられる興奮の方が遥かに勝りそのまま好きにさせた。
「ん、ちゅっ、…ふ、っちゅ、はぁっ」
どちらともつかない呼吸と上擦る声。
濃厚な口付けを交わし舌から、唇から伝わる快感の波に揺さぶられながら二人はお互いの服を脱がせあった。
後は下着を残すのみという段階になった時、やっと唇の接着が外れ相手の肉体を観察する余裕があらわれた。
スイスの体は己の身一つで生きてきただけあってしなやかな筋肉で引き締まり
男性的でとても精悍なものだった。
リヒテンシュタインの控えめな抑揚ながらも、染み一つなく白く透き通った美しい肢体は
興奮ですっかりピンク色に染まってしまっていた。
互いが互いの姿にしばらく見惚れ、そしてますます興奮が高まった。
リヒテンシュタインの体でスイスの目が真っ先に向かったのが男のものとは違う、丸みを帯びた胸だった。
下着を外して直に触れてみたいと欲望が働き手を伸ばす。が。
しかし、それをリヒテンシュタインが下着の上から手で覆い隠してしまった。
スイスがその気になればガードしている手など簡単に剥がす事はできる。
実際欲望の赴くままに剥ぎ取ってしまいたい気持ちでいっぱいだったが、兄として人間として、理性を総動員させてなんとか抑えた。
リヒテンシュタインに問いかけてみた。
「…リヒテン」
「………」
無言でふるふると首を横に振るリヒテンシュタイン。
「…その手をどけてほしいのだが」
「………」
やはり無言でふるふると首を横に振るリヒテンシュタイン。
今まで素直に行為に応じていたのに、ここにきて初めて抵抗らしい抵抗をみせた。
言葉こそ発しないもののその瞳は雄弁に「駄目です」と物語っている。
「………嫌で、あるのか…?」
肩を落として尋ねたスイスの姿は、リヒテンシュタインにはどれだけ落胆していたように写ったのだろうか。
この問いかけには大げさにぶんぶんと首を振った。
「いえ、私は、む、胸があまり、……豊かでない、ので…だから…その……」
あまり言いたくない事だったのだろう。
声は段々と小さくなって最後にはごにょごにょと何を言っているのかわからなくなってしまった。
男だと間違われた経験が今でも相当尾を引いているらしい。
あー……とスイスは声無く唸る。
確かにリヒテンは女性的な体型とは言いがたい。
だがしかし胸や尻がなかろうと、こやつは小さいながらに立派な物の考え方ができるし、
手先も恐ろしく器用であるし、料理も上手でどこに出しても恥ずかしくない淑女であるのに!
…と妹への無理解に沸々と憤ったが、怒りの矛先をどこに向けていいのかわからずに
結果、溜まった怒気は言葉の語気へと発散される。
「リヒテン、聞くのだ!」
「は、はい!」
突然大声をあげた兄に何事かとリヒテンシュタインはびくりと硬直してしまう。
「アルプス山脈は大変に美しく、且つ雄大である!」
「……………はぁ」
唐突な兄の発言に妹は相槌を打つ事しかできなかった。
「知っての通り、我が家はそんな山々の中にあってだな!」
「…はい」
リヒテンシュタインは聡い。
この時点でおおよそ兄が何を言わんとするか理解し
今からの自分へ向けられる言葉を一言一句記憶し聞き逃すまいと意識を耳に集中させた。
「麓は岩が多くて作物が育たない!高所は高所で管理が大変であり、コストもかかる!
だから…!だから、山というものは、その、大きければいい、というもの、でもなく」
喋っている最中に少し冷静になったのか、勢いがトーンダウンしてしまったスイスだったが
伝えたい事ははっきりとリヒテンシュタインに伝わっていた。
「つまり、近くに臨むのならば、控えめな、…手ごろな大きさくらいでいいものなの、だ」
言い終えて、気恥ずかしいのかスイスはごほんと咳を飛ばした。
綺麗に飾りつけた台詞ではなく
実に兄らしい、言葉を尽くしてくれた精一杯のフォローにリヒテンシュタインは何だか嬉しくてくすぐったくなり
完全にわだかまりは解けてはいないものの、胸を覆う手の力をそっと緩めた。
その様子を見て取ったスイスがとどめの一言を放つ。
「我輩はリヒテンの全てを受け入れる。兄を、信じてほしいのだ」
そこまで言われてはリヒテンシュタインも折れるしかない。
「私は、いつでも兄さまを信じてます」
二人は目を合わせ、軽く口付けをして
リヒテンシュタインの手にスイスの手がそっと重なり、そのまま胸の上から滑らせた。
胸の下着の留め具を外すと、
確かに豊かとは言えないものの、芸術的なまでに美しい形の胸が姿を現した。
なだらかな丘に咲いた桃色の小さな蕾はこれまでの経緯の中で既に硬くなってしまっていたが
ここにきて外気と人の目にさらされた事への刺激によって覚醒し、
更に限界まで膨らもうとスイスの見守る中、ゆっくりとその形を変えていった。
「おぉ…」
感嘆の声をあげるスイス。
「やぁ…、みないで、くだ、さ………」
一方リヒテンシュタインはあまりの恥ずかしさに消えてしまいたい思いでいっぱいになってしまい顔を手で覆ってしまった。
リヒテンシュタインのお目付けが無くなった今この隙にスイスは蕾をぱくりと咥え込んだ。
口に含んで舐めあげたり甘噛みして味わったその感触はグミキャンディを思わせた。
上下の唇で蕾を挟み、舌をその先端に擦り付けその形と硬度を丹念に確かめる。
「…っん、ぁ、あぁっ…」
胸から伝わる生まれて初めての感覚にリヒテンシュタインは戸惑い悶えた。
体の内側から広がる痺れとも疼きともとれない何かから逃れる術を探ろうと手は彷徨い、結局は空を握るに至る。
そんなリヒテンシュタインに構う事なくスイスは胸への愛撫を続けた。
赤子がそうするように音を立てて吸ってみたりもした。
もちろん何がでるはずでもないのだが
本能というものなのだろうか、心はどこか落ち着いて満たされる。
蕾の外周にも舌を這わせ少し強めに吸いついてみると、唇の形に小さな痕が残ってしまった。
痕を見て、意外と簡単についてしまう事に少し驚き、
同時に白い肌に赤い色はよく映えるものだともスイスは思う。
こんなに簡単に付くものならば、と
首を動かし、胸からアバラ。へそに、脇腹、二の腕に。
リヒテンシュタインの胴体をキャンバスよろしく舌と唇で自由に印を付けてまわった。
この行為は肌の色とあいまって、一面の銀世界に足跡をつけてまわった幼い時分を彷彿とさせた。
未開の土地に痕跡を残す事で自分のものにしたかのような錯覚。
拙い征服欲や独占欲からくるたわいもない遊びだったのだろうが
なるほど。なかなか馬鹿にできたものではないなと痕を付けるのにしばし夢中になった。
「や、ぁっ、にいさ、まっ…」
そこかしらをついばんでいると、何やら皮膚の薄い場所を攻めた時に一段と反応が良くなる事にスイスは気が付いた。
それならば重点的に攻めてやろうと
鎖骨の間の窪みを舌でえぐるように擦ると、声にならない声をあげリヒテンシュタインは思わず顎をのけぞらせた。
好機とばかりに無防備になった喉元にスイスはかぶりついた。
もちろん歯を当てるような事はないが、ぱくりと大口で喉笛を捕らえたそのポーズは肉食獣の捕食を連想させる。
喉の輪郭に沿って舌を這わせると、その線の細さや喉仏がないあたりに
改めてスイスはリヒテンシュタインが異性であることを実感した。
そしてやはり急所であるだけに神経が集中しているのか反応は一際だった。
「あっ、に、いさまっ、ぅぁ、んっ」
いくつもの痕を付ける為スイスが唇を動かす度にリヒテンシュタインはぞくぞくと打ち震えて声をあげ、
その声は喉の振動を通してスイスに伝わった。
耳よりも先に届く直接的な反応にスイスの自尊心は満足し興奮はピークに達しようとしていた。
先ほどから聞かん坊であった体の一部分がいよいよ我慢の限界を主に訴えていたのだ。
スイスとリヒテンシュタイン。二人の下着には染みが浮き出ていて準備はとっくに万端だった。
喉に食らい付いていた口を剥がし、おもむろに体を起こしたスイスは
とうとう最期の砦であるリヒテンシュタインの下着に手をかけた。
腰に手をやり、上から下へ、骨盤のラインに添って滑らせ下着の中へ潜り込ます。
そのまま手の甲に下着を引っ掛けて、ずりおろそうとしたのだが。
「っぅ…!」
そこでリヒテンシュタインの体が見て判るほどにこわばってしまった。
生まれたままの姿になる事に対しての不安と恥ずかしさからくるものだった。
決して嫌ではないはずなのに、硬直してしまった体をどうすることもできなくて。
力を抜こうとすればするほど逆に力んでしまう自身にリヒテンシュタインは軽く混乱して泣き出したくなってしまった。
「リヒテン」
頭上に聞こえる自分の名前。
しかし今この状態で兄を見てしまったらそれこそ瞳に溜まった涙が溢れてしまいそうなので目を伏せ顔だけ向けた。
すると頬に当たる暖かく柔らかな感触。
唇を、落とされていた。
頬だけでなく、額や、瞼や、顎や、そして唇に、幾度と無く。
少し触れるだけの本当に軽い口付けだったのだが、
不思議な事に唇が触れた場所から何だか温かいものが芽生え、
それが体のこわばりを溶かし自然と体の力は抜けていった。
「緊張してるのは…我輩も、同じである」
「…兄さま…」
兄の優しさにリヒテンシュタインはさっきとはまた違う理由で涙が溢れ、少し零れてしまったが
今度は隠さずにそのままの顔をさらけ出した。
最後に一度、リヒテンシュタインの方から唇への口付けを瞳で兄に懇願し、成就されると満足そうに微笑んだ。
それからスイスの手は再び下着を脱がす事に専念し、リヒテンシュタインも腰を浮かせ兄の作業のサポートをする。
閉じた両足から下着が抜け落ちると、文字通りにリヒテンシュタインは一糸まとわぬ姿になった。
可憐にして扇情をあおる少女体型を前にスイスは思わずごくりと生唾を飲み込み、心の臓と自分自身が痛みを覚えるほどにに力強く脈打った。
手早く自分も下着を下ろして脱いだ下着はそこら辺に投げ捨てた。
広くはないソファーの上で、仰向けのリヒテンシュタインに足を開かせてスイスがその間に納まった。
一回、深く深呼吸をする。
精神を落ち着かせ、スイスは怒張しきった自身の根元に利き手を添え、
空いた手をリヒテンシュタインの片膝に置いた。
リヒテンシュタインの足の付け根は既にあふれ出した蜜でとろとろにぬかるみ
怒張を少し滑らせただけで淫靡な音を周囲に、二人には震える程の快感を巡らせた。
欲望の進入口を求め暴発の危険性を孕ませながらもスイスは自身の先端を旋回させると
それらしい窪みを探り当てたので狙いを定め、ぐっと腰に力を込めた。
「兄さま、待っ…!」
切羽詰まった自身に急かされ、リヒテンシュタインの言葉も待たず腰を進めた。
恐ろしく狭い、というのが第一印象だった。
始めは軽い力で押し入れようとした。
すると少しも進入しないうちにすぐさま肉の壁に跳ね返され押し戻されてしまった。
すさまじい弾力だった。
こんな場所に自身が全て埋まるのかとスイスが更に腰に力を込めると、
リヒテンシュタインがとうとう耐えかねて声をあげた。
「兄さま!そこっ、違います……」
………
迷ったあげく気がついたらリヒテンシュタインを侵攻していた。
これが後にいううっかり侵攻と呼ばれるものでありました。
まぁそんなこともありますよね。
閑話休題。
「………すまない」
「……いえ…」
改めて、指で軽く秘所をなぞり今度こそ正しい場所にあてがった。
…あてがったはいいものの、先ほどのうっかりミスを引きずってかスイスの自身は少ししぼんでしまっていた。
8割、といったところか。
何とか行為には差し支えはなさそうではあるが
思うところのあったスイスはソファーの淵にしがみついていたリヒテンシュタインの手を取って自らの昂りに触れさせた。
「え?に、兄さま!?」
兄の突然の行動と初めて触れる感触に驚きのあまり1オクターブも高い声をあげるリヒテンシュタイン。
反射的に手を離そうとするも一回りも大きい兄の手のひらに覆い被せられてしまってはそれも適わない。
むしろ逃すまいと手に力を込めるものだから
兄の大切な部分を強く握る形になってしまい痛くはないかと心配になってしまった。
もっともスイス自身は痛みを覚えるどころか、
リヒテンシュタインのきめ細かくすべすべした手肌に触れられた事で元気を取り戻し
握っている手を窮屈だと言わんばかりに律動で抗議を訴える程になったのだが。
びくびくと手の内で力強く跳ねる兄の分身がリヒテンシュタインには熱くてとてもとても逞しいものに思えた。
今からこれが…。
思った事がほぼ同時に音になってリヒテンシュタインの耳に入ってきた。
心の内が知らず声に出てしまったのかと驚き目を見開いたがそうではなかった。
兄が。何事にも真面目に取り組む人だが、その兄がいつも以上に真剣な表情で口を開いていた。
「今からこれを、お前の中に入れる訳である…が、痛いと聞く。
痛かったら素直に痛いと言ってよい。
耐えられなかったら我輩を突き飛ばしてでも中断させて良い。
…無理はさせたくないのだ。できる限り我輩も…善処は、する」
最後の方はどこぞの日本みたいな言い回しになってしまったな、とスイスは心中で軽く苦笑する。
ともあれ首の皮一枚程度の薄さの理性でもまだ残っているうちに意思確認をしておきたかったのだ。
同時にこういう言い方をした自分は卑怯者だと痛感しながら。
自分はリヒテンの性格を知っている。こんな風に言えばリヒテンはきっと…。
「いいえ。私、兄さまを受け入れてみせます」
どこか表情に緊張の色を滲ませながらも、スイスの目を見てリヒテンシュタインははっきりと答えた。
やはり、スイスの予想と違わぬ。心のどこかで期待していた答えが返ってきた。
「そうか」
もう相槌を打つのがやっとだった。
自己嫌悪は止まらないが、欲望はもっと止まらない。
「では、いくぞ…」
答えは待たず、宣言だけを済ませ
あてがっていた自身を静かに秘所に沈ませていった。
先端を少し埋めると、たっぷりと蓄えられていた蜜が秘裂からとろりと溢れ出た。
「ん、…くっ」
同時に電撃を受けたかのような痺れる快感が全身を巡り思わずスイスの呼吸は乱れた。
存分に潤ったリヒテンシュタインの内部は、スイスの侵入を難なくと受け入れて
このままどこまでも入り込めてしまうのではとスイスは思った。
しかしほんの僅か、先端が全て埋まらないうちから急激な抵抗に見舞われてしまった。
とろみを帯びた蜜液のおかげで摩擦は弱まっていても
それ以上に異物を押し返そうと自身を圧迫する力がすさまじく、今以上の進入を拒んでいた。
負けじと下半身に力を込めるも。
「っつ、うぅ…!」
くぐもった、辛そうな声がリヒテンシュタインからあがりスイスの心を痛めた。
すまないと声なき謝罪を繰り返しながら少しずつ、だけど確実に腰を進めていった。
ぬらぬらと自身を締め付け気を抜けばすぐに暴発してしまいそうになる快感の渦の中で
肉壁に押されては返し、押されては返しを重ねての小刻みな侵攻を続け、
ついに根元まで完全にうずめることができた。
先端は行き止まりを示しているかのような、周りの柔らかさとは異質の硬い壁に接触し
奥まで到達した事を理解したスイスは男としての満足感を得た。
ソファーには結合部からの鮮血交じりの蜜液が垂れていた。
「っ、っく、に、い…さまぁっ…、っ」
嗚咽の中で、リヒテンシュタインが兄を呼んだ。
「…痛むか…?」
痛みを与える事しかできない下半身にかわり
手のひらで破瓜の痛みに耐えるリヒテンシュタインの頭や顔を労わりながら優しく撫ぜた。
「痛いです。…でも、痛み以上に兄さまと結ばれたのが嬉しくて…」
リヒテンシュタインが微笑むと細めた瞳から一筋の涙が零れ落ちて、スイスの手が雫をそっと拭った。
「リヒテン…」
「ずっと…、ずっとこうなる事を夢見てました。夢のようです…。
痛みでも良いのです。
今この瞬間が夢でないと…私にもっと実感させてくださいまし」
伸びたリヒテンシュタインの両手がスイスの頬に触れ、指先は少しだけ髪に埋もれた。
そのまま重力にまかせ頭を下へ運び、唇の方へと引き寄せた。
リヒテンシュタインからの初めての口付けだった。
性格を表してなのかその動きはどこか控えめで
下半身の動きを再開させたいスイスにとっては正直物足りなさを覚えたが
拙いながらに一生懸命に口腔内を動き回る小さな舌からは
兄を想う気持ちが充分に伝わって、スイスもリヒテンシュタインの気が済むまで共に口付けに興じる事にした。
口付けによって二人に何度かの小さな快楽の波がもたらされた頃には
スイスの自身はリヒテンシュタインの内部に多少馴染んだ感があった。
「…動いてもいいだろうか?」
我慢の限界もそこそこだろうに、どこか遠慮がちに尋ねる兄をリヒテンシュタインは愛おしく思った。
スイスが今以上の快楽を望んでいるのは下腹部からの脈動を通じてリヒテンシュタインに伝わっていた。
それでも自分を気遣ってくれる事が嬉しくて。嬉しすぎて切なくて。
瞳からはまた涙が溢れ、問いかけにこくりと頷いた。
奥まで届いた自身を引き戻せば、蜜の染み込んだ内壁がその全体に吸い付いて離そうとせず
また奥までねじ込めば、侵入者を押し返そうとする力が働き結果締め付けが増して。
その瞬間毎に自身に与えられる感触は違うから、慣れることなどできるはずもなく。
あまりの気持ち良さにスイスは声が上擦りうまく呼吸ができないでいた。
「くっ、う…、っは…」
「あ、っはぁ、ぁ、にぃ、さまっ、にいさまぁっ」
リヒテンシュタインの方もその声色には痛みからくるものではない、ある種の甘さが混ざり始めていた。
結合している内部からじわじわとした熱のようなものが生まれ全身に広がり、
浮かされてしまいそうになる感覚にリヒテンシュタインは戸惑いを覚えた。
いつの間にか、ゆっくりだったストロークの感覚が短くなってきたその最中に
恥丘のあたりを三つ指で押さえ赤面しているリヒテンシュタインにスイスは気付いた。
「…む、どうした。痛む…のか?」
首を横に振るとリヒテンシュタインはスイスの手を取って、自らが押さえていた場所に宛がわせた。
「ここの中で、兄さま…が動いているのが、わかるんです」
確かに、見た目には何の変化もないのだがその場所を指で軽く押して神経を集中させてみると
内部の筋肉が自身の挿入時は収縮して硬くなり、引き抜くと弛緩して柔らかくなるのが伝わった。
そこで、スイスの最後の理性の糸がぶちんと音を立てて切れた。
最愛の妹の体内で自分自身の往来を実感したことによって限界が訪れたのだ。
スイスは突然リヒテンシュタインを包み込むように覆いかぶさり、
まるで自分の体を檻のようにして彼女をその中に閉じ込めてしまった。
そして逃げ道が無くなったリヒテンシュタインの、その秘所に、ひたすらに腰を打ちつけた。
「…っ、リヒテンっ、リヒテンっ!」
本能のままに最奥を目指して行われる激しい抽迭。
うわ言のように繰り返される自分の名前に反応する事もできないまま
リヒテンシュタインは激しい兄の責めに翻弄されてしまった。
「あぁっ、にい、さまぁっ!あ、はぁっ」
息も絶え絶えになりながら、手を伸ばした兄の背中は
じっとりと汗ばんでいてそのままでは滑り落ちそうで、だからぎゅっとしがみついた。
リヒテンシュタインに縋られて尚もスイスの動きは緩まる事はなく
むしろ肌と肌がぴたりと密着した事でより熱情が高まったのか更に速度は増した。
部屋には湿った水音と荒々しい呼吸と嬌声が入り混じった音が響いていた。
内部を突き上げられ擦られる度にそこから徐々にせりあがる不思議な感覚が自分を全て覆ってしまいそうで怖くて、
未知の感覚を恐れたリヒテンシュタインは兄を抱きしめる手に力を込めた。それでも。
一層締め付けを増したリヒテンシュタインの内部を抉りながらスイスは
理性は元より、肉体の我慢の限界が近づきつつあるのを感じた。
最後の一踏ん張りとくぐもった声を隠す事無くがむしゃらに、
蠢き纏わり付く内部の一番の奥深くに自身を届けようと力を込めて。
「にいさまっ、にいさまあっ!、あぁ、ああぁっ!」
「ん、くっ…!…っリヒテン!!」
互いを求め呼び合いながら、二人は同時に絶頂を迎えた。
リヒテンシュタインの最奥に辿り着いたと同時にスイスの自身は弾けた。
小刻みな脈動と共に注がれる大量の熱は奔流となり内部をあっという間に埋め尽くし、収まりきらない分は体外に溢れ出た。
じんわりと内部が熱に浸され広がっていく感覚にリヒテンシュタインは得も知れぬ満足感を味わい、
瞼を閉じるとそのまま意識は真っ白に溶けていった。
…
…
…
「…腰が」
ぽつりとリヒテンシュタインが呟いた。
「じんじんとして、…力が入りません」
恨み言ではなく報告のつもりで口にしたのだがそれでもスイスを狼狽えさせるには充分だったようだ。
「あー…、いや、その、…………すまない…」
欲望のまま乱暴に打ち付けてしまった事を思い出しスイスは心底申し訳なさげに謝った。
リヒテンシュタインの腰を引き寄せて慈しみながらその場所を撫ぜまわした。
行為を終えて少し冷静になった後、簡単な後始末を済ませた二人は
ソファーに腰を下ろし手近にあった一枚の毛布に仲良く身を寄せてくるまっていた。
「はしたないと叱られるのかもしれませんが…
このような格好で毛布に触れると、案外気持ち良いものなのですね」
着る物も取らず依然生まれたままの姿だった二人には、ふわふわの毛布の感触が実に肌に心地良かった。
意見に同意してスイスは相槌を打つ。
「しかし、肌が晒けている部分は冷えるであろう」
言葉の続きに照れがあるのか、視線をぐるりと一巡させてから。
「あー、だから…、だから、もっと我輩の傍に寄っても、良いのである」
「はい、暖めてくださいまし」
満面の笑みで答え、迷うことなく距離を詰めてきたリヒテンシュタインに
スイスは思わずたじろいで赤面してしまった。
「……うむ」
ぴたりと寄り添うと互いの体温や鼓動が肌を通して直に伝わり
行為の時の性急さを帯びたものとはまた別の気持ち良さに包まれた。
ふと、二人の目があった。
すると、そのままごく自然に唇をよせ口付けを交わしていた。
「…兄さま。私、幸せです」
「…そうか」
微笑むリヒテンシュタインに応えようと口端を緩めようとしたスイスだったが
不慣れさから、なかなかに不器用な形の口元になってしまった。
そんな兄を心から愛らしいと思ったリヒテンシュタインは自分の唇でその不器用な口元を隠してしまった。
…テーブルの上には置き去りにされて久しい、少し寂しそうなお茶や蜂蜜、チョコレート。
それよりも更にとろける甘さを堪能している二人の時間はまだしばらく終わりそうになく…。
…
…
…
後日。
「そういえば、先日のガラナチョコレート。いかがでしたか?」
日本だった。
ものすごく良い笑顔の。
外国嫌いのスイスではあるが、元引きこもり同士として何か通じるものがあるのか
たまにこうして家に呼び茶を共にする事があった。
「通販で見かけてついつい買ってしまったんです。
チョコレート消費大国のスイスさんに食べて頂ければと思って」
聞きなれない単語にスイスはピクリと眉を顰めた。
「…おい日本、ガラナとは一体?」
「南米産の植物です。栄養満点で疲労回復や滋養強壮!に効果があるんですよ」
滋養強壮の強壮の部分をやたらと強調した日本に
スイスはバレンタインの日の妙に熱だった気分の原因を見た気がした。
カチリと。常に携帯している銃の安全装置を外すと音が鳴った。
「…強壮の部分を詳しく聞かせて頂きたい」
「…男性自身をより逞しく、女性をソノ気にさせちゃう。大人のスイーツ新発ば…」
おそらくは商品のキャッチコピーであろう台詞を日本がぼそりと読み上げると同時に響く発砲音。
日本が腰掛けていた椅子の、その頭があった位置には弾痕が。
「…む、外したか」
弾丸を無駄にしてしまった事への反省はあれど、日本を打とうとしたその判断を省みる気は無いようだ。
「その様子だと【こうかはばつぐんだ】だったみたいですね」
素早く退避していた日本だった。
突き抜けるような笑顔の。
怒声と、発砲音と破壊音が鳴り止まない部屋の扉のその影で。
「大人の、スイーツ…」
日本の言葉を反芻する声。
スイスと日本の話をこっそり聞いていたリヒテンシュタインだった。
その手には件のチョコレート。
「これで…また兄さま、と…」
至極大事そうにチョコレートを胸に抱えぽっと赤らめた顔で、ぽつり。
その控えめな胸にはどんな思惑が渦巻いているのやら。
今日も世界は平和です。
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