【白い陵辱】
にょたりあ注意
「脱いで待ってるとは殊勝だな」
掛布を身体に巻いて待っていた。巻きついた布はぴたりと身体に合い、身体の線を
くっきりと際立たせている。加えて、顎から喉、肩、首から豊満な胸へと流れるラ
インは、抜けるような白さとあいまって、男たちの劣情をかき立てるのに充分だっ
た。凛として力強かった蒼い瞳も、今は力なく伏目がちだ。
ベッドの縁に腰掛けうつむくドイツを、4人の男たちが取り囲んだ。
「いいねぇ、でかくてごつい女と思ってたが、剥くとこんなエロい身体してたとは」
「…………」
「よ〜し! パパ、手マンで潮吹かせちゃうぞ〜」
「んなこと、じっくりやらせてやる時間なんかねぇよ! 後にしろ、後!」
「がっつくなよ、イギリス。前からドイツの巨乳に目を付けてたのは知ってるぞ」
「お前こそ、ドイツみたいにお高くとまった女をじっくりねぶってぐちょぐちょに
蕩かせてイカせまくりたいって、はぁはぁしながら言ってたじゃねーか! 万年
発情男!」
「俺はお前みたいに別に隠しちゃいねーよ! このむっつりスケベ!」
「ふたりとも、念願叶って…ってところだね」
ロシアが無邪気ににこにこ笑いながら言った。イギリスとフランスは顔を見合わせ、
それから決まり悪そうにイギリスが言った。
「あ、あぁ…、まぁな…。喧嘩してる時間が惜しい。じゃ、早速…」
「僕はみんなが使い終わってからでいいよ」
と、ロシア。
「こ、こんな可哀想なこと、やめようよー」
場の空気が一気に鼻白む。おずおずと発言したイタリアはすでに涙目だ。フランス
は目を眇めて舌打ちし、ドイツの肢体を覆っていた掛布を乱暴に取り去った。そし
て、ドイツの肩を突き飛ばし、仰向けに横たえさせる。
「おい、イタリア! 童貞捨てちまえよ!」
フランスが怒鳴りつける。膝裏から抱え、両の足を大きく開かせる。薄い金髪に覆
われた桃色の媚肉が男たちの前に無防備にさらされた。ドイツは抵抗しなかった。
全てを諦めたようにキュッと唇を噛んだだけだった。
「前ふくらませて、奇麗事ぬかすな! こいつとこいつの上司のせいで何人死んだ
と思ってんだ!」
イタリアは反論することもできず、力ずくで止めることはもちろんできず、ただお
ろおろとあたりを見回した。にらみつける2組の視線と、険悪な空気の引き金とな
った自分の発言にいたたまれなくなり、イタリアは部屋から出て行こうとした。だ
が、その腕をロシアが掴んだ。
「君はここにいるんだよ」
ロシアはにこりと優しくイタリアに笑いかけた。イタリアの腕に食い込む力強さと
は裏腹に。
先ほどドイツを倒れこませ仰向けにした姿勢のまま、イギリスとフランスはベッドの
両脇にそれぞれ陣取り、イギリスは口内奉仕を要求し、フランスは媚肉を舌で嬲って
いた。
「うっわ…、こいつ上手すぎる……」
と、イギリスは眉毛をしかめて呻き、
「処女みてーな色してるくせに、どんどん溢れてきてるぞ。あの男に仕込まれて淫
乱になっちまったか」
とフランスは愛液を飲み込むのが間に合わないのに気をよくしながら、ひとりごちた。
ドイツはベッドの端で頭を反らせ滑らかな首を伸ばし、その唇にイギリスのペニスを
受け入れていた。逆さまに咥えている窮屈さと、時々腰を動かし喉の奥を突いてくる
イギリスのために、苦しさからくぐもった嗚咽を漏らす。それがイギリスの嗜虐心を
あおり、イギリスはすでに限界が近かった。
反対の端では、床に膝をついたフランスがドイツの股間に顔を埋め、いやらしく舌を
使ってドイツの敏感な部分を責めていた。とめどない愛液と魅惑的な性臭。普段のド
イツからは想像もできないほどのギャップ。見上げると、金髪の茂みの向こうに揺れ
る巨大な乳房。百戦錬磨のフランスも我慢がきかなかった。さっきイギリスに「がっ
つくな」と言っておいて、この体たらくだ。
フランスが立ち上がり、ドイツの足を抱え込んだ。ぱっくり口を開けてひくついてい
るドイツの膣に挿入しようとした瞬間、イギリスがドイツの口からペニスを引き抜き、
豊満な乳房に射精した。精液がねっとりと絡みながら、伝い落ちていく。
呼吸を乱したふたりは互いに顔を見合わせた。
「もうイッちまったのか?」
「潮吹かせるとか言ってたくせに、もう入れんのかよ?」
そんな台詞が互いの頭に浮かんだが、いつものからかいも喧嘩もこの場では意味をな
さなかった。
視線を外すと無言のままフランスは自分が丹念に慣らし濡れそぼった膣へ挿入し、同
じくイギリスはドイツの巨乳を寄せ、精液にまみれた柔らかな谷間にペニスを挟み、
貪欲に腰を動かした。
ロシアは、そんなドイツの痴態を冷静に眺めていた。
従順だ。素直に喘ぎ、快感を得た様子を隠そうともしない。
陵辱を受け入れ乱暴にされることで自分を罰し、汚されることで浄化されようとしている。
この場での役割を完璧に務め上げることによって、堕ちることでプライドを保とうとしている。
一見矛盾しているが、今のドイツには男たちの下卑た欲望に蹂躙されるのも、淫乱な売女呼ば
わりされるのも、どうでもよいのだろう。
(あの狂った男を元首にした罰か…)
その罰にこの陵辱劇を利用している、とロシアは考えた。
死ぬほど恥ずかしく悔しいに違いない。だが安心してもいるのだ。
意に染まないのは嫌がる表情から明らかでありながら積極的なのは、贖罪の手段の一つ。
けじめ。禊。
「…気に入らないな」
ロシアは低く呟いた。
イギリスとフランスは離れていった。ベッドの上には精液にまみれたドイツがひとり取り残さ
れ、ぐったりとその身を横たえていた。
ロシアは掴んでいたイタリアの腕を離した。それから、ドイツに近寄り、体液に濡れた顔を間
近に覗き込んで、優しく囁いた。
「しばらく休むかい?」
ドイツは無言で足を開いた。その申し出を撥ね付けるように。
ロシアは半ば予想していたが、ドイツのそのような態度が気に入らなかった。だが、同時に予
想通りであることを望んでもいた。ロシアはコートのポケットからウォッカの瓶を取り出し栓
を開けると、ドイツの腰を高く持ち上げ、その窄みに瓶の口を突っ込み、ウォッカを注いだ。
ウォッカ。アルコール度数96の火の酒。
一瞬冷たい液体が体内に入ってきたと思うと、すぐに焼け付くような熱さに変化した。下腹部
から熱は痛みのような感覚を伴って急速に全身に広がった。頭を殴られたような衝撃が走り、
ぐわんと視界が歪む。
「…か…は……、あ…、ああぁ……」
ドイツの世界がぐるぐると回った。寝ているのに、平衡が保てない。心臓が悲鳴を上げて早鐘
を打ち、胸を内側から破りそうだ。胃がむかつき、吐き気に襲われる。
ロシアは身体を痙攣させるドイツを放っておいてゆうゆうとコートと服を脱いだ。イギリスと
フランスはあまりの事態に止めることも忘れ、茫然としていた。
裸になったロシアはドイツの身体を軽々と抱え上げると、ベッドの端に腰掛け、持ち上げたド
イツの窄みにペニスをあてがうと、そのままドイツの身体を落として尻の中に挿入した。
ドイツの内部のアルコール分が、粘膜を介して吸収され、酔いが回り、ロシアは満足げにため
息をついた。
身体を引き攣らせるドイツを優しくあやすようにして、落ち着くまでロシアは待った。
「あ…、あ……」
ドイツは浅い呼吸と痙攣を繰り返し、足をMの字に大きく開かれ、ロシアの為すがまま、
あれほど嫌悪していた不浄の場所を突き上げられる快感を受け止めていた。
ぐずっていたイタリアは、この一連の光景に泣くことも忘れ、イギリスとフランス同様、
茫然と見つめていた。そんなイタリアにロシアが声を掛けた。
「イタリア君はしないのかな?」
「だって…、ひどいこと、できないよ…」
そう言いながらも、ズボンの前は限界まで張り詰めていた。
「戦勝国の特権だよ? 『君だって』『一応』戦勝国なんだから」
ロシアは意味ありげにアクセントをつけて喋った。
「ここの締まりもいいよ。まだ充分楽しめる……」
ロシアはドイツの肩口に噛み付いた。それから、片手で大きな乳房を揉み、頂の蕾を捻
り上げた。刺激がドイツの下腹に直結し、中に出された白い精液がごぽっと音を立てて
あふれ出た。それらを太い指でことさらに広げ、イタリアに見せつけた。
先刻までイギリスとフランスに代わる代わる犯されていた痴態もあいまって、未経験の
イタリアには効し難い光景だった。
「ドイツ…、やらしい…」
熱に浮かされた目のイタリアはふらりと前へ一歩踏み出した。のぼせたように頬が上気
している。
「い、嫌! 来ないで…!」
ドイツは鋭く叫んだ。今、イタリアにまで犯されたら確実に理性が飛んでしまう。
ドイツのその言葉は鞭のように響いた。イタリアはひどいショックを受け、傷つ
いた顔で言った。
「イギリスやフランス兄ちゃんやロシアさんは良くて、俺はダメなの?
俺が裏切ったから? 枢軸を抜けて、ドイツが負けちゃったから?」
そうじゃない、とドイツは心の中で叫んだ。イタリアが裏切らなくても敗れただ
ろう。あんな非道を為す者は、いずれは滅びるものだ。そして滅びた。それだけ
だ。
砂漠に水を届けたのは、あの狂った男のくびきからも、血塗られた仕事からも逃
れられた唯一の時間だった。
手のかかる弟のような存在。恨んではいない。憎んではいない。だから…。
それを言いたかったのに、言葉が詰まった。
「やめて……」
その言葉だけが唇から零れ、ドイツの瞳から涙が溢れた。暗黒の日々の中で、イ
タリアの能天気な笑顔が救いだったのだ。
しかしその涙を、泣くほど嫌なのか、とイタリアは誤解した。ロシアに貫かれた
ドイツの前に立ち、ベルトを外し、硬く立ち上がった、先走りにまみれたペニ
スを取り出した。
「嫌っ! 入れないで…!」
頭を振って必死の拒絶を示した。アルコールに冒された頭に、きしむようにひど
い痛みが走った。それでもドイツは夢中に頭を振った。
「ドイツ…! ドイツッ!」
ぐぶ…と音を立てて、イタリアのペニスがドイツの中に飲み込まれた。
「いやああああっ! ああああああああぁぁぁぁっ!」
ドイツは頭を仰け反らせ、絶叫した。
「君たちふたりとも壊れちゃえばいいんだよ」
背後のロシアが、無邪気な子供のような、それでいて地の底から響くような声で呟いた。
瞳孔が開いた瞳から光は失われ、瞬きもせず、涙の跡だけが光を反射している。
「イタリアは?」
「まだドイツのこと犯してる。犯ってないと俺らに取られると思ってんな、あれは」
「ロシアは?」
「見てるよ。犯りもしないでにこにこしながら」
「イカれてやがる…」
「ああ。ドイツの奴、木偶みたいになってたぜ」
(いや、あれは壊れたマネキンだ)