クリスマス撃墜のお知らせ 終幕
山の薄い朝日の光を受けた旅館から、一夜の宿泊を終えた国たちがそれぞれの
荷物を手に携えてぞろぞろと出発の準備を始める。
寝起きに強い者がそう多くないのか、来た時ほどなべてテンションは高くない。
ただ、多くの者が笑っていた。
色々あって一夜にしてボロボロになった日本は、チェックアウトの手続きを済ませ、
忘れ物の確認をし、一番最後に宿を出た。
たまたま近くで雪玉を投げようとしていたアメリカに尋ねてみる。
「どうでしたか、今回の旅行は。皆さん楽しめましたでしょうかね」
「すごく、良かったと思うんだぞ。少なくとも、俺は楽しめたよ。ここ、また泊まりに
来れるかい?」
「それはどうでしょうね」
振り返ると仲居たちが玄関に勢揃いして、真っ直ぐ立っていた。
中心の女将が雪景色に凛と声を張った。
「どなたさまも、当旅館に一晩お泊まりになりはったからには、この御梨の家族。
仲居も番頭も皆田舎者、奉仕の至らんとこもあったとは存じますが、またいつでも、
いらしてくださいまし。
当旅館一同、心より、お待ちしとります」
仲居たちが声を揃えて唱和した。
『お待ちしております』
てんでばらばらに、思い思いに国たちがその見送りに応えた。
中には仲良くなった仲居に駆けよって連絡先を交換し合う者もいる。
「だそうです」
アメリカは仲居たちに手をふりながら言った。
「それじゃ、次日本で世界会議する時も、泊まりはここにするんだぞ!」
「それはちょっと考えさせて下さいますか」
幕
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