おふろの国家様
割と恒例な国家達の世界会議、その日は日本で開催され、場所は日本の別荘の一つである山奥の大きなお屋敷だった。
いかにもな和風造りで国々はハイテンションになり、その日の会議もグダグダのまま終わった。
「そういえば、お風呂なのですが」
夕食の席での屋敷の主である日本の言葉。その台詞に国々が反応する。
そう、彼らは数千年の時を経ているが気持ちだけはまだまだ思春期並であった。特に男性陣。
「温泉が出ていまして、炭酸水素系で効能は切り傷ややけど、美肌効果などもあります」
日本の最後の言葉に女性陣が歓声をあげた。彼女たちもまた、美容には拘りがあるようだ。
「ピンクの布がかかっているのか女性のお風呂、青の布が男性のお風呂となっています」
「はいはーい! しつもーん!」
間延びした声で手を挙げるのはイタリアだった。日本が視線を向けると彼は勢いよく喋りだす。
「ねえねえ日本、日本のオンセンって『コンヨク』ってヤツじゃないのー?」
「ああ、お兄さんも是非その日本の文化体験したいんだけどな。あ、深い意味は無く乳比べとか考えてないし」
イタリアの発言に便乗したフランスがハアハアと息を荒げながら余計なことを言う。
「……混浴にしますともれなく温泉が血染めになってしまいますので」
そう言いながら日本はチラリと視線を投げかける。
そこには銃を入念に手入れするスイスと相変わらずハイペースでウォトカを飲むロシアの姿があった。
男性陣が二人に視線をやると、スイスは無言の圧力を効かせ、ロシアはにこりと微笑む。でもコルコルという書き文字が背景に見える気がする。
そこから男性陣は何となく無言になってしまい、ダルダルでグダグダのまま宴会は終わった。
********
「うわー。広いんですねー!」
セーシェルの声が露天風呂に響き渡る。女性陣は内風呂で体を洗ったのか、火照った肌に濡れ髪が張り付いている。
前を歩くセーシェルはトレードマークのリボンを外し、褐色のすべらかな肌を見せて温泉へ飛び込んだ。
その様子を穏やかに眺めながら、ハンガリーとウクライナが円やかなバストを揺らしセーシェルに続く。
「うっすら雪があるんだね。こういうのミヤビって言うんだっけ?」
「……雪なら見慣れているじゃない、はしゃがないでよ姉さん」
後ろから辛辣な言葉を投げかけるのはベラルーシだ。うっすら積もる雪のような透き通る肌は湯の中でうっすら色づいている。
「でも、このようにうっすらとした雪景色に星空は計算しつくされているようですわね」
リヒテンシュタインは上を向きながらそう呟く。ほっそりとした体躯は少女のものながら、美しい魅力がある。
「そういえば台湾ちゃんって一時期日本さんと暮らしてたんだっけ? やっぱオンセンとか来たりしたの?」
岩のふちに乗り出しながらベルギーは台湾に微笑みかける。
ツリ目がちながらも優しげな口調のベルギーは、ウェーブがかった金髪を揺らながら首を傾げる。
「あ、まあそうですね。あの時は日本さんのお背中流したりしていました」
そう答える台湾は頬を朱に染めながら答える。この中で唯一の艶やかな黒髪は湯に浸り扇のように緩やかに広がっていた。
そのころ男風呂では色々とカオスな光景が繰り広げられていた。
「おい日本今の話は聞いたことねーある。どういうことか説明しろ」
「やだなぁ、昔の話ですよ中国さん。あ、ちょっと目がマジじゃないですか痛い痛い」
先述の日本氏のsnegな同居話から発生した、台湾の兄君との修羅場。
「ベラルーシちゃんが……隣に、隣に」
「ちょ。リトマジ落ち着けだしー! つか鼻血! 鼻血出とる!」
片思いの少女が隣で入浴をしているだけで色々と膨らませちゃったバルト三国長男・リトアニアの血溜り。
「いや、お兄さんは覗いちゃう! 隣の桃源郷覗いちゃうよ絶対!」
「後ろでスイスが準備万端なんだから俺まで巻き込もうとするなばかぁ!」
「……小便は済ませたか? 神様にお祈りは? フロのスミでガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOKであるか?」
どこかで聞いたことあるセリフにて温泉覗きイベント中止のお知らせが流れたり。
あとはまあイタリア兄弟が泳ぐのをドイツが止めたり雪見酒をウォトカでやったりと割と収集がつかなくなっていた。
「そっかー。日本さん優しそうだもんね。言いたくないけど、スペインはわりとアレで……Sっぽかったから……」
ベルギーはそうため息をつきながら湯をすくい方にかけた。湯は肩を滑り胸のあたりで雫に変わる。
「ええっ!? スペインさん優しそうじゃないですかー。さっきもトマトくれましたし」
ベルギーの爆弾発言にセーシェルはすっとんきょうな声を出す。
「誰にでも若い時の過ちってあるしね……やんちゃだった時代とか」
ハンガリーは遠い目をしながらセーシェルの呟きに答えた。それに反応したのはリヒテンシュタインであった。
「あら? でしたらハンガリーさんにもそのような時がおありでして?」
「あ、いや……それはちょっと……」
リヒテンシュタインの純粋な瞳に見つめられ、ハンガリーはますます視線を遠くの月へと向けた。
黒歴史は隠すのに必死はハンガリーであったが、嫌な巨乳のお姉さんはそれを許そうとはしなかった。
「あのねあのねー。ハンガリーちゃんはー、昔自分をおと……」
「おひゃあああああああああああああああっ! ウクライナちゃんダメっ!」
「ひゃあ!」
奇声を発しつつウクライナの発言を抱きつく形でハンガリーは必死に自分の黒歴史発掘を止める。
「えっ? そんなに恥ずかしいことじゃないじゃないかなー?」
「いや、言わないで欲しいの! ね? ねっ!?」
「う、うん。ハンガリーちゃんがそう言うなら言わないけど……」
半ば最後の強く言う口調は彼女の騎馬民族的な本能を彷彿とされる視線であった。
「あははははー。お姉ちゃんは相変わらずKYだなぁ」
ロシアは手元に一升瓶を抱えながら女湯のやりとりに耳を傾ける。そこにウクライナよりもタチの悪いAKYが口を挟む。
「それよりも俺はスペインがドSっていう話の方が気になるんだぞ!」
「えっ!? Sって俺そんなでもないでー。アハハ、ちーちゃい頃にちょっとはしゃいでただけやって!」
ロマーノの様子をチラチラと伺いながらスペインはそう言う。
「いやいや。お前がレコンキスタ言いながら鬼畜っぷりを発揮してたのお兄さんよーく覚えてるよ」
「……せやからそんな事ないって。ロマおるのにそんな冗談言ったら親分の威厳なくなるやん!」
「別に、お前の性癖くらい知ってるから安心しろよ」
あくまでさらりと、ん百年目の真実を言ってのけるロマーノ。それにテンパったのは勿論スペイン。
「え? え? せやかてベルギーと暮らしとったの随分昔やん!?」
「うるせー! 夜中あんなにアンアン言ってたらいくらチビでも分かるぞこのやろー。しかもベルギー泣いてたし!」
「ギャー! 言わんといて! それ以上俺の心の傷えぐらんといて!」
「心の傷も何も事実じゃねーかちくしょー!」
「しかも傷を負ったびは明らかにベルギーだもんな」
正論が出たところでスペインは湯の中に沈んでいった。女風呂とは対照的にスペインの黒歴史発掘が完了したのであった。
「……あれ? もしかしてウクライナちゃんまた胸大きくなった?」
「へ?」
抱きつく形のままハンガリーはウクライナの谷間に視線をやる。
彼女の豊潤なバストは浮力により湯の中を漂っている。まさに横綱クラス。
「うーん。最近ちょっと肩こるかなーとは思うけどパソコンとかでお仕事してるからだと思ってたし……」
「……前はココまで浮くとかなかったもの。姉さんマジムカつく」
そう言いながら背後にまわり、姉の胸を妹が鷲掴んだ。
ベラルーシの小さく白い手で包めぬ巨乳はふにょふにょと形を変えていく。
「もう、ベラちゃんてば。おっきくたってイイこと無いんだよー」
乳を揉まれながらも平然と喋り続けるウクライナ。その胸のをこそりと見ながらリヒテンシュタインは自分の胸を押える。
「あの……どうすれば……そうなりますの?」
そして顔を赤くしながらウクライナに問いかける。
「うーん、小さいころはこんなになかったけど大きくなって気づいたらだからなー」
「そう……ですか」
ウクライナのふくらみとは違い、リヒテンシュタインのそれはささやかな主張しかなされていない。
そんな彼女の後ろからベルギーがそっと近づき細い背中のラインを撫でる。
「えー、でもリヒテンちゃんお肌超すべすべじゃない。羨ましいわぁ」
「ひゃんっ! べ、ベルギーさん……」
悩ましい声を出す原因ともなっているベルギーの指は細く長い。そしてニヨニヨと微笑みながら言う。
「若いウチは肌のハリで勝負だって。どうせお肉なんてあとでついちゃうんだから」
「ベルギーさんのお肌だって……それにむ、胸もとても綺麗な形をしていらっしゃいますもの」
「あら、アリガト。でも顔真っ赤にして可愛いっ!」
そう言いながらリヒテンシュタインの肌に手を滑らせるベルギー。そんな彼女に台湾はぽそりと呟く。
「でもやっぱりお……おっぱいは羨ましいですよ」
「えー、台湾さんは黒髪のストレートでアジアンビューティーって感じじゃないですか! 私なんて超髪うねっちゃって……」
セーシェルはそう言いながらこげ茶色の髪の一束に触れる。
水に濡れて多少は真っ直ぐになっているものの、乾かせばふわりとした触り心地の良い髪となるのだ。
「セーちゃんその健康的なお肌がイイんじゃない。髪ともあってると思うよ。私は筋肉が悩みかなー」
そう言いながらハンガリーは自身の腕を伸ばす。体つきは女性らしくあるが、付いた筋肉により肉食獣のようなしなやさを持つ。
「むしろその筋肉どうやって付けたのか教えて欲しい……」
ウクライナの後ろに居たベラルーシはいつの間にかハンガリーの体に触れていた。
「ベラちゃんは白くて細いのがいいのにー。お姉ちゃん妹がムキムキになったら泣いちゃうよー」
「姉さんうるさい。細っこったら兄さんの役に立てない」
「うふふ。ベラルーシちゃんは本当にロシアさんが好きなのね」
ハンガリーがそう言いながらベラルーシの頬を突く。するとベラルーシは白い頬を染めながらこくりと頷いた。
「やーん! ベラちゃん可愛い! お姉ちゃんはー、ベラちゃんもロシアちゃんも大好きよー!」
大きくお湯が跳ねさせてウクライナはベラルーシに抱きつく。多少眉をしかめながらもベラルーシはそっと背中に手を回したのであった。
「これなんてエロゲ?」
日本は男風呂内全員の気持ちを代弁した。多少の表現の違いはあれど、ロシアを除くほぼ全員が大きく頷いていた。
「何がー? 僕だってお姉ちゃんもベラルーシも大好きだよ。ベラルーシはちょっと怖いけど……」
「アイヤー、このロシアに怖いって言わせんだからあの妹が最強ね」
「それよりお兄さんが一番気になるのはウクライナちゃんかな。っていうかウクライナちゃんのおっぱい!」
空気を読まず勇者であるフランスが手をわきわきさせつつロシアの正面にまわる。
「弟に聞くのもアレだけどぶっちゃけ見たことある? やっぱでけーの?」
「うん、お姉ちゃんの胸は大きいだけじゃなくて柔らかいし気持ちいいからね」
ロシアの爆弾発言に一瞬無言になる。そして今度はフランスとイギリスがダブルで叫ぶ。
「「それなんてエロゲっ!?」」
「色々とタブーそうなんですけど大丈夫なんですかね?」
「ん……神話世界ならある話。自分達を人間じゃなく神話世界だと思えば大丈夫……」
「定義としては難しいですねぇ」
「……でも、近親相姦の神話、日本にもある……」
「そうですが……まあそれより今はエロゲ展開の方が興味深いですよ」
日本は視線を男性陣に向ける。孫を見る目で見守られる彼らの話題は女性陣全般へと移っていった。
「あ、でもお兄さんとしてはリヒテンシュタインちゃんの気にする未発達のおっぱいもす……」
セダーン、という音と共に風呂に沈むフランス。そしてどこからか銃を取り出したスイスはフランスを睨みつけながら言う。
「下品な話題に我輩の妹を出すのは避けて頂きたいな」
「い、いや。少女の肉体って聖なるモノだから。お兄さんリヒちゃんのおっぱい未完成の芸術だと思って……」
懸命な言い訳も空しく銃声は続く。そしてそんなフランスとスイスを他所に女体トークは続く。
「っていうかむしろハンガリーの売りは尻だな。巨乳の座はウクライナに譲ってもいいと思うぜ!」
「お、イギリスは尻派か。やらしーというかこのお坊ちゃんのの前で良く言えるな」
「そもそも会話がお下品ですよお馬鹿さんたちが。それにやらしいというならセーシェルに首輪をつけていた貴方は何ですか!?」
オーストリアに的確な部分を突かれ動揺するイギリス。
「そ、それは俺の植民地の証じゃん!?」
「他の植民地にはやってなかっただろ。やっぱイギリス変態だな」
「呆れるほどに鬼畜ですね」
「う、うるせー! 第一ドSならスペインだってそうじゃねーか!」
「俺はもう傷抉られ終わったやん! ……それにイギリス男女問わずドSやし変態やし超料理下手やし」
「最後は関係無いだろ馬鹿ぁ!」
半泣きになりながらイギリスは湯の中へ沈んでいく。それを見てからプロイセンは話題を切り替えた。
「そういえばベラルーシも肌白いし結構可愛いよな」
「可愛いのは見た目だけだな」
そこに泳ぎ飽きたロマーノが合流してくる。それに、うんうんと同意しながらスペインは言葉を繋ぐ。
「……性格はきっついよなー。ブラコンやし毒舌やし」
「ありゃ相当のドMじゃなきゃ耐えられないだろ……」
プロイセンのその言葉で一瞬固まり、そのまま三人は湯船に浮かぶリトアニアに視線を運ぶ。
「あ、そういえば俺すげーこと気づいたしー」
いつの間にか湯船のふちでイタリアとポーランドが話をしている
「ドイツってマジ日本のエロゲ主人公っぽいと思わん?」
「えー何でー?」
「だってリヒとも暮らしてたし、一時期ライナやベラともおったしハンガリーとも仲良しやん?」
「ああ、さっきの『これ何てエロゲ』ってやつー?」
「そうそう。なのに童貞とか嘘やろー。そこんとこどうなんドイツぅ?」
ニヨニヨと笑いながら修学旅行トークを開始しるポーランド。
「きょ、拒否する! そんなこと話す理由が無い!」
「えー。ドイツってば童貞じゃなかったの!? 俺裏切られた気持ちだよ!」
「否定しないトコがますます怪しいんだぞ!」
どちらかと言えば若者組なアメリカがここぞとばかりに絡んでくる。KY三人組に囲まれ、ドイツはピンチを迎えていた。
「何か男風呂急ににぎやかになりましたねー」
そう言いながらセーシェルは風呂の中をざぶざぶと泳ぎだす。ベラルーシは遠くに泳ぐ彼女に向けて大きな声で応える。
「どうせちんこおったてて聞いてるの誤魔化してんだろ」
その言葉に、露天風呂の時が止まる。水音すらたたない中でベラルーシはゴーイングマイウェイに続ける。
「もしくは全員でちんこの大きさでも比……」
「駄目ぇぇぇぇぇぇぇ!! ベラちゃん皆がドン引きしてるよぉ!!」
ウクライナは一番最初に復活し暴走する妹を必死で止める。
「ごめんなさい皆さんごめんなさいぃぃ! ベラちゃんは包み隠して言うのが苦手なだけなんです!!」
「別に苦手じゃなくって隠すつもり無いだけだし何度だっていえるわ。あいつ等チン比……」
「上がりましょうベラちゃん! お姉ちゃんとっておきの蜂蜜入りウォトカ出しちゃう!」
「あー、お姉ちゃん僕も飲むー」
垣根の向こう側でロシアが湯から上がる音がする。
「そ、そうね今日は皆で水入らずね! そ、それじゃあお先! あー、やっぱ向こうに聞こえてたの恥ずかしいぃぃ!」
「姉さん落ち着いて。そんでその無駄にデカいおっぱい押し付けるな」
「いやぁぁぁぁ! 恥ずかしい!」
ガラガラピシャンとそのままウクライナはベラルーシを連れて駆け出してしまった。
「あ、私達も上がろうか」
「そ、うですわね……」
それは男子風呂でも同じだったようでざぶざぶと人が上がっていく音がする。
ふたりほど引きずられた音がしたが女そこはあえてスルーで各々日本に用意された浴衣に袖を通すのであった。
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