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 クリスマス撃墜のお知らせ シーランド×モブ



「こんばんはシーランド君です!」
キラッ☆
 どこにカメラがあるわけでもないのに少年はポーズを決める。
日本こと本田氏から貰った、もとい、ぶんどった、もとい
地べたで手足をバタつかせて
「ふぎゃーああああああぁぁぁああ!!シー君が国じゃないからぁああ!あ、国だけど。
ふぎゃあああ、国って認めてくれないからぁああ!いじわるされたぁああ!!!」
 と泣き喚いて見事勝ち取ったDVDのヒロインのポーズは最近のお気に入りポーズだ。
 曰く、シー君の可愛さが引きたつそうな。
 
さて、ここは日本の某旅館。
 世界会議後の各国を日本が慰安に招待したのだ。
 シーランドは国ではないので世界会議と旅館の宿泊を疑問視する向きも多少あったが、
シーランドの日ごろの素行を知っているあたりから「誘わないとそれはそれで面倒なので招いてくれ」
とため息交じりの要望(?)があったので今に至る。
 まぁ、誘わなかったら先述のバタ足金切り声攻撃どころじゃないだろうから賢明な判断だと思われる。

「ふぅ、日本食もまぁまぁいけますね。ふっ、ふん!
シー君とこだってあっちの眉毛野郎のとこよりは全然ましですけどね!」
 そんなことをいいながらとことこと勝手に旅館内を散策…というよりうろちょろして歩き回る。
「…日本まで着ちゃったけど、シー君シーランドにいないけど…ちゃんと日本にサンタ来ますかね…」
 外をみて年若いシーランドはぽつんと呟く。
まだまだ子供だ。今夜も少年はサンタクロースの訪れを心待ちにしている。
けれども廊下の格子窓から見える庭の風景は苔に南天、松に隅笹、黒竹、それから灯篭に枯山水で
「じゅ、『じゅんわふー』ってやつですね…」
 こんなんではとてもとても降誕祭の風情ではない。
もちろん敬虔に生誕を祝おうというというわけではなく、憂いの種は「サンタが来るか」のみにかかっているのだが、
この旅館のあまりにクリスマスからかけ離れた雰囲気にますます不安になるってなもんである。

「ケーキだってたべてないし…」
「あら、ケーキならさっきお出ししたはずですが…」
「ふっふぉおおおぁああああああ!!!???」
「えっ、申し訳ありません!なにか粗相でも…」
 不意に後ろから声を掛けられてシーランドはひどく動揺したようだ。胸を押さえて息を荒くしている。
 声の主は…シーランドが一息ついてから上から下まで舐めるように観察してみた限り、
着物姿の少女、つまりどうやら旅館の仲居のようだった。
「なんでもない!です!」そういうと
「そうですか?」と少女は首をかしげた。動作が切りそろえられたおかっぱの黒髪を軽く揺らした。
「あの…ケーキお食べになりませんでした?」
 確かにケーキはあった。洋酒の良く効いた洗練されたケーキ各種が食後に切り分けられた。
 でも。
「シー君、ああいうのじゃないのが食べたかったよ…」
 相手の年若い見た目の気安さぽろっと本音が零れ落ちてしまう。
 実のところ資格がないと言われるなか無理にお呼ばれさせてもらったのは心得ている。
今日はあまり我侭言わないことを自分のなかで固く誓っていたのに。
「あ…あら、申し訳ありません。ええと、洋酒が口に合いませんでしたか?
なんでしたら少々待っていただければ改めてご希望に近づけてお作りいたしますが・・・」
仲居の少女は浮かない顔の客を見つけてオロオロと提案を口にする。
「あの、どんなケーキがよろしかったのでしょうか…」
「シー君…シー君は…」
「はい」
「…丸いの。ふつーのいちごの丸いの。安い、おいしくないやつでいいから
みんなで蝋燭立てて部屋真っ暗にしてクラッカー鳴らして食べたかった…のにっ」
 俯いて今にも涙がこぼれそうなシーランドの顔を見て、
若い仲居は「それは誕生日にやることじゃないだろうか」という心内でのツッコミもせずただただ困り果てた。
「お客様・・・申し訳ございませんでした!お気持ちを汲んだものもお出しできずに…
あの!今から…」
「もうおなかいっぱいだもん!」
「…そう…ですか」
「こんなとこ来なきゃ良かったです!どうせこんなとこサンタさん来ないです!」
「!! そんなことないです! 来ます! 絶対来ます! 必ず来ます!
煙突は炭焼き小屋しかないから煙突からは来ないけど! 私もちゃんと毎年サンタさんにプレゼント貰ってました!」
「うー…嘘だぁ…来ないもん。シー君良い子じゃないから来ないもん」
「来ます! 泣きやんでください。すぐ泣き止んだら無効です。三秒ルールです。ちょっとやそっとじゃ大丈夫です!」
「ひっく…ホントですかぁ」
「はい!」
 少女は自信に満ちた声色で言う。そして思ったのだ。
 この少年の可愛らしい夢をなんとしても守らなければと。
 その目はまるで弟を見るような優しい目だった。

 そんな思惑とは裏腹にシーランドはなかなかぐずるのを自分でも止められなかった。
「泣きやみたいけど…ひっく、とまらないです…ひっく」
「あらあら…どうしたら……あ」
 仲居の少女は思い出していた。幼い頃自分がぐずる度、母が温泉に入れてあやしてくれたことを。
「あの、一緒にお風呂…入りません?あったかくて落ち着きますよ」
「温…泉…?」

 ごくりと着物姿の少女は唾を飲んだ。
 うっかり情にほだされて温泉に誘ってしまったが、よく考えれば父親意外と風呂に入るのは久々だ。
(…いや、いやいやいや、この子は見た感じ年下みたいだし…弟みたいなもの! 弟! 意識しちゃ駄目!)
「あっ、あのー」
「日本の温泉ってプールみたいですね! わくわくします!一緒に遊びましょう!」
(…だめだ…すっごい目きらきらさせてる… やっぱり一人で入ってなんて…いえない…
弟! おっとうと! これは、弟!)
「あの、シーランド様って浴衣の下セーラー服着てたんですねっ」
 自分の意識を振り払うように別の話題を振ってみる。
「はい! シー君のトレードマークですから!」
「そうなんですか。私も昼間はセーラー服です。お揃いですね」
「お揃いですか! じゃあ今度特別にシーランドの国の爵位をあげますね!」
「しゃ…爵位ですか? …ありがとうございます…」
 爵位って…一体…私レディーなんとかとか呼ばれるんだろうか…
いや、日本にいて誰がそんなん呼んでくれるんだ。
とか少女が色々考えてるうちにシーランドは半ズボンを膝まで下ろしつつ、上着を脱ぐという無茶な脱ぎ方をし始めている。
もちろんパンツはパワーレンジャーがプリントされた白ブリーフだ。
 上着のなかからくぐもった声で、さっさと脱ぐですよ。入りますよ。
とか促すので、えいと覚悟を決めて仲居の少女は着物を脱いでゆく。
 帯締めを解き、お太鼓に結んだ帯を解き、無地の若々しい色の長着を解き、
長襦袢、それから肌襦袢を脱ぎ、白い滑らかな胸がまろび

…かけたとき、視線に気付いた。
「へぇー、日本の服ってめんどくさいですね。みんないつもこんなに重ね着してるんですか!」
「みっ、見ないでください! 普通の人は普段着物着ませんからね。着物は…そう、民族衣装です。
さっきも私は昼はセーラー服だっていったじゃないですか」
「そうなんですかー」
「ほら、あっち向いててください。っていうか先入っててください」
「えー…つまんなーい。って、なんか袖から落ちました」
「え? なんでした? ……って、あああああ!!! そっそれは…」
「え? なんですかこれ。 ガム?」
 正方形のうすっぺらいものが少女の袖から落ちた。 小さな四辺形に何かが丁寧にたたまれて収納されている。
「いいいいい、いっいえ!!いいえ!違います」

 うかつだった。各部屋に配備して、足りない部屋があったら適宜補充しろといわれていた例のブツ。
要するに避妊具を、仲居らは補充用に、あるいは望まれたときのエチケットとして各自持たされていた。
 とはいえ少女はまだ年若いからと渡されなかったのだが、というか母からは聞かされてもいなかったが、
女の園の仲居業だ。どうしても噂に聞こえてきてしまう。
 というところに、今朝年齢の近い仲居友達から、もし何かあったときのために…
とそっと渡されたこれ。避妊具。サック。はっきり言ってコンドーム。
 つき返そうとも思ったけれど、たしかに最後の最後では自衛ともなるのでひとつだけ受け取っておいたコンドーム。
 よりによってシーランドに見られてしまった…
「これは、その…いや、これは、私のではなく…」
「開けてみますね」
 ぺりっと軽い音で袋を破られる。
(あああ、さすがに広げられたら言い訳できない!!!)
「これは…」
「そ、それは…」
「分かりました!」
ばれた! 瞬間ぎゅっと目を閉じて少女は覚悟した。

「これは、水 風 船!!」
「へ?」
「準備が良いですね!これで温泉で遊ぶんですよね!」
「え、あ。ああああ!そうっ!そうです!流石!お察しのとおりです!」
「わー!やったぁ!!水風船ですよ! ばいんばいんしたいです! ばいんばいん! じゃあシー君先に行ってますね!」
「あ、はい…」
 呆気に取られているうちに引き戸を開け湯煙の奥へ行ってしまったシーランドを見やり、少女は
「とりあえず…助かった…」
 ほぅっと胸を撫で下ろしているところに遠くからシーランドの声で
「背中流しっこしましょおーねー!ボディタオル忘れたけど手で良いですよねー」
 最後の最後で爆撃がきた。
 少女はかぁーっと顔を赤く染め、左右誰も聞いていなかったか確認し、
 しかし意を決して、肩にかけていた襦袢を脱ぎ落とした。




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[シーランド][クリスマス企画]

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