クリスマス撃墜のお知らせ(スペイン×モブ<幽霊>)
「なんやーみんな楽しそうやなー・・・」
スペインは露天風呂にいた。
否、露天風呂の近くを歩いていた、というほうが正しい。
酔ったロマーノが寝てしまい、フランスやプロイセンは何処かへと消え、暇になったから風呂に向かったものの。
「ここまでいちゃいちゃされとるし・・・さすがの俺も空気読むわー」
そんな感じに一人言を言いながら旅館の周辺をぶらぶらしていると、ふいに人影が見えた。
「・・・?」
少しばかり眉をひそめて近づく。
(この人、誰なん?)
自分の知りうる限り、というか多分こんな国はいない。かと言って、服装からするに従業員ではなさそうだ。
年齢は10歳にいくかいかないか、と言ったところ。女の子と見受けられ、おかっぱ頭に花柄のワンピースがかわいらしい。
「お嬢ちゃん、どないしたん?こんな夜に。家族とか心配してへんの?」
初対面の子供に普通に話しかけるのがスペインの悪い癖である。
それが、悪夢だと気がつかずに。
「・・・・・・」
女の子がゆっくりと振り返る。その顔に感情はなく、すわった目でスペインを見つめていた。
「んー?迷子とちゃう?お家とかわからへん?」
気にせずにスペインは喋り続ける。
「・・・私は」
女の子が口を開く。スペインは、「おお、喋った!」という表情をした。
「・・・わたしは、むかし、ここにすんでた。
なんねんもまえ、ここで、ちょうどいちねんまえのよる、
ちょうどこのじかんに、おとうさんとけんかした、おかあさんがいえでした。
いそいで、おいかけて、そとにとびだして、はしったら」
スペインは口を開かない。否、開けないのか。
「ここで、くるまにぶつかって、そのまま」
「ずっと、ひとりだったんだ。さびしかった、おかあさんはけっきょくみつからなかったし」
「でも、もうだいじょうぶ、だよね」
「まさか、れいりょくのあがる、このじかんに、ちょうどとおりかかるひとがいるなんて」
「ね、わたしと、いっしょに、あっちh」
「かわえええええええええええええ!!!!!!!!」
スペインは確かに口を開けなかったようだ。
「あああああああかわえええ!!舌ったらずな口調とかピンポイントやあああああ!!!!
ああああああイタちゃんといいロマーノといいこの子といいもう小っちゃい子ってなんでもうこう」
・・・幽霊の可愛さぶりに。
呆れる幽霊を尻目に、一応話を聞いていたらしいスペインは話し続ける。
「そっかー寂しかったんやなーまあ俺も長生きしてるしその気持ちはよくわかるでー」
「・・・あなたに、なにが、わかるの」
「んー・・・お嬢ちゃんのことはよくわからへんけどー、そやなー、ま、今の俺に出来ることなんてこれくらいやわー」
そう言うと、スペインは両手を広げた。
「元気の出るおまじないやでー」(ふそそそそそそそ)
「ほらほらー、ふそそそそそ」
「・・・ぷっ」
その時、幽霊の顔に感情、笑みがこぼれた。
「あー、笑顔もやっぱかわえーなー、あー、もー我慢できへん」
そう言うが早いか、スペインは幽霊を抱きしめていた。
「え・・・ちょ!!」
「えーやないのー、これで寂しくあらへん」
「・・・それは・・・そうだけど・・・まあ、いいか・・・」
幽霊は、スペインを見つめ、こう言った。
「・・・ありがとう」
翌日、露天風呂にいた国たちから、体調を心配されたスペインの話は、おいおい。